――side ラインハルト
「…………む」
「どうした、ラインハルト。なにか見つけたか?」
執務室にて雷火と共に諸々の案件を捌いていると、幾つかのキーワードを見つけた。
「最近街で黄色い頭巾を被ったものをみかけるようになった。そしてそれらが立て札やあちこちの壁にこう書かれた紙を貼っているらしい。『蒼天已死 黄天当立 歳在甲子 天下大吉*1』……随分と度胸のある者がいるようだな」
私の言葉に怪訝そうな顔をする。
「胡散臭い宗教家の集まりが信者獲得のためにあれこれしてるだけの話じゃろ?」
そう言ってお茶を飲み始める彼女に対して
「――河北を中心にすでに10万の勢力になり、まもなく青州が彼らの手に落ちると言ってもか?」
その言葉に思いっきり茶を吹き出し、噎せる雷火。
「――明命を始めとした細作にはそんな知らせ届いておらんぞ! 届いておったら冥琳たちが血相を変えて重臣の緊急招集を――」
「――あなた! 雷火さん!」
扉を開けて飛び込んできたのはイオン。
――何もしないのも申し訳ないと城の掃除や伝言役をするようになったのだがそれはさておき。
「――重臣たちの緊急招集かね?」
「うん!」
「――始まったか……」
私が玉座の間に向かうのを追うように、雷火、イオンも付いてくるのだった。
「――で、なんだっけ?」
間の玉座にて頬杖つく炎蓮。
ソレに対し、レナルルが手元の書簡を広げ、報告を始める。
――黄巾をつけた者たちによる青州の武装蜂起と電撃的占領が発生したこと。
それに連動するように河北を中心に黄巾をつけた者たちが武装蜂起をし、各地で暴れ始めたこと。
加えて賊は10万を超えているが、時間とともに数、占領地を拡大していること。
ついでに現在孫家が統治してる廬江の北と北西、寿春と汝南を収めてる袁術の政治に反発してる連中がソレと合流する可能性が高いこと。
それらがレナルルより告げられた。
「…………は―――――っ……傷が癒えて河賊の調略が大方終わり次第黄祖ぶん殴りに行こうと思ったのにマジかよ……」
おおきなため息を吐いて愚痴をこぼす炎蓮。
「――雪蓮。家督譲るし上に廬江太守の任雪蓮に引き継げるよう掛け合っておくからその黄巾……?の賊討伐と黄祖ぶん殴る戦力の準備……場合によっては長江以南の実効支配する準備しとけ、蓮華は内政と外交を雷火から学んどけ。あと河賊調略場合によってはお前もやってみろよ」
「は!? 藪から棒にどうしたのよ!?」
流石の雪蓮も困惑してると、炎蓮が獰猛な笑みを浮かべる。
「――幸か不幸か……時代の節目って奴に今オレたちは立ってるってことだ。――苛政と中央の腐敗による大規模な反乱……コレを中央の実戦経験が殆どない禁軍*2でどうにかできるとはおもえねぇ。そうだろ?」
その言葉に、一同が沈黙で肯定する。
「――となればオレたち地方の連中はどうするか――自衛して、あわよくば自分の管轄外で賊を討伐しようとするはずだ。オレもそう考えてるし、ソレをお前らにやらせようとしてる。――ここで動機が忠勤なのか、野心なのかは関係ねえ。『搾取してる皇帝の部下である禁軍に代わって賊を討伐してくれた』と民が思うことがミソだ。民が自分を守ってくれたヤツと守ってくれなかった禁軍、そしてソレを従える搾取するばっかの皇帝(とその政治家たち)……どっちに民が靡くか馬鹿じゃなきゃまあ分かる話だわな」
そういって座りながら両手を組んで伸びをしてから続ける。
「そうやって権威の凋落と共に民の支持を得たやつらによる群雄割拠が起き、そしてそいつらによる潰し合い。最期に笑ってたヤツが新たな皇帝になる。……これが繰り返された歴史の流れってやつだ。雪蓮もちっとは学んどけよ。歴史は先人たちの反面教師談8割、ためになる教訓2割でできてるようなもんだからな、覚えておけば自分の経験からしか学べない馬鹿よりは要らん失敗せずにその分先に進めるからな」
「なんでアタシだけ……」
雪蓮がいやそーな顔をすると
「オレから家督を継ぐってことは、臣下であるコイツらの命運もお前の指示で決まるってことだからな? そんなヤツが過去の連中がやったのと同じような過ちして共倒れしましたなんて笑えねえぞ?」
「……!」
ハッとしたような顔で皆を見る雪蓮に炎蓮はカラカラと笑う。
「――オレが背負ってたもん、少しは理解できたか?」
「ええ……言葉じゃなくて、身体で理解したわ……」
引きつった笑みで母親からの
「すぐに全部任せて潰れたら目も当てられねえからな、段階的にできるようになれよ、雪蓮。あと乱世を自分で切り開けりゃ、自信にもつながる。――オレなりの優しさだ」
「……ええ……ありがたいわね……」
雪蓮の呻きに近い言葉にうなずく炎蓮
「――あと、ラインハルト」
「む?」
「お前この先の展開なーんか知ってるっぽいから釘刺しとくけど……オレの目から光が消えるまで、オレや雪蓮の軍事行動とかに関しては静観しろ。破ったら1回に付き一人孕ませな。もちろん正妻以外な」
「……良いだろう。卿らのお望み通り、天の御遣いとして振る舞い、内向きの仕事以外は口を挟まぬようにしよう。――私も私で――大陸でなさねばならぬことが増えたようだからな」
右手の甲に感じた熱と、転生時に女神が言っていた言葉を思い出しながら、そう答えた。
次話から数話は予告通り?日常回を予定してます。
何話になるかは……ナオキです。
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