「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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キャスト
・男子生徒(16)
・星野ルビー(16)
以上。

舞台設定
・高等学校、自販機前

時間設定
・放課後


「ルビーちゃん何言ってんの?」

 

 

「……コハー……」

「あ、いたいた……大丈夫? 口から魂抜け出てそうだよ?」

「ルビーチャン。オレ、シメキリアケ……シュラバケイキオエタ」

「お勤めご苦労様でーす。だから自販機の横で無気力ゾンビやってるんだねー」

「ア゛ー……ジハンキオブザデッドぉー」

「見た目より元気だなぁ。それだとゾンビ化してるの自販機じゃない?」

「廃棄された自販機たちがゾンビ化しウィルス缶を射出しながら襲い来る。相対するはワクチン缶装填を任された補充員(ベンダー)たち。ここに人類の存亡をかけたドリンク補充が始まった――」

「うわぁ低予算映画感ハンパなくてやばー」

「ゾンビ自販機工場を爆破解決エンド後に『当たりが出たからもう一本』」

「終わってなかったエンドだ。万が一続編出ても見ないと思う」

 

「どーした一般科まで来て。兄貴はもう早退したぞー」

「ドラマの撮影だもんねー。今日はお兄ちゃんじゃなくてキミに相談があるんだ」

「俺にー? ハッ……ついに俺にも春が来たか。まだ真冬なのに」

「アハハ。二百%ないから安心して冬を楽しんでね」

「人生二回あっても無理ってことかよ。俺の春分の日はいつ訪れるんだ……」

「がんばって! 来世に希望を持ってね」

「死体蹴りすな。今生にも希望をくれよ」

 

「んで、なんの相談?」

「私たちが宮崎旅行に行った時の話、アクアから聞いてる?」

「……なるほど。聞いた聞いた、やばいもの見つけちゃって大変だったんだって? 大丈夫か?」

「それがあんまり大丈夫じゃなくて……まだちょっと怖いんだー」

「……そりゃあそうだ。ただMV撮りに行って突然第一発見者になるとか、二時間ドラマじゃないんだからトラウマになるよな……」

「そう、ドラマ!」

「おん?」

「事務所の人にちょっと相談したら、起きたことを客観視できるようになると良いらしいよって教えてもらったんだ」

「客観視とな……え、もしかして」

 

「うん、脚本にしちゃうの! 私の中から分離しちゃって、ついでに(・・・・)犯人も推理して心の整理をつけようかなって!」

 

「……?」

「でも私だけだと難しいからアドバイスが欲しくて……助けて欲しいなーって」

「そういう整理のつけ方も、あるのか? うーん……困ってるなら助けになりたいが」

「あれ、第一発見者と事件を推理するなんてネタになるー! ってノッて来ると思ってたのに」

「かぐや姫かよってぐらい無理難題なのもあるけど、俺コメディに取舵一杯しやすいから笑いづらい話は避けてんのよ。例えば……ルビーちゃんが不治の病だったとするだろ?」

「……うんうん」

「病気で苦しんで副作用とか辛くて病院寂しくてって散々な目にあったのを、美化したり面白おかしくエンタメにされたらどう思う。しかもそれを関係ないし何もしない奴らがカワイソーとか言って来るの」

「許さないよ」

「うぉ凄い圧……俺もそう思う。自分が酷い目に会ったのをそのままネタにされたらって想像だけでむかっ腹立ってきて、面白くない。つまんねぇからやりたくない」

 

「……絶対に書かないの?」

「ぐ、そうしたいけど仕事選べねぇし……難病や闘病の現実を周知するのが悪いとも言えねぇし」

「前言撤回早ーい。権力の犬だー」

「その権力に尾っぽヲタ芸ワンちゃんは書くと決めたら出来る限り真剣に向き合う、つもり。最低でも取材相手が笑い話にしてもいいって許してくれるまでは」

「…………口だけなら何だって言えるよ

「ゴメン聞こえなかった。なんて言った?」

「意外と真面目だなーって驚いただけ」

「え、俺いつだって魂が七三分けしてそうな真面目さの権化だろ?」

「魂がアフロをモヒカンで七三分けしてる『常に真面目』の対義語だと思う」

 

「ルビーちゃんだってそういう、他人の不幸を外野が好き勝手に話すとか嫌いだろ。違ったか?」

「っ…………実は結構切羽詰まってるんだ。ずっと、目に焼き付いちゃってて……」

「そんなにか。星野、だとややこしいな」

「いいって、流石に判別できるから」

「そうか。星野おにいたまには相談したのか?」

「すっっごいキモい呼び方になっちゃった!?」

「殺伐とした時こそ気が抜けるユーモアとスマイルをさりげなくゼロ円提供しようと思って」

「空気読めない男とか普通に最悪」

「殺伐とした一撃をもらった俺にスマイルをくれ……」

「アッハッハハ!」

「わぁ推しが笑顔になってくれてうーれしー。嘲笑えとは言ってねぇよ」

 

「星野あんちゃんは解ってるのか? 妹が苦しんでんの知ったら何を措いても優先するシスコンレベルだろ星野にぃに」

「色々試すんだ呼び方……だから話してない、アクアは今頑張ってるから邪魔したくない」

「モデル仕事にも手を出し始めたからなぁ。大事な時期っちゃ大事な時期だけど」

「このまま行けば業界でもっと色んな人と繋がりができるよね」

「え……ああ、アイツそういうコミュ力は高いみたいだし。子役やってただけあって、社会人何年生? ってぐらい世間ずれしてるからな」

「なのになんであんな陰キャフルアーマーなんだろう……」

「高校生として世間からズレてるからじゃね」

「そっか、だから二人は友達なんだね!」

「なーんか連座で鎧通しされたな今」

 

「だからアクアには相談できないし、この前のMVがバズったから事務所もMEMちょもバタバタしてて。先輩にもみなみちゃんたちにも変な心配かけたくないんだ……」

「なるほどーその点、俺ならいくら負担アンド心配かけても気にならないからな」

「うん!」

「素直な一言と笑顔に、美徳を感じない瞬間ってあるんだなぁ」

「ホントハソンナコトナイヨー」

「俺の目を見て行ってみろぉい」

 

「……事件そのままだと抵抗があるなら全然別の話にしちゃってもいいよ」

「おん? ルビーちゃんの悩みってそんなんで解決するのか?」

「うん、あくまで見つけたものを怖いって私が思えなくなれば良いんだもん」

「そっか、現実味がなくなってった方がむしろ都合良いのか」

「そーそー。元々、私が知ってることとニュースに載ってるだけの情報じゃどうしたって実際の犯人になんてたどり着けないじゃん?」

「そりゃ俺たち名探偵のじっちゃんがいるわけでも、見た目は子供頭脳は大人でもないからな」

「だから、どんな奴だったらこんなことをするんだろうってことを九割ぐらい(・・・・・)一緒に考えてくれたらスッキリするかも。ダメだったら他の方法も試すだけだから」

「ほぼ全部じゃねぇか。やるにしても、具体的にどれくらいの変化までなら許容できるんだ?」

「全然関係ない事件を一つ組み合わせちゃうぐらいならOK」

「混ぜて連続殺人にしちゃうのか?」

「当ったりー! 例えばね――」

 

 

「アイの事件と……雨宮吾郎さんの事件を同じ奴の仕業にしたらどんな犯人になるか考えるの!」

 

 

「何故そこでアイ!? 両方未解決で罰当たりの罰当たり乗せ大盛りじゃねぇかお前!」

「……アイの事件、解決してないの知ってるんだ」

「ブートキャンプ前に調べて詳しい人から……そうじゃなくてだな」

「いいのいいの。雨宮さんアイのファンだったらしいから、B小町の私なら二人共許してくれる!」

「B小町の名を過信するな!? ここまで根拠ない保障、初めて聞いたわ! アイに至ってはただグループ名継いでるくらいしか関わりないじゃねぇか」

 

「さらになんと! 事件二つを足して更に設定をたくさん追加しちゃいます!」

「聞きやしねぇ。足し算で元の事件ミキサー入れるくらい変えていくなぁ」

「このままだと二人に全然接点がないでしょ? だから繋げる要素を足すの」

「さてはこのミキサー、停止ボタンないな?」

 

「まず『アイが休業したのは極秘出産するためだった』! これならこのお医者さんと関わっててもおかしくないよね?」

「……隠れて産むために宮崎まで行ってて、被害者を主治医にするのか」

「前にそういう話したから早いね! 猫を飼いだした話も子供を隠すための誤魔化しにして、アイは猫は飼ってないことにしちゃうの」

「成程ー……ところで、その子供ってのは息子か? 娘か?」

「両方だよ。決まってるじゃん」

「単に自分って言うかと思ったらより酷かった……ここぞとばかりに自分の要素を擦り付けに行くな双子の片割れ。双子が出来る確率知ってんのかよ」

「ゼロじゃないなら可能性は無限!」

「少年誌の主人公みたいだなぁ、この顔がいいだけのドルオタ女」

「他にも考えてきたんだー!」

「全部の攻撃がすり抜けノーダメージ。負けイベントかな?」

 

「雨宮吾郎って人は――で――なせんせで……――」

「待って」

「子供を産んだアイは――社長とかマネージャーに――な母親で……――」

「おい止まれ」

「……犯人はせんせを殺した時点で大学生と中学生の男二人組。片方はアイを刺した奴で……一緒に考えて欲しいのが中学生の方。多分この中学生は子供の」

「やめよう、やめるんだ! こんな、こんなの……自分を傷つけるだけだ!」

「……どういう意味? どうして止めるの?」

「だってこんな――」

 

 

「こんな……黒歴史のオーダーメイドなんて!」

「ん?」

 

 

「異性の趣味詰め込んだ登場人物に、自分を好きなアイドルの娘にする欲望全力全開の設定!」

「あ、あれー?」

「しかもこれどう考えても主人公ルビーちゃんだろ!? こんなん『はじめての黒歴史ノート作成風景』そのものじゃねぇか! 医者の設定とアイとの親子妄想設定だけ過剰に作りこんでんのに、肝心の犯人周りがおざなりの極みなのがあるある過ぎて痛々しい!!」

「そ、そんなんじゃないから、痛くないし!」

「名医も首を振るそんなんそのものだよ! さっきから聞いてるだけで恥の熱と鳥肌が併発して焼き鳥になりそうなんだよ!」

「だったらもうタレに飛び込めばいいじゃん!」

「濃い味付けても飲み込めなくて顔から火が出そうなんだよぉ! 途中から耳を塞いでやるのが慈悲なんじゃないかと心が迷子センター行きになったわ!」

「保護者に回収させてちゃんと聞いてよ! ママたちは誰かハッキリしてるだけで犯人は……」

「ルビーちゃん何言ってんの!? 落ち着け、設定に、設定に入り込み過ぎだ! アイドルのママ呼びは顔の良さでカバーできる気持ち悪さをK点越えしてんぞ!?」

「解ってたけどまるで信じないなぁコイツ!」

 

「く、仕方ない……アームロック!」

「なに何々なに!? イタイ痛いたいたいっ!? アイドル、これアイドルの体ぁ!!」

「痛みで冷静さを取り戻すんだ! 経験上、そんなもの作っても今後の創作活動に一切役に立たん! 思い出すたび脳と脇腹に鈍痛ブローを叩き込んでくるハードパンチャーを兄弟にするも同然だぞ! 縁切れないぞ!」

「冷静さ欠いてるのそっち! どうせ勝手に自分の黒歴史と重ねて暴走してるだけでしょ!? おらぁアームロック返しぃ!」

「ぐぉぉ!? 作家の腕に何しやがるー!」

「女子の腕に仕掛けておいて自分を棚に上げんなー!」

 

「変な相談しだした時から、いや旅行後っぽい配信見たときから様子がおかしい気がしてた。心限界になって、故人の名前使ったトンチキな恥を形に残そうとするなら腕尽くで止めるよ」

「っ、別に限界になんてなってない」

「なってないなら相談相手に俺を選ばないだろ。自分で気付いてるか? ルビーちゃん最初からずっと俺に……いいや誰にもこんなこと話したくないのにって我慢してる顔だぞ」

「……」

「苦しいのは本当だろ? なら変なことせず普通に相談してくれよ。現場見たショックで溜め込んでたアイドル業の……だけじゃないな? 色んなストレスも一緒に連鎖爆発してるみたいだ」

 

「普通に相談って何? カウンセリングでも受けに行けばいい? 言ったでしょ、今はみんなが大事な時期に入り始めてる。下手なこと、できない」

「みんな大事な時期、ねぇ。それなら悩んでること吐きだすだけでもいいし、気分転換に遊びに行くでもいいじゃねぇか」

「本当のことなんて誰にも話せない、したくない。こんな気持ちのまま何したって楽しくない。このまま何もしないでいられない……やりきらなきゃ、私……」

「……」

「黒歴史でいいよ。お願い、協力して」

 

「……わかった。そこまでの覚悟ならもうガタガタ言わねぇ。創作の恥は『書き捨て』だ。頼られた以上ルビーちゃんが満足するまで俺もこの地獄一丁目区画整理、地平線まで付き合おう」

「うん、もうそういうことでいいや」

「完成したものを誰にも見せないと誓う。いつかルビーちゃんが暴露系バラエティに呼ばれたとしてもこの秘密だけはスタッフにもブラザー星野にも渡さないと約束する」

「アクア、暴露に協力する側なんだ…………ありがとね」

「礼には及ばねぇよ。だからそろそろアームロック外してくれ」

「じゃあ早速、犯人を考えていこー!」

「ただ、俺だと面白いと思った方に面舵一杯にするから、変になっても勘弁してくれよ?」

「好きにやっちゃっていいよ。どうせ大ジャンプするんだから」

「大ジャンプ? よくわからんがアームロック外せ」

 

「腕痛ってー。しっかし犯人かー……まずアイの事件があって? その後に雨宮吾郎……」

「違う。まずせん、雨宮さんが殺されて、その三年後にマ、アイだよ」

「もう好きに呼べよ。ルビーちゃんの創作なんだから」

「先にせんせで、次がママ」

「あー……まぁいいか。発見されたのがこの前ってだけなら順番変わるよな。ニュース確認しとくか……宮崎で、発見された……あったあった。これの話だよな?」

「……うん、合ってる」

「高千穂の産婦人科医で、山中で発見。死後十年を超えると見られ……十五年以上前に失踪、と」

「十六年だよ。向こうの……病院で色々聞いてきたから」

「そっか。十六年ってことは俺たちが生まれた年かー……んん?」

「どうかした?」

 

「高千穂、病院、生まれた……雨宮、先生? なんか聞いたことあるような……?」

 

「あ、電話……やっばい! 時間! ゆっくりし過ぎてたー!」

「俺もバイトの時間……続きはまた今度にしとくか」

 

 

 

 

「大変だルビーちゃん。この間の話だけど、ウチの親が雨宮って先生と知り合いだった。なんか昔お世話になったって」

「え」

「っていうか俺、その先生に取り上げられたらしい……世間って狭いな」

 

 





※ 前回のアームロックと今回のアームロックは同一アームロックです。前回の最後は謎の提案にテンパった黒川あかねがルビーに仕掛けたものでは決してありません。

紛らわしい表現大変失礼しました。反省を踏まえ、今後はアームロック違いが起こらぬよう丁寧なアームロックを心がけて参ります。
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