――side ラインハルト
「全軍、展開!」
雪蓮の言葉に兵士たちは怒号をあげて駆け出し、勢いよく鶴翼の片翼を形成していく。
私は小沛城壁の北東端にてその様子を確認しつつ、作戦実現のために曹操と雪蓮(と愛紗)に情報を提供してる。
「敵先頭東門よりおよそ1里。敵最後尾1里と四半の三里ほど。予想よりかなり詰まっている」
『今更作戦変えられないわよ!?』
『何か策があるからそこに居るんでしょ?』
鶴翼形成してる二人から悲鳴じみた声と信頼してるっぽい問いかけがきたので脳筋案を提示することに。
「最後尾1割を残して分断。追い立てながら間引こう。曹操は5回落雷が敵後方に見えてから騎馬隊を動かせ。」
私は矢を番えて、敵の後方へと放つ。
着弾と同時に落雷と爆発が起こるが気にせずに次射装填し、発射する。
5回の攻撃で敵の最後尾およそ1割と残り5割を分断。残り4割は感電死か爆死で死んだと思われる。
それを見て、逃げ出す末尾1割。
しかし残りの進んでいる黄巾賊は止まらない。
否、止まれない方が正しいだろう。
後のものからすれば引けば先の攻撃が自分に届くかもしれないと恐怖により前に押しかけ、前のものは後ろに押されて止まれないのだから。
私は躊躇わずに狙撃して追い立てと間引きをしながら鶴翼の中に敵を押し込む。
そして騎馬隊が後方に蓋をしたのを見計らい、不可視の弾ける矢で敵兵を狙撃し、敵に恐慌を発生させる。
「敵は恐慌で浮足立っている。兵数も互角以上、あとは卿らで何とか出来るだろう」
『ココまでお膳立てされて』
『負けたら洒落にならないわね!』
『城壁に取り付いた賊は我々が対処します!』
3人の答えを聞いた私は、適当に安楽椅子を用意し、残る成り行きを見守ることにした。
――side 華琳
あれから体感で一刻と少し。
「包囲した敵の殲滅を確認。包囲しきれなかった敵は既に逃走済。……我々の勝利です!」
桂花の言葉に頷く。
「皆のもの、勝鬨を上げよ!」
「「「えい、えい、応!!!」」」
私達の周りの兵の言葉に他の兵たちも反応して勝どきの声が広がる。
「一先ず城に戻りましょう。……全軍撤収!」
私は命令後、兵士たちと共に城へと帰還した。
――side 陳珪
「皆様のお陰で敵を撃退することができました。誠にありがとうございます」
私は3人の前で頭を垂れる。
「私は状況変更にも対応してお膳立てされたのに乗っかっただけ。感謝ならあの人にして頂戴」
孫策様はそういって入口側で佇んでいるラインハルト、と呼ばれた男を示す。
劉備経由とは言え、膨大な食料と武具に消耗品を提供してくれたと聞く。
「私が渡すと決めたわけではない。礼を言われても困る。……こちらとしてはプレミアとティアが付いてくると言い出していることに申し訳無さをかんじているのでな」
いつの間にか彼の左右に侍る姉妹?をチラ見するラインハルト殿。
「……その申し訳無さに漬け込んで、私と一緒に徐州を守護する守護者になってもらいたいところですが」
「流石に無理だ」
「ですよね」
「だが朗報はある」
朗報?
「詳しくは当人から聞くべきかと」
そういって孫策の方を向くラインハルト。
「……ああ、アレね!」
完全に忘れてたような反応してたのだけれど?
大丈夫かしら……。
「後詰めとして4万5千前後の兵を寿春に集結中です。予定通りなら、今日明日にも出立すると思われます」
「なんですって!何でその兵も連れてこなかったのよ!こっちはアレで出せる全部なのに!」
曹操が立ち上がる。
「地理的要因もある」
ラインハルトが指を鳴らすと、4人の真ん中にある背の低い机に揚州とその周辺の地図を出現した。
「揚州は廬江と寿春以外の長江の南にあり輸送にも時間かかる。隣接しているのは交州、豫州そして兗州と徐州。兗州は卿が黄巾賊討伐しており平和、豫州も州牧袁術……ではなく許昌の董卓の積極的により討伐されて平和。そして交州は流刑地で蜂起する者は居ない上妖怪と名高い士燮が目を光らせている。徐州は兗州または長江のどちらがを超えねばならんのが壁となっている。そして山越も気にはなるがおとなしい。念の為懸念のある箇所には兵を貼り付けているがそれを差し引けど余力は有る」
彼は再度指を鳴らし、兗州の地図を出して見せる。
「対して兗州は徐州と隣接し、逸れた連中の討伐に奔走し、西の司隸に黄巾賊を通さぬために監視を念入りに配置している故、今連れてる以上難しい。違うかね?」
「1ついいかしら?」
私は流石に無視できずに確認をとる。
「む?」
「こっちの地図……兗州の地形だけじゃなくて軍事拠点とか州軍の巡回経路書いてあるみたいだけど?」
しばらくの沈黙が場を支配して彼が素で間違えた事がはっきりした。
「……兗州の防衛網丸裸とか最悪ね。これ他所に流出してもいいように防衛網の再構築しないとだめじゃない」
頭を抱える曹操。
「というかいつ作ったんです?」
素の疑問を投げかける劉備。
「数日前から作り、今朝完成させたところだ」
「は? 梨晏も巻き込んで全員でくんずほぐれつ相手したのに返り討ちにして、全員力尽きてる横で地図描いてたの!?」
雪蓮が立ち上がる横で、曹操が窓の外を眺める。
「……色欲で混沌とした現場で作られたと聞くと、なおさら複雑なんだけど……」
曹操さん、私もそう思うわ……。
「……あのーそろそろ話戻したほうがいいかなーと思うんですけどー?」
劉備の言葉に一同が落ち着く。
「とりあえず後詰めが来る事はわかりました。……彼らの一部に復興や領内の治安維持協力を許可していただけるのでしたらありがたいのですが」
「……うん。大丈夫よ。――念の為誰か置いていく?」
「……誰を置いていっても揉めるだろう。私の方から適当に人員出しておく。後で紹介する故、適当に部屋をあてがって置けば後詰め到着まで勝手に仕事するはずだ」
孫策の言葉にラインハルトが対応して私に告げてきた。
「は、はあ……その程度なら」
……ラインハルトと孫策に別系統の家臣団がいるみたいね……。
「では後詰め到着見届け次第」
「暇を頂きますね」
「ええ。分かったわ」
やはりだめか……。
「あと死体は可能な限り焼却するほうが良いのだが……」
「基本土葬なんだけど……理由がありそうね」
ラインハルトの言葉に曹操が指摘しつつ、続きを促した。
「人の死体は疫病の元だ。……一人なら被害はあまりないが、あの量ではしばらく東側は田畑として使えんくなる」
土いじりが好きな喜雨をどうなだめるべきか……いやそもそも。
「……まあ元々城壁内外に死体だらけだったし……」
ソレどころじゃなかったので……。
「一段落した以上、死体を弔うべきだろう。私としては明日明後日で死体を弔ってから出立しても遅くないと思うが……」
「……そうね。アタシは残ろうかな」
「私も残ります。――ここの物資も追加できる限りしておきたいので」
「……ここは同調圧力に流されておきましょうか。私も残らせてもらうわ」
……滞在日数が増える分、私としては交渉したりする機会が増えるし、好都合だから良いか……。
――side ラインハルト
夜、用意した天幕の一つにて私は――1/700プリンツ・オイゲンのボトルシップを作っていた。
全長303mmの作品をボトルシップにするのは些か無謀だったかと思い始めた頃、天幕傍に気配が現れる。
「……愛紗です」
「入ると良い」
私はボトルシップがあるテーブルを横に避けて、新しいテーブルを召喚しつつそう告げる。
「……なにかなさってる途中でしたか?」
「構わん。暇つぶしだ。……さて、なにようかね?」
私が茶を用意し、ソレを対面の席に置くと彼女は椅子に座りお茶を飲む。
そして何度か深呼吸してから意を決したように告げた。
「……何度も覗き見した非礼の詫びと物資援助の対価を支払いに。一晩私を差し出します」
「私とそういう関係になるのは、背反行為ではないのかね?」
「背信行為? 私は先程言った通り非礼の詫びと援助の対価を払いに来ただけですよ?――そしてあわよくば貴方との契約の更新を目論見交渉をしているだけです。それに朱里の……諸葛亮の対価に我々が立ち直れないようなものを求められる可能性を考えれば誤差では?」
「ソレはそうだな。――まあいい。――劉備軍に潰れられては困るのでな――」
――side ???
……ラインハルトは劉備配下の関羽を使って誘導している……?
なんのために?
何を見据えているの?
……生娘らしい昼見た限り真面目の極みみたいな彼女をあんなふうにするあたり、手管も相当みたいね……。
…………手を出したらただじゃ済まないでしょうし、やめておきましょう。
代わりに娘を差し出したら喜ぶかしら?