「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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注釈 : この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係なく、原作の星野愛久愛海にこんな会話をする男友達は存在しません。



「星野、妹に結婚してって言われたらどうする?」

 

「星野、お前妹に結婚してって言われたらどうする?」

 

「……また課題か?」

「違う違う。ハマってる漫画がこの間そういう話になっちゃってさー」

「あぁネットで話題になってた……『度し難い子』だったな、軽く読んだ」

「それ。俺あーいうの苦手でよ。インモラルなの急にぶっ込まれるの度し難いわー」

「一般受けはしないだろうな」

「でも読み返してみたら伏線も導線もしっかりしててスゲー参考になった。ああいう挑戦的なことしても面白いもん書けるように精進しねぇと」

「良かったな」

「ただまぁ、そういう話になるなら最初から明言しといてくれよってなる。かと言って初めから兄妹ものです! とか言われてたらそれはそれで敬遠しちゃうのジレンマだよなぁ」

「入り口は気安い方が客の入りは良い。既定路線だったならアニメ化もして、多少突飛でも顧客はある程度離れないと判断したんだろう。いいんじゃないか? 要素が混ざっただけでメインはファンタジーなダンジョン内サスペンス、それに他のヒロインだっているんだからな」

「そうだよなぁ。オチはともかく因縁の脊髄カラスをぶった切りながらの和解は感動したわ~。あとまさかベムちょんが二百五十歳だったとは……永遠の十八歳じゃなかったなんて……!」

「それは初期から明言されてたろ」

 

「双子ちゃんとしては兄妹ものって何割ぐらい許せるもんなのよ」

「双子ちゃんの兄としては勘弁してほしいが十割。CMで流れるだけでも気まずいんだぞ……」

「知ってるか。有識者からすると顔似てる双子同士だと高純度インモラル成分に興奮して、勝った第三部完! ってなるらしいぞ」

「知りたくないなそういう見識……何の勝負なんだよ」

「遺伝子のチェーンデスマッチ?」

「レスラーよりチェーンを重要視するのか。ルール無用にもほどがあるだろ」

「流血戦にならなきゃ何でもいいんじゃね」

「双子のダブルラリアットでもかましてやりたくなるな」

 

「んで、どうすんだよ」

「何が」

「妹の求婚」

「『そんなことより俺のプリンまで持っていくな』って返した」

「すでにやってた!? 常日頃やってて返しも手馴れてる!」

「差し入れの高級プリン持ち帰っただけで出る言葉にまじめに返す方がどうかしてる」

「お手頃価格のプロポーズ。ま、普通ならどんなに仲良くてもそんなもんだわなー」

「ああいうのは実際はあり得ないとみんな思ってるから娯楽として成立するんだ」

「アイドルの言う弟や妹は隠れて付き合ってる相手の隠喩だ! なんていう奴の理屈も兄弟姉妹で恋愛なんてしないって認識ないと湧かないもんな」

「そういう下衆の勘繰りはどうかと思うがな」

「でも『理想の相手はお兄ちゃんです☆』って文句にコロッと騙されちゃう気持ちもわかるわぁ」

「アイドルとファンの関係は疑似恋愛の側面もあるしな…………だからといって男の有無で騙されただの喚くのは不快極まりないが」

「でも推しの熱愛発覚の口惜しさたるや筆舌に尽くしがたいぜ。くそぅ、この男が俺の推しの……肩甲骨を好きにしてるだなんて!!」

「そこは恋人よりエステティシャンの方が好きにしてそうだけどな」

 

「お前もアイドルの妹に『理想はお兄ちゃん☆』って言わ……言ってそうだな、うん」

「それは流石に言われたことは無い」

「よかった、言ってたらちょっと引く所だった」

「『理想の推しはママ!』とは聞いたことある」

「それはそれでどうなん!? ん? お前らの母親って事務所の社長って前言ってなかったか?」

「……いや、それは」

「ああ、元アイドルだったのか! 芸能事務所ならそういう転職あるよな」

「……かもしれないなー。俺はそういう話聞いたことないが」

「親の職歴とかそうそう興味湧かないよなー。母と娘だとそういう話もするもんなのかね?」

「どーだろうなー」

 

「実際アイドルとして『理想は兄以下略☆』とか言ってたらどうすんだよ星野」

「どうもしない。せいぜい便利な防波堤に使ってくれればそれでいい」

「お前の面の良さ知ってたら呆然とするがな。大抵の荒波がテトラポットで雲散霧消するわ」

「そこを跳び越えて妹が合格出す男ならそれはそれでいい。そこまで過保護じゃない」

「そんなこといって採点が難関入試ぐらい厳しそうだな。俺とかどうよお義兄様、何点?」

「国外追放」

「領海にすら入れないのかよ。お前どうせ中学でも妹周りの男シャットアウトしてたろ」

「…………そんなことしてねぇよ?」

「身に覚えあるじゃねぇか」

「シャットアウトなんてしてない。ただ妹が告白に呼び出された時は同行してただけだ」

「んなことやられたら呼び出した男がシャットダウンするわ!」

「隣に俺がいるだけで告白を断念する程度なら妹は任せられない」

「常軌を逸したモンスターブラザー怖ぁ。それ妹にウザがられなかったの?」

「『うちの兄シスコンなんで』って笑ってたぞ」

「妹も大概だなこの兄妹。そんなんじゃ一生結婚どころか彼氏もできないんじゃねえの妹さん」

「昔からアイドル志望だったからいなくて良かったんだよ。焦らなくても必要になれば相手なんていくらでも見繕える。ウチの妹可愛いから」

「気持ち悪いほど妹好きだなこのドレッドノート級シスコン戦艦」

「可愛いのは事実だろ。B小町内でも人気は上々だしな」

「……もしも妹が彼氏連れて来たらお兄様はまずどうするんだ?」

「興信所に素行調査を依頼する」

「どの口で過保護じゃないとか出力したお前!?」

「冗談だ」

「どこから!? 親の産道の頃から?」

「素行調査は言うほどやる気はない」

「そこそこやる気はあるのかよ……ところで、もし妹さんがアイドル目指してなかったらその妹絶対防御壁やらなかったんだろうな?」

「………………さぁな」

「やる気十割じゃねぇかコレ」

「ある程度の防波堤は必要だろ?」

「ある程度、の基準が富士市域の堤防なのが問題なんだよ」

 

「兄も兄で問題だけど妹さん本人もハードルが棒高跳びかよってくらいバカ高そうなんだよなぁ」

「そうか? いや、お前会ったことないだろ」

「チャンネル登録してるしJIFも見に行ったわ。友達の身内が頑張ってんなら応援するだろ普通。それだけっちゃそれだけだけどな」

「そうか……ありがとうな。動画とライブだけでも十分だ」

「こっちはぴえヨンブートキャンプから見てんだ。見たところ妹さんは一度ターゲットを定めると一途過ぎてなりふり構わずあらゆる手を尽くすタイプ!」

「動画とライブだけで十分理解した気になるな。浅い評論家か」

「ちなみに有馬かなは、意中の相手に悪態吐きまくるけど、ちょっと距離を取られただけで不安になるかまってちゃん! ホストにハマって身を持ち崩すタイプだな!」

「……いや、その………………やめてやれ陽東の先輩なんだから」

「あとMEMちょは……まぁいいか」

「いない相手をスルーしてイジるな」

「だってよ、男より夢! って邁進するタイプだろ。自分より周りの恋愛に気をまわしてグルグル翻弄されてる姿が目に浮かぶんだよ……」

「よし、スルーに賛成する。満場一致で可決だ」

 

「つーか顔面偏差値も高くないと男に見えない環境で生きてるだろ妹さん」

「顔だけで選ぶほど浅はかじゃない……と思いたい」

「そうだとしてもよ、アイドル好きで芸能事務所に入り浸っててさらに子供の頃からその顔が隣にいたらほとんどの男なんてジャガイモの芽ぐらいにしか見えてないだろ」

「毒素扱いじゃねぇか……まあ、俺も顔には自信があるしな」

「そりゃあ何よりですなーっ! ケッ!」

「……親からもらった大事な顔なんでな。お前の顔だって言うほど悪くないだろ」

「『言うほど』って修飾語必要でした今ぁ!?」

「芸能界では……ちょっと……」

「あんな上澄みで満たしたプールリゾートを基準に語るんじゃねぇよ!?」

「安心しろ、作家に顔面の良し悪しは関係ない。安心して泳げ」

「よーし、その喧嘩買ったぁ!! イケメンを振りかざす顔面貴族め。革命の時は今だ!!」

「……悪い流石に言いす」

「お前を台本にしてやる! ネタになる話を寄こしな!!」

「今、物理で行く流れじゃなかったか!?」

「バカ野郎、役者の顔面殴るわけねぇだろうがもったいない! ペンは拳よりも強し!」

「そこはクリエイターの流儀なのか……」

「具体的にはいつか兄妹ものの脚本書く時はお前らのエピソード盛りに盛ってやる」

「ずいぶん迂遠な嫌がらせだなクリエイターの流儀」

「さらにキャストに口出せたらお前らを主演に押す! 双子なら有識者も大満足だぜ!」

「性質悪いなお前! というか喧嘩相手に仕事持ってきてるじゃねぇか」

「つーわけで急に兄妹もの書きたくなったからネタを限界まで吐き出してもらうぜェ。顔の良い奴が越えちゃいけないラインを踏み越えた代償は重いぞ!」

「……これ俺がサンドバッグにされるだけだな?」

 

 

 

「あらかた絞りつくしたが」

「ハァ……」

「拗れシスコン満漢全席。ハッキリ言ってドン引きだ!」

「完食しといてクレームを付けるな。少しはオブラートに包め」

「すまんオブラート足りなかったわ」

「包んでそれか……」

「素材の味がしっかり付きすぎなんだよこのまま客にお出しできるぞ。正直ここまでとなると、お前らがリアル兄妹ものになるんじゃないかと戦々恐々だ」

「バカなこと言うな。普通の兄妹だろうが」

「普通の兄なら妹心配だからで高校選ばねぇんだよ……ホント頼むぞ『この物語はフィクションです』が『この物語は事実を基にしたフィクションです』って注釈に書き換えるハメになるから」

「さんざん文句言いつつネタにする気満々じゃねぇか」

「ネタとしては高級食材なのが悪い。使わないで捨てる奴は料理人を名乗れないぜ!」

「料理長としては何を作るおつもりで?」

「シェフの気まぐれ・シスコンたっぷり地中海風アヒージョ~自家製モンゴルの嵐を添えて~」

「せめて地域を統一しろ。一切情報なくて誰も注文しない創作料理じゃねぇか」

「何ぃ? モンゴルの嵐を先に食い切る!? そんな食い方するんなら帰りな!」

「客の好きに食わせろ頑固料理長」

「じゃあシスコンはいつ食えばいいかだと? 好きなタイミングで良いんだよ!」

「『シェフの気まぐれ』も飲み込まないといけないのかこの料理……」

 

「そもそも兄妹で恋愛するってどうなったら行き着くんだろうな? 近親って遺伝子的なアレで敬遠するもんじゃないのかね。父親の体臭死ぬほど嫌う娘ーみたいな感じで」

「仮にそういう状況になるとしたら、その遺伝子的な防衛本能を上回る要因があるのかもな」

「要因とな?」

「例えば、ネグレクトや家庭内暴力で味方はお互いだけだったとか、誰にも話せない重大な秘密を二人だけで共有し続けたとか……タガが外れるのはそれが緩むほど不健全な共依存状態が長く続いた時だけじゃないか?」

「ほーん、インモラルにはそうなる事前のインモラル土壌が必要、と。病んでるなぁ」

「花が咲くなら両者とも複雑な心理状態なのは間違いないだろうな」

「ほうほう。つまりインモラル兄妹に必要なのは理解ある退廃的な環境でも法改正でもなく……」

「でもなく?」

「事前のカウンセリングだ! 心を癒しまくる名医を呼べぃ!! アニマルセラピーも可!」

「その結論はどうなんだ……?」

 

「お前も一度カウンセリングとか受けておけ! なんかこう、心配だから!!」

「安心しろ。間に合ってるから」

「本当かー? お前、治療不十分でも完治しましたって演技して通院拒否しそうな顔してんだぞ」

「……どんな顔だよ」

 

 

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