悪魔と踊る   作:つがう

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魔術師協会

 コンコンコン――。ノックの音を聞き、サタンは読んでいた本から顔を上げた。

 扉を開けて入ってきたのはユキだ。勿論ここに来るまでの足音とノックの間隔で彼女だということはわかっていたのだが、実際に彼女が部屋に入ってくると無条件に嬉しくなってしまう。

 

「どうしたんだ? というか、魔界に来ていたんだな」

「まあね」

 

 そんな喜びを悟られぬよう、平然とした態度で訊ねる。

 

「ディアボロ殿下から少し頼み事をされて、この後魔術師協会に行こうと思うんだけど、手が空いていたら着いてきてほしいなって」

「あぁ。構わないぞ」

 

 サタンはそう言って立ち上がると、読みかけだった本を机の上に置いた。

 

「それじゃあ行こうか」

「あ、少し待ってくれ」

 

 サタンに呼び止められ、ユキは不思議そうな表情を浮かべた。そして彼は机の引き出しを開け、彼女の方に近寄った。

 

「数日前に買ったんだ。君に似合うと思って」

 

 そう言って彼が手渡したのは、緑色のピアスだった。ゆらりと揺れる猫の尻尾のようなデザインが可愛らしい。

 

「あはは、サタンらしいね。つけてくれる?」

「もちろん」

 

 サタンは微笑みながらユキの耳元に手を伸ばし、ピアスを穴へと通す。

 

「どう? 似合う?」

「ああ、とても」

「じゃあ行こうか」

 

 そうして2人は嘆きの館を出て人間界の方へと向かっていった。

 

 

「やっぱり人間界は眩しいな……」

 

 太陽を手で透かし見るようにしながら、目を細めて呟く。サタンが普段過ごしている魔界には太陽がなく、1年を通して夜のように暗いため、毎度目が慣れるまで少々の時間を要するのだ。

 

「大丈夫?」

「ん……、問題ないよ」

 

 心配するユキに対し、優しく微笑んでみせる。だがその笑顔もすぐに消えてしまった。やはりまだ太陽の光に慣れていないようだ。

 魔術師協会本部に向かい、その入口をくぐる。受付の女性に用件を伝えると、彼女は奥の部屋へ案内してくれた。本部長と1時間程度話をしたあと、2人は部屋を出た。

 

「引き受けてくれるようで何より。肩の荷が少し降りた気分だよ」

 

 安堵のため息をつくユキの横顔を眺めながら、サタンは口を開いた。

 

「なあユキ、ディアボロから何を頼まれていたんだ?」

「んー、えっとね、最近悪魔を召喚する人間や魔女が増えているから、何か原因があるんじゃないかってことになったから人間界の方で少し探ってみてくれないか? ってことみたい」

「ふむ……」

 

 顎に手を当て考え込むサタンを見て、ユキは首を傾げた。

 

「どうかした?」

「いや、何でもない。俺の方でも個人的に調べてみることにするよ」

「本当? ありがとうサタン、大好き」

「俺もだよ」

 

 そんなやり取りをしていると、ふとユキの名前が呼ばれる。声のする方に目線を向ければ、そこにはソロモンがいた。

 

「こんにちは。ここで会うの、何気初めてだね」

「そうだね、一緒に来ることはあっても、たまたま会うっていうことはあまりなかったかもね。それにしてもユキはどうして魔術師協会に?」

「殿下の頼まれごと。原因を探るとと同時、本部支部長の耳に通しておこうと思ってね」

「へえ。あ、もしかしてあの事?」

「うん、多分それだよ」

「そうか。俺は今回別件で手こずっているからそれは請け負わなかったんだけど、君がやってくれるなら安心かな」

「ソロモンにそう言われると頑張ろう! ってなるなぁ。声をかけてきたのは視界に入ったから?」

「それもあるけど、サタンがいたからね」

「……俺?」

「あぁ。ユキ、少しサタンを借りてもいいかい?」

「私はいいけど……」

 

 ちらりとユキがサタンの方を見る。サタンは肩を少し竦めてから、ソロモンに視線を向けた。

 

「くだらない事だったらすぐに帰るからな」

「わかっているよ。なんだったらユキも一緒に来る?」

「ううん。今日はあちこち歩いたからいいや。ここで座って休んでる」

「了解。それじゃあサタン、図書館の方まで行こうか」

「ああ」

 

 2人の姿が見えなくなると同時に、ユキは協会の外にあるコーヒーのキッチンカーに向かった。

 

「アイスソイラテ1つ。砂糖なしミルクあり」

「はーい」

 

 注文してから数分後、出来上がったソイラテを受け取る。そしてそのまま魔術師協会の中に戻り、ロビーに設置された椅子に腰掛けた。

 ふう、と一息ついてからストローに口をつける。冷たいラテに舌鼓を打ちつつ、スマホを取り出した。SNSアプリを開き、可愛い猫動画なんかを見ながら時間を潰すことにした。

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