恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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第二十三話 小沛にて

――side ラインハルト

 

「農業書が欲しい?」

 

小沛の死体処理と城壁修復などの陣頭指揮をしていると、陳登がやってきてそう告げた。

 

「そう。貴方本もたくさん持っていて、この大陸以外の農業書があると聞いた。田畑をより良くしたいんだ」

 

「……1つ言いたいことと、複数の問題がある」

 

「タダで見せるわけにはいかないってことと、翻訳出来るのかってこと? 大秦の言葉なら翻訳は少しなら出来る」

 

「しれっとタダで読もうと思ってるあたり……まあいい。その上で複数問題がある。私の持つ農業書は間違いなく今の大陸含め、この世界で最先端のモノだと言える。が、大秦の言葉とは違う言語な上、前提知識が無ければ翻訳できたとしても意味がないのだ」

 

「……どういうこと?」

 

首を傾げる陳登。

 

「生物学、化学、地質学……生き物に関する学問、バケガクという物質の変化に関する学問、2つを踏まえた土に関する学問をある程度理解してる前提で書かれている。……卿はいずれも初めて耳にするだろう?」

 

「うっ……」

 

「それを学ぶ環境は? それも私に頼むならば私の時間を相当削ることになるのだが、それでも何も無いと言われれば流石に拒否したいところ。……独学で学ぶのは茨の道など生温い言葉では済まん故、諦めてもらいたい所だ」

 

「でも……!」

 

「どのみち明後日には出立する。必要な知識を得るための時間を加味すれば私についてきて学ぶ他無い。がそれはすなわち、徐州を離れて学ぶ事を意味する。対価とその覚悟、両方揃えてから出直すと良い」

 

「……」

 

暫く立ち尽くしていたが、間もなく走り去っていった。

 

「……辞書とかあるだけじゃだめなの?」

 

しれっと雪蓮が現れて私の背中に飛び乗る。

 

何処まで聞いていたのやら。

 

「同じようなことを言った雷火や穏が挑戦した。結果雷火は前提知識の翻訳途中で力尽き、穏も時間さえかければ翻訳はできそうだが、独学だと書いてあることを正しく理解する前に寿命が来る気がすると断念した」

 

「知識欲旺盛なその2人が駄目なら無謀だわ、うん」

 

納得したように頷く。

 

「……それはそれとして、あの娘付いてくとか言い出したらどうするの?」

 

「それはない……と言えないのがな……。抱くこと条件にしたら諦めると思うかね?」

 

私の言葉に少し考える雪蓮。

 

「あの手の人間は目的のためなら貞操くらい安いものってなりそうな気がするのよね……」

 

 

 

 

 

 

――side 陳登

 

「無理ね」

 

「寧ろ中途半端な知識で却って後々検証などに影響が起きるかと。……どちらにしろ私達も1月以内にあの人の後を追い暇を貰う予定なので教えられることはないですね」

 

ティアとプレミアの言葉で崩れ落ちるボク。

 

彼の知り合いならば知っているのでは?と思い、ダメ元で聞いてみた結果が先の言葉だった。

 

「何してるの?」

 

振り向くとそこには母……陳珪がいた。

 

「別に……」

 

「ラインハルトが農業書を持っていると聞き、見せてもらおうとしたところ読み解くのに必要な知識がないと断られ、私達にその知識があるか聞きに来て無いと知り崩れ落ちてるところです」

 

……プレミアに総てバラされて居た堪れない気持ちになるが、足が動かないので顔をうつむける。

 

「……どうしても知りたいの?」

 

「……そこにもっと豊かにする知識があるはずだから」

 

ボクの答えに少し考える素振りを見せてから、母は口を開いた。

 

「勉強一段落したら、一度戻ってくること。その後は好きにしていいわ。あと年に一回以上、徐州にいるなら顔を出して、徐州を離れているなら便りを出すこと。約束できるなら私も掛け合うの手伝ってあげる」

 

「……どういう風の吹き回し?」

 

変なもの食べたかなとボクが首を傾げてると

 

「可愛い子には旅をさせよと言うけど、貴女だと賊に勝てるか怪しいから止めてただけ。あの人なら一度懐に入れた相手は無碍にしないと思ったからよ」

 

「……とりあえずその言い分信じるよ」

 

裏がある気がしてならないのは気の所為……ではない気がする。

 

だけどボクがあの人と交渉してもあしらわれるだけだろう。

 

「代わりに……彼と男女の関係になるのできるかしら?」

 

…………?????

 

「必要ならやるしか無いけど……なんで???」

 

「冷静に考えてみて。武力と財力は有り余るほど持ち合わせてる。偶にうっかりをしてるけど基本頭も切れて多才。そして彼は複数の相手と関係を持ってて、つい昨日には別の陣営である関羽とも関係を持ったわ。……そして懐に入れた相手には甘い……。ならそういう関係になるのが手っ取り早いかなって」

 

理にかなってる。

 

ボクに少しだけ残ってる女としての矜持が「それはどうなの?」と言ってるが、それで彼の持つ進んだ知識が手に入るなら『安い対価』だ。  

 

「――その取引のお手伝い、しましょうか?」

 

声の方を向くと奇妙な体勢でこちらを見ているプレミアとティアが居た。

 

「……何か裏が有りそうなんだけど……」

 

「お互いの利益を考えての提案よ。1人より2人、2人より4人の方が負担は少ないから」

 

負担?

 

「……彼、性豪なのよね。孫策配下の女性たち全員相手でも返り討ちにしてるから」

 

……初耳なんだけど?

 

「あと、夜交渉中に邪魔されないためにも、孫策さんたちに根回しするべきです」

 

それはそう

 

「一応あの人たちと話し合いできるくらいに友好関係を作ったし、そういう相談も何度かしたわ」

 

なるほど?

 

「なら根回しを済ませましょ。……できれば今夜に交渉できるようにしたいわね」

 

……いつの間にか4人でというのが確定してるけど、あの人は拒否しないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

――side ラインハルト

 

夜の帳も降りた頃、雪蓮がやってきた。

 

かと言っていつものように始めるわけでもなく、何かを待つように宝物庫から漫画(ボーボボ……?宝物庫のチョイスはやはり何かおかしい)を流し読みして理解できない〜とぼやいている。

 

それを理解できるのは極少数なのでなんの問題もないぞ、雪蓮。

 

などと思っていたら、天幕の端から4人の人影が入ってきた。

 

「………そういうことか」

 

私の言葉に雪蓮は舌を出して可愛らしいポーズするが騙されんからな。

 

「……交渉したいけどいい?」

 

私は椅子に深く腰掛け、返事の代わりに向かいの席に座るよう促す。

 

それに頷いて席に付く陳珪、陳登親子にプレミアとティアの姉妹。

 

隣の雪蓮が面白そうにそれを見ている。

 

「……ボクは貴方から貴方の知る農業の知識を知恵を学びたい」

 

「対価は?」

 

「手付金代わりに今夜一晩ここの4人を好きにしていいし、勉強してる間、ボクのこと好きにしていい。それと必要なら文官としての仕事もする」

 

「貞操を投げ捨てても欲しいのかね?」

 

「――勿論」

 

「どうなっても知らんぞ?」

 

「覚悟の上」

 

「ココまで言ってるんだから、無碍にしないの」

 

いつの間にか準備万端な雪蓮の姿、そして4人の姿に私は手加減不要だな、と独り零した……。

 

 

 

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