――side ラインハルト
目を覚ますと満天の星空と――何処かで見たことのある3人の女性の姿が視界に入ってきた。
仰向けに倒れていたことに気が付き、私は起き上がる。
それに対して、3人のうち2人は驚いた様子を見せるが、1人は泰然としたまま、こちらを見ていた。
「……テメェ、流れ星と共に現れたが、ナニモンだ?」
「ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒ。大抵の者はラインハルトと私のことを呼んでいる。何者かと問われれば……迷い人になるだろうな」
ピンク色の髪の女性……孫堅こと、孫文台の問いかけにそう答えると、彼女はこちらに歩いて寄ってきた。
「迷い人?つーことは行く宛も帰る場所もねェってことだな?」
「そうなる」
私の言葉に獰猛な笑みを口元に浮かべる孫文台。
「――なら、ウチに来いよ、歓迎するぜ?」
「穀潰しかもしれんぞ? 大丈夫かね?」
わざとらしくそう問いかけると
「武人のような無駄のねェ動きや目線の動かし方を無意識にできる穀潰しだったら、オレの目が節穴ってことで適当なとこで放り出すさ。それにオレの勘はテメェがオレたちにとって有用な奴って告げてるんでな。生憎外したこと無いから大丈夫だろ」
孫文台は言い切って見せた。
「ならばよろしく頼む。……そちらの女性含め、何と呼べば良いかね?」
私が右手を差し出すと、その手を孫文台は握り
「オレは孫堅、字は文台。真名は
「いきなり真名を!?」
「大殿、正気ですか!」
2人の言葉に鬱陶しいと言わんばかりの顔をする炎蓮。
「真名を誰に預けるのかはオレの勝手だろ。……そういえばお前の場合真名は何になるんだ?」
思い出したように問いかける炎蓮。
「残念だが、真名の文化が無いのでな、預ける真名は持っておらん」
「なら気にしなくていいか。とりあえずオレは真名を預けたから真名で呼ぶ、真名知らねぇ奴、預かってない奴の名前は迂闊に言わねえこと。このあたりとりあえず気をつけとけ。――許してない相手に真名を呼ばれるのは、素っ裸に剝かれてケツ穴まで覗かれるくらいの屈辱だからな。殺されても文句言えねえ。……テメェの場合は殺しても死ななそうだけどな」
そう言いながら、背を向けて歩き出す炎蓮。
「ふむ……気をつけよう」
私もそれに続く。
2人の女性はなにか言いたそうだったが、私のあとについてくる形で歩み始めた。
――side 粋怜
背まである金色の髪に金色に煌めく双眸。
日に焼ける私達とは別世界の住人のような白い肌。
およそ8尺*1という、めったに見ない背丈。
見たことのない服装。
……観察してるうちにと、近頃噂になっていた『金色の髪の天の御遣い』の特徴にそっくりだと気がつく。
偶然か、必然か……。
「……小言の多い雷火とか、蓮華様あたり、何を言うかしらね……」
「なんの相談もなしにあの男を城に入れたことを先ず問い、それを止めなんだ儂らにも飛び火するのは確実じゃろうて……」
「「はぁ……」」
「お前らは外出るときの護衛につれてきただけだから、文句言ったら『テメェが護衛なしでふらつくな言ってただろ!』って言い返してやるからいいだろ」
炎蓮様が耳聡く反応して私たちの言葉にそう言ってくださった。
「……上が破天荒だと、下が振り回されるのは世の常か」
ラインハルトがこちらを見つつそう零す。
「なんじゃ、お主もこういう主がおったことあるのか?」
祭が問いかけると
「あるのは間違いない。――同時に私もそういう時期が有ったのでな、その部下たちに迷惑かけたことを思い出したところだ」
肩をすくめるラインハルト。
「……あ」
「どうした、粋怜。腹でも減ったか?」
炎蓮様の選択肢が相変わらず野性的なものなのは何故かしらね……?
「いえ、ラインハルト……殿に私たち名乗ってないと思いまして」
「そういやそうか」
「反応が軽い……」
炎蓮様の言葉にラインハルトは困惑気味に反応してる。
「こほん。――私は程普、字は徳謀。こっちは黄蓋、字は公覆。私の真名は粋怜。黄蓋の真名は本人から呼ぶ許可もらって頂戴」
「……真名をそんな容易く許して良いのか?」
怪訝そうな顔をするラインハルト。
「人によってまちまちだからな。閨に招く相手以外預けないやつもいれば、飯奢れば預けるやつもいるらしいし。オレのトコの連中は大方オレが預けてること分かれば預けるハズだ」
「それ同調圧力……いや、郷の掟等に口を挟むのは野暮だな」
ラインハルトはそう思考を打ち切った。
「で、祭はどうするんだ?」
「……儂は祭。名と字は粋怜が告げた通りじゃ。好きに呼べ、ラインハルト」
「分かった、よしなに頼む、祭」
平然と敬称なしで呼ぶラインハルト。
「……ところでお前歳いくつだ?」
炎蓮様の問いかけに少し悩んだ顔をするラインハルト。
「肉体の年齢はおよそ28、生きた年数なら100は超えてる……と答えておこうか」
「えっ、どういうこと???」
「(天の御遣いの血は入れられそうか……)手を出したい女いたら相談しろよ? 人妻じゃなきゃなんとかしてやるから」
「炎蓮様!?」
ラインハルトの言葉も謎だけど、炎蓮様の言葉も謎だらけ。
……えっ、もしかして炎蓮様、この人を天の御遣いと断定して、この人の血を私たちに取り込ませようとしてる?
「……気が向いたらな」
「チッつれねぇなぁ。オレでも全然アリだぞ? 旦那居ねぇし。それか娘たちどうだ?年頃のから、幼女趣味に合うのまでいるからよ」
「娘を売るな」
眉をひそめるラインハルト。
「……ま、とりあえず……ようこそ、我が街、そして城へ。歓迎するぞ、ラインハルト」
不敵な笑みを浮かべ、炎蓮様はそう告げたのだった……。