――side ラインハルト
少々ごたついたが、劉備軍との契約は締結。
義勇軍は台所事情を気にしなくても良くなった。
代わりに――
「……私は何をすればよいのでしょうか」
(孫家全員いる状態の)馬車の中にて、北半球が露出してるすこし際どいメイド服を着た関羽が私の隣にいる。
「ふむ、とりあえずお茶を入れてもらおうか。イオン、厨房の使い方を頼む」
「はぁい。関羽さん、こっちね」
そういって関羽をイオンが連れて行く。
すると亞莎が私の座るソファーの隣に座って、据わった目で問いかけてきた。
「……ラインハルト様、何故あの女を?」
「亞莎さん?なんかいつものおとなしめおどおど雰囲気はどこにいったのかしら???」
雪蓮が亞莎の変化に困惑している。
「いえ……何故かあの女をみてると……あの女がラインハルト様の隣にいるのが我慢できなくて……」
「(原典因縁補正か……?)亞莎、夜『もう一つの馬車に』来い」
「……! はいっ!」
機嫌が良くなるのを確認してると、何故かガスマスクつけたイオンと不穏な煙を上げてるカップをのせたお盆を持つ関羽がやってきた。
「……お茶を用意いたしました」
後ろでイオンがバッテンマークを手で作ってるが……。
「ありがとう」
私はためらわずにお茶を受け取り、一気に飲む。
内蔵がいくつか破裂する音がしたり、口に血がせり上がってきたが無理やり抑え込む。
飲み込みきれずに口の端から垂れてきたので手で拭う。
「ラインハルト!?」
「ラインハルト殿!?」
「ラインハルト様!? ――貴様毒を!」
亞莎たちが立ち上がろうとしたのを手で抑える。
「……料理などは経験あるかね?」
「いえ……あまり……」
お茶がこの身体にダメージ与える劇物になる時点で相当なヤバさだが、一部常識が通用しない世界なので是非もなし。
「……誰かに師事を受け、問題ないと言われるようになるまで料理などは1人でしないこと。これは個人的な約束だが……約束してもらえるかね?」
「……は、はい……」
言わなかったら亞莎あたりがブチギレて攻撃しそうだったのもあるだろうが、関羽は私との約束に素直に頷く。
「出されたものは基本いただくのが私なりの流儀ではあるが……水銀や爆発物、生半可な猛毒さえ通用せぬ私が飲食でここまで負傷したのは今までを通じて初めてだ。ある意味誇っても良いかもしれん」
「……ラインハルト様、大丈夫なので?」
亞莎がお腹あたりペタペタさわってるが無自覚か?
「案ずるな……あと半刻(1時間)あればもとに戻る。……関羽」
「は、はい!」
私は宝物庫からいくつか本(同人誌くらいの薄さ)を取り出し、リストと宛先を記載する。
「この本たちを卿の所に届け、この一覧に宛名がある場合はその相手に、居ない場合は相応しいと思った相手に渡したまえ。ケホッ……読んだ感想をできたら書簡に書いて返してもらってくれ。渡してから返すまで自由にしてていい。ただし服はそのままで、汚損した場合は取り替える故こちらに来るように。わかったかね?」
「承知しました」
そういって本を持って馬車を出ていく関羽。
私はそれを見届けてから、宝物庫から数本のポーション類を取り出して無理やり飲み干す。
「――久しぶりに死を感じた」
「「「そんなに!?」」」
雪蓮とイオン、マイが軽く飛び上がる
「今のうちに始末したほうが良いのでは? ……ラインハルト殿を負傷させられた時点で相当稀有な存在なんでしょ?」
粋怜が険しい顔をする。
「……今こそラインハルト様たちから学んだ暗殺術を見せるときでは?」
「気持ちはわかるがラインハルト殿は喜ばぬというておろうが」
「そうそう、だからその物騒なものしまおうね……!」
亞莎を祭と梨晏で抑え込んでいる。
「とりあえず、だ」
私は意識切り替えさせるために手を叩く。
そして端末を使い、全員と通話状態にする。
軽く先程までの経緯を説明をしてから
「――劉備の勢力はいずれ無視できん勢力になるだろう。……先の援助はそれを見越した投資だ。……あと、大陸を1つの国が治めるには少々大きすぎると考えている」
と告げる。
すると冥琳が口を開く。
『つまりお前は漢が滅んだあと、天下を二分……あるいはそれ以上の分割で治めるのが良いと見ているのか?』
『確かに北は1年の半分以上寒いし南は年中クソ暑な環境だ。同じ括りにするにゃ、ちときつい。いっそある程度同じ環境の連中を国って形で括って相互監視させておけばなんとかなる……と?』
炎蓮が納得しつつも、問題点があるだろと言う声色で締める。
『互いに牽制するだけならまだしも、戦争に入ったら泥沼になりそうなのが問題点でしょうか?』
「そうなるならそれで構わん。栄枯盛衰、形あるものはいずれ滅びるのだ。無理に統一し、腐敗して内側から破綻し滅びるか、相互監視が崩壊して野心の焔が自他を焼き尽くして滅びるか、その程度の差でしか無い」
私がそう切り捨てると、少し考えるような素振り見せてから雪蓮が口を開く。
「……蓮華はどっちが良いと思う?」
『姉様? 何故私に話を振るんです?』
「だって、私帝位とか王位に興味ないし、将軍やってるほうが性に合ってるのよ。シャオも私寄りだし」
『……大国を治めて毛色の違う連中の反発に頭悩ませるくらいなら、徒党組まれなければ自衛できるくらいの勢力に収まるほうがマシに思えるわね』
「ならそうなるように誘導してく方針で。詳しくは復帰したら冥琳、それまではラインハルト筆頭に穏、亞莎、レナルルを中心に知恵絞ってちょうだい」
言質取ったと雪蓮が方針変更を宣言。
『え、私の一言で方針変更して良かったので?』
「いやだって、ある程度形になったら家督ぶん投げて武官の統括の地位に収まって悠々自適したいし」
『……さ、最低だこの姉!』
『いや、雪蓮お姉様の行動方針ずっとこうだし』
蓮華の言葉にシャオがツッコミをいれる。
『とりあえず、こっちからの連絡は以上ね。他連絡ある人は?』
雪蓮が話をぶち切り、確認をする。
『あ、こっち炎蓮。黄祖のヤツがちょっかい出してきてるからぶん殴りに行く。あ、ラインハルト。カノンとネイ、ルサルカ連れて行きたいんだけど』
「構わん」
『あんがと。……蓮華と思春、カノン、ネイにルサルカ連れて水軍でぶん殴ってくる』
「……ちゃんと帰ってきてね?」
『死ぬときゃ死ぬが、まだその時じゃねぇからな』
雪蓮は『知っている』側だからこそ、心配してるようだ。
……まあマレウスがいるのだからしくじることは無いが。
「他にいる?」
『レナルルです。山越の主だった長3人が近いうちに来るとのこと、雪蓮様が居ない場合は炎蓮様、蓮華様、小蓮様の順で名代として対応する予定です』
「なんか気が変わったのかしら……とりあえず了解」
首かしげる雪蓮。
私も情報が足りんので首を傾げるのみだ。
『次、シャオだけど、カノンとネイお母様が連れてくみたいだから代わりにザミエルさんとマキナさんを後詰部隊に連れて行っていいかしら?』
「マキナは廬江から動かしたくない。代わりにヴァルキュリア……ザミエルの補佐が得意な者を回す。半日以内にそちらに付く故、それを連れて行ってくれ」
『はぁい』
「他にない?……なさそうね?とりあえず突発的招集は以上。解散」
雪蓮の言葉と共に私は通信を終了した。
私はヴァルキュリアを呼び出す。
「呼ばれて飛び出て電撃バチバチ! 皆の戦乙女、ベアトリス・キルヒアイゼンでございますっと、何用ですか、ハイドリヒ卿」
金髪ポニテ*1に碧眼の軍服に身を包んだが娘が姿を見せた。
「ザミエルの所に向かい、指示を仰げ。位置情報はこの端末に入っている」
私は端末(耐電仕様)を渡して命令を告げると
「では早速行ってきます!あとカイがドバルカイン化しちゃったのでできたら元に戻していただけるとありがたいです!では!」
ヴァルキュリアは言いたいこと言って去っていった。
一段落したしおやつでも食べるか。
「……さて、おやつに胡麻団子でも作るか」
「あ、手伝います」
亞莎が一番に手を挙げる。
「私も手伝っていい?」
粋怜も手を上げた。
「……粋怜って家事できたっけ?」
「儂も記憶にないんじゃが???」
「外野は黙ってて。これでもできるから」
雪蓮と祭の言葉に粋怜は噛みつく。
「まあ、マスターが見てるなら失敗することは稀だし……」
「寧ろ料理下手なら手取り足取りしてくれるから……もしかしてそれ狙い?」
マイとイオンがフォロー?しつつ何かを察したらしい。
「そそそんなことないし!」
「……とりあえずつくっていこうか」
胡麻団子の出来具合だが、亞莎はプロ並み、私も同じく。
粋怜は普通以上だった。
「お、お邪魔します……」
「よく来たな」
もう一つの馬車にやってきた亞莎。
「えっと、どちらに座れば」
「ここで構わんよ」
寝台の縁で私の隣を示すと、彼女は借りてきた猫みたいに緊張しつつ、私の隣に来た。
「……ラインハルト様に見いだしてもらえたおかけで、阿蒙と言われていた無知なあの頃から変わることができました。本当にありがとうございます」
「私が見いだせずとも、いずれ誰かが見出していただろうがね」
「それでも! 見出されたとしても文官や軍師の才を見出されたとは思えません。……私にここまでしていただいて、本当に……感謝していますし、お慕いしているのです」
「私利私欲のために卿を使い、孫家を裏から操るために卿を使ってると思わなかったのかね?」
「それを考えているなら、冥琳様や雷火様を篭絡した方が早かったですし、雪蓮様や炎蓮様と関係を持った方がよほど効果的です。……揺さぶりを見破れるくらいには、私も交渉の手解きや書物での勉強で賢くなったつもりです」
亞莎の言葉に成長を感じ、頷く。
「卿のことをすこしばかり娘や弟子のように見ていたようだ。――だが卿も1人の女。手折るのが私になるが、本当に良いのだね?」
「はい。……私の初めてをラインハルト様に捧げられて、とても幸せです」
疲れ果て眠っている亞莎を見つつ、私は部屋にあるクローゼットを開く。
そこには目が点になってる粋怜が居た。
「……あ、あはは……それじゃ」
逃げようとしたので捕まえ、雪蓮と祭に連絡する。
「粋怜が居たが、これは宣戦布告と取ってよいだろうか」
「そんなつもりは」
『『良いと思う』』
「う、裏切られた!?」
ガーンとショックを受けてる粋怜を横に雪蓮たちが理由を述べる。
『いやだって、いつの間にかいないと思って調べたら、そっちにいたから……』
『今宵は亞莎の番、しかも初めてなんじゃぞ? それを知ってて覗き見したんじゃからなにされようと文句言えんじゃろ』
それはそう。
『……あ、閃いた』
「嫌な予感するんだけど!」
『――確か映像記録できる道具あるのよね?それ用意しといて。私と祭……え、マイにイオンも? ……2人も来るらしいからよろ』
言うだけ言って雪蓮たちの通信が切れた。
「……あの、救いとかは」
「あると思うかね?」
「デスヨネー」
今夜は徹夜みたいだ。
――side ???
桃香様の名簿作りを手伝ってる折、墨が撥ねていたらしく、寝る前に気がついた。
そのため、服が汚れたので取り替えに来たのだが……。
「あれが……いや、本でさえ一刻は異常と聞くのに……!」
中身が外見より明らかに大きい馬車の中であの男と呂蒙が致していたことを見てしまい、入るに入れず、馬車の外で頭を抱えていた。
偶に終わったか様子見してるが中々終わらず、終わったと思ったらもう一つの馬車(よく見たらこちらが昼に出入りしたものだった!)から孫策たちが出てきた。
こちらに向かっていたので馬車の下に隠れる。
「流石に覗き見、しかも初めての娘のはだめよね」
私が覗いてるのがバレた……!?
いや、それなら何故もう一つの馬車から孫策たちが出てくる!?
わけがわからない!
混乱していると、
「もし関羽とか言う娘が服取り替えにここに来て覗いてたらどうするんじゃ?」
鼓動が止まった気がした。
と同時に覗いてるのは私以外にも居て、そちらが見つかったことに安堵した。
どうやって隣の馬車から情報を手に入れたかわからないがそれはあとで考えればいい。
「そんなこと有ると思う? 夜もかなり遅いのよ? ……でもまあ、もしそんなことあったなら……」
息が詰まった気がする。
「――彼に手籠めにさせるかしら。……元未亡人で自称性豪の旦那相手でも夜の方淡泊だったレナルルが欲しがるようになるくらいの手管よ?生娘じゃもう忘れられなくなると思うわ」
「そういえば旦那様にレナルルさん未亡人って言ってなかった。……まああの男はろくでなしの穀潰しだったし、知らない忘れた方が幸せだから良し!」
そう言いながら馬車の中に入っていく孫策たち。
………………明日改めて服の取り換えをお願いしよう。
また覗き見したいという、あるまじき衝動をなんとか抑え、私は自分の天幕に戻ることにした。
……覗き見した後ろめたさ、打ち明けたら楽になるだろうか……。