指示厨女神とエンジョイ勇者   作:五十貝ボタン

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6:転がる大岩

「とうっ!」

 背後からゴロゴロと転がり落ちてくる大岩を、ぼくはとんぼを切ってかわした。

《お見事!》

 パチパチと拍手をするプロフェット。さっきのやりとりが効いたのか、ぼくの機嫌を取ろうとしてくれているようだ。

 

「さて、次の部屋は……」

《疲れていませんか? 時には歩みを止めてすこし休むことも必要ですよ》

「いや、ぜんぜん疲れてないよ。ブーツのおかげで体が軽いんだ」

《休める時に休むのが大事ですよ!》

 この物言いで、ピンときた。プロフェットはまだ先に進ませたくないのだ。

 

「じゃあこの辺に座って休もうかなーっと……」

《こんな坂道の途中で休まなくても、もっといいところがありますよ! ほら、岩が転がり出てきたところとか》

 つまり、そのあたりに何かがあるらしい。

 

「それじゃあ、行ってみようかな」

 坂道を降りているときに大岩が転がってくる古典的な罠である。たしかに、大岩があったスペースに何かが隠されている……なんて、ゲームではいかにもありそうだ。

 ステップスのブーツのおかげで急勾配を登るのもへっちゃらだ。月面の宇宙飛行士のように跳ねながら頂上へ辿り着いた。

 

「これは……」

《遺物ですね! 製菓の勇者パティスロンのスカーフです! これを巻けば自在にお菓子を作りだすことができますよ!》

「その人もこの迷宮に挑戦したの?」

《ええ。調理で培った経験をもとに罠を見事に突破していく姿はすばらしいものでした》

「どういう人選なんだろう」

 

 とりあえず、スカーフを装備しておく。

 遺物は身につけさえすれば、なんとなく使い方が分かる。ぼくの心に、「お菓子を作ることができる」という自信がみなぎってきた。

「クッキー!」

 叫ぶと、手の中に白黒の模様が着いたクッキーが現れた。

《いいなあ、クッキー……》

 パリパリと食べて小腹を満たすぼくを、いかにも羨ましそうに女神が見ていた。

 

「女神もお菓子を食べるんだ?」

《もちろんです。儀式をして、人間達が捧げてくれたものを……パティスロンは信心深く、たくさんのお菓子を捧げてくれました》

「ふーん」

 聞き流しながらクッキーを食べ終えた。

 さあ、次の部屋へ向かおう!

 

《あっ》

「えっ?」

 坂道を下ろうとすると、プロフェットが何やら言いたげに声をあげた。

 

《いえ、何かやり残してないかと思って》

「そんなにクッキーが欲しいの?」

《そうじゃなくて!》

 女神はもごもごと言いにくそうにまわりを見回している。

 

「ああ、まだここに何かあるんだ」

 指示厨呼ばわりされるのがいやで、遠回しな指示を出しているらしい。

《どうでしょうね?》

 本人だけはネタバレしていないつもりの口調だ。

 

「どれどれ……」

 スカーフがあった空間のまわりの壁を試しに叩いてみる。位置を変えて試すうちに……

 ボコン!

 軽快に壁がくずれた。その中には、ごつごつとした棍棒が浮かんでいる。

 

「おおっ、ついに武器が!」

《よくぞ見つけました。これこそ力の勇者ウッドリーの武器。自在に長さを変える棍棒、その名も《長い(ロング)(ぼう)》です》

「ロングボウって、ふつうは弓じゃない?」

《ウッドリーがそう名づけたんだから仕方ないじゃないですか》

 ともあれ、その棍棒の性能はたしかなようだ。伸びろと念じれば長く、縮めと念じれば短くなってくれる。使わないときはインベントリに入れておけばいい。

 

「武器があるってことは、モンスターとの戦いも……?」

《今のうちに覚悟をしておいてくださいね》

「それ、ネタバレ?」

《ネタバレじゃないですー! 女神の啓示ですー!》

 そういうことにしておこう。

 いよいよ怪物との戦いだ。ぼくのワクワクはさらに高まっていた。

 




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