――本日はご来場いただき誠にありがとうございます――
――開演に先立ちまして皆様にご案内申し上げます――
――上演中は携帯電話や時計のアラームなど音の出るものは……――
「取材終ーわりっと。だぁ、まーだ五月だってのに暑っっちいなぁ……」
「ねぇねぇ、自転車のお兄さん」
「おん? なんだいお嬢ちゃん」
「道に迷っちゃった。烏森神社ってどこ?」
「カラスモリ? ああ、あそこかー。駅を目指せば……駅の方向わかるかい?」
「方角だけ教えてくれれば大丈夫」
「んじゃあ、こっから西……あっちの方だよ。わからないなら一緒に行こうか?」
「今時そういうのは事案になるんだよ。気持ちだけ受け取っておくね」
「生きづらい世の中だなぁ。じゃあ気持ちだけ配送しておくな。車と変な人に気を付け」
「はいこれ」
「えー……と、これは?」
「"助けてくれてありがとう"お礼だよ」
「サ、笹の葉カー! うん、ありがと……な!?」
「あ」
「今、君っ、半透明になんなかった!? 最新技術!?」
「気ノセイダヨー」
「いや君のスケルトンカラー越しに床屋のサインポール! 正中線で赤白青が回ってたぞ!?」
「……あたし神様だから」
「マジで!? 神様って半透明になれるのか……ハッ、透過処理を司る神か!」
「限定的すぎるね。企業秘密なの、ジロジロ観察しないで」
「企業秘密……なるほど神様やりたくて最新技術を親に黙って持ちだしたのを隠し通せるよう神頼みってところか。大丈夫大丈夫、バレてもちゃんとごめんなさいすれば許してくれるって!」
「……もうそれでいい。烏森神社まで行けば帰れるの。あそこのモノとは縁があるもの」
「ほーん、了解。どうしても怖いならお兄さんも一緒に謝るよ。部外者がいると人目を気にして過剰に怒れないもんだからな! これイタズラケアのぉテクニィック!」
「子供に悪知恵を付けるお兄さんは一緒に怒られた方がいいと思う」
「タイタニックに乗ったつもりでドーンと任せろ! 二夜連続放送!」
「下手な泥船よりも沈没しそー」
「お、話せるタイプか。見た目に寄らず経験豊富っぽいな、さっすが神様」
「ふふ、そうだね」
「……にしてもここカラス多いなぁ。ところで神様、お名前は?」
「プライバシー保護の観点から黙秘するね。知らない人に名前を教えちゃダメって教わってるの」
「なるほど、言うことは正しいが小賢しさで敵を増やす娘だな。略せばタコス……よろしくタ」
「タコスちゃんなんてあだ名で呼んだら祟る」
「コスが美味い店がこの辺にあるってさっき教えてもらったから途中で買っていこうぜ!」
「『よろしくタコス』なんておいしそー。ごちそうになりまーす」
「黙秘は知ってるのに、知らない人に食べ物貰っちゃいけないって教わらないのか?」
「大事なのは柔軟な対応。頭が凝り固まっていると、見るべき真実を見逃してしまうんだよ」
「真実はいつも腹ペコなんだな。確かに成長期は超法規的食事も必要だな」
「捧げ物ならいつでも大歓迎だよ」
「捧げ物とは大きく出たな! よーし、腹に奉納するために行こうぜタコスちゃん!」
「祟るよ?」
『おー家、買ーうならHOME SHOP!』
「お、CMの新バージョンだ……タコスうんめっ!」
「この女の人たくさんテレビにでてるよねー……ソース付いちゃった」
「ほいティッシュ。人気が出た分、過密なスケジュールを千切っては監督に投げ、千切ってはマネージャーに投げられしてるからな」
「その顔。この人の活躍が嬉しいんだねお兄さん」
「そりゃあずっと前から最推ぉ……大ファンだからな!」
「言い直さなくても今の子供はみんなそういうの知ってるよ。嬉しいでしょ。だって、デビューする前からの推しなんだもんね?」
「おん?」
「大好きな親戚のお姉さん。お兄さんに夢を見せて今の道へ
「……忘れてたなら謝罪案件だけど、タコスちゃんと会ったことあったっけ? 親戚の集まりとか」
「ううん。正真正銘、初対面だよ」
「……ふむ。そうか、タコスちゃんは――すごく察しが良いタイプだな!?」
「…………まぁ、お兄さんならそうなるよねー」
「ルビーちゃんといい黒川先生といい、ちょっとの会話で個人情報抜かれるのは毎度ビビるなぁ。本当に神様からレントゲン盗撮されてる居心地の悪さ」
「骨を診察して人の心が解るとかすごーい。本当に神様かもよ?」
「なんと。それじゃあ黒川先生も神……!?」
「そっちまで神格化しないで」
「ならアイツは女神を口説き落としたのか。神レベル女誑し……神話的に考えてロクな目に会わないな。大丈夫かアイツ」
「……発想の経路はともかく、神に魅入られてるっていうのは間違いとも言えないね」
「しかしなぁ……お兄さんそういうのオススメしないぜタコスちゃん。探偵みたく色々見透かせるのは楽しいだろうけど、会ったばかりの人にそんなイタズラしてるとつまんねぇことになるぞ?」
「へぇ。子供の頃の貴方みたいに?」
「ふーむマジで神様なのか純粋に名探偵なのか……どっちにしても面白いしいいか。経験上、普通の人なら気味悪そうにするし、機嫌悪い人なら怒りで噴火してえらいことになるぞ」
「そうだね。人間は無遠慮に踏み込んで秘密を暴く輩には敵意を向けて当然だもの」
「知っててやってんならいい性格してら。俺はヅラっぽい人に『その帽子カッコイイね!』って言った程度でトラブったから、大事になる前に手を引いときな?」
「それはそうなるよ。噴火促してるよね」
「え。気付かれないようオシャレしてるんだから気付いたら褒めるべきだろ。まぁ『素敵な髪型ですね!』ってマイルドさは必要だな」
「わぁ、本気で言ってるー」
「それにこの人ヅラかなーって思ってたら、実はそう見えただけの寝癖が正解なことが多々あるから浅い知識と経験で決めつけると誰も彼も大火傷する鉄火場になるでよ」
「こわいねー。そんな特殊な例にたくさん遭遇してることが」
「それによしんば八割九割を予想できても、残りの一割に肝心要の核心が凝縮されてたりするんだなコレが」
「途中式が合ってても解答が間違ってたら無意味だものね」
「うむ『私、他人より頭良い!』って名探偵気取ったまま見当違い一割かますと全部ご破算で赤っ恥マナーモードになっちまうから注意がいる」
「黙って震えちゃったんだね」
「あん時、姉ちゃん腹引きつるまで大笑いしやがって……いつか目にもの見せてくれる……!」
「…………やる気一杯だねー」
「本気で考えても一割がどうしても予想つかん時は、ギリありそうなの詰めとくと良い感じにオチが付くぞ! ぶっちゃけ下手な推理なんかより解んねぇ部分を想像する方が面白いからオススメ!」
「誤魔化し方を教えてとは言ってない」
「まぁ、こんなリスクだらけの探偵ごっこよりも、もっと面白いこと見つけた方が楽しい! ワシはすでにその道におらぬぞ弟子よ」
「勝手に弟子入りさせないで。月謝も払わないよ?」
「ふぉっふぉっふぉ知識は広く遍くもたらされるべきもの……支払いはその包み紙でよいぞ」
「ゴミの回収ありがとう師匠」
「ワシのと一緒に捨てておくでな。ふぉっふぉっふぉ」
「ところでどういう行程で俺のプライバシー解析したんだ? ご教授ください師匠!」
「師弟逆転するの早いね。あたしは何でも知ってるだけだよ」
「ほほう。ヘイ神様、明日の天気を教えて!」
「音声AIアシスタントに聞けば?」
「ヘイ神様、昨日の降水量を教えて?」
「アメダスに聞けば?」
「ヘイ神様、そこのベンチでお巡りさんが雨模様なんだがそっとしておくべきか?」
「小生の心を中心に土砂降りときどき犬……ところにより猫が降るでしょうぅ……」
「本人に聞けば?」
「それもそうだな。おーいそこのお巡りさーん!」
「聞いてくれてありがとぉ~! 彼女とちゃんと話してみるよ~!」
「おーう、事実を順に話さないとまた拗れるぜー! ふっ。ヘイ神様、あの若者の天気は……晴れになったかい?」
「だっさ。知ったこっちゃないよ昭和人情ドラマ人間」
「令和の男子高校生なんだが」
「どういう人の生を積み重ねれば、方々にその気安さになれるものなの? 何の力も関係ないのが腑に落ちない……」
「すべての人には星のように価値があると愛せばよい……そうすればネタ帳が分厚くなる」
「それ愛してる扱いになる?」
「あと新人に恩売っておけば後々得するって
「その先輩そういう意味で言ったんじゃないと思う」
「それにしても話す間タコスちゃん黙ってたし……私は全知全能でござい! みたいな雰囲気出すのは得意だけど、本当は何にも知らないし大したこと出来ない……?」
「は? 知ってるし。なめんな」
「んじゃあもう一回。ヘイ神様、タコス美味しかった?」
「……うん」
「それだけ解れば十分だな!」
「そういうことじゃない。礼節は弁えた方がいいよ? 君なんてやろうと思えば指一つでどうとでもなる今だって貴方が引いてる自転車に態々座ってあげてるだけで神社までの距離なんて一瞬だもの本当は君が軽々しくタコスなんてふざけた呼称して良いような程度の低い存在じゃないんだよ本来はお社で崇め奉られるべき高次にあるものなの」
「あーうん、そーだなー全知全能万能素材だよなータコス神ちゃん」
「少しは! 奉る! 態度を! 取れ! タコスを司ったこともない!」
「え、じゃあサルサを司ってる……?」
「ソースも司らない。メキシコ料理から離れろ」
「でもタコスで満足する神様だしなぁ……」
「捧げられたものだもの。受け入れなければ威厳がないじゃない」
「そうだな。目移りしながら選んだのも、美味そうにパクついてたのも威厳のためだもんな」
「そうだよ」
「それになぁ、本当に神様ならなんで『この世界どうしようもねぇな! 私なんも出来ないし嗤うしかねぇ!』って諦めきってるんだ?」
「……あたしがそんな風に見えたんだ。おもしろーい」
「……まぁ、良いと思うぜ! その歳で中二病なら、十分に大人びてると言えなくもなくもない!」
「幼稚って言いたいならそう言えば?」
「タコスちゃんはさ」
「なに?」
「周りの人より……多分俺より頭良いから必要以上に人の色んな面とか嫌なものダメなものが見えちまうんだと思う」
「ふふ、有難いお説教?」
「釈迦に辻説法ってとこ。だけど、別に人も世界もつまんねぇもの汁百%ジュースってわけじゃないよ。良いものも笑っちまうぐらい変なものも、探してみると意外とゴロゴロ転がってるぞ?」
「お兄さんとか?」
「良いもの二十三区代表とは、何を隠そう俺のこと!」
「謙虚だねー。変なもの世界代表じゃない?」
「当方に世界レベル愉快の用意あり! 日々ライバルと切磋琢磨してテッカテカだぞ!」
「それにはこう聞けばいいかな。"それでもつまらない時はどうすんの?"」
「……本当に全部知られてる気がしてくるな "じゃあつまんないもの全部使って面白い
「……"嘘は飛び切りの愛"だものね」
「ん? なんだそりゃ」
「貴方のお姉さんじゃなくて、あるアイドルがそう言ってたんだよ」
「アイドル? はー……面白いこというなぁ。なんて名前のアイドルなんだ?」
「忘れちゃった。ずっと前に物語が終わってしまったから」
「ありゃ引退済みか……名前覚えておけばどっかで話聞けると思ったんだけどなぁ」
「興味が湧いた?」
「湧いた湧いた。そんなこと言える奴は愛なんて嘘っぱちだクソくらえと吐き捨ててるか、嘘を凄いものだと崇めてるかの二択だからな。経験上、絶対にネタになる人格してる!」
「ネタにはなるでしょうね。一番星になった娘だもの」
「へー凄いアイドルだったんだなぁ……残念だわ」
「お、着いた着いた。ここで良いんだよな烏森神社。帰り道分かりそうかタコスちゃん?」
「ええ。ここまで道案内ご苦労様」
「へへー有難きお言葉ー。すっかり夕方だな。おーおー、カラスも元気に鳴いてやがる」
「カラスが気になる?」
「いや昔カラス飼ってたから。逃げちまったけど今もどっかで元気に飛んでると良いなーってな」
「……そう」
「ところで、本当にここでいいのか? 遠慮しなくても親御さんに一緒に謝りに行くぜ?」
「そんな心配は一切ないから大丈夫」
「おぉ……怯むくらいの凄い自信。だったら、またなタコスちゃん。また楽しく話そうぜー!」
「貴方の存在は」
「おん?」
「多くの人々に影響を与えてる。ある兄妹はその明るさで心を癒し、ある少女は願い通り……かはともかくスキャンダル抜きで道が開き始め、ある女性は本来よりも早く大きく花開いた……他にもたくさん」
「でも、良い影響ばかりじゃない。
「幕が上がるよ。誰も望んでいなくても緞帳は止められない。貴方はとっくに舞台の上」
「余計な説法はともかく、道案内に捧げ物。最初は老いた
「タコスちゃん、さっきからなんの話……?」
「あたしからも今日のお礼だよ。一割が埋められるようなほんの少しの導き」
「へ?」
「でも……もう遅すぎるけれどね?」
「ねぇ――――
「……おん? 俺名前教えたっけ? あ、消えたおのれ最新技術! おーい気を付けて家に帰れよー!」
「……ん?」
「嘘は飛び切りの愛なんて言ったら」
「愛は飛び切りの嘘ってことにならねぇか?」
「……まぁいっか。ネタ帳にだけ書いとこ」
「うおっと。うい、もしもしー」
「……今? 家で今日のネタまとめてますけど……なんすか落ち着けって」
「ゆら姉ちゃんが死ん」
この物語は二次創作である。
キャスト
・片寄重悟(16~17)
・■■■■(?)
・新人警官(20)
以上。
時間設定
・中堅編 直前
舞台設定
・【推しの子】
ルートを選んでください。(一週間限定)
-
勝負は一瞬、オリ主 VS エアプルート。
-
アクルビ派噴飯、地獄絵図ルビールート。
-
あぶない相棒純情派、アクアルート。
-
トゥルー感だけはある、双子ルート。