第八話 対黄巾党 孫家の一手目と来訪者
――side ラインハルト
今日の朝の集会は今までと少し違うところがある。
「……本当にここからじゃなきゃだめ?」
「だめに決まってんだろアホ娘。率いてる奴がどんな様子してるのか確認するのも長の仕事だからな」
雪蓮が玉座に座り、炎蓮が他の面々と同じ段に立っているところだろう。
世代交代というやつだ。
「……とりあえず……黄巾の賊関連……でいいのかしら?」
「いや、オレは隠居だから司会進行確認すんなし」
顔色伺うような態度に炎蓮は呆れ気味。
それを見た雪蓮は自らの頬叩き、深呼吸するといつものおちゃらけた雰囲気から冷静な様子に切り替わる。
「……冥琳、穏。軍備の状態は?」
「歩兵2万、弓兵9千の計2万9千。うち歩兵9千、弓兵千を残した1万9千。号令をいただければ2日で遠征に出せます。」
「残りは治安維持及び険悪勢力の黄祖迎撃の保険として残しておかないと危ないかなと。あと、指揮できる人を1人2人残しておかないと万一のときが危ないかなと」
2人の言葉を聞いて少し考える素振りを見せる雪蓮。
「……お母様、太守っていつ頃引き継ぎできそう?」
「んあ? 数ヶ月かかるかなぁ。」
その言葉にうーん、と雪蓮は唸ってから思考開示する。
「ならお母様は私と同行。蓮華とシャオ、祭、穏は残ってもらいたいわね。雷火、レナルルは兵站管理もあるし残ってもらう。明命は斥候任せたいから同行、粋怜と冥琳は遠征組にするとして……」
こちらを見る雪蓮。
「ラインハルトとイオン、亞莎はどうしたい? たぶんイオンはラインハルトについていきたいと思ってるからラインハルト次第だと思うけど」
「私は遠征組についていく。……念のため保留組には騎士団の何人かを喚び出して残しておくつもりだ」
指をならすと私の近くに3人ほどの姿が現れる。
1人は病的なまでに白い肌と髪のサングラスをかけた男。
1人はピンク色の髪をした華奢な娘。
3人目は私と同じ体格をし、メガネを掛けた神父。
「ベイ、マレウス、クリストフ。話は聞いていたな?――城のものと喧嘩せず、留守を頼むぞ」
「ヤヴォール!」
3人目が元気よく返事したので私の後ろに移動するように指示。
「……少々自尊心が強い者がいるが、いずれも数の暴力を殴り返せる個だ。役に立つはずだ」
「ええ、ありがとう。いざってときは蓮華の指揮に入ってもらうわ」
雪蓮はそう言ってから、イオンと亞莎の方を見る。
「私は……旦那様についていきます!」
「私はまだまだ未熟なので、学ぶためにもついていきます!」
2人の言葉に頷く雪蓮。
「それじゃ決まりね。蓮華。私達不在の間は代行よろしく。穏や祭、雷火がいるから困ったら頼りなさい」
「わかりました」
「冥琳。遠征の準備をよろしく。それじゃ解「大変でございます! 侵入者です!」なんですって……?」
指示がおわり解散するところだったが、侵入者を知らせる兵士の言葉に遮られる。
「何をしてる、すぐに捕まえろ!」
「それが、敵はやたら強くて……」
「少し見てこよう。3人はここで皆の護衛をしておけ」
私は直感じみたものに導かれ私は駆け出した。
気配を辿っていると、兵士たち相手に無双してる集団を見つけた。
「――そこまでだ」
私は威圧感を込めてそう言い放つと全員の動きが止まる。
「……一夏、千冬、箒、束、鈴…………何故ここにいる」
侵入者である5人の名を告げると5人が目を丸くする。
「……お、お兄さん……?」
黒髪の女性……千冬は胸ぐらつかんでいた兵士を落としながら言葉を零した。
「姿がかなり変わったからな。ひと目見たら分からんか」
「いや、お兄さんがもってたゲームのディエス・イレのボスキャラが眼の前に出てきても直ぐにはわからないって!」
スタイルがいい黒髪ロングヘアーの娘の一夏のツッコミに他4人も頷く。
「……積もる話はあるが、とりあえず大人しく私の指示に従ってくれるかね? でなければ牢屋に放り込んだりせねばならん」
「兄さんがそういうなら……」
そういうと彼女たちは掴んでいた兵士たちを離してこちらの方に集まる。
「……兵士諸君、警戒態勢は解除。怪我人は治療を受けるように。治療費がかかる場合は軍部経由で内政官に伝えるように。……雪蓮、彼女らは私の客人だ。身柄を預かっても?」
最後、いつの間にかここまで駆けてきていた面々に確認する。
「貸し1。半年で1追加ね。客間がいい?それとも大広間で私達も同席する?」
「高く付くが仕方あるまい。後者で頼もうか」
私の言葉に兵士たちは持ち場、あるいは衛生兵駐屯所に向かい、私達は玉座の間にとんぼ返りすることになった……。
「バカかね?」
『私』の死後、私と会うために研究開発の末に時空跳躍する装置を開発し、片道切符とわかっていて飛んできたという5人の経緯を聞いて頭抱えながら思わずそう言ってしまった。
「バカってヒドイ! お兄さんに会うために死にものぐるいで頑張ったのに!」
よよよと泣きながら私に抱きつく束。
「あと悪いが今の私は妻帯者なのであまり妻が怒るようなボディータッチは自重してくれ」
「なっ!? 操を立てていた兄さんが結婚……!?」
鈴が困惑し、束がしぶしぶ離れると、イオンが前に出る。
「イオンです。今生で漸く結ばれました」
「……ってことは、貴女が……」
千冬が何かを言うのを飲み込む。
「あ、一応正妻のお眼鏡に適ってラインハルトの同意もぎ取れれば重婚するって言質とってるから正妻を諦めるなら結婚できるぞ」
「ここでそれバラす?」
炎蓮の一言にツッコミを入れてしまった。
「……他に条件ある?」
人に興味ない(これでも改善された)束の質問に、少し考えるような素振りしてから炎蓮は告げる。
「たしか……専業主婦だったか? それだと相当な水準の技能なきゃ正妻様の心象かなり悪いし、そうでなきゃ何かしら仕事とかしてなきゃ旦那のほうがいい顔しないみたいだぞ?」
「……後半に関してお兄さんは言及してないみたいだけど……そっちの思惑は分かった。 共同戦線張ろうか。お兄さんの性癖とか癖変わってないみたいだし、役に立つ事教えられるかもだから」
束……交渉みたいなことができるようになったんだな……*1
「良いだろう。――仕事が欲しけりゃ城の中で用意する。住居はひとまずオレの持ってる屋敷の一つ貸すからそこに住んどけ」
「……勝手に話が進んでいくなぁ……」
遠い目をしながら私はそう零した。
――同日夜
「あなた本当にモテてたんだね……」
「あの5人は年の離れた妹か娘くらいの感覚で接していただけなんだがな……」
「……やっぱり胸大きい方が好き?」
「(大きいと答えると鈴の立つ瀬がなくなるのもあるが……)どちらかというと感度がある程度良いならあまり気にしておらん」
「……そういえばネイちゃんやカノンさん、ネロやシュレリアとゃんとの禊は積極的だったし……胸はあんまり関係ないんだ……。あれ?サーリちゃんとは相対的に少なかった気がするけど……メガネとか苦手だっけ?」
「サーリに関しては白鷹が生きてる気がしてたからな、彼氏持ちと禊は気が乗らん」
「ふーん? ……レナルルさん独り身だし、高嶺の花って感じで、良い人いないんだよね……今生は家の関係で貧しかったし……」
「……」
「私寝たあと、城の厨房で夜食をレナルルさんたちとたべてるでしょ? レナルルさんもまんざらでも無いみたいだよ?」
「自分の旦那に嫁候補進める正妻、戦国かファンタジーの中だけかと思ってた(こなみ)」
「3人いれば派閥ができるってあるけど、女同士だと割りとドロドロしてるから……レナルルさんが側に居たら心強いな〜って」
「大奥とかそうだったな……」
「だから無闇矢鱈と手を出さないでね? 2人仲良く胃薬手放せないのはそれはそれでいいかもだけど……」
「……気をつけるとしよう」