今回は試練に出る前の話です
なぜ試練の船がヤマトなのか、という話です
今回の後半はSF的な超理論です。大体は置いてけぼりを喰らう要素ですが、楽しんで読んでいただけるように工夫したつもりです
西暦2193年 国連宇宙軍 極東管区 イ号研究会 司令部審査キックオフ
「星のマテリアル?」
ずいぶんとポエミーな名前だね、と藤堂行政官が意見を述べる。外見から受ける印象どおり、柔らかな感想だった。
「えぇ、イスカンダルからそれが1000トンほど必要だと」
真田の回答に、「全然ポエミーじゃない量だね」と会話が続く。なぜこんな会話が始まったか、少し遡る必要があった。
以前も述べたとおり、イ号研究会の目的は、イスカンダルが“試練”と称する工程のための航宙艦の基礎設計を行うことだ。その結果を極東管区の司令部が審査する。
とはいえ、新人アイドルオーディションのようにサプライズを期待しているわけではない。イ号研究会は司令部と定期的にやり取りを行い、コンセンサスを得たうえで設計案を提出する必要があった。
今日は、そのやり取りの初回である。
まず、そもそもイスカンダルの試練とは何なのか、という説明から始まるのは自然な流れだ。
試練を端的に言うと、「恒星系をまたいで遠方にあるイスカンダルまで、相当量の星のマテリアルを運搬せよ」というものだった。よくよく話を聞くと、ただ巡礼するだけではダメらしい。
「しかし、肝心の星のマテリアルが何かわからないのでは話にならん」
芹沢宙将が断じる。別にイ号研究会に落ち度があるわけではないのだが、何だか責められているような気がした。でも、言っていることはもっともである。どれだけ問い合わせても、イスカンダルは星のマテリアルについて答えてくれないのだ。
「詳細は問い合わせてもわからないのだろう?」
藤堂がフォローする。司令部は今のところ、藤堂と芹沢の2人だ。国連宇宙軍 極東管区 司令部自体はもっと大きい組織だが、イ号研究会の窓口はこの2人というわけである。
そして、なぜか試練に否定的な芹沢と、柔らかな態度でそれをフォローする藤堂という、絶妙にバランスの取れた組み合わせでもあった。
芹沢宙将の否定的な態度については、若手尉官から沖田に苦情が上がったりもしたが、将校に上がりたての人間はだいたいあんな感じだから気にするな、と宥められた。芹沢の階級は、統一階級では少将にあたる。
宇宙軍を大企業、将校を会社役員と考えると、少将は役員になりたてで新プロジェクトを統括する事業部長ぐらいの地位になる。次を見据えれば、多少気が立っていてもおかしくないだろう。
「ガミラスには聞いてみたのかな?」
藤堂のフォローは手厚い。
「有意な回答は得られませんでした」
新見女史の回答に、「はぐらかされたか」と返される。ガミラスとイスカンダルの関係は前提知識として共有されていた。
「どうも違うらしく、星のマテリアルについてはガミラスもわかっていませんでした。ただ、イスカンダルが意味不明なことを言うのはよくある事なので、気にせずゴミでもなんでも1000トン持っていけばいい、という回答です」
具体的ではあるが有意とは言えない、実に判断に困る回答だった。
「彼ら、時々、創造神に対して辛辣だね」
藤堂が感想を述べる。そのとおりに思えた。隣に生きた創造神がいたら、そうもなるのかもしれない。
「星のマテリアルは一旦保留事項として、試練艦の要目を大きく分けると以下のとおりです」
事前に配られた用紙に要目が書いてある。上から重要な順になっている。
試練艦の要目
・16万光年の往復が可能な航行能力
・星のマテリアル1000tの運搬能力
・運用人員とその生活空間
・可能な限りの武装
・全領域航行能力
配布資料は、ペーパーレスの時代から回帰して復活していた。資源消費を鑑みても、手元に記録兼メモ用紙が残るのはメリットが大きい。人類の問題解決は大体会議で行われるのだ。多少コストをかけても悪いことはない。
真田は、試練の要目に相当量の物質運搬が入っているのは、単にイスカンダルが物質を欲しているという以上の意味があるのではないか、と考えていた。
試練艦の要目から物質運搬を外してみよう。艦の規模を極限まで小さくできる可能性が出てくるのだ。
そもそも巡礼とは何だろうか。普通に考えれば人間が聖地を訪れることだが、それなら人数を絞ったほうがコストが安い。聖地到達だけが目的なら、1人だけ送り込む方が最も手軽だろう。
16万光年の往復に必要な推進機関は大きく手がかかるかもしれないが、それでも運搬物が少なければ艦を小さくできるし、自衛武装もそれに見合ったもので済む。
イスカンダルが星のマテリアルを求めているのは、試練を簡単に攻略されないための“制限事項”ではないか。こう考えると、ガミラスの回答にもうなずける。つまり星のマテリアルはゴミでも何でもいい。
言ってしまえば、星のマテリアル運搬はイスカンダル訪問RTAのレギュレーションなのだ。Any%にしてしまえば、人間属性を持った量子ビットの到達をもって「訪問した」と言い張ったり、バグを使って地球の横にイスカンダルを呼び出す不届き者が出かねない。
銀河規模の催し物なのだ。レギュレーションがあるのも当然だろう。
こうした内容をかいつまんで話す。最悪、星のマテリアルが何かわからなくても、試練には出発できるようにしなければならない。
「それは沖田も同意しているのか?」
沖田十三はここ最近、仕事を放棄していた。芹沢はそれを見抜いて詰問する。この場で統括者である沖田から一言もないのはおかしいと、遠回しに言っているのだ。
しかし、沖田は「そうですな」と短く答えただけだった。芹沢が唸る。
一応、沖田のこの態度には意味があった。天体物理学者として「星のマテリアル」にあたりをつけようとしていたのだ。学者にとって考えるべき問題ができた時、その他は全て瑣末事になる。
「イ号研究会は、試練艦が進宙したらそのまま艤装員にスライドする。その場合、お前が艤装員長で初代艦長になるんだぞ!」
「しっかりしろ」と叱っている。立場のある者を公開の場で叱るのはマネジメントとして問題だが、この場には若手士官は呼ばれていなかった。一番若いのは真田の補助役としてきている新見女史である。
アドバイザーとして参加したはずが、いつの間にか責任者になり、挙げ句「覚悟が足りない」と叱責される。とはいえ、組織ではよくある理不尽だった。
「真田を副長に指名します。問題は起きません」
沖田が答える。真田志郎、突然の昇進予告だった。
技術科員は士官を超えた究極のエリートともいえるが、艦艇で技術科の人間を役職に指名するのは通常はルール違反だ。なぜなら技術科は航海に同行しないからである。乗り込むことがあっても、お客さん扱いだ。
しかし試練では技術科もチームとして乗員に参加するため、役職指名は可能だった。艦長がしっかりしていなくても良い、という屁理屈のような回答なので、芹沢は面白くない。アニメならここでバチバチという効果音が入りそうだ。
「よ、要目から逆算した航宙艦の規模は、空間排斥量6万トン規模の大型艦になります」
新見女史が話題を続ける。ここでは当事者以外が話を逸らすしかなかった。芹沢に睨まれる。損な役回りである。
「それは大きいな。全領域航行試験艦の改装で何とかなるのかな?」
意図を汲んだように藤堂が話を膨らませた。
「船体を全長方向に70mストレッチします。さらにバルジをつけて全幅も拡大します。上部は原型を留めますが、下部は各種設備を追加するのでほとんど別物になります。しかも、船体基準軸の上下を逆さにする予定です」
真田が答えた。驚きの昇進予告で動揺していたが、ここで自我を取り戻したのだ。20%も拡大し、上下を逆さにする。いわゆる「新しく作り直すのと変わらない改装」というやつだった。
ここでサラッと登場した「空間排斥量」という単位について、簡単に説明しておく。
ファーストコンタクト以前の地球では、原理のわからない火星由来の重力制御装置をなんとか使いこなそうと試行錯誤していた。その過程で生まれたのが空間排斥量という概念である。
原理はわからないが、何らかの方法で得られる“反重力”の力を、水上艦の浮力になぞらえて説明しようとしたのだ。つまり“排水量”の宇宙版である。
空間排斥量では「火星由来の重力制御装置が艦を含む空間を押し除け、その押し除けた分が反重力として得られる」と解釈し、押し除けた質量と反重力が平衡する面を「宇宙水平」と呼ぶ。
このアナロジーは、後にイスカンダルから重力制御の原理がもたらされた後も、ほぼ問題なく使えるとわかったため、試練においても更新せずに引き続き用いられている。
この考え方に基づけば、内惑星戦争以前の地球の宇宙機は“飛行船”のようなものだった。すべて自前で発生させた浮力で浮いていたのだ。
当時の宇宙機は、全体質量でせいぜい1000トン程度。重力制御を用いない場合は質量すべてを自力で推進させなければならないので、結果的に1000トンほどが限界だったのだ。
一方、火星が実用化した最初の装甲航宙艦は、空間排斥量が1万トンに迫った。質量1000トン程度の兵器と、戦闘に関連する質量だけで1万トン近い兵器では、勝負は明らかだった。
第1次内惑星戦争で地球が火星艦にまったく歯が立たなかったのは当然である。後にガミラスの航宙艦と無人艦隊が交戦した時、国連宇宙軍が「絶望」という言葉を使わなかったのは、この痛い経験が伏線となっていたのだ。
航宙艦同士の性能差で考えれば、ガミラスと地球の差のほうがまだマシだった。空間排斥量と排水量のアナロジーを使うならば、第1次内惑星戦争は「飛行船 vs. 装甲水上艦」の戦いだったわけだから。
そして同時に、航宙艦の性能差で歯が立たなくても「持久できる」ことも学んだ。第1次内惑星戦争の初戦で惨敗した国連軍は早々に地球に引きこもり、結果として引き分けに持ち込んだ。
惑星は宇宙空間における究極の固定目標だ。制圧するには近づかなくてはならず、近づけば艦の生命線である軌道を限定されてしまう。敵が籠城した惑星を攻略するのは、反重力という超技術があってさえ至難だった。
第1次内惑星戦争の停戦合意により、火星の権利を一部認める代わりに地球圏絶対防衛戦の構築を確実にした。これは早期警戒衛星と質量弾を含む多数の攻撃衛星で火星艦艇を迎撃する構想だった。
それらは赤道軌道上に設置された8つの基幹衛星と月を含む深宇宙迎撃構想として「Deep Space 9」と呼ばれた。仮に相手が宇宙人でも有効だと国連宇宙軍は自負したが、実際にはガミラスにあっさり突破され、評判を落としたのは前述のとおりである。
こうして第1次内惑星戦争の停戦と同時に、第2次内惑星戦争の要件が定まった。国連宇宙軍に科せられた任務は以下の3つである。
①火星の装甲航宙艦と同等の艦艇、艦隊を整備する
②火星絶対防衛線「Line X」を突破する
③火星全域を制圧する
意外にも、①は早期に解決した。どの世界にも裏切り者はいるものだ。そして、いかに国連宇宙軍が②と③を解決したかが第2次内惑星戦争の最大のハイライトだが、話が長くなるのでここでは省略する。
ここで重要なのは、第2次内惑星戦争のために発展した航宙艦、コンゴウ型宇宙戦艦でも空間排斥量は2万トン、火星のオリンポス級揚陸指揮艦でも3万トンだったことだ。
空間排斥量6万トンの航宙艦は、地球人類にとって未知の領域である。しかし、設計要目は試練艦がその規模になることを示していた。
「そろそろ試練艦にも名前が必要だと思うが、どう思うね、沖田くん」
藤堂が沖田に尋ねる。
「副長、任せる」
「っ!?」
とんでもない仕事放棄だった。なぜか新見女史が取り乱す。
「では、コスモアドベンチャー式スーパー波動実験艦 銀河、と」
「先生っ!」
新見女史が、公私の境目を取り違えるのは珍しい。しかし、やむを得なかった。地球初の恒星間活動艦が「青春を爆発させていそう」なネーミングになりかねないからだ。
真田には一つ問題がある。そもそも「名前」にこだわりがないのだ。システムが対象を参照するインデックスさえ確立していれば、呼び名は何でもいいし、毎日変えてもかまわないと考えている。常人には名前が言語野にとってのインデックスであるとは、意識すらしていなかった。
ただし、それでも今回ばかりは真田なりに気を使った結果がこの案だった。
「問題はないだろう。コンテキストを共有していない相手にも、試練艦の目的が過不足なく伝わる。そのうえで、どこから来たかを示す言語表現として“銀河”と呼称するのは正しい。イスカンダルからもお墨付きだ」
新見くんは何を心配しているんだ、と真田は反論する。ふだんはあっさりアドバイスを受け入れるのに、今回は別のアドバイザー(イスカンダル)がいる。イスカンダル式命名術なら、確かにやりかねない。
「まあ、銀河も悪くはないが、やはり沖田くんが自分で決めてこそ価値があると思うがね」
「責任から逃げるな、沖田」
藤堂と芹沢も遠回しにNGを出している。というより、そもそも波動コアは大和ミュージアムで見つかっているし、改装元は全領域航行実験艦のヤマトⅡだ。ここで試練艦の名が銀河になるのは、ちょっとしたコメディでもある。
「なぜ銀河がダメなのかわからない。目的は宇宙探検だし、艦の立ち位置は戦闘艦よりも実験艦だ。そのうえで、通常の実験艦より超越的な存在だとして“スーパー”を付与している。さらに“銀河”は、だいたいどの言語にも一単語で対応語があって扱いやすい」
だから、コスモアドベンチャー式スーパー波動実験艦「銀河」。英訳するとCosmic Adventure-class Super Wave Experimental Ship “Galaxy”となり、日本語の冗長さが消えて意外に収まりがいい。ちゃんと考えているのだ。
「名前はまた今度にしよう。ところで冒頭に戻って、イスカンダルは星のマテリアルを何に使うと言っているのかな?」
藤堂が強引に話題を逸らす。
「コスモアド...」
「先生! それはまた今度に」
ふだんはこだわりがない真田だが、理由があるときは頑固だ。今の彼にとって「銀河」は試練艦を過不足なく表している良い名前なのだ。
「イスカンダルは星のマテリアルがあれば『コスモリベース』ができる、と主張しています」
「そして『コスモ』という用語は、イスカンダル語圏に関連度の高い概念として頻繁に登場するので、銀河のコスモアド...」
「用語から内容があまり想像できないな。『コスモリバース』の方がまだイメージしやすいが」
真田の追加説明を藤堂がさえぎった。むう、と真田が唸る。ときに理屈が通じないこともある。
真田は諦めることにした。
「万能翻訳機の用語関連度の解析から、リベースに最も近い概念をGitのrebaseコマンドとしました」
「ここからイスカンダルの主張を、カルロ・ロヴェッリの関係的量子メカニズムを参照した概念、量子生体コミット理論(QBIT : Quantum Biocommit Indexed Theory)としてまとめています」
「ただし、あまりに突飛すぎるので、技術科でも賛否が分かれています。要するに、この理論では宇宙を巨大な分散型バージョン管理システムに見立てていて、いわば“宇宙Git”、いや“コスモGit”というべき概念が登場します」
いつもの調子で真田と新見女史の説明が続く。ただし、言及のとおりあまりに突拍子もない概念だった。
「詳しい説明は省きますが、この理論によれば万物について、バージョン管理システムのようなバックアップが取れます」
「もし地球がエントロピーの極端な増大で壊滅的な被害を被ったとしても、エントロピーの少ない、より整った状態を上書きする。すなわち、惑星自体をバックアップから回復する手順がコスモリベースになる、という理屈になります」
2人の説明が終わったが、理解できない部分のほうが多かった。
「つまりコスモリベースは、アベンジャーズ/エンドゲームでトニー・スタークがとった選択そのものです」
と新見女史が補足する。作中でトニー・スタークが望んだのは、問題の“後”に起きた事象を消さずに問題だけを解決することだった。これがコスモリベースの概念に近いらしい。
ただし、アベンジャーズでの指パッチンが「半分をチリに返す」のか「情報を消去する」のかによってエントロピーが違うので、正確なアナロジーとしては微妙ではないか、と真田は思う。
余談だが、アベンジャーズシリーズは23世紀の地球では一般常識になっていた。大学共通入学テストで中国古代王朝を並び替える問題とアベンジャーズシリーズを時系列順に並べる問題が選択式で出題されるほどだ。ちなみに中国古代王朝の方が簡単である。
「地球が回復不可能なほどの被害を受けた時の回復手段なんて、いつ使う?」
芹沢が根本的な疑問を口にする。そのとおりだった。
「現状、イスカンダルは『青赤問題』を修復できると説明しています。彼女らによると、この2つが入れ替わったのは明らかな不具合なのだそうで」
「そんなしょうもないことのために、宇宙を書き換えんでいい!」
芹沢の感想はもっともだ。
「星のマテリアルは、惑星の関係性を記録した“ログ”だと推測します。もし宇宙全体を分散型バージョン管理システムに例えた場合、各ローカルブランチから整合性のある変更履歴をかき集めてmainブランチを修復できます」
「もしかして、ログは遺伝子のことじゃないのか? つまり星のマテリアルはヒト、と言うように」
藤堂が推測を口にする。なるほど確かに遺伝子は環境のログともいえる。しかし、技術科がそれを想定していないほど幼稚なわけはない。
「その仮定も質問に挙げましたが、結果は部分的肯定でした。つまり、星のマテリアルとしての資格はあるものの、完全ではないという答えです。しかも、遺伝子を1000トン持参するのは勘弁してほしいと...」
藤堂も「それは確かに」と返す。沖田が考え込むのも無理はない深い問題だ。
「イスカンダルは、不完全な星のマテリアルでコスモリベースを行うと問題が生じる可能性を指摘しています。特に生物の記録だけでは惑星規模の環境回復に用いるには領域が狭すぎるうえ、時間的整合性にも問題が出る、と」
真田が懸念点をまとめる。
「要は、星のマテリアルが何か分からなくても、コスモリベースをやるつもりがないなら、ゴミでも何でも持っていけばいいのではないか?」
芹沢の短絡的な結論が、結果的に真田の認識とも一致した。
「そのとおりです」
こうして今回の会議は終わった。
「いや、ちょっと待て」
解散しかけた面々を沖田が呼び止めた。天文物理学博士としての考察に結論が出たらしい。
「完全な星のマテリアルは、バックグラウンドレベルの低い精錬した鉄だ」
「まさか、“星”が作った物質だからという理由で?」
真田が即座に返す。この応答には前提知識が必要だ。
鉄は星の核融合で生まれる最も重い元素であり、いわば“星が作った最後の物質”だ。
「精錬した鉄には、窒素などの大気素性情報も微量ながら含まれる。つまり、その時代の惑星のログと言える」
「イスカンダルは播種惑星を鉄分布で決定した...?」
真田の返答は少し飛躍しているようにも思えるが、当人同士には筋が通っているらしい。
「そうだ。鉄はハビタブルな惑星の大半の条件に関わっている。磁場、大気生成、鉄分による酸素の運搬、そして文明そのものが鉄を基盤に発達してきた」
ロマンチックだな、と藤堂は思った。
「ただ、合金と複合材が当たり前になった今、わざわざ大量の単純な鉄を精錬するのは...」
真田が疑問を口にする。
星のマテリアルが鉄かもしれないという推論は、早くから沖田の頭にあった。“星”が作った物質を思い浮かべるなら、天体物理学的にまず鉄が候補に挙がる。ただ、それを用意できないならほかの案と大差ない。そこが沖田を悩ませていた。
真田も沖田も、製鉄が単純なものではないと十分承知している。
「そうだ。しかし、ある」
沖田の返答は迫力があった。
「それも保存状態のいい海底に、大量に」
こうして、試練艦は宇宙戦艦ヤマトと決まった。
真田には、銀河を却下されたことが解せなかった。
ネットには事実を点としてそれを結ぶことで知恵や知識を表すが、陰謀論者にはそれがユニコーンに見えているというミームがあると思うのですが、本作はそれをヤマトではやろうとしています
個々の点はヤマトなのに、全体像はユニコーンに見えるようにしたいのです
2025/04/15追記
ここすきが多いので修正しないのですが、最後の一番肝心なところで科学考証間違えてますね
・戦艦は単純な鉄ではなく鋼なので合金
・鉄は惑星(地球)が作り出したのではなく恒星、しかも太陽よりも大きな恒星が合成した
・なので惑星の関係性よりももっと大きな関係性を持ってる
めちゃくちゃですが、なんていうか、星の変更履歴を記録している安定なログが鉄なんだってこと伝わってくれたら嬉しいです