ゆりねたちの現状ちら見せ。
寿春に袁術(と董卓)襲来。
(主に袁術のせいで)寿春で名代してる屑兄さんのストレスがマッハ
恋、ねね、霞、華雄は邪神ちゃんとゆりねと面識を持つ。
董卓軍の将軍たち、夜更かしした。
それではどうぞ。
――side ゆりね
「ゆーりーねー、暇ですの」
私が使う部屋にて、近くの地べたで這いずっている邪神ちゃんがこちらを向いてそうこぼしていた。
「仕事したら?」
「悪魔に労働とかナンセンスですの」
わかってないみたいなポーズ取ってきてむかついたが深呼吸。
「ミノスはトレーニングついでって瓦礫撤去と建築作業の手伝いしてるし、メデューサはハイドリヒ卿から渡された魔眼殺し*1の耳飾りの費用とアンタの交遊費のために城で経理の手伝いしてる。ついでにセイバーは兵士の鍛錬のアシスタントしてるし、エーリスは屋敷と城の掃除や整理整頓。アーチャーは食料庫ネズミ対策の猫探ししてるわ」
「アーチャーのは仕事なんですの??? ……それはそれとしてゆりねとあのブリジットとか言うやつはなにしてるんですの?」
「私たちは勉強してるの。何故か言葉が通じてるけど、読み書きには対応してないから。書類仕事やりたいけど、読み書きできないと話にならないでしょう?」
私は漢字を知ってて文法が英語と大体同じ*2で漢字の意味もある程度はわかるから、まだ良いけど……。
ブリジットは私に負けたくないのか、城に在中してる黒円卓?のお兄さんに聞いたりして猛勉強している。
「……でもそれならおかしいですの。昨日ゆりねが街で菓子とか買ってる姿見ましたの。働いてないとお金もらえないはず。……はっ、まさか
私は壁に飾ってあった太刀を取り、ためらいなく抜刀し振り下ろした。
飛び散る鮮血と邪神/ちゃん*3になった邪神ちゃん。
「そんなわけないでしょ。……読み書きの勉強でお小遣い程度の賃金を渡されてるし、習熟度テストで『できる問題』を取りこぼさずに解いたり予習しないと解けない問題解いて点数稼いで想定点数を上回ると追加報酬もらえるのよ。あとは屋敷の管理予算からのこった肉まん数個買えるくらいのお金をブリジットと山分けしてるくらいかしら」
「か、管理予算……横領……」
息も絶え絶えなのに……。
「小狡いこと良く思いつくわね。残念だけど薪や衣服洗濯用の道具類消耗品にエーリスの掃除費用差し引いたら殆さっき言った程度しか予算残らないわよ。普通に働けば私のいまの収入よりたくさん稼げるわよ」
「めんどくせー……ですの……」
私は手元にあった電卓で日本円換算したそこそこの仕事の日給を入力する。
「……日本円換算、2人の仕事は一日でこれ以上の稼いでるわよ?」
その金額を頭動かして覗き、驚いて飛び上がる邪神ちゃん。
「は!?一週間あればゆりねからもらってた金の1ヶ月分は余裕で稼げますの!?」
「そうよ。しかも食費は実質ゼロ円。稼いだお金でハイドリヒ卿と交渉すれば神保町で買えたモノなら大体取引してくれるわよ?」
さっきの太刀とかもそうだし。
「それを早く言えー! こうしちゃいられない! 金稼いで 最新ゲーム機……! テレビ……! エアコン……!高級ベッド……! 買ってやりますの!」
「やる気出すのはいいけど、血の跡広がるのこまるから、再生シてからにして頂戴」
「……はい」
――side ミノス
「さてと、城壁の修繕はコレでおわりかな……ん?」
そろそろ昼時かなーって時に、西の方に多数の人影が見えた。
「……揚州の後詰め……は昨日ここを経ったから違うな。もしそうだったらにしからくるのはおかしい。……とりあえず報告しないと! 親方!西から軍勢!」
ひとまずアタシは城壁の下で指示飛ばしてる親方に軍勢を目撃したことを告げる。
「数は! 旗の文字見えるか!」
あ、忘れてた。
改めて軍勢を見て、旗を探す。
こういうとき旗を掲げてないのは賊確定。そうでなくても見かけない旗なら警戒体制に切り替わるからだ。
「……旗は袁、董と張、呂に華だ!」
「そいつは西の袁術っちゅー州牧様と董卓っちゅう太守様の軍勢のはずだ! 念の為城のお偉いさんにも伝えてやってくれ!」
「わかった!」
アタシは城壁から飛び降りて屋根伝いに城を目指して駆け出した。
――side メデューサ
「そろそろ昼食だね。キリがいいところまでできたら休憩に入って」
「はい!」
黒髪の優しい顔つきのお兄さん*4が声をかけてくれたので私もあとここを添削して……よしっ、休憩しようかな。
私が立ち上がると、お兄さんも立ち上がった。
いつもドアとか開けてくれるんだよね。
そう思いながらドアに近づくと、お兄さんはドアに手をかけて開けようと――
「大変だ! 西の州牧袁術と董卓太守?の軍勢がこっちきてるぞ!?」
勢いよくドアを開けたミノスが半ば叫ぶようにそう告げた。
「おいメデューサ、あの優男のあんちゃんどこだ!?ここの責任者だろ!?」
「……今ミノスがドアと壁ではさみ撃ちにしたね」
「へ?」
私の言葉にミノスはブリキのオモチャみたいな動きでドアを動かして壁を覗き込んだ。
「…………どうしよう」
「ミノスが勢いよくドア開けたからだよ!」
「急いでたんだから仕方ないだろ!」
「それでお兄さん気絶させたら意味ないって!」
「だ、大丈夫だから……落ち着いて……」
お兄さんが苦笑いしながらこちらに歩いてきた。
……あれ?無傷?
「話は聞いていたから安心して。……しかしハイドリヒ卿の予想が珍しく外れたな……」
「?」
外れたと言ってるけど、来ることは想定されてた?
「ハイドリヒ卿は董卓だけが本命で、袁術と董卓両方来るのは第二の想定だったんだ。――ふたりとも少し早いけど今日は帰って、しばらく屋敷で他の仲間とともに待機してもらってていいかな?」
「は、はあ……」
「あんちゃん一人で大丈夫なんか?」
ミノスの言葉にお兄さんは肩をすくめた。
「まあ――黒円卓の胃痛会議に比べたら痛くも痒くもないかな」
――side 賈駆
袁術の命令で主だった将と共に徐州と青州を占領中の黄巾賊討伐に行くことになったボクたち。
途中袁術が治めていた(そして重税課しすぎて黄巾党と連動して反乱起こした)寿春の近くを通るため、袁術が補給(という名タカリ)すると言い出した。こちらも兵の休憩を考え、寿春の街を訪れたのだが……。
商人から聞いた話しでは城の周りで反乱軍がやりたい放題やっていたため、荒れ放題になってるという話だったが、路地裏などにも死体は無く、街の中で戦いが起きた後とは思えないくらいキレイで整った街並が広がっていた。
「――ようこそ、寿春へ。孫伯符揚州牧名代、カイと申します」
そして城へ招かれたのでボクと月(董卓)、袁術と張勲で行くと、黒髪の偉丈夫がボクたちを迎え入れた。
「うむ、くるしゅうない」
「現在復興中なので滞在する場所を用意するのが精一杯ですが兵士たちを休ませるなら可能な限り手配しますよ」
「滞在中の兵士の食事などは」
「申し訳ありませんが……物資を支援してる廬江が黄祖に攻撃を受け、ソレに対する反抗軍を出撃させたため、余剰物資があまり無いのです」
「『あまり無い』なら少しはあるんじゃろう? その少しで良いんじゃ。譲ってたも」
……名代の男の顔が引きつった気がした。
「……」
月もドン引きしてるんだけど。
「(あのお兄さん、青筋立ててない?)」
月の小声で額を見ると、端っこに小さい青筋が出ているのに気がついた。
よく気がついたわねと現実逃避しかけたが
「なんじゃ? 余裕があるんじゃろ? ほれ、はよせんか」
「……目録が無いので出立までに準備しますね」
作られた笑顔からにじみ出る彼の怒気が無理やりボクを現実に引き戻す。
「そういうのは妾たちが来た時点で用意してあるのが普通じゃろうに」
やめて袁術!
笑顔に見えるけど、あの人のボクたちの見る目までゴミ見るような目になってるから!!!
「あの、お嬢様? どうやらこの方お忙しいようなのでこの辺で失礼しましょうか。――駐屯したいのですが期間と場所の方は……」
「主だった将用の屋敷がありますのでそちらを将の方々はお使い下さい。兵の方は城の外でお願いします。こちらとしてはあまりおもてなしできないですし、先日孫策様の後詰めが出立しておりますので、急がねば黄巾賊の討伐の戦功一位が袁術殿以外になるやもしれません。――だれかあるか!」
さっきより声の色が冷たい。
「むう、では明日出立するぞ。七乃、蜂蜜水を用意するのじゃ」
「わかりました急いで用意しますね」
胃が痛いのは気の所為じゃないわよね……。
「この方たちを貴賓用の屋敷へ。――彼が案内しますのでその屋敷をお使いください」
パッとしない顔の文官らしき人が先導し、ソレについていく二人。
ボクと月は何故か取り残されてしまった。
否、何か見えない力で足止めされたみたいだった。
「……さて、厄介者も消えたことですし、話し合いをしましょうか」
先程までの冷たさの代わりに、ボクたちを品定めするような目を向けて、カインという男がそう告げたのだった――。
――side 華雄
月と詠(賈駆)が袁術たちと共に城に向かったため、私達は街の中を散策していた。
知らないうちに恋(呂布)と音々音(陳宮)とはぐれたが、あの二人なら大丈夫だろう。
霞も同意見みたいだし。
何件か霞が酒屋で酒を買い、私も適当に屋台とやらで焼いていた串肉を数本買った。
「なあ
「なんや? お小遣いならさっき月からもろたのつかってたやん。どっかにおとしたんか?」
「違うそうじゃない」
私は霞のボケか本気かわからん言葉に首を横に振る。
「あそこのアレ、下半身蛇じゃないか?」
食べ終えた串で示した先には、台の上に何かを広げ、前にいる観客に見せながらなにやら大仰な語り口をしてる、下半身蛇らしい金髪の上裸な女の姿が視えた。
「せやな。なんなら上裸やん」
「……あれ退治するべき化外ではないのか?」
「いや……ここの兵士らしいヤツが普通に一瞬びっくりしてもなんか納得してそのまま放置しとるし、ええんとちゃう?」
なんなら今通りがかったやつは普通に挨拶してたしな。
「……ならいいか。しかしなにやって……恋とねねがいるじゃないか」
「ほんまや……なんかふたりとも泣いとらへんか?」
「――そうして盲目だった王子は、夜が来るたび、きれいな歌声を失った嘘つきの怪物の歌を聞きくため、二人だけの秘密の場所に足を運び、思い出の花束を拍手と共にプレゼントするようになりましたとさ。ご清聴、ありがとうございましたの」
蛇女が一礼すると、台の前にあった箱に観客たちが銅銭を投げ始めた。
「とても素晴らしい物語だった!」
「王子様目が治ってよかったね!」
「でも嘘つき姫ちょっとかわいそう」
「あれがあのときできる最善だったんやで」
観客たちは感想を述べながら、銅銭を箱に投げ入れたら一人また一人と去っていく。
二人も銅銭を投げ入れたのか、解散してく観客の中から、こちらにやってきた。
「……恋が泣いとる……」
「明日は雨か?」
始めてみた表情に驚いていると
「お前ら恋殿を血も涙もない鬼とでも思ってたのですか!? 怒りのちんきゅーキック!!!」
ねねの飛び蹴りをもろに食らってのけぞる。
「のわっ!? なんや珍しくて驚いただけやん!」
霞もやられたのかねねの言葉に反論する。
「しかしそんなに泣ける話だったか?」
「お前たちも最後まで見ればわかるのです! おい、そこの蛇女!」
ねねの言葉に目を銭模様にしてこぼれ落ちた銭を拾っていた蛇女がこちらを向いて少し怒った様子で口を開いた。
「だから蛇女じゃなくて邪神ちゃんですの!」
「なんでも良いのです! この二人のためにもう一回紙芝居みせるのですよ!」
「えぇ……めんどくさ……なんですの?」
恋が邪神ちゃん?とやらの前に来て、巾着を手渡した。
「この量の小銭だとなー……えっ、砂金?」
「もう一回やるなら、それともう一袋渡す」
恋がそういった瞬間、目を金にして邪神ちゃんが飛び跳ね、紙芝居?とやらの台の後ろに移動した。
「なにしてるんですの! お前たちのために1日1回だったところ、特別に、と・く・べ・つに2回目やってやるんですからさっさとこっちに来なさい!」
「お、おう……」
「なんや現金なやっちゃなぁ……」
私達はかなり近い場所で紙芝居を見ることになった。
「…………霞」
「何もいうな、華雄。――雨が降ってきそうやで」
私達がそう会話してる横で、紙芝居をしまってる邪神ちゃんが首を傾げた。
「は? 今日は夕方まで晴天でぐえっ!」
変な声がしたのでそちらを向くと、赤毛で2つまとめにしてる女が邪神ちゃんの首周りに腕を回しており、邪神ちゃんの首が曲がっては行けない方向に回ってるように見えた。
「なっ!?」
「なんちゅうことを!」
「金にがめつそうでしたけどそんなことするほどでは無いと思うのですよ!」
「……」
私達4人が身構えたが、
「また邪神ちゃんゆりねさんに折檻されてるよ」
「おねーさんたち邪神ちゃんが折檻されるところみるの初めて? 大丈夫。左右に両断されても次の日には何食わぬ顔でタカリに来るからあの程度へーきへーき」
通りすがりの子供の言葉がとんでもない事実を言っていることに困惑し、武器を下ろした。
「……えっと、この砂金はあなた達の?」
「……二人にも見てもらいたかった。――2回目の代金で渡した」
ゆりねと呼ばれた女の言葉に恋が素直に答えた。
「なら返すわ。こいつに金を渡してもろくなことにつかわないから」
恋は素直に受け取ったあと、
「……紙芝居、また聞ける?」
そう訪ねた。
「ええ。同じ物語とは限らないけど。――なにかリクエスト……どんな物語の紙芝居が見たいかそこの目安箱に書いて置けば、もしかしたら採用されるかもしれない。それと邪神ちゃん以外がやってるかもしれないから、そこは運次第ってことで」
「ん」
うなずいた恋に納得したのか、一礼してからゆりねは口を開く。
「私は花園ゆりね。ゆりねって呼んで頂戴。――一応ラインハルトって人の食客よ。――コレも一応同じ立場。――もし何かあったら城に連絡して頂戴。――役に立つかはわからないけど、コレに巻き込まれたよしみで、多少は力になるから」
「うちは張遼。字は文遠。よろしゅうな、ゆりね」
「私は華雄だ。よろしく」
「ねねは陳宮。字は公台ですぞ」
「恋は呂布、字は奉先」
「……え、ええ。よろしく。っと、お客さんが来るってことで屋敷で大人しくしてないとだから……それじゃあ」
そう言ってゆりねは邪神ちゃん抱え、反対に紙芝居道具と銅銭入った箱抱えて去っていった。
……あの華奢な見た目であれだけ持てるか……できるな。
――side 月
貸し与えてもらった屋敷にて。
みんなと合流できたから、夕食食べながら何を見てきたか聞いたんだけど……。
「紙芝居というのは、子供のものかと思ったが、大人も見てたんだ」
華雄さんが珍しく饒舌です。
お酒飲んでるのもあったからかな。
「それより恋が泣いてるの初めて見たで」
霞の言葉を聞いて驚いた。
私恋が泣いてるところなんて見たこと無いんだけど……
「え、本当なの?」
詠ちゃんが疑いの目を向けてるけど、
「私も見た」
「ねねも見ましたぞ!」
「…………」
華雄もねねも恋の泣いたところを見たと言って、恋はなんとも言えない顔してる。
「紙芝居を見て泣いたんだよね? どんな内容だったの?」
私の言葉に霞が待ってましたとばかりに立ち上がった。
「それはな、ある広大な森がある国の物語なんやけど――」
嘘つき姫と盲目王子という物語をどころどころうろ覚えで4人が交代して語ってくれた。
その内容は切なくて、でも優しさもある嘘で、とても幻想的な話だった。
話し込んでしまったのか、気がついた頃には夜が終わり始めた頃だった。
――明日……というか今日早いけど、聞かなかったら寝れなかっただろうし、仕方ないよね?