――side ラインハルト
兵士に先導されてやってきたのは、劉備、関羽、諸葛亮と……白い饅頭みたいな三等身の少年だった。
配置としては長机の短辺に雪蓮と私達、反対側に劉備たち。
私達の右側に曹操たちがいる配置だ。
「……」
「気になる子……って目じゃないわね、どうしたの?」
雪蓮の言葉に肩を竦める。
「なに、同じ催しの参加者を見つけただけだ」
「っ!」
「……」
少年がわずかにたじろいぎ、曹操が観察するように私達を見ているが、私はそれを無視する。
「すまない、話を進めてくれ。必要になるまで口出しせぬ」
私がそういうと、雪蓮がため息まじりに司会進行をしていく。
「とりあえず自己紹介してくわね。 私は孫策、この軍勢の長扱いされてるけど、そこの曹操と大体兵数同じらしいからそこよろしく。彼はラインハルト。私の旦那。部下の太史慈と呂蒙よ」
「紹介された曹操よ。こっちが部下の夏侯惇と夏侯惇、荀彧と曹洪」
「わ、私は劉備です。こっちが義妹の関羽、こっちが諸葛亮に、キャスターです……」
「……で、義勇軍の長が何の用かしら?」
「……その、義勇軍の台所事情……特に兵糧方面が厳しいので、援助いただけないかなって……」
「「は?」」
雪蓮と曹操が息揃えて疑問符を浮かべた。
「……」
荀彧と曹洪が小声で情報交換を始める。
亞莎と梨晏がこちらにアイコンタクトしてきたので『物資に余裕はある』と返しておく。
「援助ねぇ……してもいいけど」
「本当ですか!?」
雪蓮の言葉に飛びつく劉備。
しかし諸葛亮とキャスターの表情は険しい。
「何をそっちは差しだせるのかなーって」
「え?」
呆然とする劉備に対し、説明するように曹操が口を挟む。
「1つ、貴女と私たちは初対面。いきなり援助してと言われても、援助するに足るかとか、それぞれの判断基準を満たしてるのか判別できない。2つ、軍隊は歩く胃袋なんて言われてるから兵糧の管理とかかなり気を使わないといけないの。そこに何人分を何日間分……『正確にどれだけ必要なのか』わからないのにホイホイ出したとして、万一補給遅延とかで自軍が飢えたら本末転倒でしょう?3つ、それらを加味して、『初対面同然の相手に痛い支出するなら、それに見合うものがないとやってられない』ってことになるのよ。――理解できたかしら」
「……」
「ちなみに私だったら『食い扶持の確保を対価に私の旗下に入ること』になるかしらね。――私利私欲が無く、賊討伐したいと思うなら、最善だと思うけど」
「それでは……!」
関羽が口を開いたが諸葛亮が止めた。
「……アタシの場合はどうしようかしらね……何が良いと思う?」
雪蓮がこちらに話を振ってきたので、私は肩をすくめる。
「立場的にも物資的にも、曹操と卿の立場と手札はそう変わらん。故に曹操の案が卿視点でも最善にして安牌だ。……なので手札の数と量が違う私が提案するとしようか」
紙に条件を書き、4分割してそれぞれの手元に放る。
「4人それぞれの別の条件を提示した。全員が条件を飲むなら『同行中の劉備旗下義勇軍の兵糧の全負担及び兵数分の武器防具の支給し、成果に応じ報酬を用意する』。悪い話では無いと思うが……ああ、キャスター。先にいうが免罪符程度でこの契約は踏み倒せんからな」
「!?」
目を見開いてこちらを見るが私はそのまま続ける。
「……家政婦、孫悟空、あとは今の姿の世界線を識っているし、本来の世界のことも少しだけな。――返事はいつでも構わんが、義勇兵たちが餓える前に決めることをおすすめしよう」
「ちなみに何書いたの?」
雪蓮に言われると思って手元に用意してた写しを放り投げる。
「こっち*1はまあ順当。こっち*2は……ふーん? こっちの方*3は……ある意味一番簡単で難しいわよね。 こっち*4は……うわ、コレ……ん? ……あー、はいはい、そういう……意地が悪いわねぇ」
読み終えて苦笑する雪蓮。
「――私がこの条件突きつけられたら、4人の条件全部ひっくるめても『受ける』わよ。ここまで破格の条件出してくれるところなんてまず無いし、最良の好機ですもの。……というか、対価についてはいずれも妥当だし、『そういうこと』考えてるならこのくらいの自尊心削られることや現実に向き合えなきゃやってられないわよ?」
「……」
4人はお互いを見合う。
「すごい条件気になるんだが聞いてもいいか!?」
「姉者、空気を読め!」
「気になったのは事実ですし……」
「(私も気になってたからよくやったわ猪武者!)」
「(後でお仕置きしないと……)」
夏侯惇、夏侯淵の漫才っぽいノリの横で曹洪がたしなめ、荀彧がガッツポーズしたり、曹操が呆れ顔をする。
「……何、簡単だ」
私が条件(キャスターについてはぼかした)を告げると、
「……私としては諸葛亮の条件が一番厄介ね。関羽の条件も屈辱的ではあるけど……?」
「……なかなかに意地悪な条件が多いわね」
曹操は後半で気が付き、荀彧も険しい顔する。
「ふむ……支援者に殴りかからないのは普通のことでは?」
「何かしら理由があるのだろう……」
「むしろこの条件そこの猫耳に全部飲ませますのでウチの軍でもやってもらえませんこと?」
夏侯惇が首を傾げ、夏侯淵が補足する。
ついでに曹洪が閃いたとばかりにふっかけてきた。
「相手に合わせて条件を変える故、卿らに支援するならもっと吹っ掛けるだろう」
「まあそうよね。……で、答えは決まったかしら?」
曹操は私の言葉に肩をすくめてから、劉備たちの方を向いて問いかけた。
「……そもそも、この約束を履行してもらえるかどうか」
私は指を鳴らし、予めあちこちにちらしておいた現場猫の一匹を利用して義勇軍側に居た個体を使い宝物庫を展開。赤いカーペットの上に食料の山に武具を配置する。
すこし浮いた状態で配置したので軽く振動がこちらまでとどく。
「物資を用意した。卿らの陣地の側に行くと良い。……義勇軍が手を触れた瞬間契約を締結したと見なす故、勝手に触れぬよう、通知することをおすすめするがね」
私の言葉に4人は天幕を飛び出す。
「せっかくだし、見る? 彼の個人資産の一端」
「……ええ」
私達も義勇軍の陣地側に移動することに。
――side 曹操
私達が義勇軍の陣地側に訪れると、そこには複数の蔵が載せられそうな巨大な赤い敷物の上にのった、食料の山に武具に矢などの消耗品。
「華琳様……どうやったのでしょう」
「さあ。……1つ言えるのは彼がこれだけの物資を用意できる手段と財力があるってことね」
春蘭の疑問に私はわかることだけ伝える。
「味方なら心強いですが、敵に回られたら……」
「今のところは味方よ。……それに彼は基本的に興味がなければ傍観者でいるみたいだし、積極的に動くときは……まあ滅多にないと思うわ」
桂花の懸念はもっともだけど、どうしょうもないと告げる。
……あ、義勇軍の兵士が、勝手に武器を手に取り始めたわね。
関羽たちの静止を聞かないあたり、練度は知れてるわね。
ラインハルトが義勇軍の将たちの所に行ったわ。
「……なにやら揉めてますが、止めますか?」
「結果は見えてるわ。今はそれより先にやることあるでしょ?――孫策、そちらの進軍方針確認させて」
「ええ。こちらも確認しようと思ってたの。早速すり合わせしておきましょ♪」
……孫策とラインハルト……油断できないわね……。