切っ掛けはふとしたこと。雷火も古い知り合いからの手紙とその人への訪問で何かを始めようと思ったようです。
『ときには強引な交流会を』
人が多くなったからこそ、派閥が生まれたりそれらで固まったりする。
けどシャオたちはそれが望ましくないと考えたようで……?
『死にゆくもの、受け継がれるもの、生まれいづるもの』
――side ラインハルト
「――すまないが、足を借りたい。お主の馬車を借りることはできないだろうか」
文官仕事を執務室にてこなしていると、今日は非番のハズの雷火がやってきて、書簡を片手に問いかけてきた。
「構わんが、何かあったのか?」
「――徐州にいる古い知り合いがな、もう長くはないという手紙を寄越したから会いに行きたい」
私の問いかけに複雑そうな顔をしながら雷火は応える。
……徐州からの手紙……距離的に……
気になったことが頭をよぎるが、雷火の顔を見る限り『終わったあとの訪問になる覚悟』はできているようだった。
「……私の同行を飲むなら馬車より早い手段を提供できるが……どうするかね?」
雷火は私の言葉に少し迷いの表情を見せた後
「儂の言う通りにお主が従うならその提案を飲む」
逆に条件をふっかけてきた。
「……ならば契約成立だな。――仕事はキリトに任せる。支度が済み次第東屋前に来るといい」
私は雷火の提案を了承し、キリトに仕事をぶん投げて東屋へと向かう。
途中半ギレのキリトにドロップキック仕掛けられたので回避したりしたが割愛。
「場所は?」
「徐州
「わかった」
私は『白き翼』を冠する導力飛行船を呼び出し、彼女を抱えて飛び乗り、艦内へと入る。
「お主……おなごというのはそうほいほい抱きしめるものではないのだが???」
「乗るための台座などの用意をして登るより手っ取り早いからな」
ブリッジにたどり着いた私たち。
私は館長席に座り、雷火へ隣の席に座るように指示。
そして自動人形たちによる機体制御を見つつ目標地点の座標登録をする。
「導力供給開始」
「第一から第四、エンジン起動、異常なし」
「導力エネルギーの供給、問題なし」
「自律式メインシステムの起動確認、サブシステム待機状態へ推移」
「艦内の状態を待機状態から通常モードへ切り替え完了」
「反重力装置、正常稼働」
「火器管制装置、異常なし」
「現在地取得完了。目的地座標入力確認。――相対距離計測及び進行ルートの設定完了」
「――システム、オールグリーン。出撃可能です」
人形たちの言葉を受け、私は口を開く。
「アルセイユ――発進!」
僅かな揺れと浮遊感こそあったが――外やモニターを見なければ移動してると気が付かぬほど穏やかな上昇と加速で目的地へと出発する。
「……空飛ぶ絨毯などを見たことあるが、これは初めてだな」
機器や人形たちをみながら感想をこぼす雷火。
「ちなみに私以外だと卿がこの船に乗るのは初めてだ」
「……各方面から文句言われぬか、ソレ」
「たまにはよかろう?」
「それもそうか。……ついたら教えてくれ、儂は寝る」
「うむ、わかった」
すぐに眠れるのは一つの才能というが、雷火にはその才能があるのかもしれない。
そう思いつつ、2時間もしない空の旅を頭空にして堪能するのだった……。
「……着いたぞ」
何度目かの私の言葉に目をこする雷火。
「……うおっ!? 年寄りを驚かすでないわっ!」
「流石に理不尽だぞ」
良い一撃をくらってよろける私。
「……本当についたのか?」
「無論だ。但し、上空から降りる必要がある。……先程着陸したら住民から鉄の怪物扱いされて攻撃されたのでな」
血気盛んな時代だなと思いつつ説明。
「……お主はどんな高さから突き落とされようと無傷じゃろうが、儂は無理じゃぞ?」
「案ずるな、方法はある」
私は彼女を抱きかかえ、飛び降りる。
「やはり自殺行為……?」
私は瞬間的に空間遮断と認識阻害の魔術で私達の周囲を包み、同時に魔術で落下速度を低下させる。
「……お主本当になんでもできるな」
「何でもではない。人よりできるとは自負しているがな」
「……手を離すでないぞ?」
「ネイあたりなら喜ぶ故考えるが、卿にやるつもりはない」
「……あの小娘なら喜ぶのか……」
無事村の近くに着地した私達。
何食わぬ顔で村に入る。
最初は余所者と警戒されたが、親経由で雷火を知っている若い男がいたため、その警戒は解かれた。
その後、古い知り合いの家に行ったが……人の気配は無く、何処か人恋しくなる寒さを感じさせた。
「……来ていただいて申し訳ないですが、ここの人なら、手紙出した翌日にはもう……」
案内してくれた人の言葉に、険しい顔をしてから、雷火は口を開く。
「ということは葬儀も終わってるということじゃな? 墓参りをしたい。……案内を頼む」
「こちらですぁ」
村が管理してるらしい共同墓地。
その1つを若者は示す。
周りのものと変わらない。
言われなければ、わからないような、土を盛ってその上に石が置かれた場所を見て、雷火は黙祷を捧げる。
「……人とはなんと儚いものだろうな」
「脆く、儚く、それでいて歪な生き物だな」
「……こうしていると、生まれた理由が何なのか、わからなくなる」
「卿が縋りたいものが哲学的な答えか、生物的な答えか……その答えを教えたところで卿が自ら掴んだ答えでなければ納得できるとは限らんぞ」
「……皆まで言うな。……かつて机を並べた同期共が穏やかな顔をできたのも、己の血を分けた子を産み育てたのがあるのだろうな」
雷火の言葉を無言で促す。
「……生まれ、生きて、死ぬ。その間に子をなす、後に残るような事を成し遂げる。それをやる理由は……死してなお遺るような何かを遺したいという衝動故か」
「そうかもしれんな」
「……さて、ラインハルト」
こちらを向き、雷火は私に呼びかけた。
「何かね?」
「生まれてこの方過ぎたるほど真面目に生きてきた。……仕事はともかく、遊びの1つや2つまともにせず死ぬのも惜しくなってきた。……お主なら得意じゃろ? 夜のそういう遊びも含め、儂に教えてくれぬか?」
「構わんが……」
色々いいのか?とは口にせず。
「行き遅れたババアを選ぶもの好きなどお主くらいじゃろ? それになんだかんだでお主なら良いと儂はおもっておるしな」
「……まずは粋玲と共に打つ遊びからやることにしよう。いきなり閨は落差で卿が死にかねん」
「労ってもらえるのは嬉しいがその言い方は気に入らんぞ」
そう言いながら彼女は歩き出す。
雷火の目に映る景色が、今までとは少し違うかもしれないと思いながら、私は彼女についていくのだった……。
『ときには強引な交流会を』
――side シャオ
今日の午後から明日の昼にかけてラインハルトとキリトが遠征(なお廬江にラインハルトの長男であるイザークが滞在とのこと)してるから、ちょっと普段ならできないことをすることにした。
「――ということで、私主催の男子禁制の飲み会をはじめます!」
男子禁制の女子会による飲み会!
ラインハルトとか黒円卓の男連中やキリトの友人たちは男子会をしてるらしいからそれはそれでヨシ!
なお、ブリジットさんは女子会と男子会の幹事及び本人の相談の結果、今回は男子会に混じってもらった。
……ココロと身体が噛み合わないって難しい問題ね……。
あと配膳とかは、イザークが城の髑髏ってのから女性だった人たち選んで給仕してるし、男子会の方は野郎だった髑髏を使ってるから完全に棲み分けできてるみたい。
まあ女子会が城で、男子会が街の一角にある大店だから物理的距離もあるし問題ないとおもうけど……。
「あ、一応言っておくけど、席順は変えないように。普段話しない人が話すための席順だから。あと無礼講ってことでここで起きた無礼事や聞いちゃいけない案件は知らない見てない覚えてないってことでよろしくね! それじゃあ、乾杯!」
「「「「「乾杯!!!」」」」」
みんなが乾杯してるところに私も割り込んで乾杯。
私の席は対面に恋さん、その左右に白瑛(厳興)とジュンさん(鎧はSA:Oの女性陣でひっぺがした)、私の左右がストレアに束さん。
「おっぱいデカいのばっかりでいじめじゃないのこれ!!」
「急にどうしたの?」
「……世知辛い、胸囲の格差社会」
「大丈夫だって、お姉さんたちがあんなに育ってるんだし、シャオちゃんも問題無いって」
束さんは首をかしげ、恋さんはナニかを見て納得したように零し、ストレアが可愛いと私を抱きしめた。
「……恋殿が凄まじい勢いで食べてるから、早く取らねば何も食べられんぞ?」
「なくなれば注文すればいいので大丈夫かと。……しかし鎧を着てないとどうも違和感が……」
新参寄りなので恐る恐るといった雰囲気の白瑛に冷静に指摘しつつ変なことを言い出す……今更か……ジュンさん。
ってか、おっぱいに溺れる!
藻掻いで脱出。
「もう! 窒息死とか洒落にならないから! 気をつけてよね」
「はぁい。――っとじゃあシャオちゃんは何食べる?」
「どうしょうっかな〜ストレアが選んでよ」
「なかなかの無茶振りだね!」
ここの席はとりあえず大丈夫そう。
……他は大丈夫かな……。
――side 冥琳
この席は……真面目な面子が集められたな……。
私の左右にカノンと詠、対面にザミエル卿、ザミエル卿の左右にゆりね嬢と鈴音という組み合わせだ。
「……にしてもザミエル殿が出席するとは意外ですね。ハイドリヒ卿の命令でなければ基本梃子でも動かないのに」
カノンが席の面々が気になっていたことを問いかけてくれたお陰か、皆の視線がザミエル卿に集まる。
「……あの酒乱のバカ娘がいなければ適当に理由をつけて辞退させてもらう予定だった」
彼女の目線の先では宴会芸をやり始めている金髪碧眼の娘……ベアトリスが居た。
「……酒癖悪いの?」
ゆりねがちょっと信じられないという顔で問いかけた。
「器物破壊が過ぎて出禁になった店は10から先数えていない」
「……だから酒飲んでないとか?」
詠はザミエル卿の手元を見つつ。
「違う。――ハイドリヒ卿不在の今、最高戦力が大隊長である私たちだ。……意図的にやらねば酔えぬ身体であり、マキナとシュライバーが飲んだくれているとは思えんが、酒に酔って守りきれないなど起きてはハイドリヒ卿に顔向けができん」
「凄まじくまともな理由!」
鈴の言葉に串焼きを摘むザミエル卿。
「……副首領と呼ばれてるあの男は?」
「しらん。ハイドリヒ卿も自由行動を認めているからな。……気まぐれに現れて何処かに行くような輩だ。当てにできん」
真面目に答えつつ、料理を少しづつ摘むザミエル卿。
「……大隊長で誰が一番強いの?」
詠の質問に険しい顔をするザミエル卿。
「……後先考えず、本人も無自覚で封じてる力を使うと仮定するならシュライバーだろう。逃げ場がほぼ無いなら一撃当てれば勝てるマキナ。先の条件をすべて除外するなら私が勝ちを拾いやすい」
「ほぼほぼ三竦みとラインハルトから聞いている。『ザミエルの切り札は必中故神速のシュライバーを捕らえられる。しかしマキナは耐久に物を言わせて肉薄し、ザミエルを倒すことが可能。但しマキナは神速のシュライバーを補足することが困難故、消耗戦で競り負けることになる』と」
「……恋とかは黒円卓の面々と戦えたりするの?」
詠の追加質問に何言ってるんだ?と顔をしかめるザミエル卿。
「我々はエイヴィヒカイトという魔人を生み出す術で人から外れている。気という力はたしかに私達に影響を与えられるが、良くて最弱である素のブレンナーあたりに傷を与えるのが精々。倒すなど夢のまた夢と考えたほうが賢明だな」
「……恋でもその段階とか、本当にイカれてるわね」
「褒め言葉として受け取っておく。それより飲み食いせねば温い酒を冷えた料理という興醒めなモノにせっかくの料理が成り果てるぞ」
その言葉に私達は慌てて料理を自分の皿に取り、食事を再開した――。