「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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キャスト
・男子生徒(15~16)
・星野アクアマリン(15~16)
以上。

舞台設定
・高等学校、教室の一角

時間設定
・午後、昼食後の昼休み



「星野、お前転生したらどうする?」

 

「星野ーお前転生したらどうするー?」

 

「……どうした、藪から棒に」

「うちのお師匠さんの課題。書けるときに色々手を出しとけって色々出されててさー」

「お前の師匠って……あぁ、あの脚本家の?」

「そうそう。あ、そういやこれ預かってたわ。ほれ五反田監督が飲み屋に忘れたスマホ」

「あの人またやったのか……わかった渡しとく」

「あと伝言『もう酒飲むのやめろ。てめぇのはともかく演者の情報漏れたらどうすんだ』って」

「聞こえないフリするだろうけど伝えておく。それじゃあな」

「おーう……いや待て待て!?」

「チッ」

「舌打ち!? お口が悪ぅございますわよ星野アクアマリン君!?」

「お前と雑な妄想を語り合う趣味はない」

「こっちは雑な妄想をまともな台本にするためにネタがいるんだよ!」

「知るか。他をあたれ」

「あたった結果お前に辿り着いてんだよ……転生自体よくわかってない奴が殆どで、そうじゃなくても現代日本でって言ってんのにどいつもこいつもチートだハーレムだショタバイキングフリータイムだの適っ当で困ってんだよ~」

「大人しく最後の奴を深掘りしとけ。ディープで特殊な世界観が開けるぞ」

「サイコホラー用に深掘りはしておいたよ! でも今回は浅瀬でまじめなのが欲しいんだよ。ほれ、この間の医療系のやつみたいなの!」

「……あれは知り合いの医者からそういう話を聞いてただけだ」

「それを実体験みたいに話してたろ? そういう役者の想像力を頼りたいのよぉ、頼むよぉDr.アクアマリーン!」

「二度と使うなその呼び方」

 

「ほら、助けてくれたらこのインターネットウミウシの図解本やるから!」

「そんなマニアックな本でどうして俺が頷くと思った……そもそもお前なんで陽東の一般科に来たんだよ。作家やるなら専門的な所の方が勉強になるし、こういう相談にのる奴も多かったろ」

「そりゃ師匠がな『てめぇの頭じゃ大したトコ行けねぇから大人しく近場の陽東でネタとコネ集めとけ』とか失礼な事言いやがるから」

「あぁ……いや他人をナチュラルにネタ帳扱いしてるな」

「まぁ俺が本気出せば? 受験なんてどうとでもなるが弟子としちゃ師匠の顔を立てねぇとな~」

「へー。ところでお前、受験前の偏差値いくつだった?」

「フッ、星野君や……人間というのは数字なんかで簡単に計れるほど単純ではないのだよ……」

「じゃあ質問変える。お前この前のテストどうだった?」

「聞いて驚け! 赤点全回避だ!!」

「うん驚いた。正しい助言をしてくれる師匠で良かったな」

「テストに挑むときに必須なのはやっぱり六角形のえんぴつだよな!」

「事前の勉強だろ。運に全幅の信頼を置くな」

「四択問題なのになんべん転がしても六しか出ないもんだから適当に埋めたのが功を奏したぜ」

「えんぴつ関係ねぇじゃねぇか。運も良いのか悪いのか」

「バッカ、俺の運は大したもんだぞ。この間なんかたまたま拾ったタクシーの運転手が、探してた噂のラーメン四天王だった!」

「なんだそのこってりしてそうな四天王」

「せっかくだからオススメの定食屋教えてもらった」

「そこはラーメン屋教えてもらえよ」

「そこのラーメンが美味ぇ美味ぇ。チャーシュー分厚いのに味しみててさー」

「そこまで行ったならむしろ定食頼めよ。失礼だろラーメン四天王に」

「いや? 一緒に食ってたら『君のおかげで初心を思い出せたよ』とかなんかスッキリして帰ったから大丈夫だと思うぞ」

「名の通りキャラが濃ゆいな……話してたらラーメン食いたくなってきたな」

「その店近いから帰りに寄ろうぜ。役者で稼いでる星野の奢りな!」

「ふざけんな俺の財布は常に火の車なんだ。ネタ出し頼むならお前が奢れ」

「見習い作家のさらに卵に給料出ると思ってんのか? こっちだって雀の涙のバイト代やりくりして取材に駆け回ってんだ」

「……」

「……」

「「最初はグッ、じゃんけっポイ!!」」

「っっしゃ」

「ぎゃああ俺の雀の涙ー!!」

「ゴチになります。半ライスと餃子も頼むぞ」

「追加注文すんなおねがいやめてぇ……!」

「じゃあ放課後にな」

「だぁーちくせうぅ…………逃げんなァ!」

「チッ」

「舌打ち二回目! 奢ってほしけりゃちゃんと助けろよ!?」

「助けてもラーメン一杯かぁ」

 

「まじでギリギリなんだって……俺だってできるなら造詣が深い人間に聞きたいけど、流石に転生したことある奴知らないからイメージ掴みにくいんだよぉ」

「……そりゃそうだろうな」

「ちなみに転生者に聞いてみたいこと一位は転生してから授乳された時どんな気分だったか!」

「よりにもよってそれか!? いやその……そもそもイルワケナイだろ転生者ナンテ」

「わっかんねぇぞ~? 実はそこらへんに二、三人居て、転生させた神様もその辺プラプラしてる可能性は誰にも証明&否定できんからな!」

「……神様、ねぇ。悪魔の証明より厄介な暴論だな」

「いた方が面白いから、俺はいる方にチャーシューを賭ける!」

「面白くないし自信満々に微妙なもの賭けるんじゃねぇよ」

「助けてくれよぉ偏差値七十の頭を貸してくれよぉ」

「人は数字で計れないんじゃないのか……ハァ、手伝ってやるから縋りつくな離れろ」

「マジかサンキュー! お礼に俺のラーメンから小ネギ持っていく権利を贈呈!」

「いらん。で、具体的に転生のどういうことを聞……考えてほしいんだよ」

 

「欲しいのは転生してから小学生くらいまでにやった失敗だな」

「主人公の設定は小学生なのか?」

「うんにゃ高校生以上の男って制限。子役の調達は厳しいから美形なら年齢誤魔化せる年代のを素早く書ける作家の方が……いいや。とりあえず主人公のバックボーン固めておきたいんだわ」

「……失敗以外で出てる案にはどんなのがある?」

「待ってくれ他の奴から絞り出したのがメモに……え~と『生意気だった同級生を今度は言い負かす』『友達百人チャレンジ』『大人の知識活かして天才児で有名になる』とかだな。転生を勘違いしてた奴のもあるけど」

「そうか。それ全部失敗に出来るぞ」

「嘘ぉ!?」

 

「まず『同級生を言い負かす』とかそれこそな」

「えーそうか? 威勢だけで謎の理屈押し通してた奴とかを理詰めでわからせてやりたいとか結構思うだろ……あんの腹立つ陰険ドブピンク狐がぁぁ……!!」

「過去掘り返して勝手に沸騰するな、温泉掘りか。そうだな、お前がその、ドブピンク? を今の知識持ったまま過去に戻って言い負かすの想像して見ろ」

「想像して見る。見た」

「どこまでやった?」

「泣くまでやった」

「おめでとう、黒歴史確定だ」

「なんで!?」

「冷静に考えろ。十六まで生きた奴が年齢詐称して小学生名乗って子供泣かしてる状況どう思う」

「……うへぇキッツ。これ転生だと精神年齢が十六プラスその時の年齢だと思うと更にキツイ」

「精神年齢というより合計年齢の方が正しいかもな。十六で転生してから十六歳になって合計三十二になっても社会経験も親になった経験も無かったら精神的な成長は望み薄だろ」

「はー、確かに合わせて何十年も生きてるのに年相応の経験積めてない人間とか、転生して無くても残念だもんな。いや愛嬌のあるクズならワンチャン? いやバランスがムズいしな……」

「残念とか言うんじゃねぇよ。その方向で行くのか?」

「……いや後悔の方が良い。理由が何であれ中身大人が子供泣かせるとか死ぬほどダサいしな!」

「ゴフっ……」

「どうした大丈夫か!?」

「思いの外、投げたブーメランが鋭利でな……」

「意味は解らないが苦しみに溢れている!? 昼飯でもあたったんか!? 保健室行くか!?」

「必要ない。そうだとしても自分で診るからいい」

「すごいなお前! 前世は医者かドクターフィッシュだったん?」

「……角質啄んだ経験はねぇよ」

「そんなもん胃にぶち込んだらそりゃ腹壊すだろ正気か!?」

「ぶち込んでねぇんだよ。ドクターの語感だけで脊髄反射の二択を出すなって言ってんだ」

「ならドクターイエローの生まれ変わり!」

「点検用新幹線じゃねぇか。せめて生物の範疇に収めろ」

「命は万物に宿るものだぜぇ……」

 

「次は『友達百人チャレンジ』だったか?」

「おう。でもこれ失敗するか? 歳食って上げたコミュ力ならもっといろんな奴と仲良くなるだろ」

「元から多いことを前提に話すなコミュニケーション能力っていうのは年齢とともに上がるとは限らないし身を置いた環境によっては必要最低限の会話だけで済ませるからむしろ低下するなんてことは自然だそうでなくても培った話術が子供に通じないなんてザラさらに言えば友達認定なんて一々しないんだから指折り数えたりなんて誰もしないだろ」

「急に饒舌になってどうした?」

「とにかくそう簡単な話じゃないんだよ。自分は大人だ、と思って同級生と接すると最悪だ。その侮りを幼い子供は敏感に察する」

「察しちゃって『なんか俺を下に見てる嫌な奴』認定をされちゃうのか」

「子供は子供扱いされるのを毛嫌いするからな。それでも前世の経験から子供でもいられないから結局、無理せず関わるのを最低限にした方がお互いにストレスを感じずにすむ」

「子供の相手してる大人、の感覚が抜けないわけだ。それでも友達にはなれるもんじゃないかね」

「……話題がな、合わないんだよ」

「話題?」

「前世の子供の頃と混ざりだすと厄介だぞ。長寿アニメの映画の話してると思ってたらリメイク映画の話だった、とかな……最終的に同級生より教師の方が話題が合うとか間々あっ、る」

「ジェネレーションギャップが直撃して『十年前とか最近だろ』とか言う五反田監督みたいなおっさん臭が言葉から漏れ出ちゃうのか」

「加齢臭吐き出すようなマネはしてねぇよ一緒にすんな……!」

「えぇ、なにぃ……? さっきから突然苦しんだりキレたり様子がおかしいぞ? やたら解像度の高い転生者エミュレートといい……お前、まさか」

「っ」

「転生者の役に入り込むぐらい真剣に考えてくれてるんだな! 星野はやっぱいい奴だなー! メソッド演技って奴か?」

「お前、五反田監督の親戚だっけ?」

「遺伝子情報に縁もゆかりもないぞ。なんだ藪からボウリングに」

「その投球はガーターだから忘れろ。他には笑いのツボだな。例えばダジャレとか替え歌とか、ノリが合わなくて辛いぞ……辛いと思うぞ」

「ハイハイ、やたらと残酷な替え歌とかやったわ! なんであんな面白がってたんだろうな!」

「新鮮だったからだよ。幼少期は自己を確立するために感受性も高い分、笑いの沸点が低い。同じ笑いを何度も感じたくて飽きるまで何日も繰り返したり、かと思えば瞬時に飽きたりな」

「なんか身に覚え有るわぁ」

「たまにならいいが常にそうだから次第に乾いた笑いしか出なくなるんだよ……おもしろいってなんなんだろうな……」

「ネタに行き詰った芸人かよ。そういや笑いのネタも下ネタも歳食って変わった気はするな。うんちんメインで笑ってたのが、今やちちしりふともも肩甲骨で盛り上がってるもんな俺たち」

「お前と下ネタで盛り上がった記憶が全くないが……肩甲骨?」

「この間のミドジャン、寿みなみちゃん最高だったぜ……うちの芸能科にいるんだよなぁ。なんとかしてあの神仏のような肩甲骨に二礼二拍手一礼したい。具体的には星野の妹経由で」

「神仏から被告人は絶対に妹に会わせないという判決が下された。接触禁止令の発令だ」

「ハハハ冗談半分で言っただけだよそんなこと言うなよ裁判長!? 弁護士を呼んでくれ!」

「黙れ被告人。本気と下心で半分半分の有罪だろうが」

「なんだと! 下心なんて七割五分ぐらいしかないわ!!」

「結構な打率じゃねぇか」

「俺の欲望はメジャー級!」

「残念ながらドラフト落ちだ。三軍から努力しろ」

 

「まあジョークはさておきだ」

「接触禁止はジョークじゃないけどな」

「おのれシスコン。んで『天才児やりたい』もダメなのか」

「ダメだな。良くて三日天下並みの短期間だろ。お前が転生したとして陽東より良い所に行くために子供の頃から勉強するか?」

「そりゃお前ー……しねぇな。小中の勉強またやるくらいならその分シナリオコンクールなりに送れるもん書く。あとは好奇心旺盛な子供のフリしてネタ集めしまくる」

「目標が定まっててなにより。で、勉強しないから忘れて今よりも成績が落ちる。六角形えんぴつでも赤点全回避はできないかもな」

「ぐぅ」

「天才児、なんてやろうとしたって才能や実力が伴わなければ何をするにも『子供にしては』って枕詞が付く不気味な子供になるのが精一杯」

「枕詞を打ち消せなけりゃ二十歳超えればただの人、か」

「そもそもある程度育てば前世の知識や経験なんて有ってもさして役に立たない。近くに転生関係ない本物の天才児なんて居ようものなら薄いメッキが浮き彫りになるだけだ」

 

「えぇ……じゃあ転生で最後に残るのって生涯年齢詐称してる気分しかないんじゃね? しかも本当の年齢なんて言ったところで誰にも信じてもらえないから相談相手も吐き出す相手もいないし」

「……そうだな」

「辛ぇ……よく考えると転生って全ッ然いいもんじゃないな! 想定できるうま味に対してこのデメリットの数よ。まじめな奴ほどフィルソバッ! ん? まともな奴ほど、だっけ?」

「未熟さでしでかす失敗をしなくて済むのは十分なメリットだと言えるけどな。どちらにせよタフボーイじゃなくちゃまともでいられないのは確かだ」

「なのにどうして妙に人気なんだろうな転生ものって?」

「子供に戻りたい、やり直したい……叶うなら誰もが憧れるような環境で夢を叶えたい……そんな変身願望は多かれ少なかれ誰しも持ってるもんだ。それを適度に刺激してくれるなら需要はある。ガッツリ食いたいって時ちょうど目の前にラーメン屋があった、程度のことだ」

「ほーん。みんな人生上手く行ってないのかねぇ」

「人生に不満も後悔もない奴の方が希少だろ」

「それもそうかぁ。そーだなぁー……そのなんかこう色々と鬱屈してそうな感覚を通勤ラッシュ並みに一言へ押し込めてテーマにするなら」

「無理やり詰める気満々だな。そんな都合のいい……」

「そうこれは……愛だ!」

「……愛?」

「主に己が人生への愛! つまり転生ものの視聴者は愛の摂取不足に陥っている! 心の栄養不足!」

「……」

「もっと言えば転生者は愛と笑いと成功と、ついでに自己肯定感に飢えてる鬱病患者だな!」

「……かもな」

「もし転生者見つけたら優しくしてやろうぜ……」

「そーだなー」

「具体的にはチャーシュー一枚奢ってやろうぜ……」

「お手頃だなお前の優しさ」

「チャーシューがどれだけ貴重かわかってねぇだと!? それでも男子高校生か!?」

「知ったこっちゃねぇよ」

「豚肉の価値を知らぬ愚か者め。ラーメンからぁチャぁーシュぅーを献上せよぉ」

「何キャラだよ鬱陶しい。むしろお前がチャーシューよこせ」

「かーっ! お前転生者じゃないから絶対やらねー!」

「……フッ、そうだな」

「よし、とりあえず題名は『転生したら鬱になった』にしとくか!」

「そんな安直でいいのか……ああそうだ最初の質問だがな」

「あん?」

 

 

「『ロクなことができないから、死んでもごめん』だ」

 

 

 

 

「妹さんのデビューおめでとう星野! ところでお前、妹に隠し子デキたらどうやって隠す!?」

「デキる前提の話じゃねぇか本気でやめろ縁起でもない……!」

 

 

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