「……」
「? お姉様どうしたの?」
「なんでも無いわ。――シャオ、今夜彼戻ってくるはずだから、夜に行ってきなさい。予定は調整するようにイオンたちに掛け合っとくから」
「??? とりあえずやっと許可降りたってことね。了解」
「あと同行させてる二人も一応連れて行ってね」
「えー」
――side ラインハルト
一晩しか不在じゃなかったはずなのだが
「あ、やっときた」
――後詰めで出てきたはずのシャオたちに追いつかれていたらしい。
天幕から雪蓮のところに言ったら朝食を皆で食べていた。
私は既に済ませていたのでコーヒーだけ用意して飲むことに。
「あ、そうだ。――二人の紹介しなきゃ。はい、ふたりとも、自己紹介ね」
シャオがそういうと、末席で小さくなってたのと割と堂々としてた褐色肌で雪のように白い髪の姉妹?が顔を上げてこちらを向いた。
「えっと、厳白虎……です」
「厳輿だ」
……とある世界*1のガラシャこと明智珠そっくりなのと
艦これ世界の武蔵そっくりなのが名乗り上げた。
……色々言いたいがまあやめておこう。
「……なるほど、小蓮殿がおっしゃった通り、万不当の猛者が居ますな」
「相手にならないから止めよう、ね?」
「強い相手と戦うからこそ学べることもある。――まあ今は賊討伐の真っ最中。無用な消耗は避けるべきなのは理解していますのでご安心を」
前半は厳白虎に、後半はこちらに告げる厳輿。
「(……夜まぐわってるの自重した方がいい?)」
「(余裕があるのだからよいのではないか?)」
なんかアイコンタクトしてきたので返しておいた。
「あと、袁術のところと一緒についてきた董卓軍の人たちなんか調子悪そうだから時間作って様子見てあげてくれない?」
「そうなの? わかったわ。ラインハルト連れて早めに交流するから」
「あと……董卓からそれとなーく教えてもらったんだけど――」
同日夕方。
私達は袁紹軍の軍議用天幕に集まっていた。
昼間にあつまれ?
行軍と移動しつつ物資の確認などが合ったので無理だ。(ガチ)
「……はい、美羽さん、自己紹介どうぞ」
何故かすっごくテンション低い袁紹がチラチラこちらを見つつ顔合わせの司会進行をしている。
変なものでも食べたかな(見当違い)
「……袁術、字は公路じゃ、こっちが張勲。こっちのが董卓と賈駆じゃ」
なんか董卓と賈駆の目が死んでるんだが……早急にケアが必要だな。
「私のとこと華琳さんのところは良いとして……孫策さんからお願いしますわ」
「ハイハイ。アタシが孫策。字は伯符。――こっちの彼がラインハルト。そして部下の黄蓋と呂蒙よ。」
「あ、お主らにあったら言わねばと思うておったことがあるのじゃ」
「何かしら、袁術」
「――寿春でほとんど物資を得られんかったんじゃがどういうことじゃ?」
瞬間的に天幕の温度が数度下がったが、気が付かないのは袁術だけか。
「…………あそこアンタの苛政のせいで反乱起こって復興中なの忘れたのかしら????」
「復興なぞ3日で終わらせられるじゃろ。それと大義のために使われるのじゃ、民から一食くらい抜いてでも妾たちにもがっ!?「おほほほほ、孫策さん、この話は後で。――劉備さん、紹介お願いしますわ」」
袁紹が顔色変えて袁術を抑え込んだ。
抵抗してるが体格差とかあるので袁紹が優位である。
……雪蓮の血圧が跳ね上がってる感じがするのでそっと尻を突くように触れて気をそらす。
ちらっとこちらを見てから落ち着くように促すと深呼吸をする。
わかってると返事の代わりにお尻を手に押し付けるのはどうなんだ?
「――ということで曹操さん3万、孫策さんの5万ちょっと*2に袁術さんの2万と董卓さんの1万、劉備さんの2千、私の5万で16万2千と少しの大軍に為りましたわ。――北海の敵はおよそ20万と言われてますので、数の差はかなり縮まりましたわね」
いつの間にか劉備の紹介は終わってたらしい
「あと練度のこと考えれば……まあ互角くらいはできるでしょうね」
「せっかくですので、明日にでも交流会を開きたく……私は少し美羽さんとその日お話があるので私達抜きでやってくださいませ」
「……私も少しお話あるから袁紹と途中で入れ替わるかもしれないけど、仲良くしてくれるとありがたいわね」
曹操が胃痛で苦しんでそうな袁紹に気を利かせている……。
それなり以上に仲がいいのは、噛み合わないことも多いがどちらも人とは一線を超えた立場や才能を持ち合わせてるが故だろうか……。
「そういうことで行軍の疲労を加味し、明日は進軍を中止して交流の場を設けたいと思いますわ。――それでは解散」
――side シャオ
「こっちこっち」
私は今、厳姉妹とともに夜の陣をこそこそと移動している。
目的? 言うまでもないと思うけど夜這いよ。
雪蓮お姉様からようやく(ここ重要)、許可が出たのと「なーんか不穏な予感するからあの二人も毒牙にかけておきたいわね」と言われた結果、3人で移動している。
……はじめてなんだからもう少し雰囲気とか……って思ったけど、昨日あたりにそんなのへったくれもない事態が起きたらしいし、まだマシかしらね。
天幕に入ると、椅子に頬杖ついて目を閉じていた彼が目をゆっくりと開いた。
「なにをしに……と聞くのは無粋か」
「そういうコト。手土産に……あれ? あの二人が居ない」
振り返ると入るまで後ろに居たはずの二人がいなくなってる。
「あの二人が居てはゆっくりとできんからな。別の場所で、
「……てっきり初回から4人でとか思ってた」
「それなりの理由がなければ流石にやらんぞ。雪蓮から聞いただろうが昨日のは下手にバラバラに相手すれば揉める理由があり、梨晏のときは雪蓮が業を煮やして巻き込み、まだ半身も裏の手もなかったからな」
そう言うと立ち上がって寝台移動してその縁に座り、横に座るように彼は促した。
特に嫌がる理由もないし、隣に座る。
「少し喉が渇いたのでね。付き合ってくれるかね?」
「へ? いいけど……」
「何が良い?」
「……甘くて温かいものとかある?」
「ふむ。チョコケーキを見たと思うがアレと同じ感じの甘い飲み物を用意しよう」
彼はそう言って指を鳴らすと近くの机に2つの湯呑が現れた。
そしてその片方を渡してきた。
器が温かく、手が少し震えていたことに気がつく。
「少し熱いのでな、軽く冷まして飲むと良い」
「はーい」
ふーふーと撥ねないように、でも冷ますように息を吹きかける。
彼はソレを見てなんでか微笑ましいものを見るように見ている。
……やっぱり姿が幼いからかなぁ……。
「……ああ、すまない。――雪蓮も蓮華も卿も……炎蓮も、冷ますときの顔がそっくりでな」
そうなんだ。
――鏡とかあんまり見ないし、冷ましてるときの顔なんてなおさらだ。
雪蓮お姉様も、蓮華お姉様も……お母様も……そっくりなんだ。
「……お母様……」
生きてる気がするんだけど、どこにいるか見当もつかない。
……雪蓮お姉様とか彼は知ってそう(というか死亡偽装とかやるならこの二人が手引しないと成功しない気がする)だけど……。
そんな事を思いながら飲んでいると、彼は少し考えるような顔してから口を開いた。
「……ゆっくり眠れば、頭の中も整理できるだろう。今日は寝るといい」
彼は私の事を案じてくれたけど、首を横に振った。
「まだ向き合えてないし、向き合うの怖いから――。今日は寝たくない。――代わりになにも考えられないようにしてほしいな」
「……仰せのままに、お姫様」
彼との口づけは、珈琲の苦いものと甘い砂糖が混ざった、不思議な味がした。
――side ラインハルト
「……シャオは眠っているぞ」
静かに寝息を立てている少女の頬をそっと撫でてから、天幕の外で夜空を眺める長女に声をかける。
「本人主導で仕組んだとは言え、お母様の1件が尾を引いてるわね……。とりあえずシャオがある程度眠れるようにしてくれてありがと」
天幕越しに背中合わせで会話する私と雪蓮。
「……不眠症か」
「知らせの後から半刻くらいで目を覚ますようになってたようね。無自覚で歩き回りも合ったみたいで、明命が添い寝するようにしてたらしいわ。今日は夜這いって明命に伝えて断ったらしいけど」
「……雪蓮も寝ると良い。――夜更かしは美容の天敵だぞ?」
「妹が心配過ぎて寝れないわよ」
「明日の交流どうするんだ」
「え?無尽蔵な持久力あるあなたに全権ぶん投げるだけだけど」
「えぇ……(困惑)」
私が本気で困惑していると
「……冗談よ(たぶん)。その様子ならシャオは大丈夫そうね。――じゃ、後よろしく」
そう言って彼女は私の天幕から離れた。
なお翌日調子崩したと言って二度寝かましたため、私が孫策軍代表で交流会に参加することになった。
交流会は軍議と違い、主だった将全員参加(なお雪蓮+袁術+袁紹不在)だ。
「……張勲、袁術に張り付いてると思ったけど、違ったわね」
いつの間にか華琳(先程乾杯した直後に真名で呼べと言ってきた)が隣におり、こちら小突いて耳を貸せと近づけさせた後に小声でそうこぼした。
「雪蓮探してるあたり袁術溺愛の限界超えて胃痛感じてるのだろうな。あと卿がいるからこちらに来ようか悩んでないかアレ」
「……先に董卓の方と話しておくわ。――本人も部下たちも粒ぞろいだし」
そう言って去っていく。
人材蒐集家の癖が出てるぞ覇王様。
そんなふうに思っていると、環境慣れしてないネコ並みに恐る恐るこちらに張勲がやってきた。
「あのー……本当に孫策さん、体調不良で?」
「どちらかというと心労で疲れが出たようだ。――明日には元気になっているだろう」
「ソレは良かったです」
「――寿春の件はアレ以上つつかなければ、こちらから何か言うつもりはない。雪蓮からもそう言伝を預かっている。――互いの胃を削るのは不毛だろう?」
「そうですね。ソレが聞けて何よりです。……何かありましたらまた」
言質取れたからかホッとした様子で去っていく張勲。
服の裾を軽く引かれたため、振り向くと絵本を持った呂布と陳宮がいた。
「……嘘つき姫と盲目王子……あなたが書いた?」
「天の国でそれなりにしれた物語だ。私はそれを絵本や紙芝居に落とし込んだにすぎん」
呂布の質問を半分否定する。
「でも……あなた……が居なかったら、恋、本を読むことなかったと思う。ありがとう」
「恋殿が本に興味持つようになったのには感謝してるのです。あと紙芝居、あの蛇女の語り口で聞きたいので他のものもあったら頼んだのですよ」
「うむ……時間を見つけて用意しよう」
「話はそれだけ……また」
そう言うと二人は去っていく。
後ろを見ていたがどうやらまだ客人がいるようだな。