アサリリ世界のモブに転生したので遠目にイノチ感じてようと思ったらチートオリ主(野郎)が乱入してきた件 作:氷華陸佐
BOUQUET編は読み切りのつもりで書いたとはいえ一万七千字はやりすぎましたね。アニメ十二話を一話に纏めた結果がアレですよ。という訳でしてここからはぶつ切りで投下します。
アニメ時空が終わった。
もゆ×ミリの結婚式はもう尊いなんてものじゃなかった。不躾なのはもうほんとに分かってるんですけど、なんなんですかねあのワシが育ててきた感。おそらくは実際にこの目で見てきたヤキモキする距離感及びやり取りと前世で見たアニメの一幕の記憶が合わさってそんな感情が湧いたと思うのですけどちょっとこの説を提唱してみたいのでどこかにそういう学会とかあったりしないでしょうかありませんかそうですか繰り返しになりますがお二人共末永くお幸せにお過ごしください。ところでシルトが投げたブーケを受け取ったリリィは憧れの上級生と幸せなシュッツエンゲルの誓いを結ぶことができるというジンクスでブーケトス文化を作りたいと存じますが如何でしょうか。あでもそうすると取り合いに発展してしまう恐れがございますので一人選んでの直接受け渡し式にしましょうか中々発展のないあの娘の背中を押すのに丁度よろしいかと存じますしなによりそこでまた新たにてぇてぇやり取りが生まれると思うと胸が熱くなりますなりませんかそうでしょう。
でまぁこの後は本来なら梨璃ちゃん辺りに助っ人の売り込みかけて、続くアプリ時空もご一緒させて頂こうとしていたのだが。……もう、やめた。
そちらはもう、オリ主に任せるとしよう。他ガーデン巻き込んでハーレム築こうがどうぞご勝手に。
そもそもの話、私とアイツの接点なんて原作イベントを除けば無いに等しい。いや無いと断言する、なんならこっちから避けてるし。触らぬ邪神に祟りなしってやつ。
それにこっちはこっちでやる事がある、そろそろ今後の身の振り方を考えなければ。リリィだっていつまでも続けられるものでは無いし、引き続き別の形でヒュージとの戦いに関わるにしろ、大人しく身を引くにしろ。まず大切なのは成績だ、私達はリリィである前に一人の女学生なのだから。
というわけで射撃訓練場。いやあ私射撃の実技試験赤点常連なんですよねぇ。今もこうして折角神琳ちゃんの紹介で雨嘉ちゃんに射撃教えて貰ってんのに、五発に一回しか的に当たんねぇもん。
おい私貴重なイノチ感じる時間割いて頂いてんだから百発百中くらいしてみせろや。ああ謝らないでくださいまし雨嘉ちゃんの教え方はキリスト教徒にとっての聖書が如く素晴らしい物で的確に的を射ておりますともただ私の才能がこの世全ての罵倒を煮詰めたとしても足りない何かなのです。生まれてきてごめんなさい。
根性見せろよ頑張れやればできるほらほらこうして雨嘉ちゃんも手取り足取り姿勢正してくれ──ほわぁぁぁ!? ああいけませんお客様わたくしになぞわざわざ触れることはございませぬあーっ! あーっ! 密です蜜ですあまりにあまーい香りで脳がオーバフローしてしまいます!
え? 集中しろ? それはそう。…………これやっぱ近付いて叩っ斬っちゃ駄目なやつですかそうですか。
さてそんな夢のような時間は終わりを告げ、雨嘉ちゃんと別れた後。今、というよりは一生会いたくない奴に声をかけられた。
「斯波さん、今いいか?」
「……それ、私じゃないと駄目?」
「ああ、斯波さんと少し話がしたい」
ああそうですか私じゃないと駄目ですか。そうじゃなきゃこうして声掛けてきませんよね知ってますよ。
「私これから近接戦闘の訓練するから。待たせるのもアレだし、どうせなら的の一つにでもなってくれる? その後なら」
「ああ勿論だ、付き合うよ」
やったぜ動く的ゲット。
にしてもガワだけとはいえ女の子の頼みに一つ返事とは。流石は器が女の子限定で宇宙よりも広くなる事に定評のあるオリ主様だ。ただしその器は泥に汚染された聖なる杯な模様。
一回悪い人に騙されて痛い目見るといいよ。まぁもし居たとしてもソイツは後に肉体的か社会的に死ぬよりも悲惨な目に会わされるのですが。しかも更に酷いとオリ主によってじゃなくて取り巻きのハーレムが勝手に制裁加えるし。他人の金で肉を食う感覚で他人の罪で人を裁くなんて、そんな最低な事ここのオリ主君はしないよね?
という事で室内訓練場にとーちゃーく。周囲に人は居ないな? ヨシ!
いやーオリ主君が相手してくれるとか、ただ単に木偶人形殴ったり素振りするよりも経験値は積めるから助かるわー。そしてなにより事故を装ってムフフな事をすることも出来る。そう、このcharmならね。よっしゃ血祭りじゃーっ!
「──ハッ……ハァ……! ケホッ……」
ムリだわ。
くっそこちとら本気で振るってんのに涼しい顔で受け流すなや、突拍子も無く爆散しやがれ。
「凄いんだな、斯波さんは。訓練一つにも手を抜かないなんて」
だ、か、ら! こちとら殺る気で振るってるだけなんだっつの! しかも約束通り反撃一切無しで受けに徹してんのがさらにムカつく!
そうですかキサマにとっては私の攻撃なんぞさぞ可愛いじゃれつきに見えることでしょうねぇ!
想像してみてほしいがこっちが本気で努力して取り組んでる事に対して、指先一つでそれを越した挙句練習扱いされるってさぁ! 普通に殺意沸くんよ!
ええ、ええ、いいですねチート持ちは! 努力なんぞしなくてもある程度無双できて、更に伸び代も無限大ですものね!
是非ともさらに強くなってこの世からヒュージを絶滅させて頂くか、そっちよりも先に精神性を鍛えてみては如何でしょうか!
差し出された手を丁重なお礼の言葉と共に無視しつつ自力で何とか立ち上がる、ナメんなクソが。
「思わず熱中してしまったな。先にシャワーでも浴びてきたらどうだ?」
む、確かに汗だくのまま夕食に向かうというのも品が無いがしかし。
「そっちの用事は? 多分ご飯の時間になっちゃうと思うけど?」
「なら夕飯と風呂の間でどうだ? 出直してもらうようで悪いが」
遠回しにお前と飯食う気は無いと伝えたら遠回しにそれなりに長い時間拘束すると伝えられたでござるの巻。えぇ……非常に面倒くさ。
「……そ、いいよ。私の方こそ悪いね」
というわけで夕食後。私はステルスを、オリ主はユーバーザインを使って、屋根のある人気の無い場所へと移動する。
こうでもしないと周囲からの視線がやばい。演技とはいえ好意的でもまるで私がコイツを狙ってると周囲から思われるし、不機嫌オーラを纏っていても『強くて素敵なオリ主様のどこが気に入らないの?』と敵視される。どうすりゃええっちゅうねん。これぞ四面楚歌、八方塞がり。愛しのリリィの方々にそんな視線を向けられたら私、ストレスで胃がマッハでございます。コイツには一度でいいから自分の胃に穴が空いていく瞬間が自覚できる感覚ってのを味わってみてほしい。
「……で? 話って?」
なるべく早急に三十文字以内で簡潔に述べてくださいませんかね。そして早く視界から、否この世から消え去ってくれ。
「まず、斯波さんはこの世界についてどのくらい知ってる?」
「どのくらい、といわれても。この先についてならそれなりに? でももう私、関わるつもりないから教えるつもりもないよ」
私の覚えてる限りではこの先、明確に死んだと描写のあるリリィは居ない。なら別にこの先私いらなくない? 苦戦する場所はこの間目覚めた時に何かパワーアップしていたチートがありゃなんとかなるやろ。
以上の事からして『オリ主が嫌い』という感情論を優先しても問題ないのである。
つーかオリ主はなぜそうも不思議そうな表情するし。
大体、私が改変に関わる時はリリィの生き死にが関わっているか、よりこうしたらてぇてぇになるなとかそんな時くらいだわ。
見境無しのテメェと一緒にすんなや訴訟するぞ。謎展開で負ける未来しか見えんけどな!
しかも本来私は原作通りが一番だと思ってるまである、実は二つ目の特典に原作の記憶消してくれって頼もうか迷ってたくらいだし。なんなら実際転生してからしばらくまで見過ごすどころか見殺しにする気満々だったからな。
「大体、この先あなたの力があれば死者ゼロで初見突破は楽勝だよ? しても大して意味の無い改変に付き合う気は無いから」
加えて口には出さんが、もうこれ以上壊れた世界の先を見たくないのよ。せめて想像の中だけでは、前世の記憶通りのヘルヴォルとグラン・エプレの皆様でいて頂きたい。
間違っても初見でニコぽ撫でぽして別の人を好きになるたかなほは見たくないし、薄っぺらい発破で過去から立ち直ってしまう一葉さんなんて以ての外。
さらにその先の話をするならば、椛様と楪様の間に立つとか極刑物。業務用よりもチープな味付けになったヤンデレもしくは暴力系ツンデレの船田姉妹なんて目も当てられない。
つか今思ったがコイツもしかして私をハーレムに加入させようとしてる? その手には乗らんぞまだ地獄の最下層に落ちた方がマシだわ。
「そこをなんとか考え直してくれないか。俺と斯波さんが力を合わせれば、きっとよりいい結果を導くことが出来る。斯波さんが俺の事を嫌いなのはわかってるよ。だけど斯波さんは一時の感情で、これから傷付くリリィ達を見過ごすというのか?」
おーおー言ってくれるわな小僧。
一つ訂正しておくが私がオマエを嫌いなのは一時的なものではなく、オマエが男として百合の間に挟まろうとする限り無限に続くんだわ。
あとは全部肯定してやる。いい加減わかってくれ、私は積極的に改変する気がハナからねぇんだ。
「悪いけど、私の考えは変わらないよ」
「……っ、そうか。なら悪いが、少し強硬手段を取らせてもらう」
何かされるのかと心の中でそっと身構えたが、幸いオリ主は踵を返して去っていく。
おっ尻尾巻いて逃げんのかやーいやーいヘタレー、出会って開始二秒で口説く癖にいざ迫られると謎に赤面するか逃げる弱虫毛虫ー!へいへーいピッチャービビってる! ヒダリデウテヤ。
で、生徒会に呼び出しくらったんですが。
非常に嫌な予感がするし既に今から胃が爆発しそう。
「し……失礼致します。一年椿組、斯波悠里です」
「悠里さんですね、まずはどうぞお掛けになってください」
「ありがとうございます、失礼します」
おお、初めて座ったがここのソファーふかふかだな。ラウンジに置いてあるものよりもワンランク上、いや下手するとそれ以上かもしらん。
続けて出して頂いたお茶を、丁重なお礼の言葉の後に一口。こちらも美味い。そもそも茶葉の違いというのもあるだろうが、なにより史房様手ずから淹れて下さったお茶だ美味しくないわけが無い。
で、このいい加減目の前の机に出された書類に関して、まず間違っていないであろう予想という名の現実を受け入れなければ。
「悠里さんには、一柳隊からのスカウトが来ています」
「わ、私まだフリーランスを貫いていたいかなーって思うのですが……断ることは?」
「ちなみにですが、その件について彼からこちらを預かっています」
渡されたのは、しっかりと封をされた一通の封筒。共に渡していただいたペーパーナイフでそれを開けると、中に入っていたのは一枚の紙切れ。
あーなになに……『もし断った場合、斯波さんが周囲に秘密にしていることを全てバラす』ぅ?
……おもっくそ脅迫じゃねぇか!? やっぱあの野郎最悪だわ! 何がオマエをそこまで駆り立てるねん! 原作知識持ってる私が大丈夫だっつてっんのに何が不満なんだ!
返して……私の平穏を返してよぉ!
「…………っわっっっかりました、その話受けさせていただきます」
はいというわけでどこからともなく現れた大量のヒュージ君戦ですね、要はアプリ時空の冒頭。原作で夢結様がきついと仰っていた通りひたすらに数が多い!
だが負けんぞこちとらオリ主のせいで神琳ちゃんと雨嘉ちゃんに挟まっとんのじゃ! ああいや楓ちゃんの采配に文句なんて一つもございませんとも。せめてもの詫びとして前衛は私が頑張りますので、百由様のお嫁さんは中衛でごゆるりとお過ごし頂き、神琳ちゃんと雨嘉ちゃんは後衛でイノチ感じてもろて。
っと危なっ! 死角から狙われてたか。ビームを何とか叩き落とした所を、雨嘉ちゃんがカウンターで風穴を開けて下さった、ありがたやありがたや。この御恩は一生涯どころか幾度輪廻転生しようとも忘れません。
「ありがとう雨嘉ちゃん!」
「ううん、大丈夫。こっちこそ、前ばかり任せてごめんね、そろそろ変わる?」
「まだまだいけるよ! まっかせて!」
おっしゃ雨嘉ちゃんに心配して貰った私に敵などない。おらヒュージ共ここから先はネズミ一匹通さんし後方の雨嘉ちゃんには指一本触れさせんぞ!
おっし何とか殲滅完了!
「悠里さん! 二時方向の一団で最後です!」
「了解!」
私達が開けた道に正確に弾丸をねじ込んでケイブを消滅させつつ指揮を執る神琳ちゃんの言葉に返事と共に駆け出し、残敵の処理も完了。ついでにガンモードで最後のケイブも潰……潰し……こ、このっ。あっ待っ、当たらな……ええいもういいわ直接殴るわほい終了。
「何をやっとるんじゃおぬしは」
「あ、お疲れ様ミリアムちゃん。私近接戦闘専門なんだよね。すごい極端というか……」
いやあ、あははお恥ずかしい限りで。
直接の殴り合いならかの著名なリリィちゃん達の足下位にはいけるのに、射撃に関しては圧倒的にビリなんだよね。ちなみに座学は上の中から下をウロウロとしております。
え? お前二つ名戦車だろって? 一番マシなのがそれなんすよ。他の二つ名知ってる? 日本語訳で暴走機関車と狂戦士ですよ? 乙女に付ける渾名じゃねぇ!
「皆さん。楓さんと夢結様から通信があり、どの地点でも戦闘が完了したようです」
「よかったー、結梨ちゃんは無事?」
「はい、何度か突出しかけた場面はあったようですが、大きな怪我等は無いようです」
「それはなによりじゃの」
まあ多分守ったのは十中八九オリ主だろうよ及第点はくれてやる。
未だに油断すると一人で突撃しかねないから危なっかしいんだよなぁ結梨ちゃん、まぁここに関しては私も時間による解決しか無いと見てるんでお父さんなどと呼ばれてるオマエの出番だぞもっと頑張れや。
え? 私? うー、あの時以降結梨ちゃん心開いてくんねぇんだもん、しょっちゅうアイツと一緒にいるからそれとなく関わろうとすらできんし。
改めて失意に浸っている間に百合ケ丘に帰還、通りすがった控え室の前に三人が集まって何かを話しているのが見えた。
おん? あれは誰──と、目を凝らした、凝らしてしまった。なるほど、そう来たか。あーやばい……吐き気と動悸が。目眩まで。
ここから一刻も早く立ち去りたいのに、膝が震えて立っていられない。思わず壁についた手も力が入らず、歯の根は合わずにカチカチと音を立てる。耳を塞ぎたいのに、体どころか指一本動かせない。何故か意識だけが妙にはっきりとする中、三人の野郎の声が、耳を通して脳みそを直接殴り付ける。
「オレはエレンスゲ女学園の──だ。よろしく──」
「──神庭女子芸術高校の──です、こちらこそ──します」
ふ、え、と、る。
て、お、く、れ。
その言葉を最後に、私は意識を手放したのだった。
感想・評価の程よろしくお願い致します。