指示厨女神とエンジョイ勇者   作:五十貝ボタン

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12:帰還門

「女神プロフェットに感謝を」

 サクノスの言葉に合わせて、百人の勇者がいっせいに胸に手をやり、祈りの仕草をした。

「それから、焼き菓子と甘いチョコレートを」

《あぁー、幸せですぅ~~》

 パティスロンに捧げられたクッキーをむさぼりながら、プロフェットは涙を流していた。

 

「そして1万人目の勇者へ、最大の賞賛を!」

「よくやった!」

「君のおかげだ!」

「誰にもできなかったことをやってくれた!」

 百の勇者の百の賛辞を浴びて、思わず顔を赤らめてしまう。

 

「ありがとう。でも、ぼくが迷宮に挑むことができたのは、みんなが遺物の力を貸してくれたおかげです」

 自分でも、自分がしたことを信じられないくらいだ。

「そしてなにより、プロフェットの導きがあったから」

《ひゃい》

 名前を呼ばれた女神が、口につめこんだクッキーで頬を膨らませながら返事をした。

 

「この女神は職権を濫用してぼくを勝手に呼び寄せるよう仕向け、大した説明もなく一方的に迷宮に挑ませましたが……」

《言い草がひどくないですか!?》

「事実でしょ」

 ウィンドウのなかの女神を冷ややかな目で見てから、向き直る。

 

「……でも、それはこの世界を救うためです。あなたたちの戦いを彼女はすべて見守り、それに基づいてぼくに助言してくれていたのです」

 荒野に風が吹く。砂がゆっくりと巻き上げられ、青い空に向かってつむじを描いた。

《しかし、その使命も終わりの時を迎えました。あなたを地球へと返さなければなりません》

 プロフェットが(口の中のものを飲み込んで)パチン、と指を鳴らした。

 

 ぼくの目の前に空間のひずみが現れた。鏡面のように輝くそれは、プリズムのように虹色の光を発していた。

《地球へと繋がる(ゲート)です。それをくぐって、元の世界へ戻れば……すべての使命の終わりです》

「地球へ……」

 門を見つめる。勇者達に見守られながら、使命を終えての帰還……

 

「……も、いいんだけど」

 

 くるりときびすを返して、ぼくは歩き始めた。

《ちょっと! もう使命は終わりなんですよ!》

「だって、せっかくのファンタジー世界だよ。あんな迷宮だけ見て帰るんじゃ、面白くないって!」

 使命が終わったんだったら、もう指示に従わなくたっていい。

 

 今度こそ、世界をぞんぶんに楽しめるんだ!

 

《ちょっと、勇者の皆さん! 何か言ってやってくださいよ》

「呼び出させた責任は女神様にあるってことで」

「俺たちもロデュスを封じたんだから、使命は終わりだ」

「みんな、あとは自由にしてくれ!」

《そんなあ!》

 

 勇者たちに手を振って、ぼくは歩き出した。

《あなたが帰るまで、私が付き合わなきゃいけないんですよ!?》

「どこかすごい景色が見られるところまでの道を指示してよ」

《私はツアコンじゃなーい!》

 女神の訴えが、広々とした荒野に響き渡っていた。

 

 

 〈了〉

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