恋姫†無双 孫呉に現れし黄金の獣   作:月神サチ

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『復帰の周瑜』
ようやく完治した冥琳のワガママをラインハルトが聞いたりするみたいです。

『寒いとある夜の一幕』
モブキャラ視点。
作中はおでんが恋しい季節のようです。


それではどうぞ。



第二章 拠点にて
拠点にて その6


『復活の周瑜』

 

――side ラインハルト

 

私は治療室にて、冥琳とともにシュピーネの書いたカルテを見つつ、シュピーネの発言を待つ。

 

「……私の所見でも、手術による後遺症や感染症の発症、肺病の再発の兆候は見られません。肺活量と呼吸によるO2及びCO2の割合変化などを見ても、健康と断言します」

 

「ということは、やっと自由に仕事できるのだな?」

 

隣りにいる冥琳の言葉にシュピーネが頷きつつもただし、と付け加える。

 

「書庫等の埃が多い所に行く場合鼻と口をなるべく目の細かい布で覆って仕事したほうが良いでしょう。肺病の原因が淀んだ空気を直に肺に入れることで起きた可能性が高いと私は見ていますからね」

 

なんならハイドリヒ卿からガスマスク借りてくださいと言って、シュピーネは報告完了とばかりにそそくさに去っていった。

 

「……さて、快癒を皆に通知……何故止める、冥琳」

 

私が端末をつかって通知しようとしたら、手を掴まれて止められた。

 

「治療のために色々我慢してきたんだ。今日明日くらい自由にしたい」

 

「……皆に通知しても明日くらいまでは休みにしてもらえるかもだが、気を使われたくはない。だから明後日あたりに完治の通知をして、それから軍師の仕事に徐々に復帰したいと」

 

「良くわかってるじゃないか」

 

私の言葉に頷く冥琳。

 

そして私の手をとり、立ち上がると外へ向かおうと歩き出す。

 

必然的に私はそれに引っ張られる。

 

それを見た彼女は少し悪戯っ子のような笑みを浮かべる。

 

「『病人のワガママ』だ。今日くらい許してもらいたいが構わんな?」

 

「……『たまには』な。卿が完全に雪蓮側に回ったら誰も雪蓮を止められん故」

 

「そうだな。……とりあえず街に行こう。街灯とやらがつけられたと聞く。ぜひとも見なければな」

 

 

 

 

 

「まだ明るいからなんとも言えんな」

 

朝……と言っても日が出てしばらくしている――の大通りを2人で歩く。

 

時間が時間だから街灯は明かりが消されており、ぱっと見背の高いオブジェにしか見えない。

 

「日が暮れた後にもう一度だ。……付き合ってくれるな?」

 

「予定は開けた。今日明日はお付き合いしようお嬢さん(フロイライン)

 

私の言葉に満足そうにする冥琳。

 

それと共にお腹のなる音がしたので、近くの食堂に2人で向かうことに。

 

 

 

 

朝からやっているだけあり、人はそれなりにいる。

 

メニューを見て注文が決まったので早速店員を呼び寄せる。

 

「何にしやすか?」

 

「彼女は炒飯と水餃子。こっちはラーメンと焼売を」

 

「へいっ!」

 

冥琳の分も注文すると、店員はスタコラサッサと厨房に引っ込む。

 

「……いくつか聞きたいことがある」

 

「答えられるかは保証できんが努力しよう」

 

私の言葉にジト目になる冥琳。

 

「――まずは……今後大陸はどうなる?」

 

「反乱の頻発、権威の失墜、そして現王朝の崩壊は避けられん。その後は不確定だが、いくつかの国に割れるだろう。まあ孫家の育てた苗木を大樹にし、揚州と荊州、交州くらいの領土を持つ国にするくらいはできるだろう」

 

私の言葉に何処か納得したような顔をする。

 

「次に……『孫家にお前の血は何時入る』んだ?」

 

「……雪蓮から聞いてないのか?」

 

「うん?」

 

「……詳しくは雪蓮に聞いてくれ。私からは言えん」

 

「……?」

 

 

 

 

――side イザーク

 

 

「もー、いい加減『外』に出してくださいよ。お兄様!」

 

境界の壁越しに私へ解放を要求する『父上』と『孫策』の娘。

 

「父上とお前の母親の許可無くば出せない。……『ハーレム思想』はともかく、『狂信的父上至上主義』と『父上の貞操を狙う倒錯的背徳(インモラル)脳』である限り、父上には会わせられん。逆レ未遂を私は知ってるからな」

 

「お兄様は私に死ねと!? ひどすぎません!? もう『数百年』会わせてもらえてないのに!」

 

「(あと数万年は放り込んでおくべきか……) また暫くしたら来てやる。 お前の母親を説得するか、世界がその無法を許すことを祈るかはお前のすきにするといいさ」

 

「お兄様の鬼! 悪魔! 孫娘Bカップ*1!」

 

 

 

 

 

――side ラインハルト

 

「とりあえず種無しではなさそうなのでひと安心だな」

 

「まあ……そうだな」

 

冥琳の言葉に種無し疑惑かけられていたことにすこし落ち込む。

 

「……あまりつつかれたくないか?」

 

冥琳の言葉に頷くと、何処か面白そうに笑みを浮かべた。

 

「お前にも弱い所の1つや2つあるものなんだな」

 

「色々あるが、宝具や基礎能力の高さなどで誤魔化してるに過ぎん」

 

「なら私も弱い所を見せないと不公平だな」

 

「うむ……うむ?」

 

反射的に頷いたが疑問符を浮かべる。

 

「まずは腹ごしらえ。話はそれからだ」

 

狙ったかのようにやって来た食事により会話は断ち切られ、そこはかとなく嫌な予感を感じつつ、食事を済ませるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昼間から風呂とは……体内時計壊れそう」

 

「……体内……時計? なんだそれは」

 

浴槽の隣で私の腕枕に頭を預けてる、一糸纏わぬ冥琳が首を傾げる。

 

「生活に合わせて身体が時間毎に身体を自動的に調整する機能がある。それの時間を確認する機能だな。……端末の時計のような機能に近いが、それが実際物理的に存在してるわけではないぞ?」

 

半ば現実逃避する私は雑学を垂れ流している。

 

「ふむ。……体調不良のときや意図的に夜ふかししたりした時は別として、朝昼夕に腹が減り、夜眠くなるのはその体内時計がちゃんと動いてるからというわけか」

 

「その通り。ちなみに人によっては1日あたり最大で前後半刻のズレがある。それは同じ時間に朝日を浴びることでその日のズレを直すことができるぞ」

 

「朝から体操とやらをしているのはそのためでもあるのか」

 

「ああ。卿も参加するかね?」

 

「そうだな……今後子を宿し、産み育てるなら、体力つけねばならんしな」

 

「……ああ、ソウダナ」

 

私が遠い目をしてると、浴室の扉が勢いよく開く。

 

「昼からお風呂入ってるなんて珍し……冥琳!?」

 

「雪蓮か。丁度いい。お前の娘とやらについて聞きたいな」

 

丁度いいと冥琳が話を切り出した。

 

「それより1つラインハルトに言わせて?」

 

「うん? まぁ良いが」

 

ストップされて出鼻くじかれた冥琳をよそに、雪蓮が仁王立ちして告げた。

 

「……冥琳とするなら私呼びなさいよ!」

 

「呼んだが出なかったな」

 

「昨日飲み倒して先程まで寝てたのだろう? ならお前が悪い」

 

「ラインハルト!冥琳がいじめるー!」

 

そういって湯を身体にかけて汚れ落としてから雪蓮が私の上にのしかかってきた。

 

「私を怒るのか私に泣きつくのかどっちかにしてくれ」

 

「ならここで慰めックスしてもらう」

 

胸押し付けて首に手を回しながらそう言う雪蓮。

 

「後始末面倒なんだが?」

 

「だめならあの娘解き放つわよ」

 

「……後始末手伝うこと、あと冥琳にその件をちゃんと説明することが条件だ」

 

「なら問題ないわね。――二人目を狙うのは野暮かしらね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『寒いとある夜の一幕』

 

――side 廬江の警備兵

 

「う~、寒いな」

 

「だなぁ」

 

夜の街の巡回仕事を終えて引き継ぎしたあとの帰り道、相方の言葉に頷く。

 

「どっかで一杯やれたら最高なんだがなぁ」

 

「暫くは難しいだろうなぁ」

 

相方のぼやきにオレは首を横にふる。

 

最近街灯という明かりがつけられたことで真っ暗ではなくなったが、まだまだ夜に営業する店は少なく、夜の後半の時間である今に至っては皆無だ。

 

理由は文官のダチの上司である張昭様曰く「民家が近いと夜遅くまで騒ぐのは揉める原因になる。区画整理を急がねばな」とか言ってたのをダチ経由で聞いたのもある。

 

たしかに民家と商家がごちゃまぜなところが多いのは事実。

 

寝てる間に騒がれたら迷惑なのもわかる。

 

……つまり夜遅くまで開く店が増えるのはもう少し時間がかかるってことだな。

 

そういう事をざっくり伝えると、相方は肩を落とす。

 

「かと言って帰っても……ん?」

 

相方が立ち止まって鼻を動かしはじめた。

 

「どうした?」

 

「いい匂いがする。……こっちだ」

 

そういって相方は帰路から外れた裏通りへ走り出す。

 

オレも思わず追いかけると、間もなく奇妙なモノがある所に辿り着いた。

 

小屋よりも小さい、屋根のある……なんていえばいいかわからんモノに暖簾がかかっており、その下には腰掛ける横長の椅子があるのが見えた。

 

その椅子には2人ほど人が座ってるが、誰かは暖簾の影と椅子から見える姿だけではわからなかった。

 

そしてそこから、嗅いだことのない、いい匂いがするのにも気がつく。

 

「おや、新しい客だ」

 

小屋?の奥からオレたちより背の高い男が姿を見せた。

 

「え? オレたちは……」

 

「今ならいい酒も安くするぞ」

 

と、酒家でもあまり見ない珍しい酒の器を見せる男。

 

「なら一杯だけ……」と相方が吸い寄せられるように小屋?に近づく。

 

「……お、オレも」

 

いい匂いにつられて椅子の方に近づく。

 

「蓮華、甘寧。2人追加故少しずれてくれ」

 

男の言葉に椅子に座ってる2人がズレて俺たちが座りやすいように空間を取ってくれた。

 

「手狭だが、そこに座ってくれ」

 

「へ、へい」

 

オレが真ん中寄り、相方が左端、先程座ってた2人は右寄りにずれた形になり、椅子に座る。

 

「そ、そそそそ孫権様!?」

 

相方の言葉で右を向くと、孫権様と甘寧様がおられた。

 

「……我々打ち首ですかね?」

 

「公的な場ではあり得るかもしれないが、ここではただの客だ。同じ長椅子に座った程度でとやかく言うつもりはない」

 

孫権様の言葉で安心したオレたちは椅子に座り直す。

 

「……酒の名前しかわかんねぇ」

 

相方の言葉にオレは目線を店の中に戻す。

 

オレたちとさっき招き入れた男(たぶん店主)の間に鍋っぽいものがあり、そこにあるさまざまなみたことない料理が湯気を立てて煮込まれている。

 

そして男の背後に酒や食材の名前と値段が書かれた木札が並んでいるが、酒以外、食材の卵くらいしかオレもわからねぇ。

 

「……オレもだな」

 

そういうと孫権様が口を開いた。

 

「私も思春も最初はそうだった。……ライ……大将、おでん5品を私のおごりで2人前、彼らに出してあげて」

 

「おでん単品5品2人前ね、少々お待ちを」

 

大将と呼ばれた男は慣れた手つきで箸などをつかい、2つの器に鍋?の食材を盛り付け、最後に鍋の汁をかけてオレたちの前に出した。

 

「おでん単品5品2人前だ、大根は熱い故気をつけると良い。酒は少し待つと良い」

 

そういって大将は小さな鍋に水を入れ、そこに2つの小さな酒の器を入れて、火にかけた。

 

作法とかわからないオレたちを横に、孫権様たちはちくわ、とか大根とか言ってそれぞれの手元のお椀に渡されている。

 

「おっと、どれから食べるかは自由だ。作法はない。強いて言えば、『残さず食べること』だな」

 

大将の言葉に頷いたあと、白い柔らかそうなものを一口大にして口にする。

 

柔らかな口当たり、そして溶けるように消えていくのと共にあふれる優しくも力強い旨さが舌を通じて全身に広がる。

 

「ソレははんぺん。魚のすり身と山芋のすりおろしを練った練り物ね。出汁を良く吸って上手いでしょ?」

 

「何故卿が胸を張っている? まあいい。っと、この酒は初来店記念のおごりだ。こっちの器に注いで飲むと良い」

 

孫権様の解説のあと、呆れ気味の大将が先程まで小鍋に入れていた酒をオレたちに渡し、小さな盃に注いで飲むようにと言ってきた。

 

言われた通りに飲むと優しい香りとともに、喉を熱い灼けるような熱が通り過ぎ、全身に熱が広がるのを感じた。

 

「……美味い!」

 

「……おでんを肴に、交互に口にすると美味いぞ」

 

ぼそっと甘寧様が助言してくださったので、オレはためらいなく実践する。

 

 

 

 

やめられない止まらない。

 

 

 

 

……はっ!

 

気がつけば酒が空に、盛られたおでんは汁だけ残して空っぽになっていた。

 

「……」

 

横を向くと相方も狐につままれたような顔をしていた。

 

「端から見るとこんな感じだったのね」

 

孫権様が不思議そうな顔でオレたちを見ていた。

 

失礼なことしてないよな?

 

「あ、大丈夫よ。一心不乱にお酒とおでん食べてただけだし」

 

ならいい……のか……?

 

疑心暗鬼になっていると孫権様が問いかけてきた。

 

「最近街灯を設けたけど、夜の巡回やりやすくなった?」

 

答えに困っていると大将が口を開く。

 

「単に巡回経験者の意見が聞きたいだけだ。変に気を使われる方が困る」

 

大将の言葉に口が軽くなってた相方が喋りだした。

 

「街灯あるとこは明るくなりましたし、言うまでもなくやりやすくなりましたねぇ。ただ、まだ大通りしかないんで、破落戸いるような裏通りや小道はまだ油断できねぇし、街灯がつけられたところをもともと狙ってた空き巣連中がその分暗がりに行くようになったんで、トントンですかねぇ」

 

「なるほど。いいことばかりではないか。……参考になった、感謝する」

 

「お役にたてたのなら、何よりです、はい」

 

「お前なにも言ってねぇだろ!」

 

思わずへこへこしたら相方に突っ込まれた。 

 

「では貴重な意見の礼としてこの店ならではの最高の一杯の飲み方を教えよう。飲む酒はこれで代金はこれだが、飲むかね?」

 

先程店主が用意したものより少し安い値段の酒を示す。

 

「おごりの酒より安い酒ですが……ほんとうに最高の一杯なんです?」

 

「騙されたと思って飲んでみたまえ。損はさせんよ」 

 

疑いの目を向けても飄々とされたのでオレたちは注文する。

 

孫権様たちも気になると注文した。

 

おい、孫権様たちにおしえてねぇのかよ、不安になってきたぞ?

 

すると実演とばかりに、大将が手元に先の盃より大きい器を用意し、酒を器の3割位だけ注いだ。

 

「やり方は簡単。酒を3割器に注ぎ、残りの6割に出汁を注ぐ」

 

いつの間にかおいてあった汁の椀から酒の入った器に汁を注ぎ込んだ。

 

「そしてこの七味を二振り。これで完成。簡単だ」

 

そういっててもとの赤い調味料らしいものをふりかけた。

 

それを飲んでみせ、うむ、美味いと満足そうに言い切った。

 

そのあと大将は酒をオレたちに渡し、鍋の汁を先程までおでん食べていた椀に追加した。

 

オレたちは半信半疑で同じように器に3割酒を入れ、汁を6割、てもとの七味と呼ばれた調味料を2度振りかけておそるおそる飲むと……。

 

一瞬にして頭の後やつま先まで広がるような旨みが熱と共に口に流れ込んでくる。

 

これが不味いなら世の中の飯はすべてゴミだ。

 

そう言い切れるくらい、奇跡のような味をしていた。

 

大将に追加をたのみ、オレたちは飲んでは語り、愚痴っては飲みを繰り返した。

 

 

 

 

 

 

気がつくと警備隊の宿舎に相方と肩を組んで立っていた。

 

あの屋台(大将がそういっていた。どうやら移動できるらしい。昼間に見たことねぇし、納得だ)の出来事が夢かと思ったが、少しさみしくなった懐と、赤ら顔で酔う相方の姿が夢でないことを教えてくれた。

 

また行きたい。

 

 

 

 

なお、大将が黄金の獣だと後日の遭遇で気がついて大声あげてしまい、隊長に恥かかせてぶん殴られたが、オレが悪いのか、コレ。

 

*1
熊本先輩、Bカップ先輩の異名を持つ氷室玲愛のこと。イザーク直系の孫娘で、ラインハルトの城の支配権がイザークに次いで高く、イザークが不在なら城を乗っ取れる。何気に黒円卓を同士討ちさせられるキーパーソンだったりする。本作では練炭、マリィ、アホタルらと共に不在のため、登場予定はない

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