恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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「……本当にやるの、これ」
「敵を騙すにゃ味方からって言うだろ?」
「お母様、本当に死にそうだけど???」
「万一をオレも考えた。んでコイツの槍で一回傷を付けた。死ぬほど痛かった」 
「お母様ってやっぱり変わってるわよね……」


第二十四.五話 ※なおネタバレ後のことは考えてない模様

――side ラインハルト

 

私は徐州からかなり離れた地点に着地する。

 

そして南に広がる長江を一瞥し、東側で起きている戦いを一瞥する。

 

「……さて、出番だ、カイオーガ!」

 

私は懐から藍色の玉とカイオーガの入ったボールを取り出し、ボールを放り投げる。

 

「ぎゅらりゅるぅぅぅぅ!」

 

姿を表した途端に空は雨雲で満たされ、間もなく雨が降り始める。

 

「さあ、太古の姿を見せてみろ!」

 

私が投擲した藍色の玉を口に含み、カイオーガはそのまま長江に沈む。

 

そして水底が青く光ったかと思えば、ゲンシカイオーガが姿を見せた。

 

そして雨の勢いは増し、嵐のような荒れ模様となっていく。

 

「さて、いくとするか」

 

 

 

 

 

 

――side 蓮華

 

「――お母様! 前に出過ぎです!」

 

飛ぶように船を渡りながら敵陣に突っ込んでいくお母様に向かって叫ぶが悪化していく天気などがその声を阻んだ気がした。

 

「――!」

 

「!!」

 

敵がお母様見つけたのか向こうで怒声上げてるし!

 

「ああもうお母様囲まれてる! 思春! 蒙衝でお母様いる船に突撃掛けて!」

 

「承知!」

 

流石は思春。

 

「そんじゃ、派手にやりますかね」

 

「思春殿、蓮華様の護衛はおまかせを。軍の指揮に集中してくだされ」

 

「……わかった」

 

ネイさんはお母様のあとを追いかけるように船を跳んで渡り、

 

カノンさんは思春のために護衛を買ってくれた。

 

そしてポケモンたちは私の護衛をしている。

 

「……あれ? あの黒円卓の人は?」

 

「姿が見えませんがおそらく……ああ、あそこにいますね」

 

カノンさんが指さした方を向くと、黒い『影』がさながら怪物のように黄祖側の船をいくつか飲み込もうとしているところだった。

 

「っと! 風も強いし、遠くに稲光が見えてるわね……!」

 

「ここに落ちなければ良いですが……」

 

などと話していると

 

「孫堅様!?」

 

物見の兵士の1人が叫ぶ。

 

「どうした!」

 

「――孫堅様、黄祖と相打ち! 双方長江に落ちました!」

 

「なんですって!?」

 

私が先程お母様が飛んでいったほうに駆け出そうとしたが

 

「危ない!」

 

カノンさんに抱きつかれた。

 

とおもったら、大きな揺れが船を襲う。

 

……どうやら波が来てたのをカノンさんは気がついていたのだろう。

 

「――総員! 大波が来るぞ!衝撃に備えろ!!!!」

 

叫ぶように指示を飛ばす思春。

 

カノンさんが慌てて私を近くの帆に巻きつけられた縄を掴ませて私ごと縄を掴む。

 

跳ねるような感覚とともに足が船の甲板から離れたが、すぐに叩きつけられるような衝撃とともに着地?した。

 

着地はウーラオスが抱きかかえてくれたから怪我などはない。

 

「お怪我は?」

 

思春が駆け寄ってきて、無事の確認をしてきた。

 

「大丈夫。それよりお母様を!」

 

「この暗さに荒れ模様では流石に無理かと。河に飛び込ませるのは兵士が無駄死にするだけです」

 

「……!」

 

思春の言葉に私は歯噛みする。

 

「……敵は頭を失い三々五々に撤退していますが、追撃しますか? それとも……撤退しますか?」

 

カノンさんの言葉にハッとした。

 

――お母様が居ない今、私が彼らの長なんだ、と。

 

「……撤退よ。黄祖を倒した以上、これ以上死傷者を増やす意味はないわ。雨も酷くなっているし」

 

「……ご英断です」

 

思春がそう言ってくれたけれど、私の心が晴れるはずもなく……。

 

――偉大な母を失った痛みで、有りもしない傷が傷んだ気がした……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はカイオーガを仕舞い、2人の女性?が入った箱を『城』に持ち帰った。

 

「死ぬかもしれんというのに、ここまで派手にやるとはな……」

 

箱の中身を見て呆れを通り越して感心すらする。

 

片方は首が右半分ほど剣で切られている炎蓮。

 

もう片方は心臓を剣で穿たれている黄祖だ。

 

どちらも『影に包まれて姿が正しく視認できない』。

 

マレウスを前呼び出したときに創造がなんか変質していたので調べたのが此処で役に立つとはな……。

 

「カール」

 

『面倒この上ないが、やむを得まい。さっさと済ませよう』

 

私の声に影法師のように朧げだった我が友が応える。

 

そしてカールの治療により、2人の致命傷は治された……。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

パチっと目を覚ました炎蓮は、むくりと起き上がり、私と隣のカール、そして彼女の傍でまだ起きない黄祖を見たあと、再び私を見てニヤつく。

 

「賭けはオレの勝ち。あとは黄祖の『説得』だが……」

 

一糸まとわぬ姿で床に降り立ち、こちらに歩いてくる炎蓮。

 

『獣殿、私は仕事終えたので女神のコレクション眺める時間に戻らせてもらう』

 

瞬間的に逃げ出したカール。

 

「ま、なんとかなるだろ。 ここから出るにもお前の許可必要そうだし」

 

「それはそうだが、何故ジリジリと近寄ってきてる?」

 

わかってるが言葉にしておかねば行けない気がしたので問いかけた。

 

「……死の淵にいたぶん、滾っちまってなぁ。祭食ってるしオレも大丈夫なんだろ?」

 

「虎の相手はちょっと……」

 

「悪いが答えは『はい』一択な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――side 蓮華

 

「――というわけなの」

 

夜もすっかり暗くなった中、軍を撤退させている途中。

 

そして緊急性のある事態だと今更気が付き、私は慌てて緊急招集をかけて情報を共有したのだった。

 

『本当に、大殿が……?』

 

『脇腹槍で貫かれても半月で元気になったあの炎蓮様が……?』

 

『……信じられない』

 

『……』

 

祭や孫家古参の面々が困惑する中、雪蓮姉様は無言だった。

 

『思うところ、言いたいことは多いですが、やるべきこと、やらねばならないことがあります』

 

レナルルが申し訳無さそうに口を挟んだ。

 

『そうね。……お母様が居たから大人しくしてた連中や下手に出てた連中、水面下に潜ってた連中が動き出すかもしれないわ』

 

そう言ってからお姉様はとんでもないことを口にした。

 

『うん、決めた。アタシも早いうちに家督蓮華に譲ることにするわ』

 

「え、前言ってたこと本当だったの!?」

 

『そりゃまあ。あ、でも、今すぐ全権ぶん投げるつもりはないのよ? お母様みたいに段階踏む感じで』

 

『官位の方は引き継げるのか?』

 

『財力でぶん殴れば行けるんじゃない? ウチには最強の財源いるし』

 

冥琳が私の抱いていた疑問を代弁し、お姉様が他力本願な返事をしたためコケそうになった。

 

『相変わらず無茶を言う……』

 

『でもできるでしょ?』

 

『暫く内政の仕事やすませてもらうからな』

 

『遠征してるから免除されてるでしょ!』

 

『相変わらず仲よろしいことで』

 

イオンの言葉で2人の漫才が止まる。

 

『……ところでラインハルトの声に混じって水音のような、気になる音がきこえるんじゃが、今何しとるんじゃ?』

 

『少々料理している』

 

『…………とりあえず、家督は蓮華に。権限も追々渡してくから。留守組は揚州と周辺の不穏分子の動きに目を光らせること。あとなんか生きてる気がするけど『下手に行方不明のまま』なのは色々都合が悪いから、お母様の葬儀は早めに行うように。アタシ戻れないし、家督継ぐ意味でも喪主を蓮華お願いね。雷火、仕事増えるけど補佐お願いね』

 

……生きていたら、本当にいいのに。

 

『それじゃ、もう夜も遅いし、解散』

 

お姉様の言葉とともに通信が切断されていく。

 

「……蓮華様」

 

「大丈夫。……ちょっとつかれたから、先に船室で休ませてもらうわね」

 

私はそういって部屋に戻る。

 

「……何故ココにいるの?」

 

部屋には何処から出したのか、おしゃれな椅子に座り本を読んでいたラインハルトが居た。

 

「手紙を預かっている」

 

そういって私に手紙を投げてよこした。

 

「……」

 

『蓮華へ

 

コレ読んでるってことはオレがヘマして、オレの葬儀やれとか雪蓮あたりに言われたんだろうな。

 

まー、雷火いるし夜寝れなくて葬儀中に爆睡しなきゃ好きにすりゃ良い。

 

それより、雪蓮みたいに炎の様な苛烈な戦の才能や、シャオみたいな風のような気まぐれで相手の懐に入り込める人たらしの才能がねえからって凹んでんじゃねえぞ?

 

お前は誰かの背中を押し、人を鼓舞する才能がある。

 

その才能発揮するためにも、信じることと、諦めないことを心に刻んどけ。

 

お前なら大丈夫だ。

 

いつも見てるからな』

 

「……お母様……!」

 

涙が出てくる。

 

溢れて、零れて、止まらない。

 

そんなふうにしていたら、抱きしめられた。

 

最後にお母様に甘えたのって、いつだっけ?

 

お父様がいるなら、こんなふうに抱きしめてくれたのかな……?  

 

そっと私の頭を撫でる手の温もりが、今はとても、嬉しかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

――side ラインハルト

 

「寝たみたいだな」

 

寝台に眠り、それでも袖の片方を離さぬ蓮華の姿を見て炎蓮が姿を見せながら苦笑する。

 

蓮華の頬には涙の跡が残っているが、あまり気安く顔に触れるのはよろしく無いので見て見ぬふりをしている。

 

「卿の愛情不足では?」

 

「んな理由……たぶん、ないはずだけど……」

 

「片親なのを忘れているな?」

 

「うるせえ、作戦台無しにして蓮華とシャオにお父様呼びさせるぞコラ」

 

「それは困る」

 

「雪蓮は……そういうの悦びそうだからなアイツ。教育に悪いしやめとくか」

 

「ソレが良いと思う」

 

などと会話してると蓮華がモゾモゾと動き、炎蓮が城へと逃げ帰った。

 

「……ラインハルト……?」

 

「戦いの疲れなどあったのだろうな。良く眠ってたぞ」

 

少しして私の服の袖を握ってることに気が付き、慌てて離す蓮華。

 

「あ、その、ごめんなさい!」

 

「構わん。徹夜してもびくともせんからな」

 

「……今夜は一人で寝れそうにない」

 

顔だけ布団から出して不満?を口にする蓮華。

 

「甘寧に襲撃されそうなのだが?」

 

「思春なら分かってくれるはず。……ってまだ思春から真名許されてないの??」

 

首を傾げる蓮華。

 

「『カメムシと節操なしは死ぬほど嫌い』とか言われてな」

 

「声真似上手いわね。……でも仲良くしてもらわないと私困るわ。……親友と、(将来の)旦那様が険悪だと困るもの」

 

「……難しいが、善処する他無いな」

 

「そうね。……ねぇ、一人だとなんだか寒い気がするの。一緒に、寝てくれない?」

 

私の手に手を重ねる蓮華。

 

「……それで済めばいいがな」

 

「……私お姉様の代わりには「卿は卿だろう?」……そうね。私は私、だもんね」

 

少し心が軽くなったのか、表情が明るくなった彼女を見つつ、私は上着だけ椅子に掛けて彼女の布団に潜り込んだ。

 

 

 

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