恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

22 / 48
第十六話 遠征開始からの……?

――side ラインハルト

 

総勢3万の兵士たちが並び、彼らの視線は一箇所に集まっていた。

 

視線の先にいるのは――数段高い台の上に立ち、炎蓮から渡された孫家の家宝、南海覇王を手にした雪蓮だ。

 

閉じていた目を静かに開き剣を掲げる。

 

「コレより我らは、略奪に狂った黄巾賊を討伐するため、賊の本拠地である青州に向かう! 遠征部隊、全軍――出撃!」

 

太陽を背に告げた雪蓮の言葉に兵士たちの声が波のように広まっていき、士気は炎のように燃え上がる。

 

そしてソレとともに兵士たちは規則正しい隊列を組み、進軍を開始する。

 

「さて、私達も乗るか」

 

私の言葉に遠征組の将(とイオン)は馬車に乗り込んでいく。

 

「マスター、とりあえず交代で御者かな?」

 

隣にマイが現れて質問してきたのでうなずいておく。

 

「どっちが先?」

 

「今回は……ちょっと上からの呼び出しがあるゆえ、マイが最初しばらく頼む」

 

「上……? とりあえず了解」

 

私は御者台の片隅に座り、目を閉じて意識を手放す。

 

 

 

 

 

 

目を開くと女神がいる白い空間に佇んでいた。

 

そしてその眼の前には玉座のようなものに座る女神の姿。

 

「今朝から呼び出しをかけていたが、何のようだ?」

 

私の言葉に女神は少し困った様子で告げる。

 

「すっかり良い忘れてましたが……貴方が既に出会ってるサージュ・コンチェルト組*1と力技で次元乗り越えてきたIS組以外で別の場所からやってきたらしい存在にそろそろ接触するでしょう」

 

「そうなのか」

 

「はい。――まあその人達は……その……レジェアルの主人公たちにまつわる噂*2みたいな状態なので、彼らがこの世界で死んだとしても、呼び出し元には何ら影響はありません」

 

「……で、私にどうしろと?」

 

「お望みならば食い散らかして結構です。」

 

「そろそろこの槍で神殺しをするべきか……?」

 

「ひえ、暴力反対です! あとまだ用件あるので!!」

 

構えた武器を下ろして続きを促す。

 

「あと外史の管理者のうち、外史を否定するサイドがバーサーカーの――を召喚したのでサーヴァントが全員揃い、聖杯戦争が始まりました。今いる外史存続したい場合は三国分立か大陸統一確定までサーヴァント4騎以上残すか、最後の1騎が自分の契約してるサーヴァントになるよう、うまく立ち回ってください」

 

「聖杯に泥があるような言い方だな?」

 

「そのあたり回答拒否します。かわりに――バーサーカーのマスター以外、現地民or迷い人かつ、この外史においてかなり話のできる人たちなので、その辺うまくできるかもしれませんよ?」

 

言いたいことを言い終えたのか私は無理やり意識を切断させられた――。

 

 

 

 

 

 

「起きた?」

 

目を覚ますと隣で手綱を握るマイがいた。

 

「ああ。 ……いいニュースと悪いニュースがある」

 

「……悪いニュースは?」

 

「明確に敵対する勢力に、卿以上の実力のサーヴァントがいることが確定し、先程サーヴァントが揃ったので聖杯戦争開始した。後ついでに聖杯が汚染されてる可能性がある」

 

「サーヴァントとしては強い相手と戦えるからうれしいけど、マイ=ナツメという一人の存在としては死にたくないから確かに悪いニュースだね。……汚染されてるなら受肉しちゃってサーヴァントとしての戦い楽しむの諦めて人生エンジョイに切り替えようかなぁ」

 

複雑そうな顔をするマイ。

 

「いいニュースはバーサーカー以外のマスターが対話し易いらしい。――うまくやれば協力体制を作ってバーサーカーだけ脱落させて戦況維持ができるかもしれん」

 

「聖杯汚染疑惑があるのを考えたら最高のニュースだね」

 

うんうんとうなずくマイ。

 

「問題はバーサーカーだが……アレだからなぁ。……視えすぎる眼と全盛期じゃない肉体で戦車をサーベル2本で破壊するあたり、生半可な結界とかでは強行突破しかねん」

 

「ならルーンの知識あるからソレ使ってなんとかできないか試してみるかな……」

 

連絡からいつの間にか雑談なっていた会話を続けながら

 

この後訪れる戦乱の足音を肌で感じていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特になにか起こるでもなく、

 

寿春が目と鼻の先まで来た頃に、寿春外縁部に先行し、駐屯地を設置していた兵の1人が駆けてきた。

 

「どうした?」

 

通信端末で馬車内の面子に通信をつなげる。

 

「喧嘩です! 片方はヘビ女含め6人、もう片方は女2人です! 我々では歯が立たず……救援お願いします!」

 

ヘビ女……?

 

「……私が行こう。マイは御者を中の面子から交代してもらったらついてくるように」

 

私はそのままUターンした兵士の後に続く。

 

途中で兵士がへばった(距離からしてやむなしなのかもだが)ので、脇に抱えて案内させつつ私は目的地まで驀進したのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

寿春外縁部の南門前で舞うように闘う銀色髪の青年剣士と黒髪アシンメトリーツインテールの女ガンナー。

 

「――」

 

私は兵士をその場において、2人の中間に飛び込み、攻撃を受け止める。

 

「!?」

 

「サーヴァントの攻撃を受け止めた……?」

 

「しかも見たところ無傷って……」

 

驚きというのは、思考に空白を与え、リセットさせるのに丁度いい。

 

「……さて、揚州の統治を任された孫策の家臣として、お膝元での私闘……兵士の静止命令無視した乱闘騒ぎは本来なら喧嘩両成敗にせねばならん。……が、今停戦するならお咎めなし。希望するなら領外への送り届け、あるいは監視付きだが領内での保護を約束しよう。停戦か、継戦か……懸命な判断をすると良い」

 

そう告げながら軽く圧をかけると誰かが息を呑んだ。

 

そして赤毛のツインテールの娘が口を開く。

 

「セイバー、停戦よ」

 

「わかった」

 

素直に赤黒いオーラをまとった剣をしまう青年剣士。

 

「アーチャー、ウチらも停戦ね」

 

「あなたがそう言うなら、構いませんけど……」

 

金髪の娘?の言葉に両手の銃を手放して消し去るアシンメトリーツインテールのアーチャー。

 

「おお……」

 

「流石だ……」

 

手が出せず遠巻きに見つつ、野次馬を避難させてた兵士たちの声を聞きつつ、私は続ける。

 

「私はラインハルト。ラインハルト・トリスタン・オイゲン・ハイドリヒだ」

 

「私はランサーのマイ=ナツメですっ!」

 

しれっと現れたマイに身構えるセイバーたちだが私はそのまま続ける。

 

「さて、卿らの名を聞かせてもらおう。――ああ、サーヴァントの二人の真名は無理に聞かぬよ。――私の管轄外で矛を交えるときに弱点を突かれる可能性があるだろうしな」

 

すると赤毛のツインテールと白い眼帯をつけた娘が口を開く。

 

「花園ゆりね。――あいにく現地人じゃないから、真名とかないわ」

 

隣りにいた金髪碧眼で、下半身蛇の裸族である娘がめちゃくちゃ品定めするような顔でこちらを見ていた。

 

「私は邪神ちゃんですの」

 

「アタシはミノス。よろしくな」

 

そして『ビーフ100%』と書かれたTシャツをきた牛の角が生えている青髪の娘が元気そうに自己紹介。

 

「あ、私はメデューサです」

 

その反対側の隣であわわしてる紫髪のアホ毛が被ってる麻袋から出てる娘がこちらを見てペコペコする。

 

「……セイバーだ」

 

「エーリスと申します」

 

銀髪の青年剣士と、紫髪の巨乳メイドがそれぞれ挨拶。

 

セイバー側の自己紹介は確認した。

 

「ウチはブリジット。よろしくお願いします」

 

金髪碧眼の少女?が笑顔を見せる。

 

「私はアーチャーですわ。――弓兵なのに銃を使いますが、アーチャーらしいですわ」

 

アシンメトリーのツインテールの娘が主を見つつ若干何か言いたそうな顔でクラスを名乗った。

 

「さて、自己紹介も済んだことだ。――停戦の交換条件の確認と行こう。――監視付きの保護か領外への移動か……どちらを希望かね?」

 

「私達は――」

 

「三色昼寝と小遣い付きVIP対応で保護お願いしますの」

 

ゆりねの言葉をぶった切って条件つけての保護を要求する邪神ちゃん。

 

「流石に図太すぎない??」

 

マイが困惑するのを横目に、ゆりねが邪神ちゃんをぶん殴り、意識を刈り取った。

 

「働き口があるならそこで働いてそのお金で生活しますので」

 

「ふむ……妥協案として、三食に衣食住の保証……食事の調味料類の水準は卿らの水準とは幾分か見劣りするだろうが他の質と量の保証はする。かわりに嗜好品の類は自費。そのための働き口はなんとかしよう。こちらからは孫家の不利益になる行動をしないことを約束してもらう。――悪い条件では無いと思うが、どうかね?」

 

「……そちらがよろしければ?」

 

ミノスとメデューサ、セイバーとエーリスを見て確認したゆりねが代表して答える。

 

「ウチらもその条件で保護してもらえます?」

 

ブリジットがアーチャーとともに近寄ってきて確認をしてきた。

 

「無論だ」

 

「大丈夫です? またイオンちゃんから勝手に候補増やしてとか言われません?」

 

「私からは手を出さんよ。――私からはな」

 

マイの指摘を詭弁でのらりくらりしてから

 

「――卿らを歓迎しよう。――卿らが袂を分かつまで、食客として可能な限り手厚くもてなすつもりだ」

 

私はそう言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言うまでもないと思うが、勝手に食客を抱えたことに雪蓮とイオンから小言を言われた。

 

正座させられて平謝りしてる私の姿みて誤認識してくれれば楽だが……たぶん一人くらいしか引っかからないだろう……。

 

 

 

 

 

――side 花園ゆりね

 

「あの金髪が私達の衣食住保証してくれるお金持ち。その金髪があの二人には頭が上がらない……ひらめきましたの!」

 

隣で邪神ちゃんがなにやら馬鹿なこと考えてるけど、彼はそう認識されるのも織り込み済みでわざと道化を演じてるわね。

 

ふと視線を感じてその視線の元へ目を向ける。

 

そこにはブリジットと先程名乗った人がなにやら心配そうな顔をしてる。

 

ああ、邪神ちゃんが変なことしないか心配してるのかしら。

 

大丈夫。

 

――迷惑かけたなら、ちゃんとお仕置きするし。

 

……何故か少し距離を取られた気がするわ……。

 

 

 

 

*1
イオン、ネイ、カノン、ネロ、レナルルの5人

*2
状況証拠からダイパの時代からアルセウスに呼び出されたとされるが、アルセウスによって複製されたため、そもそも現代に帰る場所が無い存在という噂




ざっくり人物紹介

ブリジット
『ギルティギア』シリーズの登場人物。
ヨーヨーを武器に戦っている。
本作ではアーチャーのマスター。現時点の性別は自認が女というトランス女性。
ハイドリヒ卿の餌食になるのかは……ナオキです。

アーチャー
赤と金色のオッドアイ、長さの違う黒髪のツインテール。
古式な二丁拳銃を使うのが特徴。
マスターの性別についてはひとまず静観している。

花園ゆりね
邪神ちゃんドロップキックの主役の一人。
この世界でも武器持たせれば武将の中堅くらいまでとやりあえそう(マイ談)とのこと。
明確に胸がない勢なのもあるのか、ブリジットを仲間と思っているかもしれない(なお)

邪神ちゃん
寄生先を確保した対人系幸運値高めの悪魔。
根っこにお人好しなところはあるが、基本クズなのは変わらず。
あいにくこの世界にパチンコは無いので金を溶かすことはなさそうだが……?

ミノス
邪神ちゃんの友人である悪魔。
なまじ実力があるせいで黄金の獣のヤバさに気がついてて邪神ちゃんが変なことしないよう、見張らなきゃという使命感を獲得したらしい。

メデューサ
邪神ちゃんの友人である悪魔。
保護してもらえて良かった反面、邪神ちゃんに依存されない気がしてて歪んだ願望が満たされないことを危惧してるところもあるらしい。

セイバー
3つの未来を歩み、試練を乗り越え本物の「咎人の剣“神を斬獲せし者”」を獲得した青年。
エーリスにすごく気に入られている。

エーリス
セイバーのことをすごく気に入っている紫髪巨乳メイド。セイバー召喚に割り込み、一緒に召喚された。その正体は……自分の目で確かめよう。
最近首輪とリードを差し出して自分の首につけてほしいとお願いしたらセイバーに逃げられた。
噛み癖があるらしくセイバーの首に度々噛み跡がついている。
なお、プライドからか狂犬病の予防はちゃんとやっているらしい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。