恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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思った寄り話が膨らみました。
ではどうぞ。


第二十一話 黄巾党迎撃戦(小沛防衛戦) 準備編

――side ラインハルト

 

現場に駆けつけると、北側城門の外に雪蓮たちが軍の一部を展開させている。

 

イオンも指揮を何故か取っていた。

 

「あなた!」

 

イオンが私に気がつくと抱きついてきた。

 

「私も前線に出る。城に収容する故、待っててくれ」

 

「……っ! ネイちゃんやカノンさんなら一緒に戦わせてくれてたんじゃないの……!」

 

「ああ」

 

「……悔しいなぁ……どこでも、貴方の隣にたちたいから。……でも我慢だよね」

 

「……1つ方法はある。だが残酷にして血にまみれた道だ。……後に詳細を教えるが……できればその道を選んでほしくない」

 

私はそう言いつつ、彼女を城に収容する。

 

「ラインハルト!」

 

雪蓮が駆け寄ってきた。

 

「作戦は聞いている。城の耐久と全員入場状態を考えればやむをえんが」

 

敵は東から進軍中してきている。

 

順当にいけば現在一番被害の大きい東門に最初に貼り付くと予想される。

 

対してこちらは北側に孫策軍、南に曹操軍を一定数だして城沿いに貼り付けておき、敵が迫ったら一気に残りの出陣と共に展開して、現代で言う鶴翼の陣を展開。

 

敵からすれば急に敵が増えたように見えるのでその動揺する隙を狙い、包み込む様に包囲。

 

城に突撃するなら小沛の兵と劉備軍が城の城壁と城門を使い防衛、逃げるなら逃げ切れなかった敵を包囲殲滅。

 

包囲殲滅後、魚鱗の陣で中央から正面突破と同時に曹操軍の騎馬隊で後方撹乱ではさみ撃ち。

 

騎馬隊撤退後、再度鶴翼で包囲殲滅を狙い、殲滅できれば上等、撃退できれば良しという作戦だ。

 

混成軍で練度などにムラがあると考えた上、できる限り役割分担出来る案がこれらしい。

 

「あ、そういえば小沛(ココ)、形式的だけど劉備軍の下に入るって」

 

「……ベイを置いておく、なにかあれば端末かベイ経由で連絡してくれ」

 

私は急ぎ東門付近に向け駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

――side 愛紗

 

「なんという無茶を! というかあの方はその場に居合わせたわけでは無いのでしょう!?」

 

私達義勇軍に割り当てられた区画に戻ってきた桃香様と朱里の言葉を聞いて、私は悲鳴に近い声を上げた。

 

いくら契約の範囲内とは言えど、知らないところで一万弱の兵分の物資が追加で必要になるのは強引すぎる。

 

単純計算で5.5倍ではないか!

 

「……寧ろ好都合です。物資を補給してもらえるなら陳珪さんに恩を売れ、間に合わないならその責を持って契約不履行として契約終了あるいはより良い条件の再契約を突きつければ良いだけなので」

 

朱里の説明を補足しつつ、雛里は賛同する。

 

「ああくそ、霊体化してでもついていくべきだった……! ……ボクの視点から言うと、その一手、招いたのは最悪の状況。この一言に尽きるな」

 

キャスターが頭を抱えてながら口を開き、私達を驚かせた。

 

「え?」

 

「どうして?」

 

「1つ、諸葛亮に出されてる条件が貸し1という曖昧な内容であること。これはどれだけ投資したかで返してもらうときに内容を相手都合で変更出来ることを意味してる。どんな形で『返せ』と言われてもこちらは拒否できない。もしできたとしてもその事実を喧伝されたら商人とかが関わりを避けるようになりかねない。取引は基本信用と金次第だからな」

 

「それは最初からなので、寧ろ今のうちにできる限りもらえるものもらい、それを有効活用するのが正しいのでは?」

 

朱里が反論するが、私は何故かこの時点でキャスターの意見が正しいと思った。

 

「2つ、あの男は昨日までの時点、『厚意で投資』しているからだ」

 

「……4人に条件を突きつけているのにですか?」

 

美花が険しい顔をするが、キャスターは首を横にふる。

 

「人1人ができる事なんてたかがしれてるだろう? よしんばそれなりの地位についたとして、そこから貸し1の返済強請られそうになってお前達仲間を売るなんてできないだろう? 地位を捨ててでも仲間を守ることを選ぶだろう。つまり貸し1の取り立ては出来て個人からが精々だ。……諸葛亮が一番負担大きいのを差し引いても4人。しかも残りの3人は物的に損はほぼ無く、黄巾賊討伐終われば事実上終了するモノだ。……これが本当に千人弱の食料や武具、消耗品を契約期間保証し続ける対価として見合うか?」

 

「……それは」

 

言葉を詰まらせた美花。

 

その姿が見合わないということを如実に語っていた。

 

「外れててほしいが、先の話し合いで諸葛亮が繰り出した策をボクたちが思いつき、使った場合まで計算に入れてるだろう。その上でどう動くか観察してるとおもう」

 

「「「「!」」」」

 

「そしてそれを見てどう動くかは……予測がつかないが、思いつく範囲だと、『諸葛亮の貸しに相当なことをふっかけてくる』か『契約の打ち切りを宣言』してくる可能性があるところだろうな」

 

「……」

 

沈黙が天幕を包む。

 

「……ん?」

 

私は気配を感じ、北西を見ると空中を駆けてくるラインハルト様の姿が見えた。

 

そして華麗に天幕内へ着地と同時にその音で全員が彼に目線を向けた。

 

「! いつの間に!?」

 

「武器を構えてどうする! 勝ち目はないのだぞ!」

 

反射的に武器を構えようとした者たちに叱責を飛ばした。

 

「……」

 

む?こちらを向いて……あ、何度か見たことある……。

 

『話をこちらに合わせろ』という旨を無言で伝えてるときの目をしてた。

 

何故知っているのかと言うと、何度か口裏合わせできなかった時にあの目を孫策やイオンという正妻殿に向け、その後にラインハルト様の語りに同調して難を逃れたのを見ているからだ。

 

私がわかったという意味を込めて頷くと、彼は語りだした。

 

「――契約に対応する配下の数が増えたようだな」

 

それとともに近くの区画の方から前も経験した揺れ――おそらく物資を何らかの方法で出現させたようだ――を感じた。

 

「物資は用意した。配給はそちらでやるといい。あと契約の対価についてだが、先日の関羽……いや『愛紗の申し出』により『愛紗が払えるモノで対応する代わりに他3人の対価をなし』とし、『愛紗を通じて契約完了まで物資の供給を対応する』こととなった」

 

そう言いながら私の元にラインハルト様はやってきて、私の耳と首に何か飾りをつけた。

 

『対価は卿が決めると良い。卿が提供できるもので構わん。それと卿がその首飾りと耳飾りをつけていれば、私と連絡を取ることも、もう一つの馬車の中を覗くことも、私の資産を取り出すことも出来る。……契約が終わったとしても私と連絡は取れるようにしておく故、困ったら連絡するといい』

 

飾りをつける間にそう耳打ちし、付け終えたら私から離れていった。

 

……やはりバレて居たのですね……!

 

覗き見してる間、何度かこちらを見て時折見せつけるようにしていたのは確信犯だったと理解し、羞恥心と前聞いたお仕置きが無い事への安堵と不満を一度に味わう。

 

「……本当なんですか? 愛紗さん」

 

「……ああ。私から申し出た」

 

朱里の問い掛けに私は頷く。

 

「愛紗ちゃんどうして?」

 

「……貸し1などという曖昧な契約では、何を取り立てられるかわかりませぬし、桃香様に負担をかけ続けるわけにもいきますまい。ならばと私が、と取引した次第。ラインハルト様もいちいちこちらに足を運ぶ労力やそれを理由にごねられるくらいなら、取引の条件に私に権限の一部を付与し、常に桃香様の側にいるほうが双方都合が良いとのことです。……また、契約の対価については詳細の他言無用も条件に入れられています。内容については答えられません」

 

「……ボクから契約の対価がなくなったということは、ボクがそちらに害為しても問題ないということになるがいいのか?」

 

威力偵察代わりの問い掛けをキャスターがしたが、アレは――!

 

「――自惚れるなよ?キャスター」

 

私達全員、急に体の重さが倍以上になったような感覚に襲われ、膝をつく。

 

「やりたければやると良い。反逆を目論む不忠も、傅いて蹲る弱者も、等しく愛しく思う。が、歯向かうならば我が手で壊すのみ。それと、劉備。私は卿らに期待をしているのだ。あまり失望させないでくれ」

 

そう言い終えると圧と共にラインハルト様の姿が消えた。

 

……いつの間にか城の城壁や城門が修繕……いや、私達が入った時のものより格段に良くなっている。

 

おそらくは……。

 

「し、死ぬかと思った」

 

「……聞いていた以上の怪物ですね」

 

「こ、怖かったのだ……」

 

皆が安堵している中、私は『宝物庫』の使い方や端末の使い方を頭に刷り込まれていることに気がつく。

 

『あと、敵が城に向かっているのに呑気にしててよいのかね?』

 

耳元で囁かれて軽く飛び上がってしまったが、同時に状況を再認識できた。

 

「桃香様! 思うところはあるかもしれませんが、考えるのは敵を退けてからでも遅くはありません!」

 

「……それもそうだね。みんな!東門や街の東側に移動するよ!」

 

……私は桃香様や皆のため、あの男を繋ぎ止めてみせますから……。

 

 

 

 

――side 華琳

 

……指示は出した、あとは各自が考えて動いてくれるからすこし考える時間がある……。

 

……孫策曰く、あのラインハルトという男は底なしの財を持っている。

 

そして劉備を見た限り『何らかの可能性を持つ者には採算度外視』で援助する習性?がある。

 

……私には可能性が無いのかしら。それとも彼のお眼鏡に叶う可能性を持ち合わせてないだけ?

 

『少々前提が違う』

 

声を聞いてふと顔を見上げると、私以外の周囲から色が抜け落ちていた。

 

「!?」

 

しかも誰一人として動いていない。

 

『これは夢のようなものだ。信じるか否かは卿次第』

 

いつの間にか側に色の抜けていないラインハルトが立っていた。

 

「……なんのつもり?」

 

「誤解があるので訂正しにきただけだ。――信じるか否かは卿に任せよう」

 

「……聞かせてもらおうかしら? 何を誤解しているのかを」

 

私の言葉に彼は頷く。

 

「まずは卿に援助を持ちかけなかったのは、その必要がなかったからだ」

 

「……続けて」

 

「孫策は私を拾い、臣下とした。同時に男と女の間柄。多少は情があるゆえ、持ち合わせている底なき財の一端を与えている」

 

「貴方も人の心持ち合わせていたのね」

 

私の言葉に彼は困惑していたが続きを促すと渋々話しだした。

 

「劉備は1から旗揚げし、先日出会ったときには本当に台所事情が火の車だった。それと同時に義勇兵はさておき、将や軍師は私たち、あるいは卿のところの武で言えば夏侯惇や夏侯淵、知で言えば荀彧に引けを取らなかった」

 

「なら貴方が取り込んでしまえばよかったんじゃない?」

 

「……」

 

「……?」

 

急に無言になったせいで調子が狂いそうになった。

 

「……目先の益を考えれば最善だ。だがそれは私の思い描く絵が完成しないことを意味する」

 

……劉備たちを取り込むことで頓挫する計画を彼は描いている……?

 

「……その話はどうでもいい。今重要なのは卿だ」

 

「……私?」

 

なにかあったかしら……?

 

「ああ。卿が望み、それに見合う対価を私が提示する。双方が納得すれば契約締結だ。卿だけ契約しないのは公正なのかもしれぬが、平等でも、公平でもないのでな」

 

「……あら、ならどう足掻いても負ける絶望的な戦いを一回、ひっくり返してほしいとしたら何を対価に求められるかしら?」

 

「……その時が来ることが無いのにそれを論じるのは不毛だ」

 

彼が首を横にふる。

 

――つまり彼は――。

 

「……そう。それが聞けただけでも満足よ。万策を尽くし、窮地でも命を諦めず、最後に立っていれば負けとは言わないものね」

 

「だろうな。……時間を取らせた。お詫びの品だ。私と話をしたければその耳飾りをつけると良い」

 

いつの間にか手のひらに銀色の小さな涙の形をした耳飾りを私は握っており――

 

「――様!――様!――華琳様!」

 

気がつくと私を揺する桂花の姿が。

 

「どうしたの?桂花」

 

「急に椅子にもたれかかったかと思ったら声をかけても反応しなくなったので困っていました!」

 

「……すこし、眠気に誘われたようね……?」

 

右手に何かを握っていることに気が付き、そちらを見ると、夢?の中でいつの間にか持っていた耳飾りと同じものを持っていた。

 

「……あの、華琳様?それはいつからお持ちに?」

 

「ついさっきかしら」

 

桂花の言葉に答えながら私は耳飾りをつけてみる。

 

不思議と重さを感じさせず、違和感もない。

 

「どう?」

 

「似合ってると思いますが……ついさっきとはどういうことで!?」

 

「今はそれどころでは無いでしょう?――気が向いたら、閨で話してあげるから」

 

私が囁くと桂花は元気よく指示を飛ばし始める。

 

……彼の描く未来は私の思い描く未来と違う。

 

どちらの形になるのか、あるいはどちらにもならないのか……来る未来を怖いようで、期待している自分が居た……。

 




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