ハリー・ポッターがバグった件   作:怠惰の徒

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アズカバンの囚人
ホグワーツ出向


シリウス・ブラックが逃げ出した。

 

アズカバン看守は大慌てだったが、ディメンターのディーはそんなに慌てていなかった。餌が一つ逃げたかー。くらいの軽い気持ちである。軽い気持ちだった。

 

しかし、何日か過ぎたあとの看守の言葉で初めて絶望を知った。

 

「ホグワーツ出向」

 

 

 

 

吸魂鬼のディーは比較的優遇されていた。吸魂鬼の割にこちらの言う事を聞き、他の吸魂鬼にも指示を出しているように見えるからである。

実際のところ、マリに引きずられてホグワーツでちょっとレベルアップしたり、枝拾いと騙されて神話レベルの鳥への囮にされたりした結果、強くなったのである。

吸魂鬼といえども特に人間のような役割に順ずる社会性があるわけではなく、力の強いやつが偉い、という割りと動物寄りの社会性であった。つまり、強くなったディーは吸魂鬼の社会の中では偉いのである。

 

その結果、優先的に魂をもらえたりと優遇されていた。そして調子に乗っていた。

マリに拉致されない限りはディーはアズカバンでは王様なのだ。

 

ホグワーツ出向、という単語を聞くまでは。

 

絶望した。だが一縷の望みにかけていた。

自分がアズカバンからホグワーツに行けばアズカバンの統率はどうなるだろうか。それがわからない看守ではないと

 

「じゃあこの線からこっちはホグワーツにシリウス・ブラックを探しに行ってね」

 

「ファーーーック!」

 

無情にも、適当な決め方で決められた。正直看守からしたら誰を連れて行ってもあんまり変わらないのである。

 

「……今誰か叫んだ?……まあ囚人か誰かか。じゃあ君たちはブラック探しながらホグワーツに向かってね」

 

何人か監視の目が付きながらホグワーツに向かう事になった。ディーは…………

 

 

 

 

 

こっそりと抜け出してマリの家に向っていた。

 

 

 

 

 

 

「菓子折り、よし。事前のアポ、よし。服装、よし。……行きたくないよぉ」

 

半泣きでマリの家の前で何度もチェックしていた。菓子折りやら服装はそのへんのチンピラからカツアゲした資金で買った。アポは拙いながらも手紙をしたためてフクロウ便で出した。

 

「ふぅ。はぁ。……よし」

 

意を決してチャイムを鳴らす。はいはーいという声が聞こえ、ドアが開く。開いたことで気配が外からも分かるようになった。なってしまった。

 

「増えてる!?」

 

ディーは叫んだ。

 

「え?何が?」

 

マリは混乱した。

 

 

 

ディーが叫んだのは簡単である。外に排斥された幻想種の気配が3つに増えていたからである。

 

マリと、マリに似てるけどもっと強大なのと、あと龍っぽい気配がする。ああ、ここで私は死ぬらしい。喰われるのだろうか、搾り取られるのだろうか。どっちにしても一瞬で殺ってくれないかなぁ。

 

「極楽も 地獄も先は 有明の 月の心に 懸かる雲……しかないよ!死にたくないよ!というか私が行くのは多分地獄だよ!」

 

心は陰りまくってた。全然澄み渡って無かったらしい。

 

「どうしたの急に?世辞の句……なの?まあいいや。来るのは聞いてたから上がって」

 

もう可愛そうなくらいに足がガクガクしているディーを抱っこして連れて行く。ディーの気持ちは出荷される豚だった。

 

「ドナドナドーナ……」

 

「アズカバンから何も食べてないからかな?これ食べる?」

 

「たべりゅ……」

 

魔力で擬似的な魂を作り出し渡すマリ。折れた心でもきゅもきゅ食べるディー。

端的に言ってカオスだった。

 

 

 

「で、何しに来たの?」

 

マリは客室でディーと向き合っていた。

 

「あ、ちょっと動揺してたからあれ、タイミングがおかしいけど、菓子折りです。どうぞ」

 

「ああ、これはご丁寧に……いや俗世に染まり過ぎでは?」

 

ガクガク震えながらお菓子を渡すディー。

 

「震えすぎでは……?え、僕そんなに怖い?」

 

やらかしていることを棚に上げて疑問に思うマリ。そりゃ神話の枝を取りに行くのに囮にされたり、目の前で同族殺していればそうなる。

 

「あ、そうだ。最近魂に触れる機会があってね。この前枝取りに協力してくれたからこんなの用意してみたけどどう?」

 

トム・リドルという実験材料……もとい治験者を手に入れ、一応リインのお願いで修復しているため、色々魂に関するものを作っているのだ。その結果、補修のための疑似的な魂を作っていた。

 

「あ、おいしい……」

 

「こっちは?」

 

「……ちょっと薄味?」

 

「なるほど」

 

本物に近い分だけ吸魂鬼的にはおいしいらしい。マリとしては廃棄に困っていた物なので消費してくれると助かるのである。

 

「あれ?」

 

そしてディーは思った。アズカバンでは全然食べさせてもらえず、残滓のようなものをもらうだけなのに、マリは魂をくれた。別にディーを殺しに来るわけでもない。

実は優しい?

 

ディーはちょろかった。だがその認識はちょっとやめた方がいいと突っ込む人間はこの場にいなかった。

 

「で、何で来たんだっけ?」

 

「あ、わたし達、シリウスブラック対策でホグワーツに出向になりまして……」

 

アズカバンで看守が話していたことをマリに伝える。

 

「それはちょっと面倒だなぁ……もう僕が捕まえて「駄目だよ。それはハリーの物語だから」……姉さん」

 

「ぴぃ!」

 

転移でレティがマリに後ろから覆いかぶさっていた。急に近くに来た人外の気配に変な声が出るディー。

 

「なんやかんやダンブルドアに負い目を持っちゃってるんだからここは我慢だよ。余波が来たら振り払えばいいだけでしょ」

 

「まあ、そうだね。……いや2年目のは姉さんのせいだよ?」

 

「だ……誰……?え?マリさん?姉?2人目?」

 

普通に談笑するマリとレティと困惑しているディー。

 

「ああ、ディーは初めてだったね。僕の姉さんホグワーツにはたまにしか来ないから、めったに会うことはないだろうけど」

 

「たまには来るんだ……」

 

「だから顔は知っておいてねってくらいかな。さて、ハリーの物語だし、ディメンターやシリウス・ブラックの件は介入できないとなると、いい感じに強い守りが必要か……」

 

「……え、何でわたしを見るんですか?」

 

穴が開きそうなくらいディーを見るマリ。

 

「うん。ちょうどホグワーツに来るらしいし、君がいいかな」

 

言うや否や、ディーの手をとって転移する。

 

「弟君。やりすぎは良くないからね」

 

 

 

 

「あの、ここどこ?」

 

一瞬の浮遊感の後に移動した場所は、澄んだ水が流れる小川、綺麗な花畑、真っ白な塔のある場所だった。

 

理想郷(アヴァロン)。君をこれから鍛えてホグワーツで護衛になってもらおうかなって」

 

その後、ディーは地獄を見た。

 

 

 

 

「腕はそっちに曲がらなぁあああああ!?」

 

「や……ヤダ……それ、そうやって使う物じゃな……」

 

「すごく痛いのは一瞬……?すごく痛いのは一瞬でも嫌なんだよ……?」

 

「もきゅもきゅ。あ、これおいしい」(回復)

 

「ね、ねえ。岩に括り付けて水底に沈めるのは殺人って言うボボボボボ……」

 

「はぁ。はぁ。げほっ!あぁぁぁ……身近に死を感じてもいつでも動けるようになる訓練?家にお邪魔した時から既に身近に感じてるんだけど!?」

 

「わたしは、つよい。できる。がんばれる。ドラゴンくらい……勝てるかぁ!」

 

「もきゅもきゅ。うーん。こっちの方がおいしいかな?」(回復)

 

 

 

 

 

 

 

 

Sideハリー

 

「ここしか開いてないみたいだ」

 

「残念だけど、先約がいるみたいだぜ」

 

今回は無事にホグワーツ特急に乗れたハリーたち一行。1人座っているが開いているコンパートメントを見つけて入る。

 

「寝てるみたいね。申し訳ないけど入らせてもらおう」

 

「ギリギリ入れるわね。ハーマイオニー。もう少し荷物詰めれる?」

 

コンパートメントに荷物を詰めて落ち着く一行。

 

「この人誰なんだろう?」

 

「年齢から生徒じゃ無いように見えるし、教師じゃないかしら?」

 

雑談をしながらホグワーツへの到着を待っていると、列車が急に止まった。

 

「あれ?どうしたんだろう?ちょっと外見てくるね」

 

「ロン。待って。何かがおかしい」

 

社内の灯りが消える。窓に霜が降りてくる。

 

「なんか……寒気がしてきたわね。ハーマイオニー、ひざ掛けを……」

 

声が出なかった。

コンパートメントの外に、何かが蠢いていた。

 

「ひっ!」

 

コンパートメントのドアが開かれる。

それはボロボロの布を被った何かだった。骨に皮が張り付いたような腕。顔は見えないんじゃない。ないんだ。ただ口と目に見えるだけの穴があるだけの、おおよそこの世の生き物とは思えない顔。寒い。暗い。怖い。幸せだった気持ちが全く思い出せない。

 

それはズルズルと布を引きずるようにコンパートメントに入ってくる。

 

ここには君たちが探している人物は居ない!去れ!エクスペクト・パトローナム!

 

寝ていた推定先生が急に起き上がり、杖を向けて何かを唱えると、銀色の靄のような物が杖から出てくる。ぼろきれを纏った悍ましい何かは列車から離れて遠くに行った。

 

「長男じゃ無ければ耐えられなかった……」

 

「墜落したときの気持ちになった……え、何言ってるのハリー?」

 

「長男じゃないから無理だったわ……ガク」

 

「トロールに襲われた時の気持ちが近……ドリム!?気絶!?」

 

何とか吸魂鬼に耐えたハリー。耐えられなかったドリム。

 

「君たち、大丈夫かい。ああこんなに震えて……ほら、このチョコを食べるんだ。ゆっくりでいい。……ああ、身元が分からないと安心できないか。今年の闇の魔術に対する防衛術の教師になったリーマス・ルーピンだ。よろしくね」

 

先生と分かり、チョコをもらって齧ると、気持ちが少し落ち着いてきた。

 

「僕はこの列車を見回ってくる。倒れた子も、意識が戻ったらチョコレート食べさせてあげて」

 

先生がコンパートメントをでる

 

「あ、僕も友達が気になるので……先生?」

 

先にコンパートメントを出たリーマスが固まっていた。

 

「先生何が……」

 

コンパートメントを出て辺りを見回すと、ちょっと意味わからない光景が広がっていた。

 

「どうか命だけは……」

 

「だから僕のことをなんだと思っているの?いや本当に。後絵面が酷いから頭あげていいから」

 

白髪長髪の幼女がコンパートメントの前でマリに土下座していた。もう頭を床に付けているせいで顔は見えないが、声からして泣いている。

 

「????」

 

星が見えた。銀河だろうか。無数の星が綺麗だった。ニンバス2000が集団で飛んでいる。スニッチに追いかけられているのだろうか。

 

「はっ!」

 

あまりの意味不明な光景にハリーは思考が飛んだ。

 

「いやでも、私の同族の不始末ですし……」

 

「「ディーちゃんがいるぞー!!ヒャッホーウ!」」

 

「クラップ、ゴイル、ステイ!……もういっそ吸魂鬼から助けなきゃよかったか?」

 

やたら興奮しているクラップとゴイルに、苦労人のドラコが出てきた。

 

「もう大丈夫だから。ほら頭上げてこっちおいで。よいしょっと……見せ物じゃないよ。散った散った」

 

「痛い!何で!?ちょ、カナリアが離れない!」

 

「何でだっこされているのかな?かなぁ?

 

「アイお姉ちゃん……それも嫉妬対象になっちゃうんですね……」

 

マリが通行人を散らしているその隙に、なんか銀色の靄でできたカナリアが白髪幼女をつつきまわしていた。後なんかメッチャ怖い声が聞こえた。

 

「まって、なんか吸魂鬼メッチャ俺の方見てるんだけど!?いや眼があるか知らないけど

、こっち見てるよ!?別に手出しする気配も暗い感情にもならないけどなんかガン見されて……いや増えてきた!?」

 

アーリアさんがコンパートメントの中でなんか悲鳴をあげていた。

 

「もう理解が追いつかねぇよ!」

 

ハリーは理不尽な状況にキレた。

 




ディメンター「メッチャ良質な暗い感情があって我慢できなかった」

ディー「マジでぶっ殺すぞ!?こっちにはマリさんっていう最終兵器がいるんだぞ」

なお、言うことを聞いてくれるかは半々。



次回ですが、一番星のスピカ読むのと、ワーナーブラザーズスタジオツアーに行くので多分かなり遅れます。
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