519:名無しの理解者
なんか会見始まったな。
520:名無しのアイドル
アイとマリと、事務所社長だってさ。
521:名無しの理解者
テレビデビューが記者会見かぁ……なにしたんだろう。
522:名無しのアイドル
【速報】アイとマリの二人、11月から一時的にアイドル活動休止
523:名無しの理解者
絶望しかない。あの二人を見るのが今のあの子の生きる活力だというのに……
524:名無しのアイドル
>>522
え、なんで?二人とも健康だよね?
病気とか?若いのに?
525:名無しのアイドル
【速報】はいるっどええでwkdh
526:名無しのアイドル
失礼。アイとマリハリウッドデビュー
527:名無しの理解者
>>525
そりゃそうなるわ。俺もコーヒー吹いちゃったし
528:名無しのアイドル
テレビデビューもいましたばかりなのに、それはそうなるわ。
529:名無しのアイドル
日本で役者デビューもせずにハリウッドに参加するアイドルですか。斬新ですね。
530:名無しのアイドル
会見で社長が胃を抑えてるの面白すぎる。
531:名無しのアイドル
来年の夏公開予定とのこと。
というかこの男の娘が海外行くのか。
532:名無しの理解者
>>531
夏かぁ……長いなぁ
533:名無しのアイドル
>>531
海外で受け入れられるのだろうか?可愛い顔した男の娘
534:名無しのアイドル
>>533
顔がイイから多分行けると思う。
結局役者するなら顔がある程度必要になるから。
535:名無しのアイドル
でも演技力どうなんだろう?アイドルってそういう練習してないよね?
536:名無しのアイドル
記者からも同じような質問とんだな。
537:名無しのアイドル
エチュード見て誘われたと。
ってことは一定以上の演技力は認められているってことかな?
マリ・アヴァロンの演技は異質だ。
カメラからどう撮られているのか分かっているかのような位置取り、相手の演技に反応するマイズナーテクニックをベースとして少しだけメソッド演技を取り入れた、見ている人間も演じている人間も作品の世界に入るような感覚を味わう。正直なめていたが、ものすごい演技だ。こいつが夢の世界の住人だと言われても信じてしまうような、強烈に空想の世界へ引き込まれる感覚。
「コネで入ったふざけたやつだと思ったけど……これはなかなか……!」
聞いたときはふざけるなと思った。だが実際に撮ってみてどうだ?これ以上無い逸材だ。
「売れるぞ……この映画!」
チーフカメラマン、カメラ周りの取りまとめ役として撮影に望んでいたスタッフは手ごたえを感じていた。
ライン戦線異常なし
ふざけたタイトルだが、戦争物の映画だ。
第二次世界大戦における西部戦線、そのライン川での戦線をモチーフにしており、主人公の参謀本部の人間と、吐いて捨てる駒になっている少年兵の物語だ。
少年兵として感情を殺し、前線で戦う白髪の少年エリオと参謀本部の天才、ケヴィンの物語である。
この戦争では南部と北部でそれぞれ戦線が開かれていた。ケヴィンは劣勢を強いられている北部戦線に送り出された。
ある時、とある作戦の通達の後、2人は会合する。
作戦会議の後、ケヴィンが外で煙草を吸っていると、白い髪をした少女のような少年が野戦病院から出てくるのが分かった。少年は左手に包帯を巻いており、負傷しているのが分かった。身に着けている装備から、前線で戦う突撃兵だろう。とケヴィンは判断した。
「やあ、君はなんて名前なんだい?」
「……僕はエリオ。突撃兵の部隊所属です」
「そうか」
こんな子供も戦線に駆り出される程劣勢な状況なのかとケヴィンは驚いた。
「僕はケヴィン……あーこれ食べる?おじさん、甘いのはちょっと苦手でね」
「……ありがとう。部隊のみんなにも分けていい?」
「もちろん」
「いつ死ぬかもわからないからね。 リーゼ……あーリーゼロッテっていう同じ隊の通信兵にもあげたくて」
「……そうだな。でも大丈夫だ。僕は天才とも言われてたんだぜ?こんな戦線すぐに押し上げる作戦考えるよ」
「ふーん。期待しているよおじさん」
「おじさん……まだ30行ってないんだけどなぁ」
たまたま出会った2人は馬があったのか仲良く過ごしていく。時に戦線の維持方法や作戦立案、部隊の指揮の取り方など、色々なことを教えていった。
参謀本部の人間は天才だった。指揮した作戦は成功を積み重ね、戦線を大きく押し上げることに成功した。
「このまま頼むぜ!参謀閣下殿!」
「北部が勝てば、この戦争も終わるぜ!」
「早く帰って嫁さんに会いたいなー」
「独身の俺への当てつけかこのやろー!」
「「「はははは!!」」」
戦線も希望が戻り、終わりが見えた事で戦線の士気も上がっていった。
ただ一度だけ、ケヴィンは相手の参謀の作戦を読み間違えていた。
「A-2地点に敵兵が集中しています!このままでは……A地点の味方が全滅も……!」
「A-3地点の味方を下がらせろ!DからF地点の味方半分を再編してA地点に方へ向かわせろ!B、C地点は味方の撤退を援護しろ!」
幸いにも、これによって大きな被害は出なかった。しかし、二個の小隊が壊滅状態になった。
「くそっ!……情報漏洩だ。誰かがA地点が手薄になっていることを漏らしたな……」
真っ当な人間であれば、そこに兵力を置くことはしないはずだった。敵の補給基地からも一番遠い、他が突破された瞬間に撤退できない死地になる地点。
「いや、まずは被害状況を報告してくれ。部隊を再……へ……ん……」
ケヴィンが指示を出している最中に見てしまった。足を引きずり、味方の通信兵らしき少女に肩を貸して野戦病院の方へ向かうエリオを。
今すぐにでもエリオの元へ向かいたかった。だがそれは立場が許さない。
「……第13小隊と第14小隊を合わせて小隊を構築。少し人数が足りないだろうから、第4小隊から人を出せ」
その後戦線は有利に進んでいた。今まで年単位で数メートルしか動かなかった戦線はこの1
月で数キロのレベルで押し返している。
「ここを突破すれば、この戦争は勝利で終わる……作戦はこうだ」
2部隊での北部と南部の同時攻略。通信機器が改良されたことで取れるようになった、敵には気が付かれない同時攻撃が可能な戦略。
「ふう」
会議を終えたケヴィンは天幕横で煙草を吹かしていた。本来であれば指揮官が目立つような場所で煙草を吸うのは駄目だが、今日だけは許してほしい。あと少しで、戦争を終わらせられる。
「あ、参謀がこんなところでタバコ吸ってる。いいの?」
「ちょっと。上官への口の利き方気を付けないと駄目ですよ!」
「大丈夫だよ。友達なんだ。あ、小隊長にしてくれてありがとね!」
そうしていると、無邪気な顔でエリオが話しかけてきた。最期にあったのは、作戦が失敗したあの時だろう。隣には同い年だろうか。通信機を運んでいる女の子もいた。
「あー。大丈夫だったか?」
友達、と扱ってくれるか。あんなミスして、怪我させて、戦友も死なせたのに。
「まあ、何とか。あと、元14小隊の隊長が裏切ってたみたい。この前死体見つけた」
「そうか……北部には俺も行く。ここを勝てばこの戦争も終わる」
「ん?なんかいつもと違う?」
「そんなことないだろ?」
「……負い目を持つことはないよ。戦争なんだ。同期が死ぬのは慣れてる。あんたが来てからはあんまり死んでないし、優秀なのも分かっているよ。って言っても、後残っているのはとなりにいるリーゼロッテだけなんだけどね」
「ちょ。私を紹介しないでよ……え、大丈夫ですよね?罰せられたくないのですが!?」
「こんな時に罰則何て気にするなよ。ほら、あっちの宴会なんて無礼講だぜ。とは言え、まあ、前線なんてポンポン人が死ぬからな。そんなもんだよな。……そういう意味では志願して最前線に来れて良かったかもな」
そうじゃなきゃ、前線の苦しみも、少ない物資で騒げることも、何も分からずに偉くなるだけだった。
そして作戦の日。
「最悪だ……」
敵は部隊比率を2対8にして、南部に部隊を多く配置させた。少し考えれば分かるはずだった。敵はもう後がない。北部の2割の部隊は死ぬまでこちらを攻撃するだろう。そしてここの攻略拠点はおそらく罠だらけ。ここを破棄してでも南部を突破させるつもりだ。
そのシナリオを完成させるための人柱部隊。決死の兵は、強い。
「南部に合流して押し戻す。物量ではこちらが優勢だ。
「指揮官が殿に行ってどうするのさ。僕が行くよ。囮になって引き離してあげる」
「エリオ……」
2小隊で、15人程度で100人の足止めをする。現実的ではないだろう。
「思ったよりやれるね」
だがそうならなかった。エリオがケヴィンと過ごした日々は無駄ではなかった。だからこそこうして
「でもリーゼは良かったの?通信兵なら残らずに済んだのに」
「ここまでやってて気が付かないのですか!?私、貴方の事が好きだったんですよ!それでこんなところまで来てしまったのに……!」
「後悔してる?」
「……まあ、そこまででもないですね。同期は全員死んでますし、ここで終わるのならちょうどいいかもです。……2人殺りました。1人負傷、3人健在です」
「通信兵なのにやるね。あれだと一旦止まって手当するよね。よいしょっと」
手榴弾を隠れた場所にぶち込む。残った3人も殺せただろう。
「最近は希望を持ちすぎたよね。動機がどんどん死んで行くのを見て分かってたはずなのに。前までは死だけが救いで、終わりだった。なのに勝てるかもって、別の形で終わるかもって希望を見てしまった」
「恨んでいますか?希望を持たせられて」
「いや、別に。分かってたことだしね。殺して殺されて。まともに生きていけるはずもない」
「まあ、まともな神経していないことは同意します」
死を覚悟する戦場。その中で2人は軽口を叩きあっていた。
「あー。勝ってるといいけどね。まあ、ケヴィンだし大丈夫か」
「勝った……勝ったぞ!」
ケヴィンの部隊はスムーズに敵部隊を横から喰い破り、ライン北部戦線の勝利を決定づけた。
だが戦争は終わらない。
「本部より入電、南部戦線が、破られ、第三拠点まで撤退しました……」
「……そんな」
北部戦線は突破した。南部戦線は崩壊し、戦争は終わらなかった。
「……準備を整え次第、南部へ行進……3時間で準備しろ!」
「そんな……!ですが、北部の部隊は……」
「……見捨てるしかない。ここを突破されたら、……国が終わる」
「……ああ、死に損ね……ちゃったかぁ」
一瞬意識を失っていたようだった。作戦は、上手くいったのだろうか?
周囲から戦闘音は聞こえない。撤退したのか、囮だと気が付いて南部に降りて行ったのか。負けたから引き下がったのか。
「まあ、……どっちでもいいか」
痛む体を起こして周りを見る。ここは、塹壕の中だろうか。
自分の体の状態を見るが、まあ、処置しないと死ぬなぁという状況だった。腹部からの出血が激しく、このままだと死ぬのは明白だった。15人で100人を撃退したのだ。大金星だろう。
「リーゼ……無事?……」
返事はない。
「僕だけ……か」
そして僕ももう長くない。血を失いすぎたのか、視界がおぼつかない。気が付いたら地面に倒れていた。となりにはリーゼがいる。力をふり絞って手をつなぐ。ああ、まだあったかい。
まあ、悪くない気持ちだ。祖国は勝てただろうか。
―――夢を見ていた。
そこは優しく、穏やかで、静かで、美しく、安らぎで満ちた、そんな幸せな世界。
小さな小川が流れ、小麦畑が綺麗な黄金色をしており、吹き抜ける風が少しだけ木々をざわめかせ、道端から雑談が聞こえて、明日への不安も何もない世界。
「今日は秘密基地まで行きましょう!」
「昨日の続き?でも材料集まって無くない?」
「じゃあ森の中で探しましょう!行きましょうエリオ!」
「ちょ、待ってよリーゼ!」
小さな村の、ありふれた幸せ。掃いて捨てるほどあるような、ありふれた生活。
―――夢を見ていた。
「カット!」
監督の声で現実に引き戻される。ああそうだった。撮影中だった。
「……マジか。これ編集者大丈夫か?」
チーフカメラマンとしてラストシーンを撮っていた。それだけでこんなにも虚構の世界に引き寄せられた。引きずり込まれた。まるで、本当に戦争を経験して、最期の夢を見せられたように感じてしまった。
これを編集する人間は何度も見返すし、細かくカット割りを調整するだろう。自分なら耐えられる気がしない。
「最後のシーン、監督の案で追加したけど……いや、ストーリーとしては面白いけど、泣くんだけど……病むぞこれ」
思ったより幕間が長くなったので2分割。次回は明日