恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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『それを言っちゃぁおしまいよ』
ラインハルト視点、前の話の翌朝の話。

『雪蓮に酒、穏に本、明命にネコを与えるときは計画的に!』
ラインハルト加入数日後、雪蓮視点のお話。

『積み重ねた常識は知らぬうちに色眼鏡となる』
ラインハルト加入後約1週間後、雷火視点の話。

それではどうぞ。


第三話 孫呉での暮らし

 

『それを言っちゃぁおしまいよ』

 

――side ラインハルト

 

ポケモンたちの能力などの説明とその関連用語の翻訳に半日使い、自室で寝る振りしつつ転生特典などの確認をしていたら翌日になっていた。

 

一応6匹ともボールに戻したが、カイオーガが自由を求めているため、転生特典一つ――影の国の方に放牧……放流して必要になったら呼ぶスタイルにすることをとりあえず決める。

 

服などを整え、聖餐杯、シュピーネ、ベイ、マレウスの4人に影の国の確認ついでに適当な階層でくつろがせるようカイオーガを託してから部屋をあとにする。

 

「……いかん、食事しないと流石に不自然に思われるな」

 

ラインハルトという怪物の恩恵か、三大欲求が驚くほど薄いことに今更気がつく。

 

――グルメ界の食材を手に入れられるというのに、楽しむことを忘れたらもったいないな。

 

そう思いつつ、食堂を探す。

 

しばらく見当たらず首を傾げながら徘徊していると、近くのドアが開く。

 

「ふぁああ……」

 

そこには寝ぼけ眼、下着が透けるような薄着の孫権の姿が。

 

「……」

 

無意識に気配を消して、彼女が過ぎ去るのを待つことを選ぶ。

 

声をかけると話が拗れそうだからな。

 

あと少しで完全に空気と一体化するところまでき「おい、ラインハルト、何してんだ?」

 

振り向くとそこには酒と書かれたひょうたん片手にした炎蓮が居た。

 

「こんな通路の真ん中で何を……なんだ?寝起きの蓮華でも手籠めにするために息ひそめようとしてたのか?」

 

「あの姿に声掛けしたら面倒事になると思ったから回避しようとした「そうなんだ」」

 

炎蓮にかまけて居たら腕で胸元と股あたりを隠しながらこちらを睨む孫権が直ぐ側まで来ていた。

 

「……恋仲でも無い女の下着姿見ておいて何もなしは無いんじゃないかしら……?」

 

ジト目の孫権。

 

「別にいいじゃねえか、減るもんじゃねえし。つかコイツが住むことは昨日伝えただろ、それなのにそんな姿してるお前が悪いだろ」

 

「お母様みたいに開けっ広げなつもり無いですから!!」

 

耳かっぽじりながら冷静に突っ込む母親に反論する娘。

 

「胸の内側下半分からヘソ下くらいまで開けっ広の、前の切れ込み大きな服を普段から着てソレ言われてもなぁ……他所の連中的にオレたち同類だと思われてるぞ、多分」

 

炎蓮の反論に石化したような孫権。

 

「……!? そ、そんなはずは……ラインハルト! あなた視点どうなの!?」

 

「……ノーコメント。回答拒否だ」

 

「!?」

 

困惑する孫権を横目に炎蓮は私の腕を掴む。

 

「さて、何にせよ、朝の飯食わねえとな。行くぞ、ラインハルト」

 

「掴んで引っ張りながら言う言葉ではないぞソレ」

 

私は炎蓮を怪我させないためにも大人しくついていくことにした――。

 

 

 

 

 

『雪蓮に酒、穏に本、明命にネコを与えるときは計画的に!』

 

――side 雪蓮

 

彼が来て数日。

 

知らないところで粋怜と鍛錬で粋怜負かしたり、碁で冥琳相手にそこそこの差をつけて勝ったりしてるらしいが、幸か不幸かそういう場面に出くわさない。

 

「……うん? お酒の匂い……? でも嗅いだことない匂いがするわね……」

 

私のお酒探知する鼻が匂いを嗅ぎつけたのだが、自分の知らない酒の予感がする。

 

とりあえず今行けばありつけそうだし、行ってみよ。

 

 

 

 

匂いを頼りに城の東屋にたどり着くと、そこには酔っ払ったネコたちを撫でて幸せそうにしてる明命と、見たこと無い光沢の表紙をした本を読んでうっとりしてる穏、そしてそれらを東屋の卓から興味深そうに見てるラインハルトとお母様が居た。

 

「お、予想通り来たな」

 

「本当に来たな……」

 

なんか嬉しそうなお母様とそこそこ困惑してるラインハルトの手元を見ると、見たことのない器に入った酒(匂いの発生源!)とソレを注いだ椀が3つ並んでいた。

 

「ソレお酒でしょ?私にも頂戴?」

 

私は空いてる席に座りながらそう言うと、椀の一つを私の前に差し出してきた。

 

「……もしかして、私が来るって思って予め用意してた?」

 

ラインハルトに聞いてみると

 

「炎蓮の勘通りにな。――その酒は私の持ち込んだものだが、希少というほどでもない。――駄賃代わりにこの酒瓶ごと渡すゆえ、後始末を頼む」

 

一口含んだだけでわかる。

 

きれいな水と相当良い米を使った酒だ。

 

――なんの駄賃代わりかわからないけど、酒瓶ごともらえるなら安いものだ。

 

なんか嫌な予感がするって勘が言ってるけど無視しつつ、私はうなずいた。

 

「ついでにつまみも置いておく。――烏賊を炙ったものだ。味は悪くないはずだ。あとは頼んだ」

 

そう言うと、ラインハルトはどこかに去っていった。

 

「つれないわねぇ。酒飲みながら腹割って色々話したいのになぁ」

 

「アイツ(ザル)どころか枠だぞ、酔わせようと思ったら、大陸の酒必要になるかもな」

 

その言葉に私は驚いて噎せてしまった。

 

「けほっ……お母様ソレ本当??」

 

「ああ、昨日の夜、アイツ酔い潰して既成事実作ろうとしたんだけどな、オレが先に潰れたから間違いねぇ。――オレのほうはどぶろくで、アイツはその酒より強いのを同じ量飲んだのに今日全く二日酔いした気配もねぇからな。――少なくともそこらの酒買い集めなきゃアイツの頬赤らめさせるのも難しいだろうな」

 

そう言うとお母様はつまみを半分ちぎって咥え

 

「雪蓮、明命の方は放置で良いが、穏の相手はしっかりやっとけよ。――ラインハルトがウチのご先祖様の兵法書を商売で活用するって本を穏の癖知らずに渡しちまったみたいだからな」

 

言い終わるやいなやそそくさとどこかに行った。

 

「えっ、ちょっと待って。後始末ってそうい――」

 

お母様問い詰めようと立ち上がろうとしたが、両肩を掴まれて座り直させられた。

 

「ふふふ~雪蓮様がこの、火照りなんとかしてくださるんですよね―?」

 

……お詫びとして酒とつまみくれたラインハルトはともかく、つまみ半分持っていったお母様にはそのうちぎゃふんと言わせないと……。

 

なお、明命を巻き込んで被害減らそうとしたけど、気がついたときにはネコとともに消えていた。

 

判断が遅かったわね……私。

 

 

 

 

 

『積み重ねた常識は知らぬうちに色眼鏡となる』

 

――side 雷火

 

「……この案件は……却下じゃな、割りに合わん。こっちも却下。あからさまに予算が多い。中抜き目的にしても露骨すぎるわ。こっちは……権限を超えてるから大殿に確認。こっちは許可、こっちは……」

 

書簡に書かれた嘆願や他の県の役人仕事関連の決済を捌いていると、扉を叩く音がする。

 

儂は筆を休め、そちらを見る。

 

――扉を叩くヤツなど居た覚えがない。一体誰が扉の向こうにいるのだ……?

 

場合によっては声を上げることを覚悟しつつ、

 

「入って良いぞ」

 

と告げる。

 

すると扉を開けたのは抱えるほどの量の書簡を持った、天の御遣いだった。

 

「……何をしてる?」

 

「暇が過ぎたのでシャオの勉強用に回された過去の案件に付いて解決方法の助言したりしてたら炎蓮から『文官仕事できるなら雷火の手伝いをしてきてやれ』と言われたのでな。ついでに城の入り口に来てた書簡を受け取って持ってきたところだ」

 

そう言って御遣い……ラインハルトは空いた机にその書簡を下ろした。

 

「本当にできるなら構わんが……邪魔だけはするでないぞ?」

 

「そうさせてもらう」

 

そう言って筆などをどこからともなく取り出すと、驚く速さで読み解き、書簡を分類し、必要なら訂正を入れ始める。

 

「……」

 

儂以上かもしれん手早さに目を丸くしてると、手を止めてラインハルトがこちらを向いた。

 

「……ああ、流石に卿が任せるに足るまでは卿に後で確認してもらうのはこちらも了承している。ぜひとも私のミス……間違いがあったら教えてもらいたい。人間是日々勉強為だ」

 

いや、言いたいことは違うが……。

 

口が動かないので諦めて今やってる分を片付けることにした。

 

 

 

 

 

「…………ラインハルト」

 

「なにか間違い「明日からぜひとも手伝ってくれ」えぇ……」

 

陳情や草案に対して的確な対応、予算がおかしい場合はその概算になった理由の請求と本来想定される予算額とその内訳を添付して返し、草案などについて清書並みにしたものを追加してみせる。

 

この男もできたとしても武官だろうと思っていた自分が恥ずかしいくらい完璧な仕事ぶり。

 

ぜひとも! 文官仕事を任せたい。

 

場合によっては孫家の筆頭内政官の座を譲っても良いと思ったくらい使える。

 

なんで使えないと思ったのか、過去の自分を叱りたいくらいだ。

 

……歳を取ったのは否定できない。だが自分の人を見る目は昔のままと思っていたが、積み重ねた常識が人を歪んだ認識で見てしまうようになったのかもしれない。

 

――人間是日々勉強為……たしかにそうだな。

 

同時に人の判断をするときは気をつけねばならんな。

 

「今日は失礼する。――張昭殿」

 

「雷火じゃ」

 

儂の言葉に何をおもったのか、退出しようとした体勢のまま、こちらを見るラインハルト。

 

「……それは……」

 

「お主をほんとうの意味で孫家の仲間として儂は認める。故に真名で呼んで良いといったのじゃ。――わかったらさっさと出ていけ!」

 

「む、分かった。失礼するぞ、雷火」

 

そういってそそくさと出ていくラインハルト。

 

……なんじゃ、なんか調子が狂うのう……。

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