ハリー・ポッターがバグった件   作:怠惰の徒

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prologue 推しの子

アイside

 

「ごめんね。でも愛しているから」

 

殴られてからそういわれた。とても、痛くてつらい。

 

「ごめんね。でも愛しているから」

 

外に追い出されて放置されて、家に戻ってきてからそう言われた。外は、寒くてつらい。

 

「ごめんね。でも愛しているから」

 

砕けたガラスの入ったご飯を食わされた後にそう言われた。口の中が切れて、痛い。

 

「ごめんね。でも愛しているから」

 

熱湯の紅茶を一気に飲まされた後にそう言われた。口の中が火傷して、痛い。

 

「ごめんね。でも愛しているから」

 

陶器のコップを投げつけられた後にそう言われた。破片で耳が切れて、痛い。

 

愛されていれば何をされてもいいのだろうか。

愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいのだろうか。

愛されるって、なんなんだろう。

 

いつものように叩かれて、布団もない床で寝る。せめて、夢の中だけでも、幸せな世界がほしい。

 

「夢の中くらい、幸せじゃないとね」

 

何かが聞こえた気がした。この時だけは、起きた時に少しだけいいことが起きる。

 

 

7歳になった。母親が捕まった。私は施設に入ることになるらしい。

でも大丈夫。愛されているから。きっと、いつか、帰ってくる。

 

 

8歳になった。いくら待っても、母親は帰ってこなかった。愛している、って言ってたのは嘘だったのか。

 

 

施設の人から慰められる。これは愛情ではない。燐憫だ。

いつしか、周りの目を気にして嘘をつき始めた。嘘しか知らない私。

 

 

「なるほど、ここが1つのターニングポイントか。じゃあ、ここで物語を改編しよう」

声が聞こえた気がした。

 

 

「ここはどこ?」

 

真っ白な空間の中にぽつんと自分がいた。

 

「夢の中さ」

 

同じくらいの白い男の子がいつの間にか立っていた。

 

「夢の中?」

 

「そう。でも少し特別製でね。この夢のことは起きても覚えていられるよ」

 

「そっか。君は誰?」

 

「そうだね。マリ・アヴァロンと名乗ろうかな。一応、見た目通り魔法使いをやってるよ」

 

「魔法使いのマリ君だね。分かった」

 

「順応が早いね。さて、それは置いておいて、君の行く末を選ぶときだ」

 

「選ぶ?」

 

「うん。君のこれからの旅路は2つある。1つ目の旅路はこのまま進むこと。きっと最期には愛を知ることができるだろう。もう2つ目の旅路は新しく切り開く旅路。魔法の物語に入ること。それこそ、命を捨ててまで子供を愛した人や、ただ1人への愛だけのために人生を捧げるような物語を見ることができる。保証はないけど、いろいろな愛を知ることができると思うよ。でも僕はバッドエンドは嫌いだからね。できれば2つめを選んでほしいかな」

 

夢の中だからだろうか。男の子は未来を知っているようだった。でも、どうせ夢なら聞いておこう。

 

「新しい旅路でも私は嘘を言わなくなる?」

 

「どちらでも同じだよ。ただ、1つ目の旅路では、君はおそらく20歳で死ぬ。2つ目の旅路は、まだ決まっていない、新しい旅路だ。おおよその流れは固まってきているけどね」

 

「そっか。でも、自分の全てを捧げた愛を見れるんだよね?」

 

「それは約束できるよ」

 

自分のすべてを、一人に捧げる、ああ、それは、なんて

 

「なんて、幸せなのだろう」

 

「それが分かるのなら、君は大丈夫。嘘をつかなくて、本心で語れるようになるよ」

 

「嘘しか言っていない私が?」

 

「嘘から出た真、ってことわざがあるくらいだ。嘘が嘘じゃなくなることもあるよ」

 

「そっか」

 

じゃあ2つ目の旅路を選ぶのが

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

ノイズが走る。私は、1つだけ選んで満足するような人間じゃない。そう私が教えてくれている気がする。

 

「おっと。これはさすがに予想外だ。こんな干渉をされるのか」

 

「2つとも……」

 

「ん?」

 

「魔法使いなんだったら、どうにか、2つとも選べるはず!」

 

「欲張りだね」

 

「世界一の欲張りになるはずだから」

未来からの干渉を得て、両方を選択するのか。

 

「……原作補正が働くのか。なるほど。それでも僕はハッピーエンドを目指そう」

おそらく、押しの子に転生した人間でもいるのだろう。と

 

「よし。決めたぞ。どんなことがあっても、私が悲しい結末にはさせない。じゃあまずは、この薬を飲むんだ。肉体の成長スピードを半分にする薬だ。夢の中だけど効果は保証しよう」

 

「分かった」

 

マリからもらった小瓶に入ったマーブル色の液体をアイはグイっと飲み干す

 

「疑わずに飲むね。結構変な色しているよ?」

 

「嘘ついていないことは分かるから」

 

嘘つきだった私の特技の1つ

 

「うーん。未来の能力がちょっと入り込んじゃっているのか。でもねアイ、魔法使いの言葉を簡単に信じちゃダメだぞ。例えば、『アイは昨日死んでいるよ』」

 

「……え?」

 

絶対に嘘を言っているはずなのに、嘘じゃない。私は、死んでいる……?じゃあ、ここにいる私は?

息が苦しくなる。私が嘘を言っていないことが分かるからこそ。

 

「ほら。分からなかったろう?魔法の1つさ。幻術、と言い換えれば分かりやすいかな」

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

「おっと。ちょっとショッキングだったかな。それ」

 

息苦しさがなくなる。

 

「こんな風に魔法でだますこともできるんだ。両方の道を行き来する気なら、魔法使いを信用しちゃダメだよ」

 

「どっちでも愛を知れるっていうのは?」

 

「大丈夫。騙したのはさっきの一言だけだよ。そんなに不安なら契約するかい?内容は、そうだね。僕はアイに嘘をつかない。そしてアイは私に嘘をつかない」

 

「それは無理だよ。世界一の嘘つきだもん」

 

「それも大丈夫。きっと私相手なら大丈夫さ。不安なら、徐々に嘘をつかないようにするでもいいよ」

 

暗示とかあるし、とか言っているが、それはどうなのだろうか。やっていることが若干ダメな気もする。

 

「じゃあ、とりあえず入学までは1月単位くらいで時間を戻すようにしよう。そんな道具が魔法界にはあるから。入学してからは、ある程度まとめて戻した方がいいだろうから、1年くらいで巻き戻そう。ちょうどイギリスと日本でかぶらないし、後はその都度相談しよう」

 

そういうとマリは一呼吸おいてから

 

「今まで遠くから見ていたわけだけど、これからは共に歩いていく仲間だ。頼りにしてほしい。特に恋の悩みとか、その手の相談は大歓迎だよ」

 

と言ってきた。恋の悩み、今まで遠くから見てきた。

 

「夢が幸せだったのはマリのおかげ?」

 

「そりゃ気が付くか。マリになった都合上、どうしても言っておきたかったんだ。じゃあ、起きたら会いに行くよ。僕の目は特別製でね。お金で苦労を書けることはないと思うよ」

 

そう言うと、世界が白く変わっていく。

 

「まって、まだ……」

 

「大丈夫。お昼くらいに挨拶に行くから。起きてから話そうね」

 

それを最後に、夢が終わった。

 

 

 

マリside

 

「いやー原作の補正って怖いね。少し計画練り直さないといけなくなっちゃったよ」

 

このまま原作の流れを進むのであれば、おそらくアイは誰かを父親にして、16歳で出産するだろう。とすると、天童寺さりなを今回復させると、いろいろ不都合が起きる。

 

「かわいそうだけど、そのままの運命にするしかないかなぁ」

 

先にアイに会ってしまったからこその決断。どうやら、私は関わりが深い人の方を優先するらしい。

 

「うん。クソヤロウになってなくてよかった。性格も完全に浸食されたわけじゃないみたいだね。さて、じゃあアイを迎えに行こうか」

 

アイをハッピーエンドにしてあげないと。

 

マリは気が付かない。ハッピーエンドにしてあげたいと思う気持ちはアイが求めている本当の愛であることを。その愛を知ったアイにどうしようもなく執着されることを。

 

 

 

アイside

 

翌日の昼、アイはマリはアイのいる施設に来ているのを見た。嘘を纏っている気がする。幻術で大人に見えるようにしているのだろうか。なんだろうか。なんとなく、むかつく。私には嘘をつかないでほしい。

 

「調べてみたら親戚だったんですよ。なので、こちらで一緒に暮らそうと思いまして」

 

「そうだったんですね!いやー、あまり言えないのですが、母親も迎えに来なくて、あの子落ち込んでまして」

 

「ああ、ちょっとあの人は……ね」

 

マリが言いずらそうに言っている。これも嘘。マリは母親のことを知らないはずだ。

 

「手続きや準備もあると思いますし、また明日の朝迎えに来るでいいかな?」

 

「分かりました。明日の朝までに準備しておきますね」

 

「じゃあアイ、また明日」

 

「うん。またね。マリお兄ちゃん」

 

明日まで我慢しなければならないのは嫌だけど、荷物も何も準備できていないのでしょうがない。でも

 

「……やっぱり行かないでほしいな」

 

「アイ?」

 

「んーん。なんでもない」

 

まだ我が儘を言うタイミングじゃないだろう。でも明日が来たら、

 

「めいいっぱい愛してもらおう……」

 

翌日、マリはリムジンで迎えに来た。リムジンってめちゃくちゃ高いって聞いたことがある。そう思うと同時に、マリが夢で言っていたお金で苦労することはない、が本当のことだったと分かった。

 

「じゃあアイ、忘れ物はないかな?」

 

「うん。大丈夫」

 

リムジンに乗り、施設のみんなに手を振る。

施設が見えなくなったあたりで、マリは大人の姿から私と同じくらいの姿に縮むように変わった。

 

「ふー。ちょっと面倒なんだよね。この変装」

 

変身術って学問なんだ、とマリは言う。私の前では嘘をつかないようにしてくれているらしい。

 

「ふーん。ね、私に嘘つかないって本当?ハッピーエンドにしてくれるって本当?」

 

「もちろん。私は君をハッピーエンドに導こう。これも一種の愛なのかもしれないね」

 

「じゃあ、私の幸せのために、私が悪いことしても許してくれるの?」

 

愛しているのであれば、愛されているのであれば、あの母親のように何をやっても許されるのだろうか。

 

「善なのか悪なのか、そんなものは他人が勝手に決めることだ。そういう意味で言うと私も君の旅路のために何人か見捨てることになってしまったし。でも、別に僕はそれを悪いことだと思ってないよ」

 

「わー……全部許してくれるんだ」

 

愛するってことがまだ何かわからないけど

 

「そういうわけではないさ。君が君にとって不都合な選択をしようとしたらそれは止めるよ。悲しい結末を見たくないからね」

 

きっと、それも1つの愛の形なのだろう。そうアイは思った。

 

「……うん。本物を与えてくれるなら、きっといつか私にも分かるよね」

 

これは、嘘をつき続ける少女が本物の愛に触れて、本当の愛を知る物語。

 

 

 

 

 

 

マリは知らない。アイがマリに執着した結果、ずっと一緒に居たいと思うようになってしまうことを。女装させられてアイドルを一緒にやらされることを。B小町の不動のNo2になってしまうことを。

 

「佐藤社長!アイドルやるならマリも一緒じゃないとやだよ~」

 

「斉藤だって言ってんだろ!っていうか、なんで男連れてきてるんだ!路線違い過ぎて無理だろ!というかアイドルに男はNGだろ!」

 

「紹介に預かりましたマリです。いやーまさか一緒にアイドルしたいと言われると思わなかったよ。私男だよ?」

 

「え~でもこの前女装したら行けそうだったよ!ちょっとウィッグつけてみてよ!」

 

「はいはい」

 

斉藤は困惑した。髪長くしたら格好以外は女じゃん。男装?

 

「え!?おま、女だったの!?」

 

「私は男だよ。中性的な顔だから、似合うだけかな。ちなみに声も自由自在だ」

 

ショタマリは気が付かなかったが、マーリンとプロトマーリンの両方が混ざっていたらしく、かなり中性的な顔をしている。(そのせいで性癖を破壊されている被害者が多数いる)

 

「急に女声を出すな!え、なにこれ、……え?」

 

また破壊された被害者を生み出してしまった。

 

「ね。佐藤社長。これなら行けるでしょ!アイドルするならマリとじゃないと嫌です」

 

「男の娘系アイドル……行ける気がしてきた……!」

 

「アイ、この人大丈夫かな?」

 

「多分大丈夫でしょ」

 




次はハリーポッター部分の導入

8/21 改行調整。
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