アサリリ世界のモブに転生したので遠目にイノチ感じてようと思ったらチートオリ主(野郎)が乱入してきた件 作:氷華陸佐
えーっと、はい。大変申し訳ございませんでした。繁忙期が悪化してモチベーション及びインスピレーションが消し飛んでおりました。メインストーリーが更新されて後者は回復したもののモチベは回復せず、死に体で何とか書き上げた次第です。
一万文字超えてんだから分割投稿しろやという意見は最もですが、なるべく原作との矛盾を避けたいのです。ご了承ください。
加えて拙作はどちらかというと三次創作に近しいのですが、三章まで書き上げている方が非常に少なく、ぶっちゃけネタ切れな現状です。
ですので今回はマジモンの悠里メイン回となっております。加えて取り扱うオリ主ネタがネタなのでオリ主君の出番はほぼ全くもってありません。伴って活動報告で告知した最強フォームネタは次章以降となります。
あー、久しぶりに百合ケ丘に戻ってきたわ。実際にはそんな時間経ってないんだろうけど、そんな気がする。
んで、これから三章なんだが、できる限りの布石は打っておいた。
まず神庭の方はイビルアイ戦の途中で、防衛会議の開催準備期間を短縮するようオリ主経由で進言しておいた。
こういう時便利だわオリ主。洗脳の片棒を担ぐようで非常に良心が痛むが、回したくもない舌を回さずに済むし何より手っ取り早い。そも間に合わんかったら元も子もないし。
それに目立ちたくないんよな私。下手に功績という名のハリボテ積み上げても、相応しくない高さから落ちる未来しか見えんし。
……で。問題はエレンスゲなんよ。これは私ひっじょーっに悩んだ。それで出した結論は、直接関与できない以上どうしようもねぇ!
どこぞの特型ヒュージみたいに分裂できりゃ話も違ったんですがね。例えば風が吹けば桶屋が儲かるという言葉がございます。風から桶屋まで全部常に見張りつつ仕組めればいいんですが、オリ主経由という間接的な方法になりますと話は別でして。
仮に私の預かり知らん所でガバが発生して原作知識の無いオリ主がオリチャー発動させて、結果桶屋が爆散四散しましたとか私はそれをどういう顔で聞けばいいん? 笑えばいいってそりゃ聞いた瞬間は笑えるでしょうよ、その笑いは砂漠よりも乾いてますけど。そしてその後私の精神と胃が物理的に爆散四散する。
ただまぁ、こんだけオリ主共の近場にいりゃあ薄々勘づくが、いい意味でも悪い意味でも修正力みたいなのは働いてるっぽい。
とはいえ確証も持てんし、ゲヘナが色々と不穏因子過ぎるんで逆にオリ主を縛りつけることにした。
方法としてはまず『クレエブレは敵じゃない』事だけを伝えます。ここ、あえて校長を外すんです。すると疑心暗鬼になりますね、そこで二つ目に『何があっても藍ちゃんの傍にいてあげて』と伝えることにより途中まではオリ主抜きで原作通りことが進みます。
あとは真実が明かされた後に、オリ主に教頭をボコボコにしてもらえば完了です。あそこの、メンバー全員から遠回しに避けられる藍ちゃんはちょっと不憫過ぎましたからね。おらエレンスゲのオリ主オマエだけはたい焼き食ってやれや。
……やれる事はやった。残りの四人を間接的に見捨てる形となっても、だ。むしろ他にどうやったら私の手札を使ってリスク無しでヘルヴォルを救えるのか教えてくれ、こっちだって泣いて馬謖を斬る思いなんだクソが。
「……大丈夫? 悠里」
「んにゃ? ああ、鶴紗ちゃん。ごめん、ちょーっと抜けてたみたい。鶴紗ちゃんこそだいじょぶ? 最近忘れっぽいって聞いたけど」
「大丈夫……だと思う。検査でも特に異常はなかったし、疲れてるだけなんじゃないかな……お互いに」
「あはは、色々あったしねぇ」
いかんいかん、今はこちらの事に集中せねば。これからやろうとしているのは同じくらい心苦しい事なんだから。
さて、生徒会室に行った夢結様が帰ってきたようですが。やはり弥宏様と真様加入イベはあるようで。安心半分疑問半分ですわ。
木っ端のわたくしは別として結梨ちゃんいらっしゃいますしオリ主もいやがるし、人数的には初代アールヴヘイムとほぼ同じなのですがフォールクヴァングには入れないので?
ああ理由は変わってるのですね。ふむふむまずオリ主の複数レギオン同時加入許可がネックと。……その設定いつぶりに聞いたよ、まだ生きとったんかワレ。
そんで次に上級生の圧倒的不足と。そういや一柳隊現在十二人いて、そのうちの約八割が一年生ですもんね。確かにこのまま甲州奪還に臨むと、夢結様と梅様の負担がえげつない事になりそうです。それと今更だけど三年生の居ないレギオンって百合ケ丘じゃ相当珍しいのでは?
というわけで東京方面への外征任務。弥宏様と真様の方をチラチラと見ていた鶴紗ちゃんの為に、世間話を装って予め補足しときますね。
「どしたの? 弥宏様と真様の方見て。やっぱりお試しとしても、上級生のリリィが新しく入ってくるのは不安?」
「えっあっ、いや……何でもない」
「そう? 私は正直ちょっと緊張してるんだけどなー。あそだ、今日から夢結様と代わって貰ってるから。AZの隣、よろしくね」
訓練の一環として、しばらくは夢結様とヘッドライナーを交代させて頂いた。
ちなみに銃撃戦が大の苦手な私だが、何故かマギスフィアのパスは人並にできる。と言っても敵は避けようとするけど味方だったら多少取りに来てくれるってだけだけど。
とはいえへっぽこなのは変わりないので精進せよとは夢結様のお言葉で。……力の限りガンバリマス。
で、はい。梨璃ちゃんAZに来まして、鶴紗ちゃん気絶しますた。はいはい梅様と梨璃ちゃん、鶴紗ちゃん抱えて逃げてくだち。殿はわたくしが務めます故。まい×たず×りりの邪魔はさせんぞヒュージ共ッ!
さて戦線は閑ちゃん達に引き継ぎ致しまして無事帰還。医務室に鶴紗ちゃんを運んだ後、出ていく振りをしてステルスで気配を消します。
目を瞑りつつ腕を組んで壁にもたれ掛かかる、という意味深な格好で待つ事しばらく。物音と同時にステルス解除。
「悪い子だー、鶴紗ちゃん。一人でどこに行こうとしているのかな?」
「悠里……。悠里には、関係ない」
「わかった、じゃあいつ出立する? 私も同行する」
なんて花京院のポーズを真似てみても当然通じる筈も無く。この辺のネタが通じないのはちょっとだけ寂しい。
「あの……話、聞いてた?」
「ごめんなーんも聞いてなかったや。だから聞かせて? 鶴紗ちゃんが今何に悩んでて、何をしようとしてるのか」
ほらほら鶴紗ちゃん早く行かないと誰かしら戻ってきてしまいますよ、と共犯で百合ケ丘から抜け出しつつ話を聞きます。
最後に立ち止まったのは、梅様に教えてもらったらしい秘密の猫の集会所。
「やっぱり優しいね、鶴紗ちゃんは。私の意見は変わらないよ。最後まで、同行させて」
「……止めないの?」
「そこ驚くところ? 私が一度として、リリィ様方の意見を尊重しなかった時ある?」
無論、こんなの原作知識があるからこそ選べる道だ。
でも、だからこそ。ここで鶴紗ちゃんを引き止めるのではなく、寄り添えるのは私しかいない。というのは原作ありきの結果論だけれど。
「お、理解はしたけど納得はしていなさそうな顔。じゃあこういうのはどう? もし鶴紗ちゃんが鶴紗ちゃんじゃなくなった時、私が介錯するよ」
さって覚悟を決めろ斯波悠里。私の思いつく限り、鶴紗ちゃんに同行を許してもらうにはこれしかない。
こっから先は心を殺せ、動揺を読み取られたらそこで終わりだ。
「ヒュージやら誰ともわからん奴に、鶴紗ちゃんは殺させない。級友として。あらゆる意味で。決して貴女を一人にはさせないよ、鶴紗ちゃん」
「……無理だよ。だって悠里は」
嘆息混じりの鶴紗ちゃんの言葉を遮り、私はティルフィングをブレードモードで起動させつつ、すくい上げるような軌道を描いて切っ先を胸の真ん中へと突き付けた。
このまま腕をひねりつつ前へと突き出せば、マギを伴った鋼鉄の刃はいとも容易く鶴紗ちゃんの心の臓を貫くだろう。
「証拠を見せよう、と思ったけど。リジェネレーター発動させると記憶まで飛んじゃうんだっけ。それじゃあ意味ないしなぁ……。あっじゃあこうしようか」
切っ先をズラした刃に自分の手首を押し付けて、擦り付けるようにさっと──っていっっったぁぁぁーいっ!?
推しに刃突き付けた罪悪感で痛み誤魔化せるかなって思ったけど無理だわ!
っつおお……ッ。リリィやってる以上怪我は付きモンとはいえ、やっぱいつまで経っても慣れねぇわコレェ……ッ!
「え? ちょっ悠里何して……っ!」
「貴女が自分よりも大事に想ってる仲間を、貴女の目の前で傷付けた。今見せられる覚悟は、このくらい。もし足りないんだったら腕一本ならあげられるけど」
「わ、わかった……! もういい!」
よし、なんか思った反応と違うどころかドン引きされてる気がするけどヨシ!
とりあえず片手と口で布巻いて圧迫止血はしたけど、うぉー貧血キッつい……だいぶ垂れ流したなコレ。
「どうしてそこまで……何時悠里の事を忘れるかもわからないのに」
「そしたら何度だってはじめましてするよ。それとコレ、あーげる」
鶴紗ちゃんに渡したのは日記帳、勿論デザインはぬこ殿。
「それをどうするかは、鶴紗ちゃんに任せる。記憶じゃなくてあくまで記録だから、思い出せなくて悲しくなっちゃう事もあるかもしれないけど。何もなくなっちゃうよりかはマシだと思うから」
前世で見た漫画とかではこの方法は失敗として描かれる事が多いけど、個人的にそうは思わない。
あくまで最初から便利な記録媒体だと割り切ってしまえば、きっと心の支えになると思うから。
っとゆったりしてると梅様来ちゃうかな。
「さ、そろそろ行こっか鶴紗ちゃん。地獄の果てまで、この私がお供致しましょう!」
「なにそれ、物好きなやつ。…………でも、ありがとう」
「ふぁ、待っそれ反則……!」
照れ鶴紗ちゃん頂きましたーっ! ぶっきらぼうにそっぽ向きながら小声でお礼ってもうマジ可愛い尊い──って冗談言ってる場合じゃねぇわこの場面で鶴紗ちゃんより先に死ぬそれも原因が鼻血で失血死とか洒落にならんぞ。
オリ主の顔を思い浮かべて精神を鎮め、鼻にティッシュを詰め込んでから鶴紗ちゃんの後を追った。
去り際にこうして『探さないでください』と書かれたメモを落としておく事で、恐らくあちらは原作と同じ動きをするでしょう。最初は地面に血で書いとこうかと思ったけど、多分それこそ原作以上に血相変えて探されそうだからやめますた。傍から見たら事件の香りしかしないしネ。
あ、でも待って私ダイナミックリスカした時の血を処理してねぇわ。……わ、わァ、やらかしたなコレ。
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さてそんなわけでゲヘナの研究所の一つがある東京島嶼部の御蔵島へ向かうことになるのだが。方法は勿論密航……だとしてもこの辺りは大の反ゲヘナガーデン百合ケ丘のお膝元、その為シエルリントの守備範囲である横浜港へとまずは行きます。
あ、勿論ここで一夜は稼いでる。建前としての理由は色々話したが、幸い鶴紗ちゃんは納得してくれた。
原作の鶴紗ちゃんがどういう行動をしたかは描写がなかった為不明だが、明後日の朝には御蔵島へと一柳隊が到着するはず。
「あ! 見て見て鶴紗ちゃん! 新作ドーナツだって! 朝ご飯に食べてかない!?」
「い、今は食欲が……」
「いいからいいから。あ、すみませんこれ二つくださーい!」
うーん、うみゃい。鶴紗ちゃんも私に押し付けられたとはいえ、流石に受け取ってしまっては勿体ないと感じたのか普通に食べてくれています。
お、服屋じゃん。しかもこんな時間から開いてる。
「ちょっと見てかない? 制服で歩いてると所属バレちゃうし、普通にちょっと寒いからコート買いたいんだよね」
「え、うん……いいけど」
というわけでたっぷりとウィンドウショッピングを挟んでから、当初の目的であるコートを買って店を出る。
よし、これで出歩いててもどこかの所属のリリィなんだろうなとしか思われないだろう。
「おっともうこんな時間。少し早いけどお昼にしよっか」
私の今までの行動に、流石に訝しげな目になってきた鶴紗ちゃんが何かを言う前に手を引いて歩き出す。
入るのは名の知れたファミレスのチェーン店。私はチーズハンバーグセットにしますが鶴紗ちゃんは? え? 食欲が無いってそんな事は聞いてませーん、て事で私と同じのでいいよねはいけってーい。
「んー、食べた食べた。じゃあ次はカラオケかゲームセンターでも──」
「いい加減にして……!」
我慢の限界だと言いたそうに私の手を振り払った鶴紗ちゃんは、俯き気味に私へと鋭い目付きを向ける。
鶴紗ちゃん? 流石に往来では注目を集めてしまいますよ?
「朝も言ったけど、真っ昼間に正面から突っ込むなんて愚策だよ。夜行便で忍び込んで未明に急襲、寡兵で殴り込むならそれくらいしないと」
「それはわかってる! でも、そうだとしても、今はこんな事してる場合じゃ……!」
……まぁ、分かってたとはいえ。やっぱり私では駄目か。あわよくば、本当にあわよくば、これで鶴紗ちゃんが考えを変えてくれればと思ったんだけど。
そして同時に、次善の策たるもう一日何とか稼いで鶴紗ちゃんが捕まる前に救援を間に合わせる作戦も失敗が確定……と。
まぁこうして鶴紗ちゃんについてきた理由の一つに、行き先を知ってるアリバイ作りがあるので、こちらから一柳隊にアクションすれば原作展開を早められる。野暮だからあまりやりたくはなかったけど。
「……ね、鶴紗ちゃん。貴女がやろうとしている事は知ってるけれど、その道のりが全て悲しくちゃいけないなんて誰が決めたのかな」
「っ、それは……」
「それとも、こうやって私と過ごして、皆の元に戻りたいって思ってくれた?」
そう、この行動の建前は表向きが単に最後の思い出作りで、裏が楽しい思い出で鶴紗ちゃんを引き留めよう作戦なのだ。
ただそれを明かしてもなお、鶴紗ちゃんの意思は揺るがないようで。
「それはない。でも悠里がそのつもりなら、夜までは付き合う」
「りょーかい。手強いけど、頑張って鶴紗ちゃんの決心を揺らしてみせるよ」
まぁてなわけで贅沢にもゲーセンとカラオケ両方行って遠回しな説得を続けたものの、成果は挙げられませんでしたよと。
そして夕方の横浜港。運び込まれる荷物に紛れての侵入をするべく、鶴紗ちゃんと作戦の最終確認を行う。
作戦はいたって単純で私がステルスを発動させつつ先行してルート構築、その指示に従って鶴紗ちゃんが動き、二人とも船に忍び込むというもの。
「じゃ、行くよ、鶴紗ちゃん」
「ちょっと待って、悠里」
「ん? なあに──」
振り返り際、不意にぶれる視界。崩れ落ちる私を受け止めた鶴紗ちゃんによって優しく地面へと下ろした段階で、ようやくある程度現状を認識できるようになる。
脳震盪。きっと私が振り返ると同時に拳で顎を打ち抜かれたのだろう。
「……だめ、だよ。たずさ、ちゃ──」
薄れゆく意識の中、私に向けて何かを呟いた鶴紗ちゃんが背を向けて去っていく。
……決心は決心でも、別の事をさせちゃったか。私を巻き込みたくないって思ってくれたこと自体に関しては、嬉しいけどさぁ。
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目が覚めると既に日が沈み、空には星と月が輝いていた。携帯で時間を確認すると、午後九時を回っている。
一応、まだ間に合う。ゲヘナの連中が夜中にこっそりと運ぶモノなんぞを鶴紗ちゃんに見せたくなかったし、夜襲に間に合わせる為にもあの時間帯にしただけで、この時間でもまだ後を追えるから。
……頭はいたって冷静だ。原作知識は勿論の事、やはり精神年齢に前世からの年齢も加算されているからだろうか、ありがたいが同時にそこはかとない嫌悪感。
とはいえ譲れない部分もある。本来ならこのまま百合ケ丘に帰還するかここで待って合流するか、このまま何もせずに任せてしまうか。それが正解なのはわかってる。
でもそんなのは嫌だ。なによりあの時私は鶴紗ちゃんと同時に自分自身にも約束した、貴女を絶対に一人にしないと。
再び携帯を持ち上げて、折りたたみ式のそれをパカリと開く。打ちこむ電話番号は──
『斯波さん!? えっと色々聞きたい事はあるがとりあえず今どこに』
「東京島嶼部御蔵島、理事長にそう伝えて」
それだけを一方的に伝え、即座に電話を切ると同時に機内モードに。お説教は後で聞く、わざわざオリ主に掛けたのも奴なら雑に扱っても罪悪感が微塵も湧かないからだ。
長々と説明している暇も惜しい、理事長ならあの場所の名前だけで察してくださるだろう。
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「──せぇいっ!」
ブルトガングでガードし、その衝撃を受け流しつつティルフィングの切っ先をヒュージへと突き刺す。ほぼ同時に今度はブルトガングを逆手に持ち替えて背後からの攻撃を防ぎ、その勢いのまま振り返ってティルフィングを振り下ろした。
いやまさかこうして単身でゲヘナラボに乗り込む事になるとは。隣に鶴紗ちゃんがいて下さったらどれだけ頼もしいだろう。
どうせ一人なのだしステルスで隠密に、と最初は思ったが流石は総本山と言うべきか即座に侵入はバレた。なのでこうして強行突破しているわけなのだが……引き返せないとはいえだいぶ悪い予感が現在進行形でしてる。
というのも、こうしてヒュージが出てきたきっかけが私に起因しているのだ。それではおかしい、じゃあ先に向かったはずの鶴紗ちゃんは?
そんな私の疑問にまるで『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』とでも言いたげに。煌めく刃が私の額を掠めた。
「嘘でしょ、流石に早すぎる」
そこに立っていたのは、虚ろな瞳をした鶴紗ちゃん。
本当にこれは想定外だ。既に鶴紗ちゃんが鎮圧済みなのはまぁ予想出来てたが、もう敵に回るか。原作では正確な日数は描写されていない為なんとも言えないが、少なくとも捕らえられてから一柳隊が到着するまでに半日以上は経っていた筈。
「ッ!」
咄嗟にサブスキルをフル動員。滑り込むように迫ってきていたティルフィングを、交差させた二振りで防ぐ事に成功する。がしかし、即座にがら空きの横っ腹へと蹴りを入れられた。
……暴走しているとはいえ、ファンタズムは健在と。理性が無いのはまぁ幸いと言うべきか。であるならば相性はまずまず、二刀で防御に徹していればまず斬られる事は無い。位の実力差ではあるはず、だと信じたい。
しかもそれは先程の蹴り等の打撃を甘んじて受け入れた場合なのでそれでは一柳隊が来る前に私が力尽きる。なのでこういう場合は。
「……逃げるが勝ちってね。追ってきてよ?」
次点、というかほぼ同じ危険度で注意すべきは邪眼だが、これもギリなんとかなる。
あくまで予想だが、原作の描写を見る限り邪眼を当てるには二つの条件がある。一つにバッチリ視界に入ってなきゃいけないっていうのと、二つに対象は一体もしくは一人だけ。しかも使いこなすまでは狙いを定めるのに一瞬の溜めがある。
つまり、インビジブルワンとステルスが立ち回りの鍵。
ただそれだけでは足りない、未来を見られて邪眼を置いておかれる可能性もあるからだ。今は常にヒュージで身を隠し続け、鶴紗ちゃんの視界に映らないようにする。
「昨日の続き、あと少しだけ私と遊ぼうか、鶴紗ちゃん」
なんて、息巻いたはいいものの。いわゆる言うは易し行うは難しってやつで。まず未来視される中で身を隠し続けるとかマジモンの鬼畜ゲー、そんでもって学習されたのか体術主体で戦ってくるようになってとっても痛いデス。どうやら私にマゾの趣味は無いらしい。
一縷の儚い望みをかけて懸命に呼びかけてもみるがうん、やはり私なんぞでは効果無いわな。やはりまい×たずは正義。ちな×の左右はどちらでもイけます。
そんでもっていい加減日が登ってきたのですが、おいまだかオリ主。徹夜明けに想定外の戦闘でいい加減死にそうなんだが精神的にも物理的にも。
え? 撤退? そんな事したら鶴紗ちゃんが一人になっちゃうでしょうがいい加減にしてください。とはいえ死んで傷になるのも非常に申し訳ないので頑張ります。
ほら頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって! やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ! そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る! 北京だって頑張ってるんだから! 馬鹿野郎お前私は勝つぞお前!
「あぐっ……!」
いい加減疲労が蓄積してきたのか、クロスした二振りで防いだ筈の一撃に吹き飛ばされる。壁に背を思い切り叩きつけられた事により強制的に肺から空気が吐き出され、視界がチカチカと瞬く。
しかもマズッ、今の隙で邪眼が──
と思ったら突如として爆発音と振動が建物内へと響き渡った今しかねぇ!
「避けてね鶴紗ちゃん!」
前へと踏み出しつつティルフィングをバスターランチャーモードへと変形、即座にバスターしながら切り離しを行い鶴紗ちゃんの服へとその切っ先を引っ掛ける。
そしてそのまま、先程崩壊させた壁の穴から建物の外へとフライアウェイ。上空に見えるはガンシップ、やはり先程の振動は突入してきたロスヴァイセの様々方だろう。とすると一柳隊はあちらの方か。
「もぎゃっ!」
着地を盛大に失敗したがそれどころでは無い。ヒュージの代わりに今度は木々を遮蔽物に使いながら鶴紗ちゃんが私を見失わない程度に全力逃走する。
「皆ーっ! ヘルプミーっ!」
「「悠里さん!?」」
というわけで合流しました。梨璃ちゃんと夢結様筆頭に一様に驚く一柳隊の皆様に暖かく保護されます。
ああすみませんありがたいお話は後ほどご拝聴させて頂きますので今は情報共有をさせて頂きたく! かくかくしかじか四角いムーブです!
あとこちらからお聞きしたいことがございましてオリ主の野郎は一体どこ行きやがったのでせうかパッと見見当たりませぬが!
はぁ!? 別の敵と戦いに行った!?
何しとん、何しとんアイツ! 原作の敵を倒せないばかりか遂に別行動しだしたぞアイツ! ホンマにオマエおる意味あるん!?
んでやべぇ私が鶴紗ちゃん連れてきたせいで流れが早ぇ! もうヒュージ共が二水ちゃん狙いだした!
「させないっ!」
ヒュージに狙われている二水ちゃんの救援は神琳ちゃんと楓ちゃんにおまかせ致しまして、私は鶴紗ちゃんにショートブレードモードのティルフィングを投げつける事で邪眼もとい原作における楓ちゃんダウンを阻止。
その隙にさらに前進して両手で持ったブルトガングを振り下ろし、ガードした鶴紗ちゃんを一方的に吹き飛ばして距離を取らせた──直後、その腕を神琳ちゃんにかなり強く掴まれる。ええ、心当たりはありますとも。
……あー、はい。何故仲間の鶴紗ちゃんに武器を向けるのか、ですね。
これは私、前世で原作読んだ時から用意していた回答がある。
「鶴紗ちゃんの為だよ」
「なっ──!」
「神琳ちゃんのその優しさは否定しないよ。でももし今の鶴紗ちゃんのせいで私達の誰かが傷ついたり、ましてや死んじゃったりしたら、一番気に病むのは誰って話」
元の発端だって、鶴紗ちゃんが皆を傷つけたくないから姿を消すって話だし。例えば私が鶴紗ちゃんの立場だったとしていざ正気に戻った時、自分だけ無傷の中ボロボロの皆から『無事でよかった気にしないで』なんて言われても確実に気に病む。
だから私は鶴紗ちゃんと約束したのだ、鶴紗ちゃんが鶴紗ちゃんじゃなくなったら私が介錯すると。なおサシだと殺す気で挑んでも返り討ちに会う事必定なので遅滞戦闘せざるを得ず、結果間に合わずに一柳隊が合流して元に戻しましたとさハッピーエンド。ってのが今回仕組んだ物語。
ごめんよ鶴紗ちゃん、私の実力が足りなかったばかりに結局皆を巻き込んで。でも鶴紗ちゃんを傷つける覚悟はあったのと一人にはしてないから、約束は破ってないのでセーフって事で許してくださいオリ主が何でもしますから。
「私は神琳ちゃんや楓ちゃんみたいに頭は良くないからさ。だから私が止めてるうちに何とか考えて、鶴紗ちゃんを救う方法を」
「……わかりました、そちらはお任せします。それと」
「どうか謝らないで。私も謝らないし、考えを改めるつもりもないから。適材適所でいこう、それが一柳隊でしょ?」
「ええ、そうですね」
神琳ちゃんと別れ、再び前線へと走る。そして今まで鶴紗ちゃんを足止めしてくれていた先輩お二人方へと声を張る。
「弥宏様! 真様! 前、変わります!」
「っ、ホンマにええんか!?」
「大丈夫です! むしろ私にやらせて下さい!それが鶴紗ちゃんとの約束ですから!」
「……おっしゃ! ええ心意気や! サポートはウチらに任せとき! ……弥宏!」
「ええ!」
えっそんなこれは弥宏様のレジスタと真様のヘリオスフィア!? 周囲のヒュージ掃討のみならずレアスキルまで……っ、感謝してもしきれません! しゃあ百人力ですよコレは!
と思いましたが。烏滸がましい思い込みでしたらお許しください、私に触発されてしまったのかすぐさま梅様が鶴紗ちゃんを引き取っていってしまいました。
……まぁ、ヨシ!
てなわけでギガント級襲来しましたんでここから正念場──いや昨日今日で正念場多いな私? いや自業自得なんだけどさ。
あー、オリ主居たら負のマギの霧を止めに行ってもらおうと思ってたんだが、これはもう間に合わんな。
ホンマに今なにしとるんねやろアイツ、別作品の能力持った敵でも現れたんでしょうかね。まぁこれっぽっちも興味はありませんしいないならいないで清々するが誤算が生じるので急に居なくなるのは止めて下さい非常に迷惑です。
というわけでアニメ最終話ぶりの、尊き姉妹(にこれからなる)によるヒュージ入刀です。え、やけにあっさりしてるって? そりゃだってもう……限界ですし。
空回しのし過ぎで負のマギがオーバーフローしてるんです。
「きゅう」
というわけで申し訳ございません皆様、ギガント級の消滅も見届けたのでお先に失礼致します。アイルビーバック。
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──尊みの波動っ!?
神は言っている、今日今がその時だと。というわけで、目覚めたら知ってる天井だった百合ケ丘医務室からのミッションインポッシブルを経た私はかの路地裏へと来ていた。
いやー、まい×たずはもう最高ですよね。最初は梅様も鶴紗ちゃんの事をただ懐かない猫だと思って接していたと思うんですよ対する鶴紗ちゃんも梅様を執拗に構ってくる変わった人だとしか認識していなかったと思うんですがひょんな成り行きから同じ一柳隊に入って共に行動していくうちに梅様は鶴紗ちゃんのその自己犠牲を厭わない優しさに放っておけなくなって鶴紗ちゃんは梅様のそのいつも仲間の事を気遣うムードメーカーな所に惹かれて今回のシュッツエンゲルの誓いに至ったのだとわたくしは解釈しておりますが皆様はいかがでしょうかそして擬似姉妹となったばかりの現段階では両者とも慣れない距離感に戸惑いしかし一歩ずつ着実に互いの距離を詰めていく様が大変な見どころとなっております鶴紗ちゃんの事になると冷静でいられない梅様と梅様に甘えたいがやり方が分からないわ恥ずかしいわで不器用になってしまう鶴紗ちゃんなんて見たらもう心の中で思わず気ぶってしまうのも致し方ないのです改めましてお二人方おめでとうございます末永くお幸せにお過ごし下さい。
「ところで二水のやつはいつも通りだとして、あそこの物陰でぶっ倒れておる悠里は大丈夫なのかの?」
「何をやってらっしゃるんですのあの方は!?」
そんなミリアムちゃんと楓ちゃんの声、そしてバタバタと近付いてくる足音。
これくらいどうってことはねぇ、イノチ感じる事が私の生きがいだ。百合の花が咲き誇る限り、私は止まんねぇからよ。だから、止まるんじゃ……ねぇぞ。
意識を手放してから再び医務室まで連れ戻された後、関係者各位から今回の件をトータルでこっぴどく叱られ──はい、はい、申し開きようどころか返す言葉もございません大変申し訳ございませんでした。
三章完結編は履修済ではあるのですが、未だプロットを練っている途中という状態です。仕事の忙しさを加味すると年内投稿は非常に難しく、正月休みを使って何とか執筆致しますので、今しばらくお待ちくださいようお願い申し上げます。
少し早いですが、読んでくださっている皆様につきましては、良いお年をお迎えくださいませ。