アサリリ世界のモブに転生したので遠目にイノチ感じてようと思ったらチートオリ主(野郎)が乱入してきた件   作:氷華陸佐

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 深顯ちゃんって可愛いですよね。ところでマディックは曇り顔が似合うのではないかという大変失礼な偏見を抱いております。
 そんなわけでどなたかヒュージVSマディックの血みどろ戦記とか書いて下さりませんかね。こう主人公の周りがバンバンお亡くなりになられる感じのやつです。
 かくいう私も書こうと思いましたが、マディック周りの設定が無さすぎて諦めました。マディックって低出力のサブスキルくらいは使えるのでしょうか。わたくしヒもといメをやっていないのでどなたか二水おじに聞いてくださいませんかね。
 そんな罪なき少女達のスティグマ編です。独自解釈によるオリジナル展開がやや拙作のテーマに沿っていない気が致しますが、気にしない事にしました。よろしくお願いします。



少女達が背負いし咎の烙印

 

 この日は学園からの任務により、オレ達ヘルヴォルは横浜へと外征に来ていた。

 内容としては、着港する荷物をシエルリント女学薗所属のマディックと共に守るというもの。だがその荷物の内容は知らされず、尚且つマディックには自らの所属を明かすなときた。ご丁寧にオレ個人にも、戦闘行為の一切を禁止という命が下っている。

 どう考えてもキナ臭い以外の感想が浮かばないが、この堅物に見えてド天然な我らがリーダー様は叛逆する事にお熱で疑う事を知らないらしい。

 まぁオレはオレでキナ臭過ぎて火元が見つかってねぇんだけどよ。そもそもバックにいるだろうゲヘナの目的が何で、何を阻止すりゃ連中が顔を真っ赤にすんのかすら皆目見当もつかん。

 ひとまずはなんとかして件の荷物の中身を見てから判断だな。最悪は任務失敗を覚悟で海に沈めりゃいいだろ。

 

「で、どうすんだ? 一葉。遅刻して教導官に大目玉食らうか、そいつ覚悟で首突っ込むか」

 

「無論、聞かれるまでもありません。ヘルヴォルはこれより、市街地に出現したヒュージを撃滅します」

 

 で、そこで共闘したマディックが今任務を共にする部隊だったと。いや担当区域から考えりゃ当然なんだが、コイツら急いでなきゃ普通に自己紹介してた気がする。

 しかも話を聞く限り、このマディック部隊とその隊長こと道川深顯とやらは、エレンスゲ女学園ひいてはオレ達ヘルヴォルを相当に恨んでいるときた。

 日の出町の惨劇。あの小っ恥ずかしい誓いとやらの後に当人達から話は聞いたし、学園に残ってた記録も見た。

 オレ個人の感想としては上層部が悪いの一言に尽きる。尽きるが、外からの評価というのはどうしようも無い。

 罪悪感の滲む表情の一葉が名乗ろうとし、それを恋花が止める。

 いつ爆発するかもわからん不発弾を抱えるリスクとハナから連携が取れなくなるリスクを天秤に掛け──前者を取る事にした。つかそもそも正体を明かすなというのが命令だしな、学園から無駄に目をつけられる事をする必要も無いだろ。

 とはいえ、一葉の気持ちもわからんでもない。事故を装って身バレするタイミングは常に考えときゃならんな。

 で、そのマディック部隊に案内された宿所なんだが、どう考えても六人が寝泊まりするには小さ過ぎるだろ。恐らく普段は警備員が使ってるものと思われる。

 一葉と恋花には設備の点検を、瑤には最低限の掃除と藍の世話を頼み、オレと千香瑠は最早給湯室とも呼ぶべきキッチンの下見に来ていた。

 

「まぁ当然、ロクに調理器具なんざねぇよな。……まぁそっちは工夫するとしてもだ」

 

「冷蔵庫が小さいのはどうしようもないわね。何度か買い出しに行く必要がありそう」

 

 その後遊びに来た藍が冷蔵庫の中に入ろうとしたりそこに設備点検を終えた一葉達が合流したりしたが、折角全員集まったのだからとそのまま一回目の買い出しに行くことになった。

 一葉と恋花に肉を任せ、オレと千香瑠は野菜を選びに赤レンガマートへと入る。

 

「今日はシチューだっけか」

 

「ええ、もう秋ですし、海沿いという事もあって肌寒いでしょう? それに皆で集まれるテーブルもないから、一つの鍋を囲う方がいいと思って」

 

「あのクソ狭いキッチンだとそっちの方がオレらも楽だしな。そんじゃあ材料も少し秋っぽくしてみるか」

 

「あら、さつまいもね。確かにそちらの方が藍ちゃんの好きな味付けにできそう」

 

 あとはしめじやら人参、ブロッコリーを買って外へと出る。するとすぐそこの駄菓子屋の近くで、一葉と恋花と話す深顯の姿を見かけた。

 しかしそのすぐ後に港の方で爆発音、続けてヒュージ襲来のアラームが鳴り響いた為急行する事になったのだった。……ところで一葉に恋花、肉は?

 そんで急行したっつってもオレは戦闘行為の禁止令が出てるから、一人詰所に戻る事になったんだが。暇つぶしに下ごしらえしてたら一葉達が帰ってきたんで、そのまま千香瑠と共に料理に取り掛かった。

 ヘルヴォルの面子はいつも通りとして、途中で報告に来た深顯やらその隊員達からも好評が得られたのは幸いか。結局肉は無しだったけどな。

 その日の夜。流石に混ざって雑魚寝する訳にもいかないんで屋根の上で寝てたんだが、そこに何でか知らんが一葉と恋花が上って来た。

 

「……何しに来た」

 

「いやー、あはは。あたしらちょーっと眠れなくてさ。星でも見ようかって話になって」 

 

「隣、失礼してもよろしいでしょうか」

 

「好きにしろ。邪魔ならどっか行くし」

 

「い、いえ。そこまでは言いませんが」

 

 星を見に来たつってたのに座ってから早速俯いた恋花は、日の出町の惨劇時の自身の所業について話し始めた。が、実際にその場にいなかったオレの言葉なんぞ今は不要だろう、現に物理的に無理矢理顔を上げさせた一葉の言葉で何とかなってるし。

 

「ま、オレから見ても、オマエは今のヘルヴォルに必要な人材だと思うぜ。あんま、思い詰めんなよ」

 

 屋根から下りる二人を見送った後即座に二度寝したオレはその時気付かなかったが、どうやらマディック隊に新しい武器が支給されたようだった。

 そしてそれを見越したかのように市街地にヒュージ発生の報、ヘルヴォルに向けられた不自然な待機命令。

 ハッ、なるほどな。おそらく本当の積荷というのはこいつの事で、表向き未だに届いていない方はダミーと言ったところか。

 試作品が成功すりゃそれで良し、もし失敗してマディック隊が全滅すりゃその時には改めてヘルヴォルに対処させると。

 んでアイツらが失敗の対策してるってこたあ、あのcharmもどきはマトモな代物じゃねえってこった。くっだらねぇ、人の命を何だと思ってやがる。

 本当に、原作知識がアニメしか無いとはいえ、なんて所に後ろ盾を求めちまったんだか。

 

「行くぞ一葉、お得意の叛逆のお時間だ」

 

「ええ。幸い、待機場所までは指定されていません。何も無ければそれでよし、万が一の場合は裁量権にて参戦します」

 

「でも珍しい、あんたが一番最初に立ち上がるなんて」

 

「それだけ、今回は異常な事態って事?」

 

「一葉の言う通り、今はあくまで可能性の話だがな」

 

 嫌な予感ほど的中する。最初こそ堅実なフォーメーションと戦術で、変わらず市民の避難を優先で動いているようだったが、確かに代償は存在したようだ。

 突如倒れたマディック隊員と同じ分隊のやつから話を聞くと、このもどきを使い続ける限り体内に負のマギが尋常じゃ無い速度で蓄積していくらしい。

 説明した上で、なんて何の弁解にもなってねぇ。むしろマディック達の願いを利用した上で踏み躙っただけだろうが。

 今すぐマディック達にこの武器を使うのを止めさせたいし、現に恋花も言葉を振るってるが効果は無い。しゃーねぇ、これしかないか。

 

「ククッ……ハハ……!」

 

 余計な事を口走ろうとした恋花の言葉を遮る形でわざとらしく嘲笑すると、深顯がしかめた顔をこちらに向ける。

 

「何が、可笑しいんですか……!?」

 

「あぁ、悪い悪い。んだってあまりにも傑作でな。オマエら、ヘルヴォルと同じ事しようとしてるんだもんよ」

 

 ああ、理不尽だと自覚はしてるが、何故オレがマディック達にも腹を立ててるかわかったわ。

 一葉達とコイツらは同じ方向を向いているようで、全く違う場所を見てる。コイツらの理論じゃマディックが犠牲になる未来は変えられないし、それを自覚すらしてねぇんだ。

 

「マディックを盾にしたヘルヴォルと、自分自身を盾にするマディック。そこの一体どこに違いがあるんだ? 教えてくれよ」

 

「なっ……! ヘルヴォルは無理やり命令でマディックを盾にして逃げようとしました! だから私達は逃げずに! 自分達の意思で! 市民の方々を守ろうと立ち向かってるんです!」

 

「ほぉ? じゃあオマエはこう言いたいわけだ。日の出町のマディックは自ら殿を買ってでない、オマエらが今持ってるような特別な武器がないとヒュージにすら立ち向かえない腑抜けだと」

 

「それは違っ……!?」

 

 その様子だとようやく気付いたか。今がいくら仕組まれた状況とはいえ、どの選択肢を選んでもあの憎き宿敵と同じ咎を背負う事になると。

 逃げても市民を見捨てた罪を、立ち向かっても下に立つ者の犠牲を許容した罪を、隊長たる深顯はその背に負う事になる。

 

「……じゃあ、どうすれば、よかったんですか」

 

「そうだなぁ……この場に限っては、一つだけ抜け道がある。オレ達と一緒に、この街を守らねぇか? そんなガラクタ捨ててよ」

 

 言った通り、こんなもんこの場限りの詭弁だ。今日はたまたまオレ達が学園からの命令を無視してここにいるだけだし。

 だからなんとかして棲み分けに納得してもらう他無いのだが、ただ市民を頼むからここから逃げろってだけではいつかまた同じ事が起こるだろう。

 

「……ですが、今はこの武器しか」

 

「おう、じゃあ急いで取ってきてくれ。それと負傷者の避難もな。それ終えて戻ってくるまでは、なんとか抑えておくからよ」

 

「わかりました。それまで皆さん、どうかご無事で……!」

 

 戦闘中のヘルヴォルもまた頷いてみせた為か、深顯は確かに頷いて一時撤退していく。

 その背が十分に離れたのを見届けてから、オレは一葉にある指示を飛ばした。

 

「一葉、レギオン名明かして名乗れ」

 

「……! わかりました!」

 

 意図が伝わったかもしくは嬉しくも信頼されているのか、一葉は鋭く息を吸い込むと街中に轟く声を上げた。

 

「エレンスゲ女学園ヘルヴォル! 各自散開しマディック隊の後退を支援! その後は戦線の保持を! 状況開始!」

 

 さて、短い間だったが種は蒔いた。あとは深顯とその仲間達次第だ。救援に来てくれりゃあ単純に万々歳、もし来なけりゃ来なけりゃで勝てはするだろうが確実にオレ達の中から死人が出るだろうな。

 それからしばらくして、この群れを率いていると思しきラージ級を発見したものの、スモールとミドル級の量から決め手に欠ける状況が続いていた。

 能力の制限時間も迫っているし、色々と腹括るっきゃねぇな……と思ったその時だった。

 

「第一分隊、第二分隊、一斉射!」

 

 幾つものマズルフラッシュが煌めき、何体かのスモール級が倒れる。厳しい表情で前方へと手を振り下ろしたまま、深顯は続けて口を開いた。

 

「聞きたい事は山程ありますが、それは後回しにします。今は、この状況の打破を」

 

「っだとよ。一葉!」

 

 共に一番の激戦区を戦っていた一葉を呼びかけると、間髪入れずに各自の通信機へとその声が届く。

 

「ヘルヴォル! 反転攻勢へと出ます! 各自黒十字マディック分隊の支援を受けてラージ級の包囲を狭めてください!」

 

 そこからは快進撃──とはいかなかったが、心情の違いからか一応攻勢の形にはなっていた。

 だが最後の一手、ラージ級までの道のりが果てしなく遠い。無論距離の話ではなく、数多のスモール級やミドル級が、分厚い壁となっている為だ。

 そこでオレがとある作戦を提案するとそれが可決され、続けてオレはその鍵となる深顯へと向き直る。

 

「今から一葉と恋花、藍が敵の中央を強行突破する。スモール級を全て無視してだ」

 

「っ、そんな事をしたら囲まれて……!」

 

「そうだ、だからオマエ達に支援射撃を頼みたい。ヘルヴォルの命運、黒十字マディック隊に預ける」

 

 誰かがヘマをすれば三人の中から確実に殉職者が出る、そんな綱渡りの作戦。だが逆に言えばこの方法でしか犠牲者ゼロは成し遂げられない。

 

「わかり、ました」

 

 見るからに様々な葛藤渦巻く表情で頷いた深顯だったが、軽く目を瞑るとそっと自身の胸へと手を当てて息を吸い込んだ。

 

「……っ、第一分隊と第二分隊は正面へ! 第三第四分隊は左翼、第五第六分隊は右翼へ!」

 

「私と恋花様、藍で敵正面へ切り込みます! 瑤様は左翼を、千香瑠様は右翼で敵を抑え込んで下さい!」

 

「黒十字マディック隊、準備完了です!」

 

「わかりました! カウント三、二、一!行きます!」

 

 ルナティックトランサーを発動させた藍を先頭に恋花が中央、一葉が殿で敵中を強行突破していく。

 背後から味方ごと撃つ形になる黒十字マディック隊だったが、流石の射撃技術でヒュージのみを的確に撃ち抜いていく。

 藍と一葉がラージ級へと真正面から斬り掛かるが、これは陽動だ。

 

「恋花様!」

 

「オッケー! あたしのとっておき、その身でとくと味わいなっての!」

 

 死角からは本命の、一葉のレジスタの恩恵を受けた恋花によるフェイズトランセンデンスを発動させた一撃。

 粉砕された装甲に追い打ちをかけるように放たれた射撃がラージ級ヒュージを今度こそ撃ち抜き、爆散と同時に恋花もまた枯渇状態で倒れた。

 とはいえ群れを率いていたボスを失った残敵は既に統率を失っている為、引き続きマディック隊の支援を受けた恋花以外の四人で殲滅は難なく完了したのだった。

 そして損害状況や負傷者の治療といった戦後処理も落ち着いた頃、詰所には報告書を持った深顯とその隊員達が何人か訪れていた。

 

「民間人にマディック隊、双方犠牲者は無しと……良かったです。あの苦しい戦いの中でこの偉業を達成できたのも、ひとえに黒十字マディック隊の皆様の尽力あってこそ。改めまして、エレンスゲ女学園ヘルヴォルを代表して、厚くお礼を申し上げます」

 

 いつもの硬っ苦しい前口上を述べる一葉だが、セットで恒例の恋花からの突っ込みは無い。まぁ雰囲気が雰囲気だしな。

 しばらく反応を返さなかった深顯だったが、やがて俯き気味の顔から絞り出すような言葉が発された。

 

「やはり、皆様は。あの、ヘルヴォルなんですね」

 

「……はい。黙っていた事も、今ここで謝罪します」

 

 一葉を筆頭に、ヘルヴォル全員で謝罪の言葉と共に深く頭を下げた。藍に関しても、事前に皆の真似をしていればいいと伝えている為、まぁ今のところは従ってくれている。

 

「一つだけ、聞かせてください。あの時、私達の損害を考えなければ、もっと楽にヒュージを倒せたはずです。なぜ、そうしなかったのですか?」

 

「それでは何も変わりません」

 

 やや食い気味にそう答えた一葉は、一度咳払いを挟むと続けて口を開いた。

 

「私達は、今のエレンスゲを変えようとしています。勿論、今回の件で過去を洗い流してもらおうとは思っていません。ですが、今のヘルヴォルがそうではないという事を、色眼鏡抜きで見て欲しかった」

 

「っていうのが、あたし達先輩の見解でしたってね。……一葉はさ、最初から明かそうとしてたんだよ。貴女達とぶつかり合う事になってでも。そこの誠実さだけは、認めてあげてほしい」

 

「一葉様、恋花様……」

 

 これで、こちらからできることは全てやった……つもりだ。先に行動で示し、その後言葉を尽くす。

 それでもなお拒否されるのならば、それだけの話。それが、ヘルヴォルの名を背負ったオレ達の宿命だからだ。

 

「一葉様の仰る通り、ヘルヴォルのした事を許す事はできません」

 

「……そうですか」

 

「ですが。皆様とならまた、戦場を共にしたいと思っています」

 

「っはい! こちらこそ、是非!」

 

 よかったな、一葉。オマエの歩む道にまた一人──いや、数十人か。その背を押してくれるやつらが増えたじゃねぇか。

 もはや隠す気も無くなった上層部によってか、翌日ヘルヴォルには学園から帰還命令が出され、オレ達は黒十字マディック隊に見送られながら金沢を後にしたのだった。

 





 前回の更新の直後くらいに、遂に評価のバーに色が着きました。お気に入りも四十を超えましたし大変励みになっております、ありがとうございます。
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