Sideリイン
いつものように、マリお兄さんとアイお姉ちゃんのお見舞いに医務室に向かう時に、聞こえてしまった。聞いてしまった、
「マリとアイの2名が医務室から消えました。そして寝かせていたベッドにはこれが」
「……スリザリンの継承者からの」
「あと、グリフィンドールの1年生のジニー・ウィーズリーが……」
マクゴナガル教授とスネイプ教授が話をしていた。その内容は認めたくない事だった。私の家族がスリザリンの継承者に連れ去られた。ようやくできた安寧の場所が、幸せになれると思った場所が奪われる。
頭が真っ白になる。嫌だ。離れたくない。失いたくない。奪われたくない。待っててもどうしようもないのは分かってる。でも、私なんかが……
……戦おう。……助けに行こう!
ずっとマリお兄さんとアイお姉ちゃんに助けられてきた。居場所のない私を地獄から引き上げてくれた。だから今度は私の番。
恐怖に震えて何もできない私はここで終わり。私は、私の居場所を守るために進むんだ!
僕なら大丈夫だから!もう少しで勝手に石化解くから!
じゃあ君の望む場所に案内をしてあげる。さあ、ゴーストの子がいる3階の女子トイレに行くんだ
何で余計なことをするの!リインになにかあったら……
マリに似た声が聞こえた気がした。
「……ここですね」
声に従い、3階のトイレにたどり着く。なんとなくだが、信じられるような気がした。
スリザリンの怪物はバジリスクとマリお兄さんから聞いています。であれば、ホグワーツ内の無駄に大きい水道管が入口ですね。とすると、洗面台あたりが怪しいですね。
「分かりませんね。どうしたら……」
逆に考えましょう。ホグワーツであれば魔法で入口を隠しているはずです。
「『開け!』……開きましたね。マリお兄さんに言霊を教わっていてよかったです」
リインもマリの影響で割と脳筋になってきているようだった。
「下は……見えませんが、まあ低速落下の魔法で下りれば大丈夫そうですね」
ふわっと穴に飛び込む。バジリスクが通るだけあってかなり大きい。
「あ、このままだと危ないですよね。『閉じろ!』」
入口を閉じて秘密の部屋に向かう。待っててください。マリお兄さん、アイお姉ちゃん。
しばらくして、地面が見え、秘密の部屋にたどり着いた。
よし。じゃあ開かないようにししてっと
「ここが秘密の部屋ですか……結構ジメジメしていますね」
湖の近くにあるからだろうか?もしくは蛇の、バジリスクの生育環境に適するようにしたためだろうか?
「結構骨がありますね」
バジリスクは骨までは消化しないのか、もしくはここで殺されて朽ちたのか。考えていても仕方ないですね。早く進んでマリお兄さんとアイお姉ちゃんを助けましょう。
「今は進みましょう」
しばらく警戒しながら歩くと、蛇が装飾された金属製の扉が見えてきた。見た感じ重厚で大きく、手で開けることはできないだろう。ここもトイレの入口と同じやり方でいいでしょうか。
「『開け』……案外単純なものなんですね」
ドアが開き、先に進む。
こっちはもっと厳しく通れないようにして……
ドアを通ると勝手に閉まっていく。自動ドアのようなものだったのでしょうか。ここまで来る人は居ないと思いますが。
「待っててください……」
Sideアーリア
「何で開かないのよ!」
なんかおる……
そうか。もうそんな時期だったか。
マートルのトイレの近くに行くと、ドリムが騒いでいるのが聞こえた。
「ハリー!もっと気合入れて蛇語使いなさい!シューシュー!(開けろやこら)」
「そうだハリー!気合を入れれば開くって!」
「気合入れた蛇語って何!?」
「んん~ここは私がパーフェクトに解決して見せましょう!シャー!」
「ドリム、ハリー。これ蛇語になってる?」
「奇跡的に「私を殺せ」って聞こえたわ。バジリスクの前で言ったら即死ね」
「気合を入れる蛇語……こうかな?シュー!(開け)」
「何でできるのよ!?」
原作通りロックハートとハリー、ロンもいるみたいだった。ジニーが攫われたんだろうなぁ。ロンも焦っているのかハリーに無茶ぶりしてるし。……あれ?ドリム蛇語使えてるじゃん。やっぱあいつが決闘クラブの時に俺を殺そうとしていたんじゃ……?
「もう斬った方が早くない?」
「斬った先にジニーが居たらどうするんだ!?」
「えぇ……」
シスコンじゃったか。いや、さすがに巻き込まれないうちに帰るか。
「師匠は石になったまま攫われちゃったから判断つかないなぁ……」
「どうせ斬ったところにいてもこのまま突っ立ってても死ぬんだから可能性高い方に行くわよ!ハリーやりなさい!」
「……まあいいか。分かった!」
ドカン、とまるで斬ったような音じゃないでかい音がした。……ん?師匠が攫われた?ハリーが言っている師匠ってマリだよな?え?父さん監修のあのセキュリティ突破したの?
「いやそうじゃない。このままだとリインさんがまずい……」
メガネをかけてホグワーツを走り探す。当のリインがその秘密の部屋にいることを知らずに。
Sideリイン
コツコツ、という足音とともに、警戒しながら秘密の部屋を進む。
「広間、でしょうか」
蛇の装飾がある扉から少し歩くと、開けた場所に出ることができた。そしてそこには、赤毛の少女と石になったマリお兄さんとアイお姉ちゃんがいた。
「やあ、待っていたよ」
「なるほど。貴方が犯人だったんですね。リドル」
そして、トイレで燃やそうとした日記が置かれていた。
「リドルと呼ぶのはやめて欲しいかな。リイン・ポッター」
日記から半透明の青年が出てくる。16歳くらいだろうか?
「何て呼べば?」
「トム、でいいよ」
そう少し微笑みながらトムは言った。
トムがあの日記だとすると、油断できないだろう。あまり親しくするのは良くない。
「……マリお兄さんに何を?」
赤毛の少女からリドルに、石になっているマリお兄さんから日記へ何かを吸っているように見えた。
「何。僕が受肉するために魔力をもらっているだけだよ。もう数刻もすればこの少女からは吸い取りきれる。君の言うお兄さん……いやこれお兄さんでいいのか?はまだまだかかるよ」
魔力を吸いだす。全ての魔力を吸いだしたら人は生きていけない。空っぽになって空虚な感情で死んでいるように生きるだけ。吸魂鬼に魂を吸われた状態と変わらなくなる。まあでも、マリお兄さんを助けることはできそうだ。
「時間的な猶予はあるみたいですね。さすがお兄さんです」
「へえ……赤毛の少女はいいのかい?」
「そうですね。……知らない人ですし割といいです」
そんなことよりもマリお兄さんとアイお姉ちゃんが優先だ。
「そう。それで、君は何者なんだい?未来の僕を殺したわけでもなく、傷跡もない、それなのに、何故ここに来れた?」
「未来の僕?貴方は一体……?」
「ああ、君が名前を知っていたから忘れていたよ。僕はトム・マールヴォロ・リドル」
そういうとトムは空中に少し光る文字を浮かばせる。
Tom Marvolo Riddle
「そして」
光る文字が並び変えられてI am Lord Voldemortに変わる。
「私はヴォルデモート卿……なるほど。貴方が魔法界を混沌に落とした闇の魔法使い、そして……」
「君の両親を殺した存在だ。どうだい?僕と会ってみて。復讐の怨嗟を抱いたかい?それとも恐怖を覚えたかい?」
両親の
「いや、どうもこうも、アナグラムで卿とか付けちゃうあたり中二病かぁ、としか」
「ぐふぅ」
「あの……そもそも両親の記憶はないですし、正直そんなに思い入れもないんです。むしろ似た容姿のせいで親族からは疎まれましたし、実の家族との結びつきが一番薄いですし……そんな中で両親の敵と言われましても、そうなんだ、くらいしか……あの、なんだかすいません……」
綺麗に膝から崩れ落ちるトム。今のリインにとっての家族はマリとアイだけなのだ。だから両親を殺したとか言われても実感も何もない。
「えっと……あ、でもマリお兄さんとアイお姉さんを攫ったのは怒ってますよ。馴れ合うつもりはないです」
杖を構える。
「……幽体の貴方に効果があるかは分かりませんが」
スネイプ教授から教わった失血の呪いを無言呪文として放つ
「いきなりだね。でも意味がない。僕はここにいるように見えるだけ。残滓でしかないからね」
「……効果はありませんか。じゃあこっちですね」
日記の方に狙いを定め、同じ呪文を放つ。
「なるほど。生き残った他の2人と比べるとよほど優秀に見える」
赤毛の少女が杖を振ると日記が浮き、閃光を避けられてしまった。
「それとも、師が優秀なのかな?年齢にそぐわない高度な魔法を使い、状況の判断も優秀。大人の僕は傷跡を残した2人に夢中みたいだし、君は僕がもらおう。さあ、どう対応する?ペスティス インセンディウム」
悪霊の火が蛇を象って放たれる。
「イケメンでも俺様系はお断りします。
マリお兄さんとアイお姉ちゃんの2人を守るためにちょこちょこと結界を展開していた。それを用いて悪霊の火を透かす。陰陽術の体系。結界を起点に相手の術の穴をつく。相手の魔力が洗練されていないからこそできる避け方。
「へえ、日本の体系の術かな?面白い。じゃあ次はこんなのはどうかな?」
散らばっていたがれきが無数の剣となってこちらに飛来してくる。
「無駄です」
土を壁として飛来する剣をそこに刺させる。
「こちらの武器にするだけです。
「っ!プロテゴ・マキシマ!」
爆発がトムに全て向かうように方向を制御して、剣が刺さった土壁ごと吹き飛ばす。日記には強力な保護魔法があったはず。なので、この程度でどうにかできるとは思っていない。
「……おいおい、殺す気かい?」
手榴弾などと同じ原理。爆発だけでなく金属片を飛ばすことで殺傷力をあげる方法。当然日記には効果がないだろうが、人質を死なない程度に動けなくさせられれば、御の字の考えだった。
赤毛の少女の事はあまり考えていない。どうして媒体になったのかは知らないが、自分から明らかにおかしい日記に手を出したのだ。まあ、自業自得だし動けなくなっていればいいな、くらいの気持ちで攻撃していた。
「この程度でしたら、別に死なないでしょう?」
「君の基準、少しおかしいよ。さて、次の手……っち、もう魔法が使えないか。1年生じゃあこんなものか」
「マリお兄さんから吸いだしている分は使わないんですね……いえ、使えないんですね」
マリお兄さんは純粋な人間ではない。その魔力は普通の人が扱うには難しい。一度試させてもらった時は暴発だらけだった。
「まあ魔法比べはここまでにしようか。メインディッシュの時間だ」
ズルズルと、何か大きなものを引きずるような音。かなり重たそうだ。スリザリンの怪物が、1000年生きたバジリスクが来る。
リインの世界は狭い。自分と家族しかおらず、偶にスネイプ教授やアーリア、ダフネ等が入るくらい。
少しだけ、他人がいる余地もあったが、内に秘めるのは家族であるマリとアイだけ。それ以外はあまり関心がない。
まともな環境で育っていないリインがまともな感性を持っているわけがないんですよね。育てたのも同じような破綻者だったし。
技名はノゲノラとドイツ語を参考に適当に作ってます。