「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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キャスト
・男子生徒(16)(備考・花屋の常連客への疑いは保留したままド忘れした)
・星野ルビー(16)(備考・ただの兄なら×、せんせなら兄でも◎)
・星野アクアマリン(16)
以上。

舞台設定
・高等学校、自販機前

時間設定
・昼休み


「いい加減にしろよルビーちゃん……!」

 

 

「ボツ」

「おうおうおういい加減にしろよこの全ボツアイドル風ドルオタ編集が! 一体どんな奴だったら納得すんだよ、もう引き出しから春夏秋冬全コーデ吐き出しきったぞ!?」

「吐き出した結果が『才能をすすり上げる若作り白バラ妖怪、女難アクセサリー付き』って何!? 私とアクアが妖怪から生産されたことになるじゃん!」

「お前らの生地は妖怪原産で十分じゃいメスガキ妖怪ヒトマカセがよぉ!」

「かっちーん! それ言うならそっちはネタ集め妖怪じゃん! デートで女装してフラれた分際で!」

「いま完全無欠に無関係だろうが!? その情報がどういう経路でルビーちゃんに辿り着いたかキリキリ吐けい!」

「ほらそうやって痴態の拡散よりもその方法に興味持っちゃってるじゃん! もう芸能科の女子みーんな知ってるからね! 女子高生の情報網なめんな!」

 

「く、不知火が次の勝負に『リップの味で格付けチェック』なんて提案をしたのはそのせいか!」

「リップって食べるものじゃないし!? フリルちゃん巻き込んでなんの戦いしてんの!?」

「我がライバル不知火との歴戦の決闘は……十戦二勝二敗六分! より愉快だった奴だけが栄誉を勝ち取るのだ!」

「歴戦ってわりに少なっ!?」

「仕方ねえだろ大繁盛売れっ子女優だぞ! 優先順位も同クラ同性なお前らの方が上じゃい!」

「ライバル名乗ってて悲しくならない!? それに両方滑ってるのが六回あったってことじゃん。引き分けの方が多い勝負って何!?」

「荒唐無稽も経験しとくに損はないんだよ!」

「経験経験って、作家さんならご自分の想像力だけで脚本書き上げたりしないんですかぁ!?」

「言ったな言いやがったな作家の地雷を! それが出来りゃ苦労はねぇよ! 想像力オンリーでゼロイチから最終稿へ踏破なんて、ドームライブ級だって解ってんのかぁん!?」

「もう得意の観察力で芸能記者にでもなった方が上手く行くんじゃないー!?」

「『ギリギリ嘘じゃないチキンレース』じゃ精々二週間しか記憶に残らねぇだろうが! こっちは百年後まで残る名作書いたるんじゃい! 方針百八十度転換して嘘で上り詰める気満々なアイドルには解らん拘りだろうがなぁ!」

「ぷぷー! 嘘大好きなくせに嘘吐く才能に見放されまくってる人の言葉とか聞こえませーん!」

「かぁー! 嘘大嫌いなくせに大法螺吹きの才能限界突破してる人は言うことが違いますなぁ!」

「はぁぁぁ!?」

「あ゛ぁん!?」

 

「……もう『冷たい』が並ぶ時期か。新作だけ試して戻るか」

 

「お兄ちゃんも言ってやってよ!」

「缶コーヒー買って逃げようとすんな星野ぉ!」

「意図に気づいたんなら見逃せ妖怪ども……なんで言い争ってるんだお前ら」

「ん!? あーそれはそのだなー?」

「コレが女子高生主役の脚本書いてきたからちゃんとそれっぽいのか相談されてたの」

「そ、ソーソーソナノヨー! いや誰がコレだ歌唱力アレアイドル」

「過酷なレッスン重ねてメキメキ上手くなってますぅ! 自称古参ファンならその差も判らないんですかぁ!?」

「お前もMEMもまだまだ有馬に追いついてないだろうが。合わせようと抑え気味だぞアイツ」

「確かに去年の夏よりはずっと上手くなってるけど、ソロパートになるとちょいちょい不安定なんだよなぁ二人共」

「突然のガチ批評ぉ」

 

「人のことどうこう言う前にキミの方はこの一年で成長とかしてんの!?」

「甘く見てもらっちゃ困るんだよなぁ! この一年で得た経験値と友好を結んだ人数たるや……一々数えてないから数値化しろと言われたら超困るぜ!」

「作家としての実績で答えたらぁ? 放送された話の視聴率とかー再生数とかぁ」

「この間も五反田監督から解像度やたら高い人物造形よりも突然挟むシュールギャグの急な落差加減しろって指摘されてたよな?」

「兄妹の一糸乱れぬ激辛コンビプレーやめろぉ!」

「甘く見るなと言われたからな」

「苦みもえぐみもマシマシだな畜生!」

 

「それより追試は大丈夫だったのか留年予備軍ども」

「私にかかれば余裕だよね! どっかのえんぴつコロコロ男子と違ってー!」

「満了退役、進級確定よ! 単に赤点とったアイドル様とはくぐった戦場の数が違うもんでねぇ!」

「五十歩百歩ってキミみたいな話だよねー! 何度も追試受けるバカなだけじゃん!」

「目糞鼻糞を笑うとはこのことですなぁ! その油断がお前を追試の追試へ転げ落とすのだ!」

「天に唾す量を競い合うな五十歩の目くそと百歩の鼻くそ」

「黙ってろ! 追試の地にも辿り着いていない耳くそ徴兵免除の分際で!」

「私たちに割り込みたかったらこの領域にまで達してからにしてよね耳くそ!」

「誰が耳くそだ。達したら恥なんだよその敗残兵の復活戦」

 

「まぁ、無事に追試も終わったし新しい年の開始五秒前って感じするよな!」

「年明けに振る会話じゃないそれ? 年度末だよ今」

「年末年始はデスマーチ佳境で地上にいなかったんだよぉ……!」

「年明ける瞬間にジャンプした奴みたいだな」

「地獄までジャンプしてた魂魄が七草粥食ってようやく戻って来たんだよ……あんなに粥を美味いと思ったの人生初だったわ」

「時節のものはちゃんと食べる家庭なんだな」

「けど年越しそばもおせちも食った記憶がないんだよ……俺ちゃんと摂取してた?」

「知ったこっちゃねぇよ」

「私たちは美味しくゆっくりいただきましたー! ねぇねぇ羨ましい? 羨ましい?」

「芸能人としては喜ぶことじゃないけどな」

「おのれ、おのれ! 今年の年末はゆっくりそばもおせちも食えずに忙殺されるよう呪ってくれる! 年も越してないのにあけおめことよろを連呼するハメになるがいい!」

「大成功の年末進行じゃねぇか。悔しがるのか成功祈るのかどっちかにしろよ」

「人を恨むのがっかりするくらい下手だなぁ」

 

「それにしてもお前ら、目を離した隙に妙に仲良くなったな」

「仲良くなってない。こんな嘘とか本当とかどーでもよくなるようなノリ任せ人間分析器!」

「仲良くないと許されない罵倒をするな」

「ああそうですなぁ。本気出せば誰でも騙せて道具みたいに操れるってクソガキの傲慢かましてる無邪気イキり仮面娘とか仲良くねぇよなぁ!」

「お前はお前でルビーが推しなんじゃなかったのか……反転アンチにでもなったか?」

「推しであっても有難味なんざ飲み飽きたわ。自販機前で会えるアイドルだぞ」

「まぁ、どう肩書つけても同じ学校の同級生だからな」

「『私色々ありましたフレーバー』は星野から散々嗅がされてるから鼻慣れてるし、利用する気に満ち満ちてるのも舌がサボテン製なのかってくらい会話がトゲだらけなのも思うところはない」

「思うところがある文句の列挙だな」

「それよりも、最近ボツボツボツボツ言うのに味占めたのがクッソ腹立つ!」

「作家さんならこれが分かりやすいじゃん」

「ボツの苦しみ解らねぇか配信主体のアイドルグループよぉ!? せめて表現だけでも煙らせとけよ炎上してぇのか!?」

「大丈夫! キミだけへの曇りなき特別ファンサービスだから!」

「特定のファンだけに塩対応サービスするんじゃねぇよトップアイドル志望が!」

 

「……一応、念のために聞くがお前ら付き合」

「「それは絶対にない」」

「無いとは思ったが息ピッタリに否定されると不安になるな……」

 

「ちょっと待って!? 私はともかくなんでキミからそんなこと言われなきゃいけないの!?」

「まずそういうとこだよぉ!」

「アイドルだよ私!? 付き合って他のファン相手に隠れてマウント取りたいとか思わない!?」

「付き合うメリットにそんな下世話なもん挙げるなアイドル」

「……仮に付き合って万が一そのまま上手く行ったらロングシュートゴールインするだろ?」

「上手く行ったらって……結婚したいと思ったから付き合うのが普通じゃないの?」

「……まだしばらくはそのままでいいぞルビー」

「その結果、この星野(シスコン)をお義兄さんと呼ぶ可能性が発生するのは……控えめに言って地獄」

「手持ちの辞書に『控えめ』を書き足せ」

「あー……」

「お前は辞書で『気遣い』を引いてこい」

 

「ルビー、お前が誰と付き合おうと口出しするつもりはない。こいつだけは止めとけ」

「一瞬で矛盾してるじゃねぇか」

「大丈夫だよアクア、天地がブレイクダンスしたってあり得ない」

「こっちも言い切りやがったな失礼兄妹」

「珍獣と恋愛とかしないよ。あり得ない」

「あり得ないを二回言いやがった! 俺のどこを見て珍獣分類しやがった!」

「顔」

「おのれルッキズムに溺れる沈殿物が!」

 

「珍獣認定は妥当だろ。最近校内で被ってたカツラの種類言ってみろ」

「スキンヘッド、銀杏髷、ポンパドゥールからの昇天ペガサスミックス盛り……」

「毛髪量が急上昇してる! ていうか校内!?」

「変な格好した奴が学校歩いてたら具体的にどういう陰口囁かれるのか試してたんだよ。意外と聞こえる範囲では言われねぇのな」

「『またなんかやってる』とか『リアクションするとネタにされるぞ』って聞こえたぞ。お前の奇行にもうみんな順応してんだよ」

「なんてことだ。これがクラス単位倦怠期という奴か」

「聞いたことねぇよそんな造語。見た目派手なだけのボケなんてすぐに飽きられて当然だろ」

「むぅ、最初に女装なんてハードル高いのやったせいで感覚マヒってたな。控えるか……待てよ? この要領で『背景で奇人変人が歩いてても誰も気にしてない』系のリアリティが出せる……?」

「キミのせいでもうリアルそのものだよ」

「むぅ、リアルってずるいよなぁ。何が起こってもリアリティがないって言われないんだもんよ」

 

「その代わり物語性も何もあったもんじゃないけどな。なんの脈絡もなくロクでもないことが襲ってくるぐらいならリアルさなんてなくていい」

「……ホントそうだよね。安心してよお兄ちゃん、目標を達成するまでは恋愛とかする気ないし。ほら私アイドルだから!」

「……そうか」

「特にこんな面白いかそうじゃないかが人生の全部な老け顔とか候補にも挙がりませーん!」

「けーっ! こっちこそ一歩間違えたら兄が恋愛対象になりかねん童顔なんざ願い下げじゃーい!」

「フィクションと現実が混線しててカワイソー! 兄妹で恋愛とかするわけないじゃん!」

「お前ら見てるとマジで混線しかねないから忠告してんだシスコンブラコンDNA! お前の理想の男性像、ほぼ歳食った星野じゃねぇか!」

「違うし。私の理想は、クールなつもりだけど優しいからついバカ正直して反省しちゃう可愛い男の人」

「可愛い取り除いたら星野じゃねぇか!」

「どういう判定だ」

「それプラス明るい人」

「なら星野じゃあねぇな!」

「判定に異議を申し立てる」

「「却下」」

「そんなところで意見を合わせるな」

「対する兄貴の好みは煮詰めたらほぼ今のB小町かアイじゃねぇかよ! 苦境でも泥臭く輝く童顔!」

「やめて! 自分の兄の好みとか深く考えないようにしてるのに!」

「どさくさ紛れに俺をおちょくりたいだけだなお前ら?」

 

「そっちこそどーせお姉さんへの初恋引きずりまくってるんでしょ! 彼女欲しいとか口だけで全然本気じゃないじゃん!」

「ソンナコトアリマセンー! 常に本気で空転してて何一つ噛み合ってないだけですぅ!」

「その方が虚しいだろ」

「本気がどうとか言うより、俺の好みは年上の元気いっぱいなお姉さんなわけよ!」

「うーわぁ聞いてもないのに語り出した―。それで肩甲骨がーとか言うんでしょ?」

「そんな贅沢言うか。最低限俺のノリについて来てくれれば相手に過度な高望みなんてしない」

「贅沢で過度な高望みをするな」

「最低限が最高難易度じゃん!」

 

「つーわけで俺のノリに追いつく気もない小娘なんぞ、推しにはなれど恋愛対象にはならんわ。あぁんしーんしーてねぇー!」

「ぬわがぁ……殺意湧かせる煽り顔ぉ……! 誰が小娘だ同い年!」

「俺の方が誕生日早いですぅ!」

「うわぁ……一年もない差で年上ヅラとか。今時小学生でもやらないし真面目にドン引き……」

「そんな蔑んだ目を女子から向けられようが、俺は自分を曲げな、曲げ、まげぇ……!」

「もう折れ目ついてるだろ。一週間ぐらいしか違わないんだから早く曲げとけ」

「おん? 俺の誕生日お前に話したことあったっけ?」

「……しただろ。結構前に」

「そうだったっけ? まぁ俺は星野の誕生日覚えてないけどな! ルビーちゃんのは覚えてるけど!」

「じゃあ覚えてるだろ」

「そういやお前ら、双子だった……!?」

「本気で忘れてたみたいな顔!?」

「だってお前ら、同い年感が微妙にないんだもんよ。星野はちょいちょいジジ臭いし、ルビーちゃんは頭でっかち系悪ガキ感増してるし」

「変人臭の化身にジジ臭いとか言われる筋合いがない」

「この間、お前ら両方のファンな奴に双子だって教えたら、同じような理由で驚愕してたぞ」

「……それは隠してないんだけどなぁ」

「……まぁ、活動も違うし双子売りしてないしな。そもそも俺たち自身の認知度が……まだな」

「そっかぁ……ファンの人なのになぁ……」

 

「ガチ目の落ち込み……!? これから! 俺たち全員これっからだから!」

「そうなのかなぁ。目の前の古参ファンすらガチ恋勢に沈められてないのに」

「毒沼に突き落とした数でアイドルは決まらないだろ」

「大丈夫大丈夫! 俺もこいつもガチ恋底なし沼にふくらはぎまで浸かってるから首まで沈むのは時間の問題モーマンタイ!」

「大問題だろ。今後も応援するが毒沼からは足抜けするぞ」

「そっか……わかった。ガチ恋勢になったら全力でフってあげるね!」

「じゃあならねぇよ!? じゃあ! なら! ねぇよ!」

「沼からもう一人脱出したな」

「『お兄ちゃんと比べると……』って微妙に理由を濁してフるね」

「友情が沈没する断り方をするな」

「だったら俺は『兄貴がシスコンな女はちょっと』って具体的に返り討ちしてやらぁ!」

「逆さにして首から上だけ沼に沈めてやろうか?」

「はぁー!? アイドルと付き合える微かなチャンスを自分から不意にするとか何様!?」

 

「こいつをどうしたいんだよガチ恋沼突き落とし勢……お前もお前で今日はやたらにヒートアップしてないか。様子がおかしいのはいつものことだが」

「生まれて初めて自分の恋バナしたからテンション上がった。いつも他人の話ふくらまし過ぎて、俺のターン一度も来ないで時間切れ延長なしだったからな」

「ちょっと悲しくなる理由やめて。気を遣う」

「そう、あれは忘れもしない十歳の秋……」

「テンション上がりすぎて自分から勝手に語り出したぞ」

「この調子で延長戦始めたから誰も聞かなかっただけじゃん。で、それ長くなる?」

「なんやかんやで姉ちゃんに彼氏が出来て、吹っ切れかけた二週間後に別れたこと愚痴られた」

「……うわぁ」

「短くまとめたな。色んな意味で」

「その後も失恋敗走吹っ切れそうって所で毎度毎度……恋愛観とかその他諸々、なんかもうどうでもよくなった」

「思春期に致命傷喰らってるじゃねぇか」

「酒飲み始めてからは無限愚痴絨毯爆撃からの酔っ払い無限ループしやがるし……外で飲んだくれる度に未成年呼び出すんじゃねぇよ車持ってる奴とか呼べよ……!」

「苦労する身内がいるって大変なんだねぇ」

「そうだな。共感してる」

「どーいう意味ぃ?」

 

「でも共感は……そうかもね」

「ルビー?」

「色々言ってごめんね……」

「急にどうした」

「ルビーちゃん?」

「それ私も経験ある……! すぐ女の子引っかけて長続きしてなくて……それを看護師さんの噂から知らされてぇ!」

「なんかよく解らないが、解ってくれるのかルビーちゃん……!」

「痛いほど、痛いほど解るよぉ! 私たちは……友達だよ! 一生!」

「うぅおぉ、ルビーちゃーん! 俺の方こそ言い過ぎてごめんなぁ! ズッ友だぜ、絶対ガチ恋勢にならないぜー!」

「そうかよかったな。俺もう帰っていいか?」

「次の一年もいい感じで仲良くやっていこうなー! 友達として!」

「うん! 明るく言いたい放題言える仲でいようね! 友達として!」

「禍根残ってないか?」

 

 

「ところでお前、いつまでピエロメイクのままなんだ」

「あ、朝からやりっぱなしジャーマンで忘れてた」

「だから顔で珍獣判定したのに……」

 

 

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