悪い虹夏くん 作:匿名
「ごめん、ひとりちゃんとはそういう関係には、なれない、かな」
ああ、やっぱりだ。私なんかが喜多
「いや、嫌いになったってわけじゃないし、嬉しいんだよ?ただ……やっぱりひとりちゃんのことは友達とか仲間とかで、ギターの師匠として尊敬してて、そういう意味で『好き』になれないんだよ。」
友達、仲間、師匠。……そうだよね。
「本当にごめんね。でも、振って何だと思うと思うけどこれからも結束バンドの仲間としてさ、一緒にやっていこうよ」
喜多くんがリョウさんのことが好きなのは当然私も知っているのに、告白してこんなに気を使わせた。
私なんかがお母さんや虹夏くんに勧められた化粧だとかお洒落な服を着ただけで綺麗にできたと思い込んで、告白して……そんな私が嫌になる、吐き気がする。
「……本当に、ごめん」
謝らなきゃいけないのは私のはずだ。
「いえ、私なんかが喜多くんの時間を取らせてしまって申し訳ございませんでした」
思ったよりもすらすら言葉が出た。
喜多くんが目を見開いていて、視界がぼやけていたのに気づいた。優しい喜多くんが私にまだ話しかけていたみたいだけど、私なんかにはもう聞こえなかった。
私は逃げ出した。
逃げるうちに星が微かながら見える夜になっていた。
もはやどうでも良くなったのと、泣き疲れていたせいか、涙は枯れていた。
こういう失敗した時はあの時みたいに、……喜多くんに褒められた時みたいにギターを弾いて安心したくなるけど、その気にもなれないし、そもそも持ってすらいなかった。
幻のように通りすがる人も、カップルも今の私には何のダメージを与えなかった。本当に幻なのか、それともHPがゼロになったせいか。
「あっ」
思ったよりも動いていなかったのか、それとも周り巡ってここに来たのかはわからないけど、虹夏くんに声をかけられたあの公園に来ていた。
私が転がりだしたところが、止まったときの最後のところになるんて。
ブランコに腰を掛けて、上を仰いでみたけど、星は雲に隠れて見えなかった。
ぽつぽつと雨が降ってきた。
「あ!」
「ぼっちちゃーーんッッ!!!!」
「良かったぁ、探したんだよ?」
え?
「……おーい?」
「……」
「……!」
あの時みたいだった。
「どうして泣いてるの!?」
「……何かあったんだね」
こっちにおいでよ、と言わんばかりに手を広げてくれた虹夏くんは天使のようにも見えた。
「……大丈夫だよ」
小柄なのに案外筋肉質な虹夏くんは私のことを優しく抱き締めてくれた。
安心したからか、枯れていた涙ももう一度溢れてきた。
「辛いね」
優しく頭を寄せて背中を撫でてくれる。
「鈍感な喜多くんが悪いんだよ」
確かにそうだと思ってしまった。
だけど、だけどきっと私が悪いし……リョウさんのことが好きなのはわかってたし……
「でも、ジャージしか着てなかった時に比べるとお洒落もするようになったし化粧もして……とっても可愛いと思うよ」
リョウさんか虹夏くんのことを好きなのは知っているのに。
「喜多くんは本当に勿体ないことしたなぁって思うよ」
「慰めてもらってて悪いんですけど、私なんかみたいな」
「ぼっちちゃんは優しいからそういうふうに考えるんだよ」
そんなことはないです、と言う事よりも虹夏くんの優しさにこのまま全てを委ねたくなる。
「でも、そういうとこも──」
「──ねぇ……なに、してるの?」
雨足が強くなってきた。
なんで?
なんでぼっちを抱き締めてるの?
「リョウ?」
振り向かずに、虹夏が答えた。
「おかしいよね?なんで抱き締めてるの?ねぇ?」
「リョ、リョウさん……?」
……今日告白してきますと言っていたぼっちの顔は化粧が崩れて酷いことになっていた。
ぼっちは多分、いや、何度も話したし、その気は絶対にないだろう。混乱しているところを優しくされただけなんだ。そうと信じたい。
でもなんで?
「虹夏、こっち見てよ」
呆然としたぼっちに一言離すよ、と言って虹夏は離した。
「え?」
「なんで?」
こっちを見てくれた。
「どうしたの?」
「なんで笑ってるんですか?」
ニッコリ、そんな擬音がするようなぐらいに素敵で、雨なんかどうでも良くなる笑顔をこちらに向けて。
なんで笑ってるんだよ。
続きは書いてくれ……。
続きを書くとしても結構後になりそうなんであんまり期待しないほうが良いかも。