「星野、お前転生したらどうする?」   作:サルガシラン

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キャスト
・男子生徒(16)(備考・ルビーからの情報を基に考えている)
・常連客(31)

・星野ルビー(16)
以上。

舞台設定
1・花屋、店内
2・高等学校、中庭

時間設定
1・夕方
2・放課後


「お客さん、宮崎行ったことあります?」

 

 

「わっかんねぇなぁー……」

「お悩みかな?」

「ぃらっしゃいませ!? いつもスーツがビシっと決まってますね、ぶっはっは……!」

「店長さんはいるかい?」

「今ちょっと出払ってます。戻ってくるのは、あー……まだ二時間ぐらい後になりますね」

「タイミングが悪かったかな」

「伝言預かりましょうか?」

「近くを寄ったから顔を出しただけさ……折角だし、いつも通り包んでもらおうかな」

「お買い上げありがとうございます! ギフト用で?」

「女性に贈るから丁寧に頼むよ」

「お、これからデートですか! 贈れる相手が沢山いそうで羨ま……妬ましいです!」

「言い直すなら逆じゃないかな? 君の悩みはそういうものなのかい?」

「そっちの悩みは年中無休で有給消化もできないもんで……ただちょっと社外秘で緘口令な解決できなかった問題が尾を引いてるだけなんです」

「お店の問題かな?」

「いえいえ、おかげ様で順風ハーフ帆って具合で大きな問題はないみたいです」

「運航に支障をきたすギリギリではあるんだね。どこもかしこも世知辛い」

 

「なんといいますか……お悩み相談でパズル解いてたつもりがピース全然足りなくて悪口で補強しようとしたけどお父さんじゃなくてお爺さんだったって話なんです」

「なるほど。相談には乗れないかもしれない」

 

 

 

 

「……キミ、あの病院で生まれたってこと?」

「そうみたいだルビーちゃん。ウチのお袋の担当医が雨宮先生だったとか。ドルオタで残念なイケメン医師だったらしい。全体的にうろ覚えだったからあんま信用できないけど」

「覚えられ方残念だなぁ……じゃあキミのママ、せんせが失踪した時に病院にいたの?」

「『退院する時、外まで見送ってくれる良い先生だった』らしいから多分それより前だ。失踪してたこと自体ニュースで知って驚いたって言ってたし」

「……そうなんだ。ていうかキミ、宮崎出身なんだね」

「小学校に上がる前ぐらいまでは宮崎だった、らしい。文字通り右も左も国名も解ってない時代だったから全然覚えてなかったわ!」

 

「なら、同じ時期に若い妊婦がいたとか聞いてない?」

「いたらしいぞ。一緒にヨガやった妊婦の中にB小町のアイにそっくりな髪の長い娘が」

「アイのこと知ってたの?」

「名前はこっちから出してようやくだったけど。受診してすぐに雨宮先生から布教されたらしい」

「せんせェ……」

「お袋も負けじとイケメン俳優と朝ドラヒロインを先生に布教し返した覚えがあるとか」

「なんの対抗?」

 

「変な偶然もあるもんだよなぁ」

「……その人がアイだとは思わないんだ?」

「んなバカな。お袋も『まさか~確か名前も歳も違ってたし、ただのそっくりさんよ~』ってさ。先生から借りてライブ映像一緒に見たらしいしな」

「自己申告でどうとでも誤魔化せる情報で!? 見比べてなんか変だとか思わなかった!?」

「『明らかに訳アリな娘さんだから詮索するのも気が引けた』そうだ。まぁ、出産控えてて他所様の暗そうな事情に首突っ込んで肝試しやろうとは思わないだろ」

「親子ぉ。せんせ気が気じゃ無かったろうなぁ絶対」

 

「お袋じゃないけど、その人とアイは別人だろ」

「なんで断言?」

「だってその場合ルビーちゃんの言う通り極秘出産だろ? 普通、偽名だの年齢詐称より先に髪バッサリ切るんじゃね? 解りやすくイメージ変わるし、子供に栄養吸われて髪も傷むから隠れるつもりあるなら長いままにはしないだろ」

「あー……」

「誰が切るんだよって話だしアイなら気にせず邁進しそうではある。でも少しでも劇的ビフォーアフターできるならしとけって流石に周りが薦めるだろ」

「……押し切られたんだろうなぁ、せんせと壱護さん」

「うろ覚えのお袋にすら髪長いって印象残ってるなら堂々としすぎだ。ただの訳アリ妊婦だろ。他人の空似なんてよくあるよくある」

「堂々としてた方がバレないってこういうことなんだねー」

 

「実情はともかく、話の設定としては丁度いい。雨宮先生は“せんせ”役、そのそっくり妊婦さんには“ママ”役に当てはまってもらおう」

「間違ってないけど釈然としないなぁ」

「んで早速だけどルビーちゃん」

「なになに?」

 

「父親が業界人とか、病院に犯人二人組がいたとか、そもそもアイを事件に繋げるの止めない!?」

「ギブアップ早速過ぎない?」

 

「だってさぁ! 一つ一つの事件なら結構単純に考えられるのに、条件全部満たそうとすると途端にややこしくなるんだって!」

「えぇー……そんなに難しい話かな?」

 

「ルビーちゃんの案だと芸能関係者な中学生ぐらいの父親がストーカー大学生へリークして、双子を妊娠した“ママ”がいる病院に行き二人で(・・・)担当医の“せんせ”を殺害し隠す。その二年後に引っ越し直後のママを大学生が単独で襲撃。ドームライブ当日の朝にママだけが殺害され、大学生は自殺し黒幕の父親は未だ不明って流れになるよな?」

 

「……そうだね」

「確認だけど、せんせは発見されたのが先月ってだけで実際は双子が生まれた日の事件なのはマストでドーンなんだな?」

「十六年前。これは、というかどれもマストだよ……一体何に引っかかってるの?」

 

「じゃあなんでママは双子産めてるんだよ?」

 

「え?」

「仮にせんせが犯人たちの殺人計画を聞いたか邪魔したかで口封じに殺されたとしよう。その後、犯人たちはどうする?」

「それは……ママを殺すために病室へ」

 

「行けてないだろ。もし病室を襲撃してたなら出産直前のアイは逃げられないし、子供だって無事に出産できたか怪しくなる。食い止められたなら捕まってるか、最低でもママと事務所が父親を警戒して次の事件は防げるだろ。せんせだけ殺して、ママには近寄りもしなかったことになる」

 

「……ママがどこにいるか解らなかったんじゃない? せんせが殺されたのもそれを探ろうとしてバレたからとか」

「それだと情報がママから父親を経由してたか怪しくなる。父親はママ以外知らないんだよな?」

「事務所の社長にも子供にも話してないよ」

「なら、その日に父親がいたならママが『子供が生まれるかもしれないから立ち会って』みたいな理由で教えてる。だったらせめて病室を教えておかないか?」

「うーん、ママなら病院だけ教えて他は『うっかりしてたよ~』って言いそうだしなぁ」

「アイをベースに考えるとその雑がまかり通りそうだからまた難しい……」

 

「探り方でバレたってのもな。えっと、アイの本名って公表されてないよな?」

「されてないよ」

「じゃあ仮に本名を『星野ピジョンブラッド』とする。父親なら最低でも本名は知ってるだろ」

「ピジョ……何!? 多分宝石の名前だろうけど、無理に私に因んだ名前じゃなくていいよね!?」

「じゃあ『山田アイ』で」

「山田アイ……!?」

「『山田アイの病室ってどこ?』みたいなアイの関係者しか知らない情報をわざわざ使って、担当医のせんせが一人でいる時に聞きだそうとした具合か」

「そうなるかも? 人目を避けて確実に知ってそうな人から……暗くなった夜に聞き出すとか!」

 

「だったら、病室も偽名も教えられてないのに担当医が誰かだけは知ってたことにならん?」

「そうかなぁ? せんせ、白衣着たままだったからお医者さんっぽい人に声かけただけかも」

「何それ聞いてない……じゃあ場当たりで襲ったらちょうど担当医だったもあり得るのか……なら不審に思われない病院関係者から漏れた、だとやっぱアイの居場所知らないのがおかしくなるし」

 

「せんせを殺したことにビビッて、そのまま逃げだしたってこと?」

「あり得るけど、それだと犯人二人揃って無計画なマヌケ共になっちゃうぞ」

「片方は中学生だし、人を殺した奴らなんてそんなのでよくない?」

「そんなのだと十六年も遺体を隠せたことに説得力がなくなる。ルビーちゃんが見つけた遺体って普通なら人が近寄らないような所に在ったんだよな?」

「泥棒カラス追っかけなかったら行かない場所だったよ。祠の裏の穴でカラスが巣にしてた」

「……白衣もそれも、ルビーちゃんと警察の他には犯人しか知らない情報とか言わないよな?」

「…………あかねちゃんもイタヨー?」

 

「……疑問の追加注文だ。『人を殺してビビった、適当に隠して逃げたら偶然バレなかった』なら目印ある場所に放置するか? 一先ず分かる所に隠して後から穴掘って埋めたならギリ通るが……」

「ママを殺した後、死体を隠せる場所を探しておいたんじゃない? せんせを殺したから、遺体でもママを男と一緒にしたくなくて使えなくなったとか」

「それだと妊婦を殺して運んで隠す計画を立てて結局やめたことになる。急に隠したにしちゃ人が来ない場所を把握してるし……父親に病院周りの土地勘があったのか?」

「うぁあー……やっぱりなんかチグハグになっちゃうなぁ」

 

「なんかもう『狙いは最初からママじゃなくてせんせだけだった』方が話通るレベルだぜコレ」

 

「え?」

「まず、子供の父親はせんせってことにする」

「殺されてんだよ、ぶっ殺すぞ」

「違う違う、犯人がせんせって話じゃなくてママが宮崎にいる理由にするんだよ」

「どういうこと?」

「せんせとママが遠距離恋愛して子供が出来た。んで情報漏れないようせんせの病院へ来た」

「せんせは未成年に手を出すような脳みそ下半身製じゃねぇよ」

「怖いわ。せんせが上半身製かなんて関係ないんだよ。大学生がこの嘘を信じさえすれば」

「……嘘?」

「本当の父親がせんせを殺すために大学生へ吹き込むんだよ『子供の父親は彼女の担当医だ。自分の手で取り上げるためにアイを宮崎まで呼びつけた酷い男だ』って。そうすれば大学生の殺意がママよりせんせの方へ向く」

「……それなら、父親は情報源だなんて発想が大学生から湧かなくなるね」

「で、どっちか一人で『山田アイの病室どこ?』って聞いて走れば、釣りだせる可能性は高い。後は隠し場所へ誘導したか、殺害後に隠したか。そのままママも狙いそうになったら『既に他所へ移って逃げていたらしい』って諦めさせる。犯行後で一刻も早く病院から離れたいだろうから、焦って騙しやすいだろ」

 

「……なんでせんせが、そんなことされなきゃいけないの?」

「前から因縁があってせんせを狙ってたらママがやってきたんで熱狂的なファンを見繕って協力させたか……いや通院中にせんせとママが懇意になって嫉妬した、ならアイの事件にも繋がるか? 医者なら昔の患者のことで逆恨み……いや産婦人科医じゃ難しいか。なんにしろ理由なんていくらでも他積載出来る」

「昔の患者……?」

「ただなぁ、そうすると今度は『なんで遺体隠した』問題が出てくるんだよなぁ」

「……そーだよね! 最初からその気なら山に突き落として事故死に見せかけるのが早いもん」

 

「特に解んねーのがこの大学生だよ。なんなんだコイツは」

「え、そんなの単純でしょ。ただの勘違いガチ恋勢ストーカー型鉄砲玉野郎ってだけで考えるだけ時間の無駄な奴」

「だけって割りに扱き下ろすな……」

 

「気持ち解んない? じゃあもし、みなみちゃんが実は子持ちだって知ったらどう思う?」

「うえぇ、そんなん考えたくないくらいショッ……いや面白い!? 十六でグラドルで子持ちで高校生て! とんでも度胸と図太さないとできねぇ! 前より推すわ!」

「OKなんだー……無敵だなーこの人」

「一通り落ち込んだ後に三重生活の悲喜交々を取材したい。それから今までの写真集を見て、これ経産婦の色気だったのかって肩甲骨を堪能する」

「今のキモい反応をみなみちゃんと共有しとくね」

「お止めくだせぇ、こちらの山吹色のいもけんぴを献上仕るのでそれだけはご勘弁を……!」

「うむ、苦しゅうないぞ越後屋。そちもワルよのぉ」

「いえいえお代官様ほどでは!」

「「はっはっはっは!」」

「それはともかくみなみちゃんに手ぇ出した男は絶対に許さん」

「程度の低いこと言ってるなー。処女受胎だよ?」

「それは神聖視しすぎで怖いわ。みなみちゃん神の生まれ変わりでも産むの?」

 

「そういう感情を裏切ったとか勝手に言ってママへ向けてきたって話。はいそれでおしまい」

「ともかく話題にしたくないって顔な。でも疑問点そこじゃないんだよ」

「そこじゃないならどこ?」

 

「なんでその鉄砲玉はドームライブまで何もしなかったんだ? 宮崎まで行く行動力は熱心な追っかけならあり得る。年単位で殺意を持続させてるのは元からの執着プラス人を手にかけたから。なのに事件と事件の間に何もしなさ過ぎだ。二年だぞ?」

 

「ママに近づけなかっただけじゃない? ライブとかじゃ人の目があって行動に移せなかっただけでしょ。事件のタイミングも父親が決めてただけ」

「それだよ。大学生が中学生の言うこと鵜呑みにして、行けも待ても手綱を完全に握られてた? 違和感が並盛りだ」

「大盛りじゃないんだ。んー主体性のなさと父親の口が上手かっただけーな深読みだと思うけど。あ、じゃあ父親にマインドコントロールされてたとか! そういうのあるじゃん!」

「そんなん言い出したらなんでもアリだしなぁ……そもそも復帰ライブも初主演も無視してドームライブ? なんなんだこのデカくて大事なピースが幾つも足りてない歯抜け感」

 

「うー……頭痛くなってきた」

「だろ? 考えるほど事件と事件と設定が殴り合って疑問で全身打撲になるんだよ」

「……さっき言ってたこと全部無視すれば簡単になるの?」

「そりゃそうだ。祠のイカレた信者が事故死したせんせを見つけて供物にしたとか、せんせのストーカーが犯人で遺体を定期的に愛でてたとか幾らでもいける」

「犯行動機の候補がサイコ過ぎない?」

「サイコな奴を犯人にしたら楽だけど、そりゃ無法地帯だからな。そんな飛び道具と力技ぶちかましじゃルビーちゃん納得いかないだろ?」

「うん……ありがとね」

「お礼なんてそんな。取材しがいのある面白い女子紹介してくれるだけで十分だ」

「わー、しっかり要求されたー。じゃあ芸能科にいる二十八股してる女の子紹介するね」

「ケルトの女王かそいつは!? っしゃあやったらぁ、終わったらちゃんと紹介してくれよ!」

「やる気出るんだねー、これで」

「がんばれ名探偵オブザ俺!」

 

 

 

「俺は! 名探偵じゃ! なかった!!」

「力強い降参だなー」

「もう犯人は『謎の邪神へ無念の命を捧げることに価値を見出した地元の宇宙人』でお手討ちそばにしないか! せんせが布教してたせいで患者からママのことが漏れたことにしてよぉ……!」

「力技の飛び道具でそば打ちされても。さっき上がった好感度が急降下してる今」

 

「くそうっ。事件もママもせんせも、あのルビーちゃんが神経質なほど細かく設定してるのに、事件を掘れば掘るほどまるっきり理解できねぇ……!」

「私をどう認識してるのか漏れ出てるよ。んー?」

「早く片付けて二十八股女にどんなローテーションで男たちと付き合ってるのか聞きたいのに!」

「もう興味が報酬に移ってるなー……いつまでもみっともなく崩れてないで座り直せば?」

 

「せんせの分析も、途中から無関係な星野の影がチラついて調子出ねぇ。ルビーちゃん、男の趣味がお兄様の影響マシマシ過ぎでしてよ……」

「は? お兄ちゃんとせんせはまるで一切関係ない別人なんですけど? 名誉棄損で訴えたら勝てるんですけど?」

「むしろこっちが無罪確定大勝利だわ。自覚ないのかよこの真正ブラコン小町……んがぁ、せめてせんせの喋ったり動いたりヲタ芸ったりするのを見れればもうちょい理解できそうだけどなぁ」

「ヲタ芸要る?」

 

「アイを基礎に考えても男の趣味すら想像できん。芸能関係……役者、スタッフ、お偉いさんの息子? 事件は出産予定日とドームライブ当日……?」

「……ママが一番幸せになれる時を狙って来てるの最悪。絶対、他人の幸せ妬んで引き摺り下ろそうとする僻み野郎だよ」

「それは解らんけども。罵倒するほどママの男を見る目も貶すことになるんだが良いのか?」

「ママ本当に可哀想……こんなのに騙されるなんて!」

「聞いちゃないな。ん? 騙されてた……のか?」

 

「星野たちを基に父親考えるのはどうだ。親子なら性格に類似性があっても違和感ないぞ」

「性格は……諸事情で関係ないからあんまり参考にならない、かなぁ」

「諸事情? いやゼロから考えるよりはいいだろ。まずルビーちゃんは」

「可愛くて頭が良くて気遣いが出来る……どれも人を殺すような奴にはどれも当てはまらないね」

「面はいいが小賢しいわりに考えがやや足らず図太く、好きなものの話になると特にバカになる、と。一度キレたら迷うことなく一線越えるタイプだな」

「失礼だなぁ張り倒すよ?」

「んで兄の方は」

「シスコン! 毒舌! 女たらし! 裏でこそこそやるのがカッコいいと思ってる中二病!」

「加えて、都合の悪いことは気付いてても目を逸らして自分を誤魔化す傾向あるよな」

「ホントホント! 変にワルぶったり一々回りくどかったり!」

「あー、わかるわかる……俺たち星野の悪口大会開催したんだっけ?」

「違うよ!? もうアクアのせいで脱線しちゃったじゃん! 後で高めのお菓子要求してやる!」

「陰口叩かれたうえに、とばっちりにも程があるから止めてやりな。ほーら、いもけんぴお食べ。スーパーなお買い得品だぞー」

「いただきまーす。あむ……結構美味しい」

 

「合わせると、顔が良くてワルぶる女たらしで小賢しく自分を誤魔化し裏でこそこそ図太く生きるキレたら一線越える回りくどい僻み野郎ってことか……?」

「ただ悪口を足して二で割らなきゃそうなるよ……大体、その理屈でいったらママもそんな奴になっちゃうじゃん」

「そっちに関してはルビーちゃん、結構アイに似てるから違和感売り切れだぞ。今は特に」

「……ホント―? 憧れのアイに似てるって言われるのすっごく嬉しい!」

「元から顔の造詣は似てるし、アイドルとしても……は理想のアイドル像がアイそのままだから似てて当然だわなー。MEMちょも後ろに下がり気味だけどそういう意識あるみたいだし」

「言われてみればそうかも! 一緒にレッスンしてるからそういうの意識したことなかったなー」

 

「あと兄妹揃って秘密主義だし」

「……アクアはともかく私も?」

「そうだろ? アイツは人と距離取って少数にちょっとずつ本音漏らす人里離れた隠れ家なタイプ。ルビーちゃんは逆に誰とでも仲良くなるようで実は一定以上の本音は誰にも見せない……表は普通の店構えだけど実は隠し扉があって、な建築設計の違いか」

「……そんなこと初めて言われたー。だったら父親も秘密主義ってことになるかな?」

「……そーれはどうだろーな? 似た者同士だから惹かれ合った、もあり得るか?」

「うーん……やっぱりこの方法じゃ、そういう一面もあるかなーぐらいしかわかんないね」

 

「……なぁルビーちゃん。このまま続けても不毛作だぜ。やっぱ犯人は『せんせと因縁がある宇宙人野郎。芸能界も父親もママも無関係』で終わりにしないか?」

「ダメ。そんな適当じゃ納得いかない」

「……どうしても?」

「当たり前」

「……そうか。なら、悪いけど踏み込ませてもらうぞ」

「何に?」

 

「ルビーちゃんの嘘にだよ」

「私、嘘なんて吐いてる?」

「最低でも俺に相談してきた時から……いいや『Pop in 2』を撮った辺りからかな。ルビーちゃんは、本当に犯人を捜してるんだろ。それも見つけて殺してやるって姿勢で」

「ふーん、どうしてそんなこと思うの?」

「ずっと、悲しいとか憎いとかが目から滲み出てるんだよ……それに雨宮吾郎に入れ込み過ぎだ。俺たちが生まれた年に亡くなったなら知り合いなはずないのに、お袋から聞いた印象との齟齬があんまりにも少ない。星野の味付けが強すぎだけどな」

「それは、聞いてきたからだよ」

「撮影の合間で集めたにしては詳細過ぎる。十六年前の人間だぞ? お袋だってドルオタって特徴思い出すのにかなり時間がかかってた」

「……」

「なのに、まるで亡くなった大切な人……家族の話をしてるみたいだ」

「……ん?」

「ルビーちゃんたちは――」

 

 

「アイの――そっくりさんと、雨宮先生の子供なんだろ?」

 

 

「…………ンヴンンっ…………」

「犯人が父親でアイの子なんて設定増築はインパクトで真実から目を逸らすため。本当は親の仇を見つける方法を模索してる。どこからかアイの事件の犯人が関わってると知って、共犯者を探すためにこんな回りくどいことをしたんだろ」

「なーんでそんなことになるのー?」

「妊娠当時の母親が未成年だったなんて中々の炎上ネタだ。それが漏れれば、お前ら兄妹が売れるほど一般人の両親(・・・・・・)が世間の好奇に晒される。リスクを下げるため脚本にするなんてでっち上げた」

「そーなっちゃうんだー……そっかー」

「俺に相談したのは……この方法がダメでもどうとでも誤魔化せる相手だから。正規の手段を選べない以上、情報の拡散は防ぎたいものな」

「んあぁ……! だからせんせは子供に手なんて出さないモラリストの極みだったんだって!」

「ルビーちゃん……同じ病院で生まれた仲だと解った以上、秘密守るぜ俺。上手くやろうと嘘を吐いた結果、目的から遠ざかるなんて馬鹿らしいだろ? 話してくれよ」

「所々微妙ーに間違ってないのが余計面倒だなー、もー!」

 

「本当に、違う? 父親じゃないってことは……ハッ、そうか本当は――お爺さんなんだな!?」

「もっとあり得ない! せんせ何歳だったと思ってんの!?」

「世の中には、三代続けて十七歳で父になる医師家系が実在する。だからあり得なくはない!」

「もはや呪いだよそれ!? どこの世界にそんなドン引きする宿命背負った医者がいるの!?」

「師匠の主治医がそこの二代目さんなんだよ。男の子のお孫さんがもうすぐ入園らしい」

「お孫さんは、呪いから逃げられるといいね……!」

 

 

 

 

「結局あの後、全否定されたしなぁ」

「悩みの内容はまったく想像できないけど、あまり思いつめない方がいいね。少し忘れて周りのものに目を向けていたら妙案が浮かんだ、なんてよくあることだよ」

 

 

「そうかもですねー……はい、出来ました! いつも通り白バラ六本(・・・・・)の一束です!」

 

 

「うん……ここのバラはいつも素晴らしいね」

「うちの店長が特に拘ってますからねー。バイトの俺までバラに詳しくなりましたよ」

「じゃあ白いバラ六本の時の意味は知ってるかな?」

「『あなたに夢中』『尊敬』ですよね。バイト仲間が『穴場に発注』『早計』ってふざけて、店長に泣くほど高い高いされるの見て覚えました」

「学習過程が独特だね」

 

「……はい、こちら領収書になります。結構な頻度で買ってかれますけど、同じ花ばっかりって相手の反応どうなんです?」

「いつも好評だよ。幸運にもこれを贈りたくなるほど価値ある人と沢山出会えているからね」

「プレイボーイ感すごいなー。腹とか刺されないように気を付けて下さいね?」

「……ふふ、気を付けるよ。店長によろしく」

 

「……あー、お客さん」

「何か忘れたかな?」

「…………宮崎って行ったことあります?」

「……仕事柄、行ってみたいとは思うけどなかなか機会に恵まれなくてね。なんだい突然?」

「知り合いが宮崎土産にポテチ持って来やがりまして。いつか行ったらお奇抜なお土産でお礼参りお画策してるんで、面白い名物知らないかなーと」

「ははは。残念だけど僕じゃ助けになれそうにないよ。もういいかい?」

「すみません引き止めて。またのお越しをお待ちしておりまーす」

 

 

 

「……行ったことないとは言わねぇ、と」

「宮崎、芸能、女をたらし、隠し子居そうで育ててない。怒り妬んで、裏から絡繰り白いバラ」

「なにより、似てる(・・・)。色々聞きたいようなそうでもないような……なーんか笑えねぇ臭いしかしないんだよなぁ、あの人。半端な覚悟だとケガじゃ済まないタイプ」

「万が一でも証拠ないしルビーちゃんがなぁ……いや微妙に繋がらないし、ただの考えすぎか」

 

 

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