恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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第二章 黄巾の乱と黄金の獣 後半戦
第十五話 遠征前日


――side ラインハルト

 

「――皇帝劉宏の名において、軍権を持つ孫伯符揚州牧に黄巾賊の征伐を命じる。――頭目の討伐できたものにはその功に見合う報酬が用意されている。しかと励め」

 

大広間の梁の上で使者の様子を確認しているが、聞いてる限り、討伐報酬が渋い。

 

どこか一つの勢力、あるいはそのまとめ役だけ……最悪「漢の長は皇帝なので皇帝が受け取る」とか屁理屈で何もなしが有り得そうな可能性まであるので正直「火中の栗」である。

 

――まあ、「禁軍でさえなんとかできなかった賊を討伐した」という実績を手に入れられるのだから、ひと肌脱ぐのはやむなしか。

 

「――降りてきていいわよ」

 

使者が出ていき、居なくなったことを兵士に外を確認させた雪蓮がそう告げたので着地する。

 

「大陸の情勢加味しつつ、遠征の支度する予定なのだけど。――前に2回*1に一応打ち合わせしたけど、それから人増えたり冥琳安静で抜けたりしてるから改めて再編もしたいわね」

 

「では早速現在の大陸情勢を説明します。――ハイドリヒ卿は軍部の情報の取りまとめと遠征についての説明に人事発表お願いします」

 

「(雪蓮に手を出した分権限と責任が激増したんだよな……)わかった。先にレナルルの説明を聞かせてもらおう」

 

私の言葉にうなずいたレナルルが手を叩くといつもの兵士たちが手慣れた様子でテーブルと大陸地図、各勢力のコマを配置していく。

 

……コマについては予めレナルルから配置位置聞いてるなコレ。

 

「現在、徐州は下邳が制圧され、小沛にて陳珪、陳登の親子が禁軍の敗残兵の一部と徐州にやってきた義勇軍を率いてなんとか前線を維持してる状態です。……彼らが倒れれば揚州にやってくる可能性が高いです。ここに救援を向かわせたほうが良いと個人的に考えていますね」

 

指差し棒で徐州の南西部の白いコマと徐州北西部から青州周りに点在する黄色いコマを示しながらレナルルは述べた。

 

「続けて――河北では幽州の公孫賛が北方の蛮族が反乱を起こして南から流入してきた黄巾賊と三つ巴となっており、遠征どころではないようです。あ、たしかそこで何故か盧植将軍と皇甫嵩将軍が見つかり、現在そこで保護されているようです。逆に、袁紹は事実上冀州と并州を支配しているため、并州の兵を冀州と青州の州境に貼り付け、冀州の主力で冀州領内の討伐をしてるため、他の領地の遠征ができるかと思われます」

 

「公孫賛……三つ巴とか運ねぇな……」

 

炎蓮が遠い目をしてる。

 

「――次に、兗州について。徐州北部から兗州に流入した黄巾党はおおよそ討伐されています。また他の領地に細作を放っているようで、こちらの防諜網を掻い潜り入り込もうとしたのも確認されています」

 

「……鼻の利くヤツがいるようだな。――雪蓮、ここの勢力とは顔合わせできる機会があったら積極的に狙ってけよ」

 

「ええ、そうね……っと、続きお願い」

 

獰猛な笑みが親子そっくりだな……。

 

「はい。――といっても他の勢力については特に動きはありません。涼州は馬一族を筆頭の軍閥による統治で安定。益州の劉焉、荊州の劉表、交州の士燮は部下含めて動く予定はなさそうです。また豫州は袁術が統治していますが、汝南の復興優先で動く様子はありません。――ただ、袁術の名代で許昌の董卓が動く可能性があります。ここが動くなら連携できると楽ですが……今のところ細作もそういう動きは確認できないそうです」

 

「動いてて連携できたら運がいいくらいに思っておいたほうが良いわね」

 

粋怜の言葉にうなずくレナルル。

 

「後は中央……司隸ですが、禁軍敗北の責を宦官閥、名門閥が互いの責任となすりつけ合いをしています」

 

「えぇ……(困惑)」

 

「曹操が防壁してなかったら洛陽に黄巾賊がやってきててもおかしくないのに平和ボケしてる……」

 

全員ドン引きである。

 

「おそらく報酬云々の話もこの揉め事で本来各地に赴き、成果を確認する人員の選定ができてないため起きているのかと」

 

「どっちにしろ賄賂とか渡さんと討伐怠けてるとかで上から地位没収されたり下手すりゃ連座の死刑もあり得る。面倒くせぇことこの上ないな」

 

だるいって顔に書いてある炎蓮を横目に、レナルルは締めに入る。

 

「報告としては以上です。……軍備、行軍方針についてはハイドリヒ卿お願いします」

 

「……まず、行軍方針だが、寿春を経由し、北上、曹操領に入ったら東進で徐州へ向かう。その後小沛の前線と合流し、押し返しを考えている。このとき、廬江郡の兵を本隊、揚州で遠征できる残りを後詰として本隊の後を追跡させる形をとる。後詰は兵站の維持と本隊が取りこぼした敵の後始末を担当し、合流した場合は本隊と共に黄巾賊征伐を行う方向だ。……ここまでで問題はないかね?」

 

「良いと思うわ。……続けて軍備周りお願い」

 

雪蓮ノ言葉に私は頷く。

 

「現在、廬江郡の兵力は陸軍4万、水軍1万8千。……北では船があまり使えないのと、操船技術の取得難易度などを勘案し、今回は陸軍のみ3万の動員と考えている。が、長江以南の兵力の輸送がある故、水軍が終始暇を持て余すことはない」

 

私は駒を置きながら説明を続ける。

 

「寿春は復興中のため動員不可。柴桑に2万、建業に1万5千、呉に2万5千の陸軍がいるが、柴桑の1万、建業の5千、呉の1万を動員予定。また、会稽と建安の厳白虎たちにも使者を送り動員可能な兵力が2郡合わせ陸軍3万、水軍1万であることもわかっている。先程陸軍2万を率いて寿春に向かう命令を携えた最速の使者を出したので今日中には使者がその旨を伝えるはずだ。そして廬江の軍を本隊とし、柴桑、建業、呉と会稽建安の兵を後詰と考えている」

 

「誰残して誰出陣を考えてるの?」

 

「留守は炎蓮、ネロ(劉繇)には領内に目を光らせてもらうために確定。蓮華、甘寧には引き続き長江の河賊の調略と討伐、そして長江間の陸軍輸送の指揮のためこれも確定。、雷火にレナルルは内政官であり、兵站管理もある程度任せることになるのでこれも同じく。そしてコッコロ、ジュン、クリス、トモは調査の名目で兵を千ずつ率いて主要な郡城の財政関連の調査。ネイ、カノン、一夏、千冬、穏、シャオ、明命は後詰の指揮のために一時待機で必要なら別途追加で指示予定。箒、鈴、束は冥琳の看病等。私のポケモンに騎士団のバビロン、シュライバー、マキナ、ザミエルを配置し、西が敵対時の対策と平時の治安維持などを担当する」

 

「つーことは残りの雪蓮、祭、粋怜、梨晏、亞莎、イオンと……マイ?にお前の黒円卓とやらの残りが廬江の兵率いて行くわけだな?」

 

「そうなる。何処か問題有るかね?なければ私からの『新型兵器』をお披露目、希望者に配布予定なのだが」

 

炎蓮ノ質問に答えたあとの宣言で、一部を除き目を丸くする。

 

「え? なにそれ聞いてない」

 

「教えてないからな。――指摘なども無いな? 今告げた新型兵器とは、これだ」 

 

指を鳴らし、宝物庫から机に乗った腕時計型情報端末を取り出す。

 

 「……これが兵器?」

 

首を傾げる一同。

 

「ああ。といっても、これで人を殴るなどの凶器として使うのは用途ではない。――『同じ端末を持つもの同士、距離に関係なくほぼ時間差無しで連絡をとったり、情報を文字にして相手の端末に送る事ができる』……といえばその厄介さはわかると思うが」

 

私は、そう言いつつ、端末を左手首に取り付け、認証請求してきたので指紋を登録する。

 

「!!」

 

「……確かにそれなら便利ね。でも誰かに悪用されたりとかは」

 

「生体認証をしてしまえば、認証した者以外時計の用途以外で使えなくなる。それと私の本気の攻撃も一度までなら無傷で耐える変態じみた耐久性をしている。そう水や火にもかなり強く、簡単には壊れんので多少雑でも扱えるのが利点だな」

 

それを聞いた雪蓮は、玉座から降りて、左手首に装着し、一同を見る。

 

「……ならここに居る皆に私から命令するわ。――私達孫家に、彼に尽す覚悟があるなら、この端末をつけ、生体認証をしなさい」

 

その言葉に皆が駆け寄り、端末を取り合うように手にし、利き腕と反対の腕に装着。

 

私を真似て装着した腕と反対の手の指の指紋を登録した。

 

「……では使い方を説明しよう。 これからの説明にない機能の疑問点や使い方忘れた場合、端末に使い方を尋ねるように」

 

予め医務室に居る冥琳とバビロンにも渡していたので、試しに2人に通信の動作確認のテスト相手をしてもらった。

 

……今のところは問題なさそうだが、冥琳の様子は気を配って置かねばならないだろう……。

 

*1
『第八話 対黄巾党 孫家の一手目と来訪者』と『第十三話 サーヴァント召喚と各地の動き』

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