今日はスリザリンの闇の魔術に対する防衛術の初めての受業だ。
さあ、今年は鬼が出るか蛇が出るか。ドラゴンまでなら驚かないぞ。
「アーリア警戒し過ぎだよー」
「アイさん。警戒しすぎた方が安心できるんだよ」
なんたって、今マリが居ないからな。何ならルーピン先生に何か依頼されている可能性もある。トロールとタイマンとかにならなければいいが……
「別に普通のことしかしてないと思うけどなー」
「マリお兄さんは引継ぎで去年の受業で何やったかを教えているんですよ」
「ちょっと安心した」
なんだ引継ぎか。何で父さんがやらないのか……いや、仲悪かったなあの二人。
というかこの話を聞いて教室内のスリザリン生が露骨に安心している。
「何でわたしもここにいるんでしょうか……放課後だけのはずでは?」
「マリお兄さんがいないからですね」
俺に吸魂鬼が群れで来ないように防波堤で来てもらった。なんというか、リインさんだと不安なのだ。吸魂鬼に押し切られそうな気がする。
なので膝の上にディーを乗っけて受業に臨もうとしている。
そのせいでアイさんの機嫌は最悪なのだが。
「でも遅いですね。何かあったのでしょうか?何か持ってきているとか?」
教室の空気が静まる。もうすぐ授業開始時間になるというところで、マリとルーピン教授が入ってきた。マリは杖で箪笥のようなものを持ってきていた。
「ありがとう、マリ。さて、今日は教科書はいらない。しまって。」
教室の生徒が一部を覗き青ざめる。さあ、何が出る?去年は初手吸魂鬼だったぞ。
「……えっと、何で皆そんなに青ざめているんだい?」
「先生。御託は結構。何を持ってきました?レッドキャップくらいまでならソロで戦えますよ」
ドラコが切り出す。そうだな。父さんのやたら丁寧な受業とマリのスパルタ受業で分類XXXまでは戦えるようになったな。父さんは絶対リインさんにいい所を見せたかっただけだと思うけど。
「……ん?レッドキャップをソロ……?ちょっと君たちの去年の受業内容を確認したいね」
え?引継ぎしたのでは?……もしかして父さんがやった受業の内容だけ渡している?
「さて君たちは去年進みすぎている。けれども、この授業も無駄にはならないと思うよ。さて、ここに持ってきたのはボガートだ。こいつが何か分かる人は「むしろ分からない人がいないよね。去年あれだけやったし」あーマリ。助言ありがとう。……分からない人はいるかい?自信がない、とかでもいい」
当然居ない。何を連れてくるかわからなかったから各々勉強を必死にした。ある程度の知識が無いと死なないとはいえ怖いのだ。
「……居ないみたいだね。じゃあ対処方法分かる人」
「斬ればすぐ終わるよ!」
「僕だと、30m以内なら近づいて斬る方が早いね」
どこかの一番星の女と最近苦労人になってきた男がなんか言ってる。魔法を使え物騒だな。
「結界で閉じ込めて圧縮とかでしょうか?」
どこかのロリがなんか言ってる。それもそれで怖いぞ。
「もう!形態模写するんだから心の中の苦手なものを好物に変えればそれに変身してもらえるのよね?つまり、至高のロリを作れる最高の生物」
「なるほど」「一理あるな」
「あんたら、その技術とか熱意を別のところに活かせないの?」
残念美少女とスリザリンのロリコン2人の言動にパンジーが突っ込む。
まあ、無理だろう。好きだからその分野に強くなれるわけで、外したら情熱も何もかもを無くしてしまう。ただのロリコンだけど。
「一言自害しろって言えばいいんじゃない?多分リインもできるようになってるよ」
「そうなんですか?」
500年生きたボガートでも殺すのかな?去年色々なヤバいのを連れてきた人はいうことが違うな。
「あ……ばば……ばばば……」
「ディーちゃん……今は味方だから大丈夫だよ」
「今は!?」
膝の上でバイブレーションしているディーを撫でて落ち着かせる。マリ。冗談でも殺す系のことをいうのはディーのストレスになるから駄目だぞ。
でも吸魂鬼がヴォルデモート陣営に着いたら多分本当に死んじゃうからこっちにいようね。
「うーん。物騒なクラスだなぁ……一応正解だけど、『リディクラス』っていう呪文が効果的だ。一番怖い物になったボガートを面白おかしく変身させる呪文だね。一回唱えてみようか。リディクラス」
「「「リディクラス」」」
「うん。いい感じだ。それじゃあ、理論ばかりでも面白くないだろうから、1人1人前に出て実戦してみようか。」
そして実戦実践が始まった。
「「「うわぁぁぁぁぁぁああ!!!」」」
まずクラップが初めに実践したのだが、出てきたのはおばあちゃんになったリインとディーだった。そしてそれにクラップ、ゴイル、ダフネの3人が絶叫して膝から崩れ落ちた。ロリコンには厳しい見た目だったらしい。
「私おばあちゃんになったらこんな感じになるんですかね?」
「龍の心臓あるから多分500年以上は先だと思うよ……少なくとも100歳になるまでは今の姿だろうね」
「え、そもそもわたしって老いるの?変身しているだけなんだけど」
そうだった。こいつらを人類の括りで考えるのが間違ってた。
「真理は今」「私の手の中にあるわ!」「リディクラス!」
ゴイル、ダフネ、クラップの順である。ロリがロリのままでいることに希望を得て呪文を使えたらしい。
「踊ってる……えぇ……」
ロリに戻った偽リインと偽ディーがウマぴょい伝説を踊ってた。1年生の時のやつじゃねーか。
「よくできました!……いやよくできたと褒めていいのか?」
ルーピン先生は褒めていいのか性根を治した方がいいのか迷った。
「まあいいや。じゃあ次は誰に……」
こうして受業が進んでいく。ボガートは吸魂鬼になったり、水中人になったり、グリフィンになったり赤い閃光が跳びまわったり色々だった。というか過去のマリが受業で連れてきた生物やら呪文である。もうお前魔法生物学を受け持った方がよかったのでは?
ドラコの時はホグワーツ城と魔法で爆撃されながら逃げてるドラコとハリーがいるミニチュアが出てきた。1年の時のあれ、やっぱ怖かったんだ。
「今なら、できるよね。リディクラス!」
剣を抜いたミニチュアのハリーとドラコが魔法を斬り始めた。え?今ならできる、って言った?できるのこれ?
「うん。何の事件があって恐怖したのかは分からないがいい魔法だ。……いや何でハリーと君がこんなことしているの」
ドン、という音とともにマリが机に突っ伏した。ああ、そう言えば1年の時の事は黒歴史って言ってたな。ダンブルドア校長が手塩にかけて育てていたのを横からちょっかいかけてたことをすごく気にしていた。というか凹んでいた。自分がやられたら嫌なのだが、同族嫌悪しているせいで素直に謝れず、なんというか、拗らせていた。
「マリお兄さん……元気出してください」
「ほら、マリ出会ってマリじゃ無かったし!」
リインさんとアイさんが元気づけるがマリは凹んだままだった。
「えっと、次はアイさんなんだけど、……マリくんは大丈夫かい?」
ルーピン先生に促されてアイさんがボガートが入った箪笥の前に立つ。そのころにはマリも復活して壇上を見ていた。
「あー。そっちがでちゃったかー」
「僕としては嬉しいかもしれないな」
アイさんが対面したのは倒れているマリと膝を地面につけ、呆然と倒れたマリを見下ろしている、眼が虚ろなアイさんだった。2人とも今より少し幼く見える。
「アイお姉ちゃんは結構直接的なんですね」
なんか3人には分かっているようだったが、こっちは理解できていない。なんかアイさん闇落ちしてる?
「リディクラス」
花畑が広がり、その中で昼寝しているアイさんとマリになる。何だろう。ほのぼのする。その優しさを少しこちらに向けてくれないだろうか。
「ディーが離れたらね」
こわい。
「次、リインさん」
「はい」
アイさんの次はリインさんがボガートの前に立つ。
「うっ……」
正直吐かなかったのは頑張ったと思う。ボガートが変身したのは幼いリインさんだった。それはボロボロの服を着て、傷だらけで今にも死にそうだった。出血も多く、粗い呼吸で倒れている。
そんな中、マリとアイさんはリインさんに見向きもせずに談笑していた。
「そっか。まだ駄目か。うーん……連れてくるか。タイミングは来年以降になっちゃうし、いつチャンスがあるかわからないけど」
「私たちと出会わなかったリイン……なのかな」
2人は分かっているようだった。なるほど、マリが拾わなかったらああなっていたのか。メンタル死にそうなんだけど。
身近な人がこんな虐待受けててこんなに苦しんでいたとかきつい。精神にくるものがある。この状況を救ったマリに感謝だよ。
「そうですか。私はまだ怖いんですね。一人で無価値に死ぬことが。……リディクラス」
リインさんが呪文を唱えると、棺に入れられたリインさんとそれを悲しむマリとアイさんの姿にボガートが変わった。
「いやそれでいいのか?」
「あちゃー」
「教育を間違えたかな……」
完全にバッドエンドなんですけど。死んでるじゃん。そんなの無理じゃん。何一つとして馬鹿馬鹿しい要素がないんですが。
「むふー」
なんで本人はしてやったみたいな空気出してるんですかね?リインさん以外何一つ大丈夫な光景になってないんだけど。
「ええ……後でダンブルドア校長に聞こう……次はマリくん。次の授業でも使うから殺さないでね?」
教室中の注目が集まる。というか警戒レベルが1つ上がる。そして皆が同じことを考えただろう。こいつが恐れるものってなんだ?
若干不安を覚えながらボガートが変身するのを待つ。
「ああ、なるほど」
変身したのは……何だろう。白い空間?
変身したボガートを中心に真っ白な空間ができていた。範囲に限りはあるが、何もない白い空間。
「「「????」」」
何でこれでこわがると思ったんだ?暗闇とかではなく、ただただ白いだけの空間がマリが恐れているもの?
「リディクラス」
マリが呪文を唱えると、紫と緑の小さな点が白い空間に浮かんだ。そして少しだけ花の香りがした気がする。
「「「????」」」
結局誰も理解していない。
「むふー」
本人はとても満足気である。かわいい。男だけど。
あとそのむふーって何?リインさんが真似したのかマリが真似したのか。
「えっと、マリ?これなんだったの?」
アイさんが疑問に思ったのか聞く。もう君たちが理解してなかったら多分誰も理解できないよ。
「いや、私は理解できてるよ。お姉ちゃんだからね!」
なんかいた気もするけど気にしちゃいけない。
「うーん。僕が僕にならなかった世界かな?」
何を言っているのだろうかこの男の娘は。それが何で白い空間に点を付けることになるのか。
「まあ、理解しなくても大丈夫だよ。もう終わったことだから」
年末って忙しい……
次回はもっと遅れると思います。4巻で書きたいことが多いので早く進めたいところ。