恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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黄巾党編を前半戦(各地の情報見つつ足場固め)と後半戦(孫家が遠征し、黄巾賊本格的に討伐、他諸侯と面識を持つ)に分割しました。

ここから数話、前編の拠点回の予定です。



『ネロとお出かけ……?』
州刺史の経験を垣間見せる、ちょっと不思議系な少女、ネロのお話……かな?


『疾風のおネイさんのヤキモチ格付けチェック』
ネイちゃんが料理を使って何かをするみたいです。
……でもちょっと抜かってません?


それでは、どうぞ。


第一章 拠点にて
拠点にて その3


『ネロとお出かけ……?』

 

今日は雷火が別件で手が空いてないため彼女の分の仕事を済ませ、追加で幾つか仕事をこなしているとイオンがメイド服でやってきた。

 

非番なので十中八九おねだりと自分の趣味で着たのだろうな……。

 

「あなたー、ちょっと宝物庫から取り出せるものの権限追加してほしいんだけど―」

 

「……? 食料、布類、食器に調理道具、裁縫道具関連、生理用品の他に何か欲しい物あったか……?」

 

……今の会話でなんとなく察しただろうが、私が使っている『王の財宝』の宝物庫から出し入れする権限をイオンに制限付きで与えているのだ。

 

「……」

 

恥ずかしそうに左右見た後、耳元で許可ほしいモノを囁いた。

 

「……何のために?」

 

「後ろとかでその……ね?」

 

イオン、そう言われてもな……。

 

「その手の道具はともかく、薬類は認められん。卿が悪意なくとも、曖昧な取り出し方すると劇薬が出る可能性もある。宝物庫の性質故な……。――どうしてもほしければ、城に新設した医務室のバビロンに頼め。治療という意味なら医術を研鑽してるシュピーネでも良いわけだしな」

 

「むう……」

 

「ちなみに何故薬類の権限を?」

 

「それはレナルルさんの後ろを調教するのに…………あっ……」

 

「本当に何してるんだ????」

 

とんでもない発言が出てきたのでとりあえず簀巻きにすることに。

 

「あなたも手を出さないし、レナルルさんもまんざらでもないくせに動こうとしないし、見てて本当にじれったくて……。私とそういうことは普通にできたけど、初めてを私がっていうのはなんか違うかなって……」

 

「……とりあえず1週間閨出禁な」

 

「やり方間違えたかもだけどあなたのため思ってやったのにぃ……」

 

だばーと涙流すイオンの頬かるく突っついていたら扉が開かれる。

 

「……何してるの?」

 

そこにはネロが居た。

 

「少々悪いことをしていたので折檻してる」

 

「そう……ところで今暇?」

 

「暇にしようと思えば暇に出来る」

 

今残ってる仕事はいずれも期限に余裕があるものばかりだからな。

 

「なら今日はお出かけしない? といっても、娯楽は殆どないから、街中の散歩になるけど」

 

「構わんよ」

 

私が頷いているとうしろから声が。

 

「えっ、私は? もしかして簀巻きの(この)まま放置?」

 

「いや? 既にその縄に拘束効果はない。……藻掻くの辞めればほどけるぞ」

 

「そんなはず……本当だ」

 

立ち上がる音がするが私はそのままネロを連れて立ち去る。

 

「じゃ、旦那様1日借りてくわね。……一人目は無理だったけど、『この世界で最初』は諦めてないから」

 

……天からの授かりものの類は巡り合わせもあるということで……。

 

 

 

 

 

 

 

そのまま私達は城の外を出て、市場に足を運ぶ。

 

「やっぱり廬江は栄えてるわね。他の郡とは大違い」

 

「そうなのかね?」

 

「ええ。……寿春は華北と華南の中継地だからそれなりに栄えてるけど、その立地に胡座をかいて他より商いに関して税が高いの。建業や柴桑は長江で物流を担ってるけど河賊の存在から輸送費がどうしてもかかる。……残りの地域は中央からかなり離れているせいか、人があまり増えないし、モノのやり取りが物々交換に寄ってる。割合については……実際に見たり、数字確認しないとわからないけど、体感7割がそうね」

 

「ふむ……刺史を務めてた経験は伊達ではないということか」

 

「ええ。……でも知ってるだけ。利権やしがらみが多くてそれに太刀打ちできる力も一変させる知恵もなかったから」

 

そういってから私の前に動き、私の顔を見る。

 

「でも、雪蓮たちと力を合わせれば、変えられると思うの。……私の手が届く場所をより良いものにするために、あなたも手伝ってくれるかしら?」

 

「無論だ。私も生きるこの地を良いものにしたいと思っているのでね。……ところでこれは卿の意図したことかね?」

 

路地裏に誘ったネロに問いかける。

 

「私があなたを害する理由、あるわけ無いし、私に殺気飛ばす相手を雇うわけ無いでしょ?」

 

その言葉と共に四方から飛翔する暗器。

 

私は彼女を抱き寄せて跳躍。

 

「馬鹿め!逃場はないぞ!」

 

農民や町民のふりをした暗殺者?連中が追加で毒を塗ったらしい暗器を投擲するので空中歩行して回避。

 

適当な建物の屋根に着地する。

 

「!?」

 

驚く者たちを横目に私は私達と彼らを閉じ込める結界を展開し、同時に言葉を紡ぐ。

 

「――ベイ、1人は残せよ」 

 

「jawohl」

 

虚空から現れた我が爪牙は獰猛な笑みを浮かべた。

 

Wo war ich(かつて何処かで) schon einmal und war(そしてこれほど幸福だったことが) so selig(あるだろうか)

 

空間が軋む

 

Ich war ein Bub',(幼い私は) da hab' ich die noch nicht gekannt.(まだあなたを知らなかった)

 

世界の法則が歪む

 

Wer bin denn ich?(いったい私は誰なのだろう)

 

空間が閉ざされた

 

Wie komm' denn ich zu ihr?(いったいどうして)――Wie kommt denn sie zu mir?(私はあなたの許に来たのだろう)

 

頭上を満たす太陽と蒼天が消え、紅き満月と星あかりが姿を見せる

 

——Sophie, Welken Sie(ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ) Show a Corpse(死骸を晒せ)

 

そして顕現する

 

Briah―(創造) Der Rosenkavalier Schwarzwald(死森の薔薇騎士)

 

――我が爪牙が一人、闇夜の吸血鬼、串刺し公(カズィクル・ベイ)が不敵な笑みを浮かべた。

 

そして屋根から飛び降りたベイは品定めするように暗殺者たちを見る。

 

「――ハイドリヒ卿に相手してほしければまずはオレを倒してからにしてもらおうか。――テメェらみたいな雑魚じゃ、相手にならんだろうがな!」

 

躊躇いのない一撃で近くの一人の心臓を素手で穿つ。

 

「ひぃ!」

 

「化け物!」

 

蜘蛛の子を散らすように逃げる暗殺者たち。

 

「馬鹿だろ。――ここはオレの腹の中も同然だ。どこに逃げてもわかるし――」

 

一人を残して暗殺者が地面から生えた血の槍で串刺しになり、一人が片足を穿たれる。

 

「――槍はどこからでも生やせるからな」

 

片足穿たれた一人を除き、あっという間に干からび、灰となる。

 

「いや……いやああああああ!」

 

「五月蝿え、劣等が……」

 

叫ぶ暗殺者の頭をつかみ、槍を消滅させながら持ち上げるベイ。

 

それに抵抗するように暗殺者は暴れるが、傷つけることもできない。

 

「ハイドリヒ卿、どうしますかコイツ。孫家の連中に渡すんで?」

 

めんどくさそうに確認するベイ。

 

「拷問はマレウスとシュピーネが向いているだろう。――城に連れていけ」

 

「jawohl」

 

そう言うとその暗殺者と共に消え去る。

 

それとともに空が元の太陽の日差しが降り注ぐ青いものへと戻る。

 

「……もしやコレのために私を誘った?」

 

「半分はそう。もう半分は純粋にあなたと一緒が良かったから」

 

「そうか……」

 

うなずいて下ろそうとしたらネロは首を横に振り、私の服を掴む。

 

「……このまま連れて帰れと?」

 

「それもいいけど……」

 

彼女が向いた方を向くと、最近噂になっている連れ込み宿*1が見えた。

 

「………………本気かね?」

 

「あそこ、簡単な食事も頼めるから良いでしょ?」

 

「明日ベッドから起き上がれなくても知らぬからな」

 

「初めてなのに情熱的に求められるのも、わるくないかも……」

 

ネロの言葉に肩をすくめながら、私は連れ込み宿へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

『疾風のおネイさんのヤキモチ格付けチェック』

 

――side ネイ

 

アタシはネイ。

 

前世では料理人*2だったり皇帝*3だったり疾風のおネイさんだったり……プリティーベリーって名前でトップの踊り子*4とかもしてたわ。

 

……今語らなかったことも色々あるけどそれはさておき。

 

今日は非番で、なおかつアイツ……私達の旦那も暇らしい。

 

暇だなーと朝起きたときにぼやいてたら天啓みたいなものが降りてきたの。

 

――旦那の周りに女の子多いし、うまく取り繕う娘が多いらしい。

 

――全力出せれば超新星爆発でもかすり傷らしい旦那ではあるが、女に痴情のもつれで刺されたとなったら夢見が悪いのでは? ってね。

 

ということで東屋でひましてる彼のところに訪れる。

 

「はい、『乙女の焼き餅*5』~。たくさん作ったから、気になる子に焼いてもらいなさいな」

 

「……なんとなく知っているからわざわざ焼くまでもないが……まあうん。感謝する」

 

一抱え分を受け取って宝物庫とやらにしまう旦那。

 

……あ、そういえば……。

 

「ところでレナルルに手を出す予定あんの?」

 

「また何かイオンがやってるのか??」

 

「うん。こっちの裏でこっそり流れてるその……張り子とか鞭とか買ってたし、さっき孫家で作ったっていう地下室借りて、レナルルに話があるって連れて行ったわ」

 

「――前世では違うとは言え、今生では姉妹のはず……。 物議醸し出すから一言言わねばな」

 

そう言うと彼はカップなどを宝物庫にしまって地下室のある西側の倉庫に駆けていった。

 

ナチュラルに傲慢だったりする割に変なところで真面目よねぇ……。

 

っと、まだ餅はけっこう余ってる。

 

「……せっかくだしやってみようかしら、餅会」

 

大広間近くにある予定板*6を見に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……これは何の集まり?」

 

困惑してるのは織斑って名字の姉妹の妹の方……確か一夏だったかしら。

 

かなりある胸の下で腕組みながら首を傾げてる。

 

「お餅拵えたから、振る舞おうと思って。――旦那から醤油に海苔、きな粉に砂糖、大根おろしに変わり種だとチーズやすりつぶした大豆とかもらったから、焼いたあとに掛けたりつけたりしてね。――あ、餅の方はセルフサービスで焼いてちょーだい」

 

織斑姉妹に篠ノ之姉妹に凰鈴音。

 

孫家組だと明命にシャオちゃん、祭さんに亞莎ちゃん。

 

カノンとネロ、ついでにネロが連れてきてた部下5人。

 

「せるふ……さーびす……とは?」

 

「ああ、簡単に言えば自分で勝手にどうぞという意味合いですね。自分で餅を焼き、好きなもので味付けしてとのことです」

 

困惑する祭(+孫家組)に対して、カノンが解説する。

 

「お先に」

 

いつの間にか傍にあった大皿から一つ餅を取って並んでる七輪の金網に乗せるネロ。

 

大きさは……そこまでじゃないのか……。

 

「おや、思ったより膨らまないのですね……?」

 

カノンも餅を焼くけどそこまでじゃないらしい。

 

「え、なんで? 焼く前の3倍くらいになってる!? コレ大丈夫なの!?」

 

振り向くとそこには膨れ上がった餅の姿が!

 

まあデカくなるの見るのが初めてだとそうなるわよね……。

 

「へーきへーき、食べ頃になったら穴空いて萎むから」

 

……織斑妹は要注意っと……。

 

解説入れつつ、他の人のも確認っと。

 

「なんだか焼く人によって、膨らみ方が違うみたい……わっ、一夏お姉ちゃんほどじゃないけど膨らんだ……」

 

しれっと本質見抜いてるシャオちゃんも要注意……。

 

「……これは一体……」

 

篠ノ之姉……なんで膨らんだり萎んだりを繰り返してる?

 

その時の気分次第ってことかしら……。

 

千冬さん、箒ちゃん、鈴ちゃんは……普通……かな?

 

「……外側が少し破れて中の膨らむはずの部分が少ししか見えませんね」

 

「亞莎ちゃんも?」

 

「お主ら、奇遇じゃのう、儂もじゃ」

 

孫家の残り3名は割りとヤキモチとか焼かないのかしら……。

 

「なんか海にいる海月(クラゲ)を思い出しますね」

 

「私のも似たようなものだ」

 

「……なるほど? 護衛隊長殿はそうなのか」

 

「え、何か分かったの?」

 

「フッフッフッ……内緒だ」 

 

「本当に知ってるのかなぁ……?」

 

コッコロちゃん、ジュンさんはけっこう膨らんでて……トモちゃんとクリスさんはそうでもない感じか……。

 

あら、梨晏はそこそこヤキモチ焼きか……。

 

「ねえ、ネイさんは食べないの?」

 

シャオちゃんが不思議そうに、問いかけてきた。

 

「あ、ああ……そうね。アタシも食べないと、あははは……」

 

流石に怪しいか。

 

さてさて、膨れ具合はどうかなー。

 

……前世通りなら、あんまり膨れないはずなんだけど……

 

網に載せてしばらくすると、結構膨れ上がった。

 

……アレ?

 

 

 

 

 

 

腑に落ちないことが多々合ったけど、普通の餅としてみんな思い思いのトッピングとかで満喫した。

 

「ねえ」

 

みんな満足して解散した後、誰もいなくなったのを確認して後片付けをしてたら、後ろから声をかけられた。

 

振り向くとそこには孫家の末娘のシャオちゃんがいた。

 

「――あの餅、ヤキモチの焼きやすさで膨らみ具合、変わるんじゃない?」

 

「! ……さ、さあ、わかんないわねぇ」

 

ごまかそうとするけど

 

「いや、流石にそれぞれが3~4個焼いて、全部1つ目と同じような焼け方したら流石に不自然で怪しいって。――シャオ、ヤキモチというか、嫉妬っぽいところあるし? 祭と明命はそうでもないからなんとなく察し付いちゃった」

 

冷静に告げられて八方塞がり。

 

「――黙ってておくから、私にもあの餅2~30個くらい頂戴」

 

「……何に使うつもり?」

 

「今日来なかったウチのみんなに焼いてもらって、膨れ具合確認しようかなって。――くれたなら、ちゃんと後で結果おしえるから。――お兄さんのお嫁さん候補のヤキモチ焼きやすさとか知りたいって思ったんでしょ? ――シャオなら怪しまれないだろうし……悪い話じゃないでしょ?」

 

……めちゃくちゃ強かねぇ……。

 

「わかった。調味料については旦那に伝えて厨房に置いてもらうから、そのときになったら、そこからちょろまかした感じで持って行って頂戴」

 

「わかったわ。餅ができたらよろしくね。――あ、怪しまれないように、最初の一つだけその餅使いたいから、普通の餅もよろしくね」

 

言いたいこと終わったのか、返事を聞く前に去っていった。

 

……バラされて面倒事になるし、さっさと作って渡しておかないとね……。

 

アタシは肩をすくめて、片付けを続けるのであった。

*1
現代でいうラブホである

*2
とある人の店を事実上乗っ取ってそこで店長と兼任していた。なお、出てくる料理はゲテモノ系が多かった

*3
ここではラシェーラという星の統一国家の長を指す。なるためには特殊な条件が必要。なお、本人はやるつもりなかったが、ある事情によりやる羽目に。イオンに押し付けられたとも、あるべき場所に戻ったとも言う。詳しくは各自で調べてクレメンス

*4
数少ない娯楽特化の都市でテッペン取れてるので実力は間違いないだろう

*5
アルノサージュより。その餅を火にかけた子がヤキモチ焼きであるほど膨らむ面白い性質を持った長方形の餅。ゲテモノ寄りな料理を作るネイが作り出した、普通に食べれる料理の一つ

*6
少し前に旦那が提案し、炎蓮がゴーサイン出し、各自の予定確認のために設置した

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