「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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暗い話が続くので、間に挟む事件前の明るい話オムニバス。


「ぶっはっは」

 

 

『五月のレトロゲーム』

 

「ぶっはっは! 星野よ、よくぞ参った我が城へー!」

「クラスメイトを家に呼んだだけでテンション高いな片寄」

「にしても星野がレトロゲームに食いつくとは思わなかったな」

「……そういうのに触れてきてないから気になっただけだ」

「なん、だと……! それは人生の一割六分ぐらい大損してるぜ……!」

「まあまあ妥当な比率を挙げるな。否定も肯定もしづらい」

「クーックックックぅ! ならば貴様はこれからぁ私とのゲームに付き合ってもらぁおうぅ」

「そのつもりで来たからな」

「ギャハハハ! 全てのゲームを味見して適度に満足するまでぇ貴公は帰ることが出来ぬぁい」

「クリアはしなくていいんだな」

「ムルルルル! 貴殿の健闘を祈ぉるルぅ」

「笑い方と二人称統一しろよ。ムルルって笑う奴いてたまるか」

 

「あら、買い物行こうとしたら玄関にイケメンが生えてる!」

「あ、母ちゃん。こいつ星野」

「っ……お邪魔します。こちら、良かったら」

「あんらー美味しそうなお菓子! ご丁寧にありがとうねー! ウチの止まったら死ぬ系一人息子に爪の垢飲ませてやりたいわー」

「眼前で言うことじゃねぇし、煎じる手間を惜しむな母ちゃん」

「薬研どこにしまったか忘れちゃったのよねー」

「煎じた経験を保持している母ちゃん……!」

「……相変わらずこのノリなのか。安心すべきか呆気にとられるべきか……」

 

「あら……? あなた、どこかで会ったことない?」

「っ……それは」

「……あぁ! ぶっかけ三人組の! 清くん元気かし」

「人違いですそんな集団に所属した記憶はありません」

「母ちゃん、清たちはまだ中一だぜ?」

「あら、そうだった? あんたやたらに色んな友達連れてくるから憶えられないわよ~」

「実在するのかそんなひどい名前の三人組……」

 

「ほら、母ちゃんが見てる『今ガチ』の」

「あー、言われてみればアクアくん! 配信毎週見てるわー!」

「ご視聴ありがとうございます」

「そうそう、最初は爽やかイケメンだったのに徐々にダウナー馬脚を露したアクアくんだ」

「化けの皮脱ぐ判断早かったわねー。でも演技のグラデーション見せてもらえると、ああいう番組は楽しめちゃうからおばちゃん好きよ!」

「母子揃っていい性格してる」

 

「ごめんなさいね~! あと、跳ね続けるスーパーボールみたいな息子だけど仲良くしてあげて!」

「おいやめてくれよ。このスーパーボール、母ちゃんから生産されてんだから!」

「生産した時はうずらの卵みたいに小さくて弱弱しかったのに……今は見る影もなくてねぇ」

「卵サイズだったん爆誕時の俺!? すくすく元気に育ったことを残念がるな凹むぞ!」

「重悟……今まで秘密にしていたけど実はウチの家系はね……先祖代々卵生なのよ!」

「そんなわけあるか」

「急に明かされた衝撃の真実! じゃあ母ちゃんは……ウズラ……!?」

「受け入れるな哺乳類」

「甘い! お父さんがウズラである可能性を忘れるとは。そんな子に産んだ覚えはありません!」

「その場合、卵から産まれねぇだろ! ハッ、俺が常識と言う殻を破れていないだけ……!?」

「その殻は人の中で生きるための大事な鎧よ……孔雀としての本性を現さないための!」

「キジ科の繋がり!」

「なんだこの鳥小屋みたいに喧しい家庭」

「おん? 普通だろ?」

「俺が想像する普通と眩暈するほどかけ離れてるんだよ……」

 

「洗面所あっちだから手ぇ洗って来いよ。先にPS3立ち上げとくから。古いから長いんだよアレ!」

「PS3……? 今日はレトロゲームやるんじゃなかったか?」

「おう。俺らが生まれたかぐらいのゲーム機じゃねぇか」

「……………………そう、そうだな……うん」

「どうした!? ジェネレーションギャップ直撃した五反田監督みたいな呻き方だぞ!?」

「一緒にするな、頼むから……」

「ヴブゥ……!? PS3ってそんなに昔だった……!?」

「なんで母ちゃんまで貫通ダメージ受けてんだ。早く買い物行ってこいよ」

「行って来まーす。アクアくんもゆっくりしてってねー!」

 

「…………話は聞けなかったか……相手が悪い気がするし、いいか」

 

 

『七月の古株記者』

 

「パワーウィンドウってノックしてもいいもんですかね?」

「やめろ新人殺し、人の愛車に手の油付けんな」

「新人殺し? 記者の急所をチェストする習慣はないんですけど」

「片寄ゆらを張ってた若いのが『男との密会撮りました!』っつってお前とのツーショットを編集部に持ってくんだよ」

「あー……ゆら姉ちゃんのファンほど顔は知らなくても俺の存在把握してますからね」

「狙う相手の下調べもしない阿呆だけだがな、ネタも弱ぇし。何の用だよ、愛しのお姉さんに張り付く記者に文句つけに来たか?」

「今日の片寄ゆらは『ヒモを無事裁断決別したADちゃんの祝勝女子会』だそうです。時間の浪費はお勧めしませんけど」

「……今日は他所に行くか。おい坊主、なんかネタ持ってきてねぇか?」

 

「んじゃあこのアイドルとかどうです? 友達の妹が所属してて、今度JIF出るらしいです」

「今の時代に『B小町』かぁ……元天才子役とインフルエンサーに……無名の小娘。ネタになるかよこんな地下アイドル」

「そうですかね? そのうち天下布武できるパフォーマンス武力持ちそうな予感してますけど」

「ないない。まぁアイドルっつったら……こっちのアイドル、お前はどう思う?」

「ふーむ……目を見張るところはたくさんありますが……」

「……」

「……肩甲骨と言いたいがここはあえての……腰骨の駆動!」

「ちっ、解ってるな。見る目に説得力出すなよ」

「骨のあるアイドルは俺も好きですから!」

「無駄に気が合うな」

 

 

『九月のヲタ芸』

 

「くっ……ヲタ芸がこんなに難しいだなんて! これじゃ星野のキレに勝てん!」

「隣の少年……激しいだけの動きではヲタ芸とは言えないぞ」

「歴戦のドルオタオーラ……貴方は一体!」

「ただアイドルが好きなだけさ……」

「ご教授願えますか!?」

「着いてこれるか?」

「振りぬいてみせます!」

 

「うわぁ……店長、知らない高校生にドヤ顔でヲタ芸教えてる……」

「酒入ってないかアレ……? 即座に意気投合してるあの子も大概だけどな」

 

 

『十一月のライバル』

 

「ここで会ったが百時間目! 不知火ー、勝負しよーぜー!」

「あ、片寄くんや」

「キョウ……ムリ」

「不知火がしわしわのデフォルメみたいに!? 寿さん、コレどうしたの?」

「あんなぁ、仕事がキツキツに詰まりすぎてヘロヘロみたいなんよ」

「ミナミィ……イヤシテ……オッパイデイヤシテ……」

「ハグで堪忍してなぁ。よしよーし」

「バブミィ」

 

「うーむ。仕事大量発生の苦しみは解るから、羨ましいより同情の圧勝だなぁ」

「せやなぁ。仕事多いのはほんまに羨ましいんやけど、目の前で憔悴されると心配になるなぁ」

「あ、うん、そっち。仕方ない、簡易なやつのやり方教わったから『特殊メイク系変装を片手で顔からバリっと解く芸術点勝負』したかったけどお預けか」

「やる」

「フリルちゃん!?」

「急速復帰!? 別に復活の呪文唱えてないぞ!?」

「人生で一度はやってみたいロマン。実写でやると陳腐だしメイク直し必須になるから、そもそもそういう役がない。チャンスを逃したくない」

「そういうもんなん?」

「このロマンが解るとは流石は売れっ子女優……! 熱いぜ」

「売れっ子じゃないと理解できないロマンなん……?」

 

「重悟はいつも、私のやりたいけど諦めてた夢を熱くさせるね。私的好感度ゲージが激アツ」

「へっ、こんなことしなくてもクールビューティーなのは表面温度だけで、中身は演技への情熱と向上心で常に激アツなのが不知火フリルじゃねぇか」

「理解されてて照れる。もっと売れっ子大物作家になったらお茶してるのを撮られても良い」

「光栄だと喜べばいいのか、そんな肩書でもそれが関の山って目頭が熱くすればいいのか悩む」

「じゃあ重悟の話の主演女優オファーがかかったら、必ず受けてあげる」

「悪い。その枠は諸事情で埋まってる」

「……そ。負けない」

 

「ただいまー……フリルちゃん復活して燃えてる!? ジュース買ってる間に何があったの!?」

「ルビーは顔からバリっと剥がすロマンってわかるん?」

「どうしよう。なんの話か全然わかんない」

 

 

『一月の一般科男子ども(約一名、デートにより不在)』

 

「デスマーチに年末年始を汚染された……! というわけで野郎ども、正月っぽい遊びで年始を取り戻すの手伝えーい!」

「というわけでと凧渡されてもなぁ。筋肉で引っ張りまわせばいいのか?」

「羽根つきとか俺やったことないよ? 墨で落書きとか後始末面倒じゃない?」

「独楽とは興味深い……紐の巻き方を動画で調べようか?」

「ええい、現代っ子どもがぁ! 俺も戯れ経験値0だから知らん!」

「じゃあなんで持ってんだよ現代っ子」

「町内会の爺さんにそういえばやったことないって話したらくれたぜ!」

 

「まずは凧だ! おーい準備いいか風祭ー!」

「とりあえず思いっきり走ればいいんだろ? 唸れ大腿四頭筋! おらぁ!」

「おーっ上がっ……あれ落っ、側頭部っ!?」

「片寄!」

 

「大丈夫かお前」

「危っぶねぇ、骨組みのとこじゃなくて助かったぜ……凧って難しいな」

「風無いと高く保持できないんじゃない? 吹くの待つのダルいし別のやろうよ」

「んじゃ羽根つきにするか! よっしゃ構えろ小野寺!」

「へーい。スマッシュー」

「いや全力過……鎖骨っ!?」

「片寄!」

 

「片寄ー、大丈夫?」

「速攻フルスイング仕掛ける奴があるかよお前ー……」

「それよりも独楽の調査が終わったよ。動画を見た結果……巻き方は完璧だ!」

「越前、どんな動画調べたんだ? 独楽よりお前の両手に巻き付いてんだけど?」

「この不可思議さが……興味深いだろ?」

「無類の不器用が答えだろ。それで誤魔化すには考え浅いだろ」

「……違、違うよ? 証拠にこれで……独楽を打ち出す!」

「向う脛っ」

「片寄!」

 

「痛ってぇ……!」

「すまない片寄……独楽が大きいからもう少し手前にやらなければ危険だな」

「そういう問題かなぁ?」

「脛はきついぜ、筋肉薄いからな」

「勢い無かったのが却って良かったわマジで」

「え、それで済ますの? 片寄って丈夫だよね」

「あ、時間そろそろだわ」

「この後に何かあるのか?」

「もうすぐここで餅つき大会始まるんだよ。飛び入り歓迎らしいから飛び入ろうぜ! 出来上がった餅詰まらせないように気をつけろよ!」

 

 

「「「片寄!」」」

 

 

『三月のスランプ』

 

「相談に乗ってくれよ星野兄妹。傍目じゃ解らないだろうがスランプに陥っててな……」

「星型メガネに法被にサンバの羽飾り。祭り関連なのは辛うじて判別できるな」

「スランプの可視化に成功してる」

「ピーピーピプープー、ピーピーピプー!」

「ボイパでサンバポイッスル!?」

「そこそこ上手いのが腹立つな」

 

 

 

『酔っ払いと約束』

 

「マスター、まるちゃんスペシャルおかわり!」

「マスター、今のまるたけえびスペシャルはキャンセルで」

「そんな注文うけてないよ重悟くん」

「あ~ジュウちゃんだぁ! 未成年がバーに入って来るなんて五年早いよ~大人の世界だから!」

「酩酊寸前でも年数は正確でビックリだ。大人の世界なら迎えに子供呼ぶなよ」

「やっと大仕事終わった~んだから好きに飲ませてよ~。お子様にこの喜びはわからないか!」

「お子様が飲みの喜び知ってたら大事じゃい。バーに入るだけでもかなりダークグレーなんだからな。店出るところお巡りさんに見られてドナドナされるんじゃないかと毎回おっかないんだぞ」

「いやぁ、重悟くんの顔つきならその心配はないんじゃない?」

「や~い老け顔~」

「おうおう、なら老け顔駆使して飲んでも問題ねぇな!? マスター、スクリューパイルドライバー一つ! お代はこのいい歳こいて高校生役やってるロリ顔にツケといてくれ。ここで飲んだって写真撮ってコレのSNSで拡散するから!」

「人が気にしてることコイツ! 甘酒で激酔いするくせに飲もうとか生意気!」

「バーでパイルドライバーは扱ってないのよ。人生賭けた自爆特攻も控えてくれる?」

 

 

「うわぁ外だ~……湿気凄くてやだぁ。早く次のお店行こ~?」

「帰るんだよ。さっきまで降ってたんだからしかたねぇだろ、止んでてラッキーって大喝采しとこうぜ。服と髪が雨水飲んだくれなくて良かったってよ」

「早く大人になりなよ~一緒に飲もうよ~。甘酒用意してあげるから~」

「ゆっくり大人になるわ。姉ちゃんの愚痴聞きながら飲むのは一日でも長く先延ばししたい」

 

「教えてもらった花のアレ、いい感じに出来たよ~」

「そりゃいい、上手く行ったんならかなり寿命伸び」

「あれージュウちゃん、なにその安全帽」

「姉ちゃん、それ道路工事の看板。俺は隣にいるしZ軸搭載してるぞ」

「じゃあQ軸は~?」

「その軸の概念、俺知らねぇ」

「教えてもらった花のアレ、いい感じに出来たよ~」

「話題を頭出しループすんな」

 

「こんなへべれけで明日大丈夫なのかよ。酒精が残業して朝帰りしかねないだろコレ」

「一昨日からお休みに突入してまーす! これから一か月休んじゃうから!」

「相変わらず船乗りみたいな休みの取り方するなぁ」

「芸能界という荒海を渡るのは大変なのです甲板長!」

「雑務の元締めかよ俺」

「船長への道は長いよ~? 大人のジジョーという大嵐が何度も襲って来るんだから!」

「んじゃ、その嵐にはどういう防災対策すればいいんだ?」

「防災奥義、耐え忍ぶ!」

「防災グッズは根性一つ!?」

「便利グッズあるなら私が知りたいよ~……中身不明で埋まるスケジュール……唐突に増える宣伝番組出演、で急な大喜利……ヴ~、やっぱりもう一軒飲みたーい!」

「今日は残念無念でもう飲ません。もう知り合いのタクシー呼んだから」

「高校生なのにそんな知り合い居るなんておっとな~」

「ラーメン四天王の鈴木さんなら……まぁ大丈夫だろ」

「シメのラーメンは背徳の味だねぇ」

「そうだな、食わずに帰るけども」

 

「ねぇねぇジュウちゃん。約束憶えてる?」

「約束?」

「忘れてるとかひっどー! 役者は忘れられたら死んじゃうんだよー!?」

「世間から、だろ。どれって話だよ。忙しい間のドラマならちゃんと撮り貯めて……」

「いつかぁ百年後も残っちゃうすっごい話書けたらぁ主演女優やらせてくれるんでしょー!?」

「それは憶えてるっての。自力で判別出来るぐらいの自信作なら真っ先に声かけるよ」

「絶対だよ~? 何がなんでもスケジュール空けて出演しちゃうから!」

「はい十一時二十九分、看板役者を確保ー。これより本人自宅へ護送しまーす」

「生意気~」

 

「ちょっと待ってろよ。必ず、一度見たら死んでも忘れられない面白いの書き上げてやるから!」

「お、言ったな~」

「ゆら姉ちゃんこそ、それまで忘れられないようにちゃんと生き残れよな。芸能界」

「あははは! もっと演技上手くなってやりたいように演れるまで片寄ゆらは死にませーん!」

 

「だからぁ、ジュウちゃんも一度言ったことはちゃんとやりきってねー」

「おう任せろー! ぶっはっは」

 

 

ちょっと回り道■■■ルート。アリ?

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