恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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第十三話 サーヴァント召喚と各地の動き

――side ラインハルト

 

アレから一ヶ月、内政と軍備増強に勤しむ日々。

 

小康状態が続いていたのでそろそろ動くべきと判断して準備を始める。

 

城の自室にて、宝物庫の宝具の原典等を使って空間隔離を施し、宝石を溶かした液体で陣を描く。

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には神座『永劫水銀回帰(オメガ・エイヴィヒカイト)』」

 

手袋を外した右手の甲に刻まれた赤き刻印が赤く光り始め、陣が呼応するように光り始める。

 

「降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

力場が生まれ、力が循環する。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。――繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

己の中に眠る歯車が噛み合い、動き出す。

 

「―――――Anfang(セット)

 

見えぬ糸が私と何かの間に縁を紡ぐ。

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

何かが弾け、他の可能性が砕ける音がした。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

光に包まれた後、陣の中心に一人の人物が立っていた。

 

赤い槍を持ち、後ろで膝ほどまである青い髪を黄色いリボンで束ね、赤い瞳には本人の気性である明るさが宿っている。

 

「――サーヴァント、ランサー。 マイ=ナツメ……あれ? クー・フーリン?ってなんだろ……まあいいか。呼ばれたからには頑張るから。とりあえずよろしくね、マスター」

 

「ラインハルトだ、よろしく。……卿は聖杯に何を願う?」

 

私は認識確認のために問いを投げたが

 

「特に……? 強いて言えば強い相手と戦えて、現世をある程度楽しめればいいかなって」

 

なんか青タイツのランサーみたいな事言い出したぞ。

 

「なんか『混ざってる』みたいで、それに引っ張られてる部分あるみたい。……たぶん、座に登録されてない存在を無理やりサーヴァントとして成立させるために座に登録されてる存在をベースにしてる……っぽい? 記憶もわりと曖昧なところ多いし」

 

「……妙なサーヴァントだな」

 

「なんだろーね、他のサーヴァントもそんな気がする。たぶん聖杯も変なモノじゃない? 電気ポットとかそういうヤツ」

 

うーん、と首傾げながらそう零すランサー。

 

「(聖杯……電気ポット……あ、カニファンネタ*1か) まあ、万一聖杯が汚染等で危険なら壊すし、卿が受肉したければ何とかできる。とりあえず聖杯が気になる故、生き残りを優先しつつ、卿が楽しめるよう、取り計らおう」

 

「うん、よろしく」

 

私の差し出した手を取るランサー。 

 

「とりあえず……呼び方は「マイで」……マイ、パス経由で魔力供給はできてるか」

 

「? できてるけど……なんで?」

 

「……私の魔力の容量(キャパシティ)の桁が違いすぎるらしく、卿に渡してる魔力量が誤差の範囲にあるせいで認識不能なのだ。」

 

「すごい……さっきから調子いいのそれが理由なんだ……」

 

軽く体動かしたりジャンプしたりするマイ。

 

何処とはいわんが揺れてるぞ、思いっきり。

 

「……もしかして、令呪つかって逆らえなくしてこのままエッチな展開ですか? エロ同人みたいに!」

 

視線に気がついたのかバッと私の身体を隠すマイ。

 

「ワタシ、妻帯者。 妻たち、怒る そのつもりなし」

 

「それはそれでモヤっとしますね……スタイルはイイと思うんですけど……」

 

「私はそこまで飢えてるつもりもないのでね。……さて、卿を紹介せねばな」

 

私は指を鳴らして空間隔離を解除し、大広間へ向かう。

 

 

 

 

 

 

 

予め聖杯戦争について説明していたのでサーヴァントについて根掘り葉掘り聞かれることなかったが……

 

「やっぱり胸でかいほうがスキじゃねえの?」

 

炎蓮が爆弾投下したお陰でシャオ、鈴が噴火し、明命と亞莎がしょんぼりし、イオンとネイがジト目を向け、甘寧からゴミ見るような目で見られた。

 

「だから言っているだろう! 大きさより感度だと!」

 

「……炎蓮様、あまり夫を虐めないで頂きたい。 心労が祟って倒れかねませんので」

 

「煮ても焼いても死ななそうなコイツが?」

 

カノンの言葉に炎蓮首傾げ。

 

「いや、この人前世から肉体的にはかなり丈夫だけど、精神的には妙に脆いところあるので……何度か束さんや千冬姉がやらかしたことあって、それで兄さん心配したり後始末に奔走して倒れたことありますし……」

 

「なんともはや……気をつけとくか……そういうのでたまに男は不能になるしな……」

 

一夏のフォロー?によりとりあえず自重する旨を炎蓮が言ったのでとりあえず収束。

 

「さて……大陸の情勢がそこそこ変わったし、軍もすこし増強できたからな、行動方針そのままで良いか確認だ」

 

炎蓮の言葉を雪蓮が引き継ぐ。

 

「先日先触れが来て、数日後に中央から使者が到着する予定と言われたわ。……お母様が何をやったのか知らないけど、廬江太守継承の認定と揚州牧の地位を約束したんだけど……」

 

「州牧!? 刺史からまた変わったので!?」 

 

驚く雷火。

 

「いや、中央が刺史はそのまま、州牧も追加したみたい。レナルルも中央でそういう勅出したって裏とれたし」

 

「は……? 中央は何を考えて……?」

 

雷火が目を丸くする。

 

「……刺史と州牧の違いわかんないんだけど」

 

「えっと……刺史は前漢にて設けられた役職で、当時は州全体の監視する役職でした。具体的には現地にて拠点を定めずに担当区域を移動しつつ、現地の豪族とかが結託して反乱しないか監視や監査をしていました。ただ……」

 

一夏の疑問に亞莎が始まりを解説。

 

その続きを穏が引き継いだ。

 

「……権限小さすぎてあまり効果ありませんでした。立ち入りの監査とかも人手とか圧倒的に足りないし、その人が賄賂受け取りたくなるほど給金よくなかったので。それらを加味した結果、刺史に軍権を付与し、州の長としての地位を付与したのが州牧の始まりです。もっとも、その後名称を刺史にもどしたり、軍権を外したり戻したりの権限に関して紆余曲折があって、州の長の地位、現地の監視の役目に非公式に私兵をもつ権限持つのが現在の刺史となってます」

 

「現在の州牧の認識は刺史の権限に加えて公式な軍権があり、州牧の軍を編成できる。また、必要なら管轄内の太守の兵を許可なくつかうことができる。……使った場合は中央に事後報告で報告義務があるがな。……っと、州牧については数世代前の皇帝が廃止して、州の長は刺史ということで今までやってきていた。それなのに大体同じ権限持つ州牧を復活させると中央が言い出したと聞けば……雷火殿が驚くのも無理はないということだ」

 

冥琳が丁寧に教えたおかけで知らない組は納得した様子を見せた。

 

「ちなみに州牧の条件として、「生まれた州の牧にはなれない」があるけど、雪蓮様たちが生まれたのは徐州だから、条件に関してないから就任は可能なのよ」

 

粋怜の追加説明は知らなかったのでなるほどと頷く私。

 

「まあとりあえず、官職についてはこんなところ。レナルル、大陸の情勢についてよろしく」

 

「はい。では」

 

レナルルが手を叩くと兵士たちが前つかった大陸の地図と様々な色の駒の入った箱に地図を乗せるテーブルを運び込んで設置が行われた。

 

「まず、黄巾賊関連について。……徐州北部が黄巾賊に制圧され、刺史の陶謙が逃げ遅れて討ち死に。徐州北部を橋頭堡(きょうとうほ)として兗州(えんしゅう)に勢力を伸ばしております。その影響か、大陸各地で黄巾賊が活性化しています」

 

駒を配置しながら告げられたレナルルの言葉に全員がしかめっ面である。

 

火事と大乱は似たようなもので、初動で抑え込めないなら大事になって被害が大きくなることが確定だからだ。

 

「それと平行して、中央は禁軍の派遣を決定。将軍として何進を、補佐として盧植、皇甫嵩を付け、数12万を動員。現在東進中ですが……その……兵士の質はかなり悪いようです。確認してる時点で現地で物資を勝手に徴収したり、徒党組んで現地民に暴行加えたりしてたようなので……。現地の民はもちろん、太守や豪族たちも不満を持ってますね」

 

「練度が低い以前の問題かよ……」

 

炎蓮があーあ、って顔してる。

 

「地方も腐敗してると思っておりましたが、中央はそれ以上でしたか……」

 

孫家の内政官だけど、漢の臣下でもあるみたいなことたまに言っていた雷火が失望の色を見せている。

 

「たぶんあと1月で禁軍と黄巾賊が交戦する。……オチ見えてるから後手に回らないようにしたいわね。……州牧に任命されたあとの動き……。揚州の掌握、刺史で属人*2の劉繇への対応……やることは多いわね」

 

雪蓮がやること多い……とぼやいたあと、ハッとしてレナルルに続きを促す。

 

「他に主だった情報は……袁術に寿春太守の返上の代わりに豫州牧を、袁紹に冀州牧を。……袁紹配下の田豊に空席の并州刺史を、公孫賛に幽州牧を、曹操に兗州刺史を任命する使者が出た模様」

 

「劉表のジジイや益州、交州、涼州の刺史にかんしての使者は出てねえのか?」

 

あれ?と首傾げながら炎蓮はレナルルに確認を飛ばす。

 

「はい。……中央的には黄巾賊が発生してる州の刺史たちに管轄内の賊討伐責任押し付けるための緊急対応みたいなので。あ、雪蓮様の州牧については、刺史の劉繇が名家に擦り寄り、賄賂を宦官に送らないからという嫌がらせも入っているみたいです」

 

「……宦官共が……自分たちの手は汚したくねぇと考えてるようだが……まあ渡りに船だ、しっかり受け取っておけ。 時代の大きなうねりに飲まれないためにもな」

 

「ええ。……とりあえず行動方針の確認だけど基本変化なし。……想定外だけど揚州牧は受ける。それに伴って禁軍と黄巾賊の交戦結果が判明するまでに揚州の掌握と劉繇の対応と領内の黄巾賊討伐を済ませたいところ。禁軍が交戦したあと、中央が泣きついてくるまでは外征なし。 これで大丈夫?」

 

雪蓮は思い出すように予定外を上手く組み込みつつ予定を告げる。

 

「大丈夫だろう」

 

「問題ないかと」

 

「腕が鈍らないように賊討伐や調練を然とやらねばな」

 

「活躍の場がほしいけど、平和がいいから複雑だけどね」

 

冥琳と穏のお墨付きが出たあと、祭と粋怜は軽口叩きながら方針は任せると暗に告げる。

 

「私としても問題ない」

 

「内政官としては寿春復興や他の郡の案件も増えるだろうから人員増加を前倒しで請求させてもらうぞ」

 

「そこはモチロン募集かけてるから大丈夫……多分」

 

雪蓮、最後の一言で不安が増えたぞ?

 

……バビロンやシュピーネにも頑張ってもらわねば……。

 

*1
カーニバル・ファンタズムの『バーサーカー はじめてのおつかい』より

*2
皇帝と同じ祖を持つもののうち、現在の皇帝からかなり親等が離れてる人たちのこと。なお、当時は属人に生活保護みたいなのがあったらしいよ。

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