やはり俺が現実でゲームするのはまちがっている。   作:嗚呼津

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11話 ファントム・ソード

 いきなりの出来事に、思わずクラインが言葉を漏らす。

 

「おいおい⋯⋯なんでここにモンスターが現れんだよ!」

 

 イベント告知もされていない、なんの前兆もなかった。本来なら、ここにモンスターが現れるわけがない。

 ただ一つ不可解なことがあるとすれば、このモンスターが現れる前に声が聞こえたことだろうか。

 あれはシステムの声なのか、それとも──。

 考えていても埒が明かないとばかりに、クラインが声を上げる。

 

「仕方ねえ、お前ら、エイト、やるぞ!」

 

 その声に合わせて風林火山の皆がオーディナル・スケールを起動する。

 俺も戦うために、それに合わせる。

 

「オーディナル・スケール、起動」

 

 そうやって俺の姿が変わってきオーディナル・スケールの装備を身に着けると、クラインを筆頭に風林火山の皆の視線に晒される。

 え、なに、俺そんな見られるようなことした?確かに毎回やってるかっこよくゲームを起動するということを今回も例に漏れずにやったわけだが、そんな見られるようなことじゃないしな⋯⋯。もしかして手持ちのデバイス出すときに微妙にポケットに引っかかってたとこがっつり見てた?えめっちゃ恥ずかしいんだけど。

 

「エイトおめえ、キリの字⋯⋯キリトみてぇな恰好するんだな」

 

 あ、そのことね。クラインが口を開いて合点がいく。それは俺も思ってる。俺が黒ばっかりの装備をして、黒色の剣を持ってることは気にしないでくれる助かるんだけど、黒色を強くした運営が悪いわけだし。

 で、こっちのキリトの装備が黒くないのは何なの?

 

「強いやつで固めていったらこうなったんだよ⋯⋯」

「なんだそりゃ、でもキリの字にも聞いたら案外そう答えるかもしれねえな」

 

 理由を聞いてあまりにも単純な理由だったせいか、クラインが少し笑いながら武器を構える。

 そろそろ目の前のモンスターを叩きに行くらしい。

 

「エイトとちゃんと共闘するのは初めてだよな。期待してるぜ。真っ黒なわけだし黒の剣士くらい活躍してくれよな、オーディナル・スケールの8位さんよ」

 

 おっと。俺も頑張るかー、と武器を構えていたら知らないうちに多大なる責任が降って湧いたんだが?英雄黒の剣士キリトと同じくらいの活躍をただの8位に求めないでくれます?⋯⋯あ、敵の目の前まで走って転けたらいいんですね。カガナントカ・サムライロードのときみたいに。

 ま、クラインなりの激励なんだろうな。ここはスマートに返しとくか。

 

「善処する」

「おめーは意見を言われたときにめんどくさがってる上司じゃねえんだから⋯⋯ま、頑張ってくれよな」

 

 俺が思うスマートは上司の遠回しの否定だったらしい、悲しいね。

 そんなことを考えていると、モンスターの動きに気が付いたクラインが注意を促す。

 

「アイツの名前は第11層フィールドボスの『ゼーギ・ザ・フレイムコーラー』だ!しっかり攻撃を対処したら動きは遅いから斬りやすい!──来るぞ!!」

 

 クラインが適確な指示を出した後、ボスは近くの柱のオブジェクトを棍棒で殴り壊し、その瓦礫を飛ばしてくる。地味に頭いいし小賢しい攻撃だな。

 クラインたちはそれぞれに役割があり、その役割通りに仕事をこなす。今回はその瓦礫をタンクが引き受け、クラインなど防御の手段が乏しいメンバーを守る。もちろん俺はメンバーではないから守られるところには居られていない。

 え、どしよ、俺は俺をどうやって守ればいいのん?全部避ければいいの?避けれる自信ないよ?

 そんな俺に気付いてさすがに申し訳ないと思ったのかクラインが声をかけてくる。

 

「すまんエイト、どうにかやり過ごしてくれ!」

 

 たく、何気にさらっと無茶ぶりをさせる。もしかして攻略組ってのはこんな感じだったのかね。

 

「頑張りますよ!──っとお」

 

 飛んでくる瓦礫を剣でいなしながらなんとか攻撃をかわす。

 OSでこんなことをしたのは初めてだな。極めたりしたら飛んでくる銃弾切れたりすんじゃねえの。

 

「よしこの攻撃の後はそのまま棍棒を振り上げての叩きつけだ、その攻撃をガードすれば衝撃波もなくボスが硬直して隙ができる。そこをやるぞ!」

 

 瓦礫を飛ばす攻撃が終わったらクラインが指示を出す。その言葉通りにボスは棍棒を振り上げ始め、クラインの攻略組としての優秀さに内心驚きながら、攻撃をするために剣を構えておく。

 

「よしタンク!」

「了解!!」

 

 タンクがクラインの言葉で前に出て、ボスの棍棒を盾で受ける。結構な重みがありそうなその攻撃をしっかりと耐え、ボスは振り下ろし切った体勢のまま動かない。

 

「攻撃ィ!」

 

クラインが合図を下す。それに合わして風林火山のアタッカー、そして俺がすぐさま近づき、攻撃を加える。

 硬い⋯⋯が俺たちなら削り切れる程度の耐久度だな。それに、よく連携が合う。

 がむしゃらにそれぞれが攻撃しているわけではなく、それぞれがそれぞれの行動を気にして邪魔にならないようにタイミングを合わしている。

 ただ、何だろうか⋯⋯。それだけが理由じゃない気がすんだよなあ。

 クラインもそこになにか考えが生まれたようで、俺に話しかけてくる

 

「恰好だけじゃなく、どことなくキリの字みたいな戦い方すんだな、おめえ」

 

 俺がその言葉になにか返答しようと考えているとボスが起き上がりはじめ、返答を一旦諦めてボスから飛び退く。

 しかし、キリトみたいな戦い方、か。正直一切キリトの戦い方なんてまともに見たことないし知らないのだが。なにか知っていることと言えば『SAO事件記録全集』に書いてあることくらいだ。

 まあただ、なにか心当たりがあるとすれば、最初シノンに会ったときに言われたことか。

 

──「率直に聞くけど、アナタ、アルヴヘイム・オンラインやってるの?⋯⋯それか、ソードアート・オンライン、やってたの?」

「いや、やってないが。ってかVR機器も持ってないな。⋯⋯なんでだよ?」

「そうなの?アナタの攻撃がソードスキルみたいだったからてっきりやってるのかと思ったんだけど」──

 

 前に俺の攻撃がソードスキルみたいだと言われたことがある。そして俺が使っている剣は片手直剣。キリトが主に使っていた剣も二刀流を除けば片手直剣。つまり、俺のスタイルがキリトに似てしまうのも仕方ないことだろう。

 全くバックグラウンドもなく謎に俺がソードスキルみたいな戦闘スタイルなのが事をややこしくしてしまっているが、そこは本当に理由がないので許してほしい。

 

「シノンにもソードスキル使っているみたい、と言われたな」

「やっぱそうだよな!どうりで覚えがある体験だなと思ったぜ。連携しやすくて助かるな!」

 

 俺が、連携がいやによく合うなー、と思っていた理由はそういうことだったらしい。

 

「よし、連携がしやすいってんなら一気に行くぞ!次の横振りは避けて、その時に後ろに回って脚を切る!」

 

 会話してたと思ったらクラインがしっかり指示を出す。

 すげぇな。さっきまで俺のほう向いて話してたのにしっかりボスも見てんのかよ。⋯⋯ソードアート・オンライン、こんな人を作ってしまう、そこまでの世界だったのかよ。

 そんな世界で英雄になったキリトっていったい──。

 

 「よしエイト、脚切れ!」

 

 そんなことを考えながらボスの横切りを避けたらどうやら俺が一番脚を切るのに良い位置にいたらしい、クラインの声が俺に向かって響く。

 それに応えるために素早くボスの後ろに回り、脚の根元に剣を垂直に振り下ろし断ち切る。

 

「ナイス!たたみかけろ!!」

 

 2回目の総攻撃。

 俺は後ろからそのまま脚を切られたために前かがみに倒れ込んだボスに向かってV字を描くように斬り、それから振り上げた剣をそのままに肩にかけ構え直し、また振り下ろして斬りつける。そしてまだ体の左側に振り下ろした剣をそのままに体に捻りを加えながら構え、全身の力を使って体を右回転させ、その回転そのままに回転斬りをする。

 ボスの体力を見る、あと少しというところ。これならこのまま削り切れるだろう。

 そうやって半ばもう安心しきっていた時に、風林火山の一人の呻き声が聞こえた。

 

「──うぐッ!」

 

 その声があまりにもリアルな苦痛の声だったために、俺を含め皆が何事かとそちらの方向を向く。

 そこにはカガチ・ザ・サムライロード戦にもいた、オーディナル・スケールプレイヤーランキング2位の奴がいた。

 そしてその足元には腹を抱え倒れているさっきの呻き声の発信主であろう風林火山のメンバーの一人。

 その状況に驚いている俺たちをよそに、2位のそいつはニヤリと笑い、言う。

 

「VRにこの痛みはないだろう?⋯⋯教えてやるよ、VRとARの違いをな」

 

 途端、常人には到底できない身のこなしで風林火山のメンバーに近づき、殴り、蹴りを加えていく。その行動には一切の手加減がなく、クライン以外の風林火山は全員為す術なくやられ、気絶する。

 

「──テメェ何やってんだァ!!」

 

 クラインが仲間がやられた怒りに任せてオーグマーを外して殴りかかる。

 しかし、避けられる。

 また、殴りかかる。

 また、避けられる。

 

「おいおい、興ざめだなぁ」

 

 2位が呆れた様子で言葉をこぼす。

 確かにクラインの攻撃は怒りに任せての攻撃であるために単調ではある。⋯⋯しかし、ここまでキレイに避けれるもんなのか?流石に人間の目で見てから軌道を予測しての行動にしては避けるのが早すぎる。

 ──まるで拳の軌道でも見えてるような⋯⋯。

 

「グ⋯⋯アア⋯⋯ッ!」

 

 俺が呆然としている今も状況は悪化して、クラインが後ろから腕を取られ、身体的に無理な格好をさせられる。

 

「もっと楽しもうぜ⋯⋯」

 

 2位が言葉をさらに吐き捨てる。

 まずい、あのままクラインの腕に力を入れられたら折れる。そしてアイツはそれをすることに躊躇がない。

 今の俺にできることはなんだ。⋯⋯一つ、あるな。

 クラインはオーグマーを外して突っ込んだ。つまりクラインは今はOSからログアウトされ起動されていない状態。しかし、2位のアイツはどうだ、アイツは勿論わざわざオーグマーを外すなんてことはせずに今も装着しOSを起動している。

 その証拠にOSプレイ中の俺には同じプレイ中のアイツは装備をしているように見え、クラインは私服姿で見えている。

 ──試す価値は、ある。

 

 俺は気づかれないように後ろから近づき、理由は分からないが今クラインを痛めつけている2位のその頭を、斬る。

 

「──ッ!?」

「そこまでだ。オーディナル・スケールプレイヤーランキング2位の⋯⋯──エイジさんよ」

 

 狙い通りにランキング2位の男『エイジ』はクラインから手を放し、俺に向かって驚いたように振り向いた後、俺を睨みつける。

 やったことは簡単だ、ただエイジの頭を斬っただけ。もちろんOSの剣に物理的な攻撃力なんてない。その剣はただエイジの頭を通過しただけ。

 しかし、それだけでOSを起動していたエイジのオーグマーはしっかりとそのAR空間に剣を表示し、その視界にいきなり剣が現れたエイジは驚いてクラインを放した、というわけである。ついでに俺の剣はそのエイジのHPを全損させた。

 現実では一切実体を持たない、ARだからこそ有効の幻影の一剣(ファントム・ソード)

 驚かれるかどうか賭けではあったが成功して良かった。

 

「ゴホッ⋯⋯ゴホッ!」

 

 クラインがエイジから解放されてせき込みながら起き上がる。

 

「大丈夫か、クライン」

「ああ、助かったぜエイト」

「クラインは倒れている皆を見てくれ、⋯⋯無事じゃなさそうだ」

「──!!お前ら大丈夫か!?」

 

 俺の言葉で風林火山の皆を見たクラインは顔を青くして倒れている皆に走り寄っていく。

 よし、これでとりあえずはエイジから離せた。

 ⋯⋯さて、とりあえず割り込んではみたものの、どうするか。俺に対人経験はほとんど無いぞ。

 

「お前に用はない。引っ込んでて貰いましょうか、オーディナル・スケールプレイヤーランキング8位のエイトマン」

 

 エイジは邪魔をされた意趣返しかのように俺の言葉を真似してランキングと名前を言って本格的に俺に敵対する意思を見せる。

 ⋯⋯やるしかないかぁ。

 

「おいおい、そんなこと言うなよ。楽しみたいんだろ?⋯⋯楽しませてやるよ」

 

 俺はできるだけ自信満々に、皮肉気に、挑発的に薄ら笑いを作ってOSを終了し手に持っていた剣を構成していたデバイスをしまって拳を構える。HPを全損してOSからログアウトされたエイジにはもうOSを起動していても意味がない。

 

「戯言を⋯⋯8位と言っても所詮は一般プレイヤーのくせに」

「そっちは犯罪行為(こんなこと)をしてるとなれば2位の面汚しだな。それに、8位を舐めてもらったら困る」

 

 もちろん、自信満々にモノを言ってるが全部虚勢だ。だが、男はやるときにはやらないといけない時がある。

 ⋯⋯シノンの顔が何故か脳裏に浮かんだ。そして少し、俺は嘘の薄ら笑いの中に本当の笑みを浮かべる。

 ──シノンのもとに無事に帰るために頑張らねえとな。

作者はなんかあらすじ考えるの苦手で、この作品を書き始めた当初にテキトーに考えたあらすじを今も使ってるんですが、いかんせん雑すぎるというか、心残りがあるので質問です。   あらすじを変えるべき?

  • 変えるべき
  • そのままで
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