アサリリ世界のモブに転生したので遠目にイノチ感じてようと思ったらチートオリ主(野郎)が乱入してきた件   作:氷華陸佐

7 / 11

もの凄く今更ですが、題名に『閑話』と付く話はオリ主達の掘り下げになります。こちらで生やした設定を本編に出すつもりはありませんので、読む際はお好みでどうぞ。
この話は前々から少しずつ妄想はしていたのですぐ書けるだろうと思っていたら、前回の更新から一週間以上経ってました。全て残業と休日出勤が悪い。
その代わり今回は三本立てなのでそれでユルシテ....ユルシテ...。
では今回もよろしくお願い致します。



閑話 それぞれの始まりの日

 

 

タタンタタン、タタンタタン──

小気味のいいリズムの音と振動に、まるで微睡みから目覚めるように目を開けた。視界に映る景色からここが電車の中だと確信した直後、窓から見えた風景に唖然とする。

水平線から立ちのぼる、積乱雲のような、竜巻のような何か。

同時にどこか繭のようにも見えるあれが何かを知るためにも、脳内で念ずるように特典の一つである掲示板を開いた。

 

1 : 名無しの転生者 ID:6hG/5YgK

あのー、ここが転生者スレであってます……?

 

2 : 名無しの転生者 ID:DfY5hGj

お、新入り。スレ立て乙

 

3 : 名無しの転生者 ID:Hsp76Vm

まぁまずはお茶でも飲んでゆっくりしたまえ。アイスティーしか無かったんだけどいいかな

 

4 : 名無しの転生者 ID:jkoY5fZ

>>3

ホモはお帰り下さい

 

5 : 名無しの転生者 ID:Lkj3gsYi

とりまコテハン付けたらイッチ

 

6 : イッチ ID:6hG/5YgK

つけました。まだ慣れないから変な感じするなこれ

 

7 : 名無しの転生者 ID:tyFd4S

でえじょうぶだそのうち戦闘中でも実況できるくらいには慣れる

 

8 : 名無しの転生者 ID:mnHu6ro

>>6

コテハンがイッチってそれでいいん? 見た目とか無いの?

 

9 : イッチ ID:6hG/5YgK

見た目は生前のままなんで。それにこっちの方が呼びやすいでしょ

 

10 : 名無しの転生者 ID:67bGF4e

まぁ、イッチがいいならいいが

 

11 : 名無しの転生者 ID:22hgZsW

で、イッチはなんの世界に転生したん? あとその世界についての知識はある?

 

12 : イッチ ID:6hG/5YgK

アサルトリリィって世界らしい、です。知識はまったくありません、どんな世界なんです?

 

13 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

ん? アサリリ……?

 

14 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

すごく簡単に言うと女の子同士で百合百合しながらヒュージっていう化け物と戦う話や

 

15 : 名無しの転生者 ID:67bGF4e

>>12

待て、その前に聞くべきことがある。イッチよ性別は? ちな心と体両方答えてな

 

16 : イッチ ID:6hG/5YgK

えっと、普通に両方男ですけど……

 

17 : 名無しの転生者 ID:DfY5hGj

おっと風向き変わったな。つまりイッチは将来的に百合に挟まる男になるわけや

 

18 : 名無しの転生者 ID:67bGF4e

>>16

死刑

 

19 : 名無しの転生者 ID:XcfYui8

>>16

絞首刑

 

20 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

>>16

滅べ

 

21 : 名無しの転生者 ID:DfY5hGj

満場一致で草、当然だよなぁ?

 

22 : 名無しの転生者 ID:Hsp76Vm

まぁ落ち着けお前ら。で、イッチは今どんな状況なん? どう動いたらいいかわかんないんだろ?

 

23 : イッチ ID:6hG/5YgK

そうなんです。えっと今は電車に乗ってますね。窓から海と、竜巻みたいなのが見えます

 

24 : 名無しの転生者 ID:AsE670j

アニメの冒頭ですねぇ……。持ち物は何かあるん? 流石にこのままじゃ詰むぞ

 

25 : 名無しの転生者 ID:HgDstt4

まぁ百合ケ丘に関わらずどこも本来なら男子禁制だもんなぁ

 

26 : イッチ ID:6hG/5YgK

えっと、服の胸ポケットに百合ケ丘女学院って所の生徒手帳と、そこへ編入する為の書類がバックの中に入ってます

 

27 : 名無しの転生者 ID:Xd/f5qlK

うん。……うん?(宇宙猫感)

 

28 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

女学院の概念壊れる

 

29 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

うーんと、とりあえず近くの車輌に、修道服みたいな制服着たピンク色の髪をした娘いない? いたらとにかくその娘に声掛けて着いてけ。あとはおそらくトントン拍子にことが進むと思われ

 

30 : イッチ ID:6hG/5YgK

隣の車輌にいました。了解です、ありがとうございます

 

「……ふぅ」

 

イメージ的にはパソコンのタブを閉じる感覚だろうか、慣れない事をしたからか若干の倦怠感を覚え、背もたれに軽く身を預ける。

駅に電車が止まると隣の車輌であの女の子が立ち上がるのが見え、俺も慌ててそれに習った。しかしどう声をかけようかと迷っていたところ、なんと向こうから声をかけてくる。

 

「あのー、ここ立ち入り禁止区域ですよ?」

 

「え……!? そうなの? でも俺百合ケ丘女学院ってところに行きたくて……」

 

「あっ、すみません。関係者の方だったんですね」

 

「うんまぁ関係者というか……とにかく、うっかりしてて地図を忘れてしまって。もし良かったら案内してくれないだろうか」

 

「はい! 任せて下さい!」

 

道すがら自己紹介やら他愛のない話をしつつ歩き、遂に百合ケ丘女学院へと着いた。校門の前の横断歩道である生徒に付き人に間違われたものの、何とか中へと入る事に。

不意に聞こえた叫び声。同時に殺気を感じ、斬月を振り抜く。

金属同士の擦れる嫌な音が鳴り響き、その相手の顔を見つつスレを開く。

 

45 : イッチ ID:6hG/5YgK

いきなり斬りかかってきたんだけど何この娘!? 誰か知らない!?

 

46 : 名無しの転生者 ID:3RQk89/v

もちつけ、せめて外見を言ってくれなワイらは何もわからん

 

47 : イッチ ID:6hG/5YgK

えっと、なんか黒髪黒目! 短めのポニテ!

 

48 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

……うん? 原作にそんな娘いたっけ? 少なくともワイは知らん。ちなアニメ勢

 

49 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

ワイもラスバレ途中までなら知ってるがわからん。状況を承知で聞くが、その娘の名前はわからん?

 

50 : イッチ ID:6hG/5YgK

いやそんなひま無ッこの娘も転生者だ!

 

51 : 名無しの転生者 ID:Zc6Yj/FF

ウッソだろお前

 

52 : 名無しの転生者 ID:Jhjh5Df

ktkr

 

53 : 名無しの転生者 ID:Bv/yu54m

ワンチャンオリヒロ説

 

54 : 名無しの転生者 ID:jkoY5fZ

因縁も無いのにいきなり斬りかかってくるヒロインはヤダなぁ……

 

55 : 名無しの転生者 ID:ATatSr

まぁその娘が転生者だとしたら気持ちも分からんでもない。というか全面的に同意する

 

56 : 名無しの転生者 ID:5gCXse0

>>55

それな

 

57 : 名無しの転生者 ID:Fk07CvA

その娘がいつから百合ケ丘にいるのかは知らんが、彼女からしたら百合の花園にいきなり害虫が迷い込んでくるようなものだしな……

 

58 : 名無しの転生者 ID:Zc6Yj/FF

>>50

というかイッチはなしてその娘が転生者ってわかったん?

 

60 : イッチ ID:6hG/5YgK

いやあの娘、斬りかかってきてからの第一声が「オレァクサムヲムッコロス!」だったんですよ

 

61 : 名無しの転生者 ID:Xd/f5qlK

ワロタ、それは間違いなく転生者だわ

 

62 : イッチ ID:6hG/5YgK

で、なんか遠くで戦闘音聞こえて来たと思ったら鐘が鳴って斬りかかってきた娘が一柳さん連れてどこかへ行ってしまったのですが

 

63 : 名無しの転生者 ID:Xf/v/hE8

一気に色々起こりすぎィ!

 

64 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

あぁ……イッチとその娘が梨璃ちゃん巻き込んだせいで、亜羅椰ちゃんと楓ちゃんが戦闘始めたのか……

 

65 : 名無しの転生者 ID:esHs8S

あれ梨璃ちゃん居ないと止めらんねぇもんな

 

66 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

つかしれっと流されてるが、その娘少なくともアニメの原作知識持ちじゃね? 多分夢結様に梨璃ちゃん会わせに行ったんやろ?

 

67 : 名無しの転生者 ID:Ty56/hJs

あっそうか! よかったやんイッチ、その娘に色々教えて貰うんやで

 

68 : 名無しの転生者 ID:oJoD/1sk

なお好感度はぶっちぎりのマイナススタートな模様

 

69 : 名無しの転生者 ID:FlKYkJs3

ヒロインって元来そんなもんやろ(白目)。そもそも最初から好感度カンストしてるヒロインなんて何が面白いねん

 

70 : 名無しの転生者 ID:KiTG1Dss

それが流行ったのってちょい昔やろ、今の時代は最初からデレデレが主流なイメージある

 

71 : 名無しの転生者 ID:GgCVm7

このスレ時空歪んでるから元いた年代もバラバラやで。単に>>69さんはその時代の方ってだけや

 

72 : 名無しの転生者 ID:bmWc7/9

つかイッチの霊圧消えた?

 

73 : イッチ ID:6hG/5YgK

すいません、斬りかかってきた娘に「百合に挟まるな」って脅されてました

 

74 : 名無しの転生者 ID:XcfYui8

>「百合に挟まるな」

それはそう

 

75 : 名無しの転生者 ID:ATatSr

>>73

残当

 

76 : イッチ ID:6hG/5YgK

元から挟まる気はないんですって!

 

77 : 名無しの転生者 ID:fgatMit7

>>76

ホントかなぁ〜?

 

78 : 名無しの転生者 ID:Bv/yu54m

>>76

ホントかなぁ〜?

 

79 : 名無しの転生者 ID:esHs8S

>>76

ホントかなぁ〜?

 

80 : 名無しの転生者 ID:fgatMit7

ゴロリが三体、来るぞ遊馬!

 

81 : 名無しの転生者 ID:bmWc7/9

融合召喚! アルティメットゴロリ!

 

82 : イッチ ID:6hG/5YgK

えぇ……(困惑)。あ、あとようやく名前聞けました、斯波悠里さんだそうです

 

83 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

おん、やっぱ聞いた事ねぇわ。モブ転生だったりするのかね

 

84 : 名無しの転生者 ID:ji6F/AS

その娘はチートとか持ってないん? まぁ原作知識引き継ぎしてる時点で大分ヤバいけど、武器とか能力とか

 

85 : イッチ ID:6hG/5YgK

見た目と斬りかかられた時的には特に何も。武器を二振り持ってるくらいです

 

86 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

それはもとからあるスキルやね。円環の御手って言って、普段なら一振しか起動できないところを二振り扱う事ができるという

 

87 : 名無しの転生者 ID:gDp63in

でも珍しいな、モブ転生希望しつつほんとにモブ生活してるなんて

 

88 : 名無しの転生者 ID:DfY5hGj

世の中モブになりたい言いつつもやれやれしながら俺TUEEEEする奴ばっかやもんな

 

89 : 名無しの転生者 ID:SeKoy3/d

>>88

おっとその話はやめてくれ、俺に効く

 

90 : 名無しの転生者 ID:1d7nhMx

>>88

ちょっと急に言葉のナイフで刺してこないでよも〜

 

91 : 名無しの転生者 ID:dL10RY

>>88

言葉が強ぇ

 

92 : 名無しの転生者 ID:SnsR/7b

>>89〜91

思い当たる人ワラワラで草

 

93 : イッチ ID:6hG/5YgK

で、なんか逃げたヒュージ? を探しに由比ヶ浜まで連れてこられたのですが……

 

94 : 名無しの転生者 ID:Hf4kLvU

嵌められてて草

 

95 : 名無しの転生者 ID:wef/Gh4v

原作と真逆の場所で林

 

96 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

徹底的に原作と関わらないようにされてて森

 

97 : 名無しの転生者 ID:Bnc/Sip

んでもナイスゥ! 夢結×梨璃×楓に挟まる男なんていなかったんやね

 

98 : 名無しの転生者 ID:XcfYui8

イッチ本気で百合に挟まる気が無いんだったらその娘の言葉には逆らうなよ? なんだったらスレ民の殆どは悠里ちゃんの味方やで

 

99 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

>>98

さんをつけろよデコ助野郎!

 

100 : 名無しの転生者 ID:XcfYui8

>>99

すんませんした! 悠里ちゃんさん!

 

101 : 名無しの転生者 ID:WEWv6lJ

よし!

 

102 : 名無しの転生者 ID:WynSk/7

それでいいのか(困惑)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『──それでは、快適な第二の生をお過ごしください』

 

老若男女どれにも聞こえる人工音声のようなものが僅かな含みのある無機質な声でそう告げると、全身に浮遊感と強制的に瞼が落ちる感覚がした。

次に目を開けると、そこはどこかの都市。周囲にある文字と、建物の様子からここが日本であり都会である事を把握する。

 

「おいっ、あんた何してる!? 早く逃げんとヒュージが来るぞ!」

 

不意に正面から肩へとぶつかってきた男からそんな声をかけられ、本当にここがアサルトリリィの世界なのだと再確認する。

しかしアニメしか見てないオレはこんな場面知らねぇ。場所を訊ねようとしたがその人は既に逃げ去っており、同時に爆発音。

この地に立った時から感じていた嫌な予感を確かめるように、首元にあるバッテリー付きのチョーカーへと手を添えた。

 

「縛りプレイかよ、どこが快適なんだか」

 

バツンッと、何かが切り替わる感覚。

背後から襲ってきていたヒュージ共は、揃って自分の攻撃の威力で自壊した。次いで踵をかるく地面に落としてやれば、めくれ上がる路面と共に背後にあったヒュージの群れが消え去る。

 

「とりま、情報収集か」

 

周囲で一番背の高いビルの上に跳び立ち、一度スイッチを切りつつぐるりと周囲一帯を見渡す。

東京タワーとスカイツリーが見えるからここは東京で、そっからの位置関係から推察するにここは六本木辺りか。

おっと、あっちでデケェのが暴れ回ってるみたいだな。初陣としては絶好の機会。

再びスイッチを入れたオレはビルの屋上を転々としながらそこへと向かい、三体いたラージ級ヒュージのうち、端の奴の上へと拳を落とす。

そのまま真ん中の奴を最後の奴に向けて蹴り飛ばせば、全てのラージ級が消滅した。

 

「よう、無事か?」

 

再びスイッチを切りながら近付き、それまで戦闘していたのであろう、白の上着に赤いタイが特徴のリリィ二人に問いかける。

片側の深緑髪は意識が無いようだが命に別状はなし、赤と紫が混じったみたいな色の髪をしたやつは援軍に来たばっかなのか軽傷と。

 

「あの、助けてくれて、ありがとう。それで、あなたは……」

 

「なに、通りすがりの逸般人さ」

 

突如現れた謎の人物としてヘルヴォルとやらに大人しく連行されたオレは、現在エレンスゲの校長及び教頭と顔を合わせていた。

要求は身柄の保証と後ろ盾、こちらから提示するのは戦力としてのオレ自身。リリィ達からの報告が届いているのもあるのだろうが、どこか不自然なまでに取引はスルスルと成立。

立場上はエレンスゲの保有する与力及び生徒として、学園へと在籍することになったのだった。

そんであん時の深緑髪──相澤一葉だったか。に誘われて、というか第一位の権力をもってヘルヴォルに加入させられた。与力なれど生徒の一人ならば、指名権はある筈だという屁理屈で。

しかし早速レギオン内がギスってんのは笑うべきか否か。加えてそんな中起こったヒュージによる大規模侵攻。

如何にオレが突出した能力を持っていたとしても、数で押されりゃなんともならんわけで。三十分という短い制限時間を節約する理由も兼ねて、絶賛絶不調の一葉の後を追って一度後ろへと下がる。

 

「よう、出会ってからずっとシケたツラしてやがんな、第一位様?」

 

「あ……すみません、皆さんが戦っている時にこんな……」

 

「新参者のオレはオマエらの事情なんて知ったこっちゃねぇ。んだから見当違いのことを言うかもしれんが……まぁ聞け」

 

「え、はい。何でしょうか」

 

「オレはオマエの信念を、間違ってるとは思わん。だがな、信念ってのはいつでも貫き通せないからこそ、信念って言うんじゃねぇのか?」

 

最初から準備して挑めばいつでも完璧に達成できます、そんなもんは信念とは言わねぇただのルーティーンだ。

途中で挫折しそうになっても、それでも掲げ続ける理想ってのを信念っつうんじゃねぇのかよ。

おそらく飯島って奴は、今そこを試そうとしているのだろう。掌の上からこぼれ落ちたものを見てもなお、その信念を胸張って口に出し続けられるのかを。

 

「ハッキリ言って、オマエの掲げる信念をすぐに完璧にこなすのは無理だ。途中で取り零すモンも絶対出てくるだろうよ。それでもいつかはと、前に進み続ける覚悟はあるか?」

 

まだまだガキの女子高生に酷な事訊ねてんのは分かってんだよクソッタレ。だがオレみたいなのは例外としても、文字通り世界の命運を握ってんのはコイツらリリィだ。

 

「何もそれを一人で背負えとは言わねぇ。辛くなったら近くを見ろ。横で並んでくれる奴もいりゃあ、後ろで背中押してくれる奴もいるだろ」

 

例えばさっきからそこで口を挟まないでくれてる芹沢とかな。あとは初鹿野や佐々木。

あとは飯島もなんだかんだ言って、この相澤一葉というリリィを認めてはいるのだろう。

 

「失敗ばかり数えるな。その信念に救われたやつもいるし、それを見て同じく救われる権利が、オマエにはある」

 

「……あの、貴方は」

 

「ハッ、無論共に歩いてやるよ。むしろ置いていっちまうかもなぁ?」

 

説教じみた事をしちまったが、どうやら立ち直ってはくれたらしい。レアスキルごと復活した様子の一葉を連れ、前線へと戻る。

最後の大物はヘルヴォルに譲る形でノインヴェルト戦術の展開を見届けると、それを邪魔するようにして無数のスモール級が立ち塞がる。

 

「……最後の一秒、くれてやらぁ」

 

その辺に転がっていた大きめの瓦礫を蹴り飛ばし、ミドル以下のヒュージ共を纏めて粉砕する。その直後に再び大爆発が起こり、こうして今回の侵攻のボスであるラージ級を倒したのだった。

そんで後日、全員が怪我の回復した頃合いに一度集まることになったのだが、その時の誓いやら何やらに普通に巻き込まれた。

何の為に戦うか……ねぇ。ま、適当にヘルヴォル全員の願いを叶える為にって事にしとくか。

 

「……はは、なんかやっぱ恥ずかしいな。なんか結婚の誓いみたいだし」

 

おいコラ飯島余計な事言うんじゃねぇよなんか変な空気になったろうが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

絶え間ない悲鳴。目と呼吸器を焼く、煙の混じった熱風。焼けた空。

少し前までは痛いくらいに感じていたそれらが、今はもうどこか遠い。

何気ない、日常だった。ヒュージが現れた時の警報、そしてそれから逃げるという行動までもが、住民にとっての日常だった。

……筈だった。

何が起こったのかは分からない。今までは避難訓練の通りにしていれば良かったのに、どうしてか間に合わなかった。

避難の準備をしている時に家の壁を突き破って現れた、異形の生物。幸か不幸かその時点で瓦礫に埋もれた僕はヒュージに見向きもされず、ただ目の前でお父さんとお母さんが殺されるのを見ている事しかできなかった。

家の倒壊と共に上がり始めた火の手に、僕は中学生ながらに己の死を悟った。

そんな時だ、どこからともなく無機質な声が聞こえたのは。

 

『こんにちは、本日はお日柄もよく。わたくし、神と呼ばれる者です』

 

「かみ、さま……?」

 

『無理に喋る必要はございません。たった一つの質問に、どんな方法でも構いませんので答えて頂きたいのです』

 

もはや見渡す体力も無いが周囲に気配らしきものは無く、その抑揚はありながらも機械のような声は、頭の中に直接響いてくるようだった。

 

『生きたいですか? もし貴方が望むのならば、その力を差し上げましょう』

 

「生き……たい。死にたく、ない……!」

 

考えるより先に、心も体も動いていた。

へばりつく喉を酷使して掠れ声で叫びつつ心の中でも願い、何度も力無くだが頷いてみせる。

 

『承知致しました。これらは、ここでは無いどこかの世界の能力。扱い方は……自然と理解できるでしょう』

 

突然感じた、自分の中に得体の知れないナニカが入ってくる気配。しかしそれは一瞬で溶け込むように霧散し、残ったのはマギとは違うエネルギーのようなもの。直感で、その正体が霊力と呼ばれる物だと理解した。

 

「夢想天生」

 

頭の中に浮かんできた単語を呟くと、まるでこの世界自体から浮いてしまうような感覚。するりと瓦礫から抜け出した後自分の体を見てみると、まるで透明人間になったように後ろの景色が透けて見えていた。

 

『この能力で何を成すかは、貴方次第です。それでは引き続き、良き人生を』

 

その言葉を最後に、脳内で響いていた声は無くなった。

 

「っ、父さんっ! 母さんっ!」

 

なんて駆け寄ってみたものの、当然もう息は無い。そして僕は見てしまった、ヒュージによってぐちゃぐちゃにされ、上がった火の手によって中途半端に焼かれた肉体。そしてむせ返るような鉄の匂いと、鼻を突くような焦げた臭い。

 

「うっおえぇ……」

 

己の死を回避した事により、改めて突きつけられる親しい人の死。一種の現実逃避なのだろう、僕は当てもなく外へと飛び出した。

 

「──はっ、はっ」

 

それからどれだけ走ったか、覚えていない。

道中で見たリリィやマディック、民間人の死体の数は、もうとっくに両手両足の指では数え切れなくなった。

入口が破壊されたシェルターもまた、いくつも通り過ぎた。あの中がどうなっているかは想像したくもない。

封鎖する前にヒュージに入り込まれたのか、それともそこを守るリリィすらいなかった為にやがて突破されたのか。

分からないがただ一つ事実を上げるとすれば、既にその役目は果たせていないという事だけだ。

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!」

 

無我夢中で走っていたせいか、突然曲がり角から飛び出してきた人影と真正面からぶつかってしまった。

自体を把握する前にその白髪の少女は既に遠くまで行ってしまっていたが、その数秒後になにやら銃を持った人達がそれを追いかけて行った。

 

「あれは……ゲヘナ?」

 

詳しくは思い出せないが、どこかで噂を聞いたことがある。ゲヘナは実は裏側で、リリィ達に対して残虐非道な研究を行っていると。

 

「助けに……っ、行くしかないでしょ!」

 

一瞬だけ迷ったが、どうにか駆け出す。

霊力により身体能力も上がっているのか、割と直ぐに銃を持った人達は追い越した。

 

「うわっ、何だこのガキ!?」

 

「すみません、僕個人で恨みがあるわけではありませんが、少し眠っていてください。夢符、封魔陣」

 

僕を中心として四方に衝撃波が広がり、追っ手を残らず吹き飛ばす。そして更に加速し、先を駆ける少女へと走り寄った。

 

「あの、もしよかったら、一緒に逃げない? なんか追われているみたいだし」

 

「え……? で、でも……」

 

「キミは、どこへ逃げるつもりなの?」

 

「神庭女子、藝術高校……」

 

神庭女子……? そこって確か萩窪って場所にあったような──って、萩窪!? そこっておばあちゃん家がある場所じゃん! やはり気が動転していたのだろう、行くあてあったじゃんすっかり忘れてた。

 

「偶然! 僕も丁度そこに行くつもりだったんだ! なら一緒に行こうよ! ね!?」

 

「え……そ、それなら……うん。わたし、塩崎鈴夢」

 

「僕は──」

 

こちらも自己紹介を返し、固く握手を交わす。そしてそのまま僕は鈴夢さんを抱きかかえつつ、神様から授かったもう一つの能力、空を飛ぶ程度の能力を使用した。

 

「わっ!? す、すごい……空を、飛んでる?」

 

「これで目立たないように飛べば、追っ手からも振り切れる。それじゃあ行こうか、萩窪に!」

 

そうして鈴夢さんを神庭女子藝術高校へと送り届けた後、僕は祖父母が営む小さな神社で暮らす事になった。

そしてその神社が少しでも有名になって賽銭を稼げればという打算一つ、加えて単純に力を貰ったのにそれを人の為に振るわないのはどうかと思ったのが一つ。以上が主な理由から、まぁ目立たない程度にヒュージを単独で討伐していた。

萩窪ではほんのちょっとした噂にはなっており、曰くあの神社には本物の神様がいるとかで地元客が少し増えた。

寂れていた社や鳥居も小綺麗になり、収入も増えた事で生活もある程度は楽になった。そんな事を二年程続けていたある日、不意に鈴夢さんが久しぶりに訪ねて来た。

 

「直接会うのは久しぶり、鈴夢さん。最後に来てくれたのは……制服を見せに来てくれた時だっけ」

 

「お、お久しぶりです。ってそうではなくてですねっ。た、大変なんです……!」

 

僕が家の中へと促す間も無く、鈴夢さんは玄関先に立ったまま話を始めた。彼女が言うには、少し前から神庭が件の噂を調査しており僕が身バレしたのだとか。

それで事情聴取として、神庭の生徒会の方々が抜き打ちで訪ねてくるらしい。

 

「それは……確かに聞けて良かったけど、逆に聞いても良かったの? 鈴夢さんも生徒会なんでしょ?」

 

「生徒会長の秋日様は神庭に逃げる事を勧めてくださった恩人の方ですが、あなたにもここに連れてきてくださったご恩がありますから」

 

「……そっか。板挟みにしちゃってごめんね、ありがとう」

 

「いえ、そんな……」

 

「話は終わったかしら、鈴夢」

 

つい当時ように接してしまったというか鈴夢さんの頭を撫でていると、そこに咳払いと共に割り込む声。

そこに立っていたのは、紫色の髪を高い位置でサイドテールにした少女。警戒、でも鈴夢さんと同じ制服という事は……事情聴取って事か再び警戒。

 

「あの……秋日様、どうしてこちらにいらしたのですか?」

 

「彼への事情聴取が決定した時、貴女少し様子がおかしかったもの。その後に外出届けを出したって聞いたから、こうして誤解を解きに来たのよ」

 

更に秋日さん? が言うには、元々事情聴取といっても別に僕を咎めたりだとかそういう事では無いらしい。

それならばと二人を家に上げてお茶を出した後、どうせもうバレているのだしと一度断ってから自室に戻り、着替えた状態で再びリビングへと戻った。

 

「……一致、するわね」

 

首をかしげる僕に、秋日さんは写真がプリントされた一枚の紙を見せた。そこにくっきり映っていたのは和装に狐の仮面を被った男、つまりは今の格好をした僕だった。

 

「本題に入る前に、改めて自己紹介をさせてもらうわ。神庭女子藝術高校二年、生徒会長の本間秋日よ」

 

それに対し僕もまた自己紹介を返し、間髪入れずに問いかける。

 

「写真には映らないように立ち回っていた筈ですが……」

 

「ただの住民から姿を隠すのは簡単だけど、企業相手では訳が違う。という事よ」

 

どういう事、とこちらが訊ねる間もなく、秋日さんは雰囲気を一変させると言葉を続けた。

 

「貴方は今、ゲヘナに狙われている」

 

「……話が、見えてきません。秋日さんは先程、この事情聴取が悪い意味では無いと仰った。萩窪から出ていけという話でなければ、一体なんの御用件で?」

 

「いいえ、全くの逆。神庭女子は貴方を保護する準備ができている。同意してくれるのなら、貴方とご家族の安全を保証する」

 

この提案に、僕はしばらく言葉を失う。

確かに僕はヒュージと戦える、それでいてマギでは無い不思議な力を持っているのだからゲヘナが興味を持つまでは理解できる。

でもいかに神庭が中立ガーデンとはいえ、僕を抱え込むリスクを無視してまで、男である僕を保護する理由がわからない。

 

「……どうして、そこまで」

 

「色々理由はあるけれど、実を言うと一番は個人的な私情。……貴方が、鈴夢の恩人だから」

 

今度は別の意味で言葉を失う僕に秋日さんは、対価として今もまだゲヘナに狙われている鈴夢さんの保護に協力して欲しい、と付け加える。

今までのやり取りで分かった。この人、根っからのお人好しだ。行動が全て他人の為になってて、傍から見ると訳分からなくなってる。

この人の下なら、悪いようにはならないだろう。特別断る理由も見当たらないし。

 

「……わかりました。その話、受けます」

 

こうして僕は神庭女子藝術高校へと転入する事になり、そのすぐ後に何故かトップ・レギオンであるグラン・エプレに加入する羽目になるのだった。

 





ご感想、評価、お気に入りの程よろしくお願い致します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。