「月も大概よ。ほら、動かないのっ」
「誤魔化しの化粧、同時進行でやらずに片方ずつやればええんとちゃう?」
「自分後回しの悪い面が変に作用したな」
「……」(絵本を黙読中)
「恋殿なら食べれば大体なんとかなるので」
「「「「いや、多少の傷も食べてる間に治るのは流石におかしいと思う(ぞ)?」」」」
――side ラインハルト
呂布と陳宮が去った後、私は後ろを振り向く。
そこには寝不足か疲労かその両方か……目にできている隈を化粧で誤魔化している董卓と賈駆が居た。
「その……孫策さんは……?」
「彼女は別件に心を砕いて居た反動で少し休んでいる。……私が話を聞こう」
賈駆に返事すると、董卓が口を開く。
「その、寿春の件、止められず……」
「その件なら張勲からも聞いた。互いに話を終わりとすることで決着はついている。卿らが気にする必要はない」
「しかし……」
「……では私の、孫策が抱えている悩みを聞いて欲しい」
「……悩み? 解決できるかは……」
董卓が困惑しながらそう零したが私は続ける。
「先日顔を合わせた娘たちが疲労困憊で倒れそうなのだ。今倒れられるのは敵に利することになる。こちらには落ち着いて眠れる場所と方法はあるのだが、どの様に誘えば不審がられずに来てもらえるだろうか」
私の言葉に互いを見合わせる賈駆と董卓。
「……えっと……」
「……普通に誘えば……?」
「変に考えぬ方が良いと。なるほど。私もそう思う」
私の言葉に目を丸くする2人。
「……!」
「あ、ありがとうございます」
「はて? 私は一般論を語り、卿らの意見に同意しただけだ」
わざと惚けてみせると賈駆が口を開く。
「そう言えばボクそちらが安眠して欲しい人たちには仲間がいるって知ってるんだけど、2人はその人たちくらい深刻で、もう2人はそこまでじゃないけど眠りがかなり浅いみたいなのよ。……6人同じ場所で安眠できると思う?」
「孫策軍の軍議用天幕が今日は空いてるのでな、そこで準備している。……流石にその調子では倒れかねんのでな、可能なら交流会の後来て欲しい」
「分かったわ。月もいいでしょ?」
「うん。……改めて、ありがとうございます」
「まだ交流会は続く。厳しければ椅子に座るなりして休息を取ることを強く勧めよう。……いや、その様子では交流会途中で倒れかねない。――ふたりとも手の甲を出すと良い」
「? こうですか?」
「小蓮がなんか不思議な力持ってるって言ってたけど……」
ひみつ道具のケロンパス*1を取り出して*2それぞれの手の甲に貼り付ける。
「……え?」
「身体が、軽くなった……?」
少ししてから目を丸くして変化に気がつく二人。
「疲れをそれで吸い取った。吸い取った分吐き出させる故返してくれ」
「あ、うん」
「……本当にすごいわね」
「応急処置のようなものだからな。どちらにしても休息は必要だ。……他の4人も連れてくると良い」
二人から回収したケロンパスを自分の腕に貼り付けて貯められた疲れを自分が請け負う。
……キリトが2枚同時にしてたら目眩おこしたな、コレ。
そう思ってると先程去っていった呂布に陳宮、そして張遼と華雄がやってきた。
「ホンマなんか……その、疲れ取れたって話」
「信じられんが……月たちの顔色からして事実なのだろう」
自分の常識と目に見える情報のせめぎ合いしてる(張遼は前者、華雄は後者優勢)二人。
「……さっきぶり」
呂布が手を振っている。
「霞、無いと思ってた蛇女や変な帽子被った2足歩行したり工事作業するネコの群れ*3がいるのですぞ? 疲労を取る不思議な札*4があってもおかしくないかと」
「ソレ言われるとなぁ……寿春でだいぶ常識壊れたし*5」
陳宮の言葉でかなり傾いたな。
それはさておき。
「論より証拠だ」
私はそう言って4人の腕にケロンパスを貼り付ける。
「……!」
「……マジかぁ」
「おお、楽になったのです」
「……便利?」
4人とも体の変化に目を丸くする。
「便利だが、乱用すると身体が持つ本来の回復力を損ねるのでな、次は無いと思ってくれ」
「……ありがと」
呂布が頭を下げた。
「私のお節介故、あまり気にするな。――他の者たちが卿らと交流するために待っている。行くと良い」
私がそう言うと、董卓たちは互いを見合わせた後董卓を先頭に一列に並んだ。
そして、董卓が耳を貸せとジェスチャーする。
何かと思って耳を貸す。
「私のことは――月と呼んでください。本当に助かりました」
董卓……月がそう耳元でささやくと笑顔を見せてから他の者たちとの輪に入っていく。
次に賈駆が同じように耳をかせとジェスチャーするので(ry
「ボクの事は詠でいいから。月の疲れなんとかしてくれてありがと。――でも月に手を出したかったらボクに話通さなきゃ許さないから」
……卿はアイドルのマネージャーかね?(混乱)
頷く他なかったので頷くと満足したように月を追いかける。
次は張遼だ。
「ウチの真名は
そういって肩をぽんと叩いたら彼女は去っていく。
次は……華雄か
「あいにく預ける真名がないので華雄のままで頼む。――また月たち関係で頼るかもしれない。――その時の対価は私ができる限り払うから……」
「……自己犠牲は尊いが、揉めそうなのでもしそうなったときは彼女たちに話を通してから改めてだ」
私はそう言って軽く背をたたき、送り出す。
そして次は陳宮。体格差的にきつかったので膝ついて耳を傾ける。
「ねねの真名、音々音なのです。――ねねと呼んでも良いですぞ。――あとで代金先払いするので新作ができたら一番に送ってください」
「ふむ、分かった」
私の言葉に満足したのか、同じくらいの背丈である諸葛亮たちのところに突撃するねね。
「……恋。こまったら、頼って良い?」
「人よりできることは多いが全能でないことを理解した上で頼るなら構わんが」
「……ん。もう少し、会話できるようにがんばる」
「ふむ……左腕を出してくれ」
「?」
私は雪蓮たちと同型の端末を手首につける。
「…………恋にだけ?」
「あまり安売りしたら私の嫁に締め上げられるのでな……」
「……大変そう。でも、ありがとう」
「使い方はそのうちわかるはずだ。ちょっとやそっとでは壊れんが、わざとぶつけるのはしないように」
「ん」
頷くと恋は料理があるところに向かって暴食を始めていた。
……張飛が恋の大食いみて大食い対決を言い出した。
料理とか増やさねばな。
――side 月
……気がついたらとても柔らかなものに包まれている感覚に満たされ、穏やかな聞いたことのない音色がどこからともなく聞こえてくる。
そして目を開いたことで、私は眠っていたことを思い出した。
竪琴の一種だろうか、人が抱えられない大きさのモノを女性が演奏している。
屋根付きの天幕でほのかな明かり以外は無く、夜のような暗さ、楽器の音色にこの寝台の心地よさ。
……もう少し、寝てもいいかな。
「……」
いつの間にか近くに来ていた人の姿……ラインハルトさん……。
そっと毛布をかけてくれて……いつの間にか毛布ズレて……かけ直し……あり……がとう……。
――side ラインハルト
「忘れてください」
「え、なに「忘れてください」う、うむ?」
3時間少し寝かせ、緩やかに意識が起きるように天幕に光を入れたりして彼女たちを起床させたのは良かったが、目覚めた直後こちらから顔をそむけて何かをした後、涙目で月が先程の発言をした。
……気持ちよさそうに寝ていたが……忘れてほしかったのか……*6
「……うむ、元気になって何よりだ。悩みのタネもなんとかなったようだし……なってないのか?」
私の言葉に顔を暗くする月と詠。
「その……」
「人の方の備蓄はなんとかなりそうなんですけど、馬の方が帰り分あるかちょっと怪しくて……」
「世代交代してるけど、涼州時代からの馬たちだから愛着それなりにあるのよ。補給できると思ってたんだけど雲行き怪しくて……」
「……もし本当にそうなったときはいうと良い。――タダはできんが要相談でなんとかしよう」
その言葉に二人がホッとした様子でお礼を言った。
……とりあえず彼女たちの悩みのタネはなんとかなったっぽいのでヨシ!(現場猫)
彼女たちを見送るときに寝具をおもにねねからねだられたがこの時代価格を伝えたら全員顔真っ青にして諦めた。
……汚した代金払えない?
べつにぶった切って中身ばらまいたわけでもないのでいらんいらん。
そう言うと彼女たちはホッとした様子で去っていった。