三つの宝箱があった。
《このなかからひとつだけ開けることができます》
「大きさや装飾がどれも違うね」
大きな木製の宝箱、小さな石の宝箱、そして
……最後のは水晶だから透けている。何も入っていないように見えるけど、ここはファンタジー世界。見えるものが真実とは限らない。
《水晶の箱には何も入ってません。木製の箱は罠で、開けると爆発します。石の箱を開けてください》
プロフェットはあまりにもあっさりと指示を出してきた。
「えっ、もうちょっと悩む時間とか……」
《悩んでも中身は変わらないでしょう》
せっかく、宝箱の中身を想像してワクワクしていたところだったのに!
《石の宝箱ですよ、い・し!》
プロフェットはさっきの溶岩プールでの出来事のせいで、ぼくのことをかなりのうっかりさんだと思っているらしい。
あえて違う箱を選んでやろうとも思ったけど、不利な行動を取るのはゲーマーとして許されない。
言われた通りに石の箱を開ける。ボンっと軽快な音がして、ほかの二つの箱は煙に変わった。
残った箱の中には小さな護符が入っていた。手にすると、不思議と温かな感じがした。
《守護の勇者イリスの遺物です。身を守ってくれますよ》
その護符を胸に当てると、ぴたっと吸いついた。装備完了だ。
「それはいいんだけど……」
《なんですか?》
「もうちょっと、指示の出し方を考えてくれない?」
《はい?》
頭上に文字通りにハテナマークを浮かべるプロフェット。何を言われているかわからないという顔を見ていると、ふつふつと頭に血が上ってきた。美人だけになおさら癪に障る。
「部屋に入るなりああしろこうしろって、これじゃ指示厨じゃないか!」
《指示厨!?》
「最終的には答えを教えてくれてもいいんだよ! いいんだけど、ぼくのペースで進めたいっていうかさあ!」
《あなたにとってはゲームみたいなものかもしれませんが、地球とも無関係ではないのですよ!》
「地球? 地球がいまなんの関係があるの」
今度はこっちが首を傾げる番だ。
《この迷宮がある世界は地球の人々が抱く夢や幻想が形になった世界なのです。分かりやすく言えば、世界同士がアストラル的に親子関係にあるわけです》
「まったく分からない」
《地球が一本の木だとすると、このファンタジー世界はその木から生えた枝のようなものです》
「で、プロフェットはその世界を守る女神?」
《いや、それは……》
視界に浮かぶウインドウの中で、女神が答えにくそうに目を泳がせた。
《私は、地球とこの世界とを隔てる領域の管理者です。ふたつの世界が混ざり合ってしまわないように見張ることが役目です》
「えっ! じゃあ、ただの見張りであんまりえらくないってこと?」
《えらいもん! えらい女神だけど、世界を守護するような役目じゃないってだけだもん!》
女神は涙目になっている。
「なーんだ、世界を守る女神だから助けてくれてるんだと思ってたのに。やっぱり単なる指示厨じゃないか」
《し、指示厨……》
その言葉は彼女にとってけっこうショックらしい。よし。弱点を見つけたぞ。
「そう言われたくなかったら、もっとヒントの出し方を考えてね。ぼくが協力しないと困るでしょ?」
《くっ!》
こうして女神を言い負かしたぼくは、次なる部屋に向かうのだった。
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