あとお気に入りも少しずつ増えてきてモチベーションの維持に反映されまくってます。
今回はいつもより長め。情報爆弾。
「はい、次いきます」
「はーい」
鞄の中からノートを取り出す。
「これはオレがまとめてきたアイドルアイが殺されるまでの流れです」
「殺されるまでって……流石に表現がショッキング過ぎない?」
物言いが入った。
「だってさっき伝えちゃったし、ならいいかなって、ほら、ここにはストーカー出現としか書いてないだろ。知らなかったらもうちょい気を使った表現はする」
「テルくん……それじゃ足りてない」
「そうみたいだな」
まともな人付き合いはしてこなかったからそういうのは苦手なんだ。
「まあ、とりあえず読んでみて。気になることは答えるから」
「えーこれごちゃごちゃ書かれてて読みづらそう」
「口で伝えても頭がごっちゃになってもっとわからないやつだからな」
ぶつぶつ言っていたが、じっと読み込み始める。
「何これ。なんでこんなとこにデフォルメキャラ描いてるの? ちょっとかわいいのが悔しい……チェック! じゃないんだよ」
自分だという実感はわかないだろうから大丈夫だとは思うが、細かな変化を見逃さないようじっと見る。
まあ、表には出ないかもしれないが、わかるかもしれないしな。
何回か上から下まで目を通した後、つぶやいた。
「色々聞きたいことあるんだけどさー、上から一個ずつ聞いていくことにするよ」
「ああ。そうだ、今から答えるのはあくまで推しの子でそういう言動がされていたことのみにしとく。できるだけ」
「? なんで?」
「先入観なしで聞いてもらいたいからかな。受け手側、読者、視聴者のことだな、に対するミスリードが多用されてる感じがすごい作品だったから。あと流石に全部覚えてるわけじゃないし、覚え間違いもあること前提で聞いてほしい。矛盾があったら突っ込んでくれていいから」
アイはわかったと頷くと質問を開始した。
「このさりなちゃんって子は? ただの私のファンじゃないんだよね? この線の行き先で想像はつくけど」
「そうだな。アイが16で産んだ双子の女の子のほうの前世だな。ちなみにアイが気付いていた描写はなかった」
「気づかないものなんだね」
「ああ、明らかにおかしいのにすごく賢い子供なんだって流してたわ。まあ、転生してるとか思う方がおかしいしな」
実感など抱きようもないんだろう。
おそらくここに書かれたアイがたどった軌跡を自分がたどることになるとは全く思ってないに違いない。
実際、オレが知る限りの情報を出してしまうのだから、たどるはずがない。
アイはへーと返事すると次の質問に移った。
「じゃ、このカミキヒカルって子は? 君と同じ名前だよね」
「多分実在する、はず。オレと同じ名前だけど関係はない、と思いたい。オレより美形に描かれてたし、歳がアイより一つ下だからな。きっと全く関係ないはず」
「やばいねそれ。自分でも怪しんでるじゃん」
できれば早急にカミキヒカルの実在を確かめないと安心できない感はある。
「いや、だって前世の名前と今の名前と考えて、明らかに関係ありそうだったらそういう配置にされてるんじゃないかって疑いの一つも持って当然だろ」
「えーでもこの人と私が恋愛関係になるんでしょ? 後ろハテナついてるけど」
「オレが生きてる間に完結してなかったからな。明確な描写はなかったんだ」
「でも、子供かー。わたしおぼろげに子どもなんか作らないと思ってたけど。お母さんみたいになったらいやだなって」
「そうだな。ただ、逆も考えることができる。自分の子供だったら愛せるかもしれないって。カミキくんとは別れた後も険悪ではなさそうだったし、あっちはよりを戻そうとしてたように見える描写もあった。逆によりを戻そうとしてきたのかと思って警戒されてるようにも読み取れなくもなかったが。で、こいつ書いてある通り別れたお前に対して、ストーカーを送り付けて殺そうとする。物語も最終章でアイの子供が復讐を遂げようとする相手がこのカミキくんだから、アイを死に追いやったのが彼なのは間違いないはず」
「うーん。このアイさん人を見る目なくない?」
「いや、そもそも普通は隣の相手が自分の命を狙ってるとか思わないからな。普通、学校でもし今テロリストがやってきたらみたいな妄想が実際に起こるとは考えないんだ。たまたま初めて仲良くなった相手がそういうやつだっただけだから運が悪かったとしか言いようがない」
流石にこの出会いまで神様に仕組まれてたらどうしようもないとも言える。
アイは納得がいってない様子だ。
「ちょっと説明しといたほうがいいか。ここからはオレの想像だから事実とは異なる可能性をご理解ください」
「はーい」
アイが素直すぎてちょっと落ち着かない。
あと、アイドルになる前に話しとかないとまずいとはいえ生々しい話を中一の女の子に話さなければいけない事実もきつい。
「多分なんだが、アイにとってカミキくんは初めて自分に近しいと思える相手だったんじゃないかな」
今のアイの状態に近かったのではなかろうか。
「それまでアイドルだというのに気にしてなかった私服のファッションなんかも、言われたからか自分からなのか気を付けるようになった。一気に大人びて恋をしてるように見えたらしいから結構な変わりっぷりだったんだと思う。ただこれ、おかしいと思うだろ」
「うん」
「穿った視点で見ると人と一緒にいないときでも嘘の仮面をつけたままにするようにしたほうがいいと助言があっただけの可能性のほうが高い。そうだな。アイは学校で一人でいるとき割と近寄りづらい空気を出してるだろう。あれって人の相手をしてないときはそのままの自分を出しているとも言えるわけだ。人と関わりたくないって言うな。それがなくなったってことは本当の自分を見せなくなったってことだろう。田舎娘が垢抜けたって表現されていたけどお前そういうタイプじゃないだろ」
「だと思う」
「オレもそうだがやる必要性を見いだせないことに労力を注ごうとは思わないタイプだからな。カミキくんと一緒にいたとこでは演技を習っていたらしいから、その成果を試していたのかもしれないな」
多分恋はしてなかっただろう。
「もう何年か先の話だからな。アイドル活動での愛の探求も芽が出てなかっただろうし、違うアプローチを模索してたんだろう。おそらく仲が良くなったカミキくんに愛が知りたいなら試しに付き合ってみないかとでも誘われたんじゃないか。付き合ってみたら愛が分かるかも、キスをすれば愛が分かるかも、やってみれば愛が分かるかもって思って試してた可能性を否定できない。子供なら愛することができるかもしれないから避妊もしなかった。別れた後の描写でも結局愛を理解してなかったから、恋をしていた可能性は少ないんだよな。恋は落ちるもの、愛は育てるものっていうけどさ、愛は恋がなくてもいいけど、恋に愛は必須だろう。恋に恋するならまた別なんだろうが。まあ認識できてなかっただけかもしれないから恋はしてた可能性もあるか。いや、12歳にこれをいうのは倫理観的にめちゃくちゃきついんだが勘弁しろよ」
アイは顔を赤らめてこちらを見ていた。
「饒舌すぎる。何それ。アイのことめちゃくちゃ好きじゃん。テルくん」
「いや、待て。誤解だ。これはオタク特有の考察厨が」
「せっかくオタクじゃんって言わないでおいてあげたのにそっちの方が恥ずかしいんだ」
「よし次! 話を戻してもいいがオレの羞恥心が落ち着いてからにしてくれ」
「ふふふ。すごいロマンチスト」
「いや、ほんと勘弁」
オレはそういうからかいに耐性ができるような人生を送った記憶はない。
「じゃこのゴロー先生」
「さりなちゃんを看取った医者と同一人物でアイの産婦人科医でもある。アイ最推しのドルオタで、アイが双子を出産する直前にあえなくアイのストーカーに殺されるがそのままアイの双子の息子に生まれ変わってるな」
「ええええ、やめよ、そういう爆弾投げてくるの……」
「オレもそうは思うけど事実しか言ってないからな」
アクアもルビーもいい子なのは間違いないから。
「私の周り転生者多くない? わけわかんないんだけど」
「そこには書いてないけど、本来は魂がなくて死産だった子供のかわりに神様が二人の魂を入れたっていう発言がある」
「えぇ、死産だったらこの人もう立ち直れないでしょ……この人わたしじゃん……」
「うん。多分そんなことになったらその日のうちに身投げしててもおかしくない。ただこの発言すごい怪しい。なんだよ魂がないから死産って。どういう仕組みだよ。そんなんで子供が死ぬんだったらこの世界の魂の供給システムがバグってるってことだからもっと死んでるだろ」
「あ、うん。そうかも」
「っていうのともう一つ別のがある。言ってることが正しい場合だな。アイかカミキが神様か何かに祟られていて正常に子供が生まれない。この場合自作自演の可能性もあるし接触してるのとは別のかもしれない。ただ、どうして4年も前に死んださりなちゃんの魂を保存していてアイの子供に入れたかわからない。ゴロー先生も死んだ直後にいれましたって、本来死んでなかったのを抜き取って入れてる可能性があるからもうほんと怖い」
「え、何? この世界ってそんな怖いの。ちょっと絶望しそうなんだけど」
「神様がいるなら祟りがあって当然だからできるだけ近づかないように。近づいても当たり障りのないこと考えてお茶を濁すように」
「えええ無茶ぶり。あ、でもほら、わたしが子供産んでもこうはならない可能性あるよね?」
そこが問題ではある。
「そうな。同じ状況を再現すれば、できる可能性はあるけど、最低限カミキくんには近づかないほうがいいと思うし、さりなちゃんはアイの子供に生まれれなくて相対的に不幸かもしれないけど知らなければ考えることもないだろうし」
「でも、転生って神様がやってるんじゃなかったっけ?」
「神様がさりなちゃんの魂を手ぐすね引いてアイの子供にするために保管してた場合はどうあってもさりなちゃんはアイの子になると思う」
「流石に神様とかどうしようもないよね」
「縁がなければさすがにアイの子供になるようなことはないだろうから、アイドルにならなければさりなちゃんともゴロー先生とも縁が切れて普通の子供が生まれるんじゃないかな。そもそもゴロー先生って死んでなければ転生する必要ないし、さりなちゃんだけが問題だけど、アイがアイドルにならなければさりなちゃんも目を付けられることなく神様に魂保管されることもなくなる可能性はあると思う。もしそれでも神様に目を付けられているとしてたら、それはアイに問題があるわけでなくさりなちゃん自身に神様から目を付けられる要因があるってことだから、どのみち誰かの子供として転生するはず」
「目を付けられてなかったとしたら?」
そこ気になるよな。
「そのときは魂を保管されないってことだから、これもどっちがいいかは人によるだろうし、オレが言うのもなんだけど本来転生とかありえないわけだし、しっかり魂リセットしてもらったほうが変に業を背負わずすむとも言える。ミステリにオカルトを混ぜるのはやめてほしい。なんだってありになるだろ。まあ普通はオカルト要素はスパイス程度のミスリード要因に収まるんだが」
「アイドルかぁ。でも、うーん」
そもそもさりなちゃんだけ生前の願いが一通りかなっている感があるから、さりなちゃんが始まりの可能性もあるのか。あの神様の化身僭称が実は事実の可能性もありうる?
え、あの幼女忖度してるだけの可能性もあるのか……
あの闇落ち案件アシストのつもりだったとか……
日本の神様なら兄妹でどうこうっていうのも「え? 何かおかしいことある?」だろうし。
いや、さすがにねーだろ。
よし。オレは何も考えなかった。
「それに神様がカミキヒカルを敵視してるっぽいから。下手するとカミキヒカルも転生者で、何らかの約束を守らなかったカミキに対して祟ってる可能性が……」
「あー、そのカミキくんが転生者だから子供も転生者になったと」
「そもそもカミキヒカルって芸名では? どうどうと苗字に神をいれるなよ。煽っているのか。それとも敵対してる神に送り出された転生者? カミキヒカルとはオレのことでは???」
先ほどから回転してる思考が変に線と線を繋ぎそうになり混乱する。
そっと近づいてきたアイにデコピンされバシッと頭が跳ね上がる。
いや、待て。
カミキが殺しまくってても一つだけこれなら仕方ないってのを思いついたぞ。
転生に代償が必要だった場合だ。
カミキは子供のために生贄を捧げ続けてる。
親が子のために鬼になる。
日本じゃ割とメジャーな話だ。
最終的に重くなった自分の命で二人分の転生者を賄う。
でもそれだと最初にアイを狙った理由が説明つかないな。
ゴロー先生を狙った感じでもなかったし。
ああ、でも嫌だなこれ。
ちょっと深掘りして考えたら同情の余地がある推論に行きつきそう。
あとこれはオレにも言えるぞ。
オレの転生の代償。
払った記憶がないってことは、あれじゃないか?
転生することそのものが代償の可能性がある。
代償がないように見えて最高の嫌がらせだ。
どこかで何かが大笑いしてる幻聴が聞こえてきそう。
この世界は邪神しかいないのかな???
「ねえ、大丈夫?」
「あまり大丈夫じゃない。すごく嫌なことを思いついた」
これはきついなぁ。
「何?」
「転生に代償がいる可能性」
「それは確かにあってもおかしくないかも」
「でもまあ、こっちでどうすることもできないから気にしないほうがよさそうだ。というか押しつけ借金はやめてほしい」
なぜ頼んでもない転生代金を払わなければならないのか。
一気にカラオケ編終わらせたかったけど、長くなったので出します。
あと、さすがに全部話すつもりとはいえカミキくんの尊厳は守っています。
カミキくんのためというよりも12歳に言うのはまずかろうという判断です。