恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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第二十四話 下邳へと進む道すがら

――side ラインハルト

 

「――つまり品種改良とは突然変異や環境適応による変異種を人為的に選別し、変異種同士、あるいは変異種と変異前の種を交配させることでそれぞれの特性を持つ品種を意図的に生み出そうという技術だ」

 

私は今、馬車の中で農業に関する講義を行っていた。

 

生徒は喜雨と亞莎。オンラインで雷火、穏。賑やかしか冷やかしかわからんが同じくオンラインでシャオの5名だ。

 

「米で例えれば、『たくさん収穫できるが病に強い品種』と『美味しくないが病に強い品種』を交配させ『たくさん収穫でき、病に強い品種』を生み出す。これが品種改良に当たる」

 

『強みを複数持ち合わせた作物になれば農家の負担や悩みの種が減ったり、味が良くなったり、収穫量が増えたりするわけじゃな』

 

「その通り。ただし『改良品種が次の代を生み出せない』場合や、『改良品種な自家受粉したり、再度別の品種と交配させたら親世代より劣化した』場合などがある。これは遺伝子と呼ばれる生物の情報を記録する存在が起因している」

 

『遺伝子……?』

 

「前者については起こり得る状況が特殊な例なので次の機会に説明する。では資料の図8にあるように基本生物は2つで一組の遺伝子を持っている。そのうち優先度により片方の性質だけが表に出ているが、交配したり自家受粉するときに受け継がせる遺伝子はどちらかわからん上、先に言った通り受け取った遺伝子情報で表に出てきやすい性質と出にくい性質があるのだ」

 

『あ、そうか。お父さんお母さんが持ってるけど表に出てない方が両方受け継がれることあるんだね?』

 

「シャオの言う通り。故にその世代で品種改良に成功したように見えたとしても、その子の世代や孫世代に表に出なかった方の形質が出ることもある。故に品種改良の完成を宣言するには数世代以上、『突然変異を除き、自家受粉しても形質が変わらない』ことが証明される必要がある。」

 

「てっきり掛け合せが成功したらそれで終わりかと思ってました……」

 

「だから掛け合せて成功したモノを使っても次の世代で失敗することが多いのか…」

 

亞莎と喜雨(陳登の真名)の言葉に頷く。

 

「ちなみにこの考え方を人間に応用し、優れた才能を親にすれば優れた子供が生まれるという優生学というのがこの遺伝子の発見後に興った。が、それは才能による格付けから人間差別に繋がり、迫害へと過激化した故、人間にこの考えを適応するのは非常に危険だと先に伝えておこう」

 

『無意識に格付けしてしまいそうですからね、妥当かと』

 

「話は変わるが、姓が同じ者同士の婚姻を禁じているのは、生き物……特に人やそれに近い生き物は血筋が近しい者たち同士で子をなすと虚弱体質が生まれやすく、近親婚を繰り返すほどその確率が跳ね上がっていくことを先人が感覚的に知っていたことが理由の1つと言われている」

 

「我々のご先祖様はそういうの何故かはわからないけど、知ってたってことなんですね。……他人と大差ないくらい血と世代が離れててもダメなのは極端な気がしますけど」

 

亞莎が納得しつつも複雑そうな顔をする。

 

「さて、第ニ回の講義『品種改良と遺伝子の基礎知識』はこの辺で一区切りとしよう。質問があれば受け付けるぞ。……無いようだな。……では解散だな」

 

私の言葉とともに講義は終了する。

 

オンライン組が通信を終えると亞莎と喜雨が息を吐く。

 

「雷火様や穏様が翻訳からの独学を断念した理由がよくわかりました……」

 

「作物も生きているから一筋縄ではいかないと思ってたけど、品種改良1つとってもこれだけ深堀りが必要なんだね」

 

なんか仲良くなってる。

 

「お勉強お疲れ様。おやつの胡麻団子用意したよ」

 

イオンが笑顔で大皿の胡麻団子を持ってきた。

 

それを確認した私はテーブル一式を用意する。

 

亞莎が胡麻団子に飛びついて小動物を彷彿させる食べっぷりを横に私も席に付く。

 

「……しかしこの馬車、外見からは想像できないくらい広いね」

 

喜雨が胡麻団子を手に取りつつぽつりとこぼす。

 

「その気になれば拡張もできる」

 

なにしろここはグラズヘイム。

 

文字通り私の城だからな。

 

馬車とはあの扉で繋がってるが、わざわざ言う理由もない。

 

「……本当になんでもできるね。天変地異とか起こせそう」

 

「後先考えなければできるが?」

 

「ゴメンやっぱり止めて」

 

「やる意味が無いからな、やるつもりもない」

 

「……喜雨ちゃんと仲がよろしいようで」

 

ジト目のイオンにすかさず

 

「イオン、あーん」

 

口に胡麻団子を放り込む。

 

「あーん♡……はっ、ほんはほほへはははへはへふはへ」

 

「……食べるか喋るかどちらかにしたほうがいいんじゃない?」

 

喜雨の言葉にイオンは食べる方を選んだ。

 

「……私の機嫌を簡単に取れないと思わないでね!」

 

ちゃんと飲み込んだあと、改めてツンデレみたいなことを言い出した。

 

「あざといです、流石正妻様です」

 

亞莎のジト目に目を逸らすイオン。

 

「それはそれとして、本当に何かやらなくていいの?」

 

喜雨が首を傾げる。

 

「生憎遠征中だからな。コレが城にいるなら文官仕事の1つや2つやらせてるところだが……」

 

「その分残ってる組が大変そうですね……」

 

遠い目をする亞莎。

 

などと会話をしていたら通信が入る。

 

「こちらラインハルト。どうした」

 

『雪蓮よ。……なんかアタシたちの食事だけ露骨に良いものってことで他の陣営の配下が不満持ってるらしいんだけど、なんとかならない?』

 

雪蓮の言葉に少し悩む。

 

「手っ取り早いのは食事毎に招くことだが、解散後に生活水準下げられるのかという問題がある」

 

『……それで因縁つけられて荒れるのはよろしく無いわね』

 

「というか不満の発生源は間違いなく曹操軍の将ではないかね? 私達は不満の原因で劉備軍は愛紗経由で食料供給しているのだから」

 

私が指摘すると

 

『大当たり』

 

と返ってきた。

 

「……雪蓮、曹操軍の隊列に凸する故、委任状認めておいてくれ。あとマイ、梨晏を護衛に連れて行く」

 

『最近出番なかったので待ってました!』

 

『more debanの看板作ったけど無駄になったね……』

 

雪蓮の近くにいたらしい2人の声が聞こえてきた。

 

『書いたから取りに来てついでに2人連れて行って、どうぞ』

 

そういうと雪蓮は通信を終了した。

 

「ということで行ってくる」

 

「「「いってらっしゃい(ませ)」」」

 

3人の言葉を背に馬車を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

――side 華琳

 

進軍中に後方から駆けてきたラインハルト(とその護衛役2人)から夕方に食事を振舞いたいとの申し出が来た。

 

大方栄華か桂花が愚痴って3羽烏が騒いだのをどこからか聞きつけたのが原因でしょうね。

 

……なんでかしら、陳留の留守頼んだ華侖や柳琳たちが元気か心配になってきたわね

 

「華琳様? あの、いかが致しますか?」

 

行軍中なので私の馬に合わせながら桂花が問いかけてきた。

 

「……せっかくのお誘いを無碍にできないわね。人数制限はあるのかしら?」

 

「人数制限はない。が、代わりに何が食べたいか要望をまとめてもらいたい。可能な限り要望に答えたいのでな」

 

彼は少し変わった条件を提示してきた。

 

「分かったわ。なるべく早く伝えるから」

 

そういうと3人のは去っていく。

 

「……ということで、何が欲しいとかあるかしら」

 

「ウチ珍味とか食べたい!」

 

「私は甘いもの食べたいの!」

 

「無茶言うなお前達! そんな要望通るわけ無いだろう! 華琳様申し訳ありません!」

 

真桜(李典)と沙和(于禁)の言葉に顔を青くして凪(楽進)が頭を下げた。

 

「別にいいわよ。あくまで要望を伝えるだけだし。……要望通らなくても文句言わないこと。それで、他に要望は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――side ラインハルト

 

「……珍味や甘いものという漠然とした要望から、蕎麦を使った美味しい料理や豚の丸焼きまで色々あるな……」

 

馬車の中(城の中)のキッチンにて、私は渡された要望のまとめを見つつぼやく。

 

「嫌がらせの要望っぽいのそこそこあるね……まあ現代料理やラシェーラの料理知ってるとわりと材料あればなんとかなる微笑ましい要望ばっかりだね」

 

エプロン付けてふんすふんすしてるイオン。 

 

「ラインハルトよ、ここはとことん手の込んだ料理であやつらを驚かせるべきじゃ」

 

趣味の範囲だが料理上手な祭もエプロンを付けて要望を覗き込んでいる。

 

「味見するから美味しいの頼むわね〜」

 

雪蓮は味見専門らしい。

 

やればできそうなものだが……。

 

「では、始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――side 曹操

 

日が暮れ始めたので天幕を張り休息の体制を整えた頃、ラインハルトがやってきた。

 

蓋をした大皿を複数持ち込み、長机の席についた私達の前に並べられていく。

 

「要望されたモノを中心に個別に料理を用意した。詳しくは添えた紙に書いてある故、気になるなら目を通すように」

 

ラインハルトの言葉と共に、侍女?たちが蓋をとって料理が姿を現す。

 

「一応普通料理も用意しているので、取皿で各自でとるといい」

 

真ん中に並んだ皿たちには普通?の炒飯や叉焼や焼売などが山分けできるようにかなりおおめに盛りつけされている。

 

「甘味は食後用に用意している故、満腹になるまで食べぬことをおすすめしよう」

 

その言葉とともに各自が食事を始める。

 

「鴨の肝に茸の1種……サメ?の卵……コレが大秦やその周りの地域の珍味なんか……?」

 

「コレが蕎麦……!? 羹風ですけど騙され……!?」

 

「姉者、本当に食べ切れるのか?」

 

「わからん!一度挑戦したかったんだ!」

 

……わりと混沌としてるわね。

 

私は特に注文してなかったので、中央の見慣れた料理を愉しませてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

「ではこれより甘味の時間だ」

 

一段落(春蘭は食べ切れずに力尽きてたけど概ね平和だったわ。……後で残りの肉を干し肉にして春蘭に渡されるみたい)したあと、ラインハルトはそう告げた。

 

そして先程のように私達の前と中心にそれぞれ蓋付きの皿を出してそれを一斉に開けた。

 

「なんやこれ……!」

 

「綺麗なの……」

 

そこに並んでいるのは宝石よりも煌めく果実たちが散りばめられた様々なみたことない(おそらく)甘味たちだった。

 

「これらは性質上、保存が効かん故、此処で余った分はこちらで処理させてもらう。……いずれも渾身の作故、味わってもらいたい」

 

と彼は言っていたが、言い終わる前に皆甘味を食べ始めていた。

 

……律儀に待ってた私の立つ瀬がないんだけど……?

 

「……すまない、少し用事が出来た、後片付けのために雪蓮たちも呼ぶ故、片付けはそっちに頼む」

 

そういって何処かに去っていくラインハルト。

 

……何か起きたのかしら……。

 

 




獣殿がどっかに行った理由は次話に多分わかります。
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