やはり俺が現実でゲームするのはまちがっている。   作:嗚呼津

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3話 コンビの具合

 シノンとのコンビを組んで、しばらくが経った。

 コンビの相性はどうかというと⋯⋯全然悪くなかった。

 というのも、俺とシノンはコンビ組んでから、事前に予告して行うような大勢で集まって倒す大規模なものではなく、ゲームとして固定で起きるイベントやOSにも一応あるストーリーのボスなどを狩ってきたが、後ろに頼りになるやつが一人いるだけでボス戦の気の張りようにも余裕ができ、楽に動けるようになった。もうなんて言うか、安心感がすごい。

 

「シノン!ガルルガが飛んだ!!」

「オッケイ!──当たったっ!」

 

 ほら、今回も撃ってほしいときに最高の場所に撃ってボスを落としてくれる。

 今回の敵はめっちゃイャンガルルガに似てる鳥で、たぶんガチで元ネタにしてるのかめっちゃ叫ぶしめっちゃサマーソルトしてきて飛びまくる、俺からしたら戦いにくいボスだった。そうかこれがクソモンスか。

 

「ナイス!俺が終わらせる!!」

 

 そう言って、俺は最近ボス相手にお決まりになっている最後の連撃を食らわせる。

 おっし、いける。ちょっと残りHPの多さが気がかりになるが、いけるだろ。

 こう考えて、連撃を続かせすぎたのがいけなかったんだろう。

 落とされて倒れている状態のままガルルガは1つ口から火球を吐き、俺をひるませる。そして一瞬で起き上がると飛び立って空中でサマーソルトの予備モーションをとる。

 

 ──あっ。油断大敵って⋯⋯こういうことね。

 

 火球でひるんだ状態のままの俺は、サマーソルトを避けることは出来ない。

 そう死ぬ覚悟をした俺に救いの手が伸ばされる。

 その手は光の銃弾としてシノンの銃から放たれ、目にクリティカルヒットしてそのままガルルガのHPを全損させ、そのままその場には花火が開き、収束する。

 ⋯⋯ったく、相変わらずの狙撃ですねシノンさん⋯⋯。ソゲキッって言ってみない?

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯奪われた」

「あなたが引き際を間違えたのがいけないんでしょ。自業自得よ」

「いや、そうなんだけどさ⋯⋯クッソガチで自業自得だから文句言えねえ」

「どれどれ、ラストアタックボーナスはっと⋯⋯あー、胸当てかー⋯⋯ステータスはいいけど銃構えるとき邪魔になるのよね、これはエイトにあげるわ」

「おい泣くぞ、本気で泣くぞ。自分のミスでラストアタック逃した上にラストアタック取った奴にボーナス貰うとかどんだけみじめなんだよ俺。いや貰えるなら貰うけどさ」

 

 さすがにこれには負けることに関しては最強の俺の目にも一筋の涙が⋯⋯。

 気を付けねえとな、最近死んでないからガチで油断してたわ。恥ずかしい。

 

「どう?ランキング上がった?エイトはずっと8位だから私も気になってきたわ」

 

 そう言われてもう諦めて最近見てなかったランキング画面を開く。

 ⋯⋯ふむ、目を擦ったりして何回見直しても8位か。相変わらずですなガチ勢さんよ。

 

「残念ながら、相も変わらず8位だ。今日もガチ勢さんは頑張ってるらしい」

「あら、残念。こんだけ頑張ってるのにちっとも上がらないなんてもはやコントね。私はコンビ組んでからエイトに合わせてプレイ時間多くなったからおかげさまで362位になったわよ」

「は?めっちゃ上がってんじゃん。何、俺への当てつけ?めっちゃ俺に効くからやめてね?」

 

 こいつ、この前教えてくれた時800位くらいって言ってた気がするんだが⋯⋯。いや、俺もそんくらいの時は頑張ったら頑張った分だけランキングが上がってくれてたな⋯⋯。あの時は楽しかった⋯⋯。

 

「そういえば、私の順位じゃ特典も飲食チェーン店の無料クーポンとかでまだまだ驚くようなものじゃないけど、8位の特典だとどんなものがあるの?やっぱり驚くようなすごいものがあるの?」

「あー、あるぞ、なかなかお得な特典。この前、アミュスフィアが店舗で無料になるクーポンとかあったな。⋯⋯ARで勝負してるOSがVRを特典であげんのかよ、って思ったけどな」

「へえ、いいじゃない。⋯⋯ん?でもそういえばエイトってVR機器持ってないって言ってなかった?そんないい特典あったのに何で使わなかったのよ?」

 

 なんかすげえ特典あったっけなー、と思い今まで数多に獲得してきた特典の中で良さげなものを記憶から引っ張りだし口にすると、シノンは少し驚愕が混ざった疑問の顔で首をかしげる。首傾げる姿もまたこう、グッ、とくるものがある。

 

「⋯⋯苦手意識があんだよ。フルダイブってのにな」

「今時の若者でそんなこと言うのは珍しいわね」

「うるせえ、年取った考えって言いたいのかよ。⋯⋯SAOのあの事件で、クラスの奴が1人死んだんだ。正直言うと、そいつの名前も顔も覚えてなかったが、それはなんも関係ないと思ってた俺に、なかなかの恐怖を与えるには十分だったんだよ」

 

 俺自身はもちろん、両親も、SAOをしたくてナーヴギアを買おうとしたが買えなかった小町も、SAOという世間を騒がしている事件には無関係のまま過ごすんだろうな。

 ──そう思っていた。

 

 しかし、2年目にして家族の中で俺だけが、新しく割り振られたクラスにSAOに捉えられている奴が含まれていたことで、SAO事件に少なからず関わってしまった。

 クラスに一応学校側の配慮で割り振られていたそいつは、SAOが解放されたその日に死んでいた。そう、そいつはあとちょっと生きていたら帰って来られたはずだった。

 あとから盗み聞いたところ、そいつは攻略組で、SAO最後に攻略された75層のフロアボス戦で死んだらしい。

 

 きっとそいつは、強かったのだろう。そんな人間を殺したフルダイブVRという技術に、俺は恐怖した。

 しかも、SAOが解決したと思ったらその次に起こったのはSAOプレイヤーALO監禁事件だ。

 その事件をうけて、もう俺はフルダイブVRはしないと決心した。アミュスフィアは安全だと証明されていたが、俺はそれを信用せずに今まで過ごしてきた。それほど恐怖として俺に刻み込まれていた。

 

「⋯⋯そう、それには理解もするし、同情もするけれど、その事件を起こしたのはナーヴギアであってアミュスフィアは安全よ?」

「知ってるよそんなこと。⋯⋯これはあれだ、野菜1種類食って野菜ってもんを嫌いになってるようなもんだ。お前もそんなことあったろ」

「っ……」

 

 その言葉にシノンは一瞬思いつめたような顔をする。予想以上の反応だな、過去になんかあったのか⋯⋯?

 

「でも、アナタのは理解するのを諦めてるだけ。フルダイブってものの存在を決めつけて近づこうとしていない」

「分かってる。分かってるんだよそんなこと!でも怖いんだよ!!⋯⋯使ってしまったら今度は俺が死んでしまいそうで!」

 

 思わず、俺は大きな声を上げてしまう。その1人の死を知って、散々報道されていた死者数を改めて理解してみた。

 目に飛び込んで来た数字は、約4000人、というとてつもなく大きい数字だった。

 4000、4000だ。そんなに人を殺したフルダイブ技術に俺は全く近づけなくなってしまった。

 

「⋯⋯そう、でもアナタ言ったわよね。野菜の好き嫌いみたいなもんだって。そんなのは子供がすること、ならそのうち克服するわ。だから、克服したら一緒にVRゲームしましょ。ALOでも、GGOでもなんでもいい、私はアナタとゲームがしたい」

 

 こいつは、シノンは強いな。あの反応からするに、こいつにも抱えるものがあるのだろう。

 でも、こいつはきっとソレを乗り越えている。本当に強い少女だ。

 

「⋯⋯ああ。⋯⋯克服できたなら一緒にやるか。お前を見てるとVRも悪くなさそうだ」

「でしょ?」

「でも、まだ怖いからもうちょっと待ってくれ」

「ええ、分かったわ。待ってる」

 

 ⋯⋯なんだこの感じ。めっちゃ青春してるみたいじゃん。たく、こういうのは奉仕部だけでよかったんだけどな。

 

「あ、そういえばエイト聞いてる?もう少しで、オーディナル・スケールにSAOのボスが現れるっていうイベントバトル」

 

 シノンがちょっと下がった空気を変えるように話題を提供してくる。

 

「え、そんなイベントあんの?」

「ええ、今界隈じゃこのことで話題が持ちきりよ」

「ほーん、興味あるな。どこで始まるんだ?」

 

 一瞬、そんなトラウマを抉るようなことして大丈夫か?とも思ったが、まあ、それなりの考えがあるんだろ、と無視することにする。

 

「分からないわ。たぶん運営はギリギリまで隠すつもりじゃないかって話よ。だから移動手段が限られてる私たちには難しいわ」

「⋯⋯あー、いや、それなら安心しろ。一応俺バイク持ってるから、やるってなったら乗せてやることもできる」

 

 総武って何気にこーゆーところ緩いよな。普通に金髪いるし、制服着崩してる奴も大勢。実に先進的な学校で満足です。

 

「そうなの!?⋯⋯意外ね、そんなバイク持ってるような雰囲気ないじゃない、アナタって。ていうか、ならなんで今までイベントに電車で来てたのよ」

「⋯⋯いや普通に怖いし危険じゃん、バイクって」

「⋯⋯ならなんでバイクなんて持ってるのよ」

「いやあ、それは⋯⋯あれがあれでさ」

 

 言えん、バイクがちょっとかっこいいと思ってたから免許取ってスカラシップ錬金術で溜めた金でちょっといい電動バイク買ったはいいけど実際道路走るとビビったなんて言えねえ。

 

「まあ、それなら安心ね。その時は頼むことにする」

「ああ、まあ二人乗りなんてしたことないから危ないと思うけどな」

「ええ⋯⋯、ったくカッコよくないわね。アイツならきっとカッコよく乗せてくれるのに」

 

 普通に危険って思ったこと口にしたら勝手に呆れられて誰かさんと比べられたんだが⋯⋯。え、俺悪くないよね?二人乗り危ないよね?

 

「⋯⋯ま、お前くらいは安心安全に運んでやるよ。そんくらいは出来る」

「⋯⋯エイトってそういうところあざといわよね」

「なんで俺があざとくなんだよ。あざとい奴を俺は知ってるけどな、あざといってのは、キャッピるーん☆ってしてるんだぞ」

「そ、そう⋯⋯」

 

 マジでなんで俺があざとくなんだ。さてはこいつあざとい奴知らないな?

 あと追加であざとい奴のこと言うならちょっとでも思い通りいかなかったら、は?なに言ってるんですか、ってめっちゃ低い声で言ってくる。ビビる。

 

「じゃ、もういい時間だな、帰るか」

「ええ、そうね」

「シノンは電車か?」

「いえ、今回は歩きで来たから今日はここで解散ね」

「そうか、ってことは家が近いのか?」

「ええ、歩いて20分のところにあるけど」

 

 どうやらシノンの家は今回のイベント場所からまあまあ近いらしい。

 だからいつもは駅で集合だったのに今日はイベント場所集合だったのか。

 

「そうか⋯⋯送ってくか?」

 

 いつもはシノンと俺の乗る電車が違ったから解散はイベントから最寄りの駅だったが、家が近いというのであれば夜道を一人で歩かせる必要もないだろう。

 

「⋯⋯え!?⋯⋯い、いいわよ別に!そんなんだからあざといって言ったのよ!」

「いやだからなんで俺があざとくなんだよ。⋯⋯いいつってもな、夜道は危ないから送ってった方がいいだろ」

「~~っ!全くアナタは本当に⋯⋯。じゃ、じゃあお願いするから、しっかり守ってよね」

「おう、オーディナル・スケールのおかげで割と鍛えられてるつもりだから安心しろ」

 

 そう言うと、バッ、と顔を俺から背けるシノン。

 なんだよ、やっぱキモかった?……悲し。

 

 

 

 

 

 ーーー

 

 

 

 

 

 「ここよ。⋯⋯ありがとうね、送ってくれて」

 

 そう言ってシノンが止まった場所はアパートの前。⋯⋯一人暮らしがよく住んでそうな、小さいアパートだった。

 

「シノンって、もしかして一人暮らしか?」

「ええ。⋯⋯羨ましい?」

「いや、羨ましいかって聞かれると、別に、としか言えねえな。俺なんて一軒家を親が帰るのおせえから妹と二人だけで暮らしてるようなもんだしな」

「え、エイトって妹さんいるの?」

 

 あれ?俺シノンに妹いるって言ってなかったっけ?

 いるんだよなあ、世界一かわいい妹が。

 

「ああ、家庭的で社交的な小町っていう世界一かわいい妹がいる」

「そ、そう。エイトってもしかしてシスコン?」

「違う。俺は小町を世界で一番愛してるだけだ」

「それを世間ではシスコンって呼んでるのよ⋯⋯」

 

 む、なんか引く顔してるな。⋯⋯もっと小町の魅力を伝えるために力説するべきか?

 

「小町はな、ちょっとだらけるときはあるがしっかりやるべきものをやるやつでな、そこがまた──」

「はいはい。その話はまた今度聞くから。⋯⋯今日は楽しかったわ、またね」

「む、⋯⋯まあいいか。⋯⋯ああ俺も楽しかったわ、また今度な。しっかり寝ろよ」

 

 そう言って俺はすぐに駅の方角に向かって歩き出す。最後に微笑んだシノンに、免疫がない俺にはとても正面から向き合えずに目を背けたとも言う。

 

 

 

「⋯⋯⋯⋯知ってたけど、送り狼じゃなかったわね」

 

 ちょっとシノンさん?俺そういうの聞こえちゃうからね?

 ⋯⋯するわけねえだろ。犯罪者にはなりたくないからな。

作者はなんかあらすじ考えるの苦手で、この作品を書き始めた当初にテキトーに考えたあらすじを今も使ってるんですが、いかんせん雑すぎるというか、心残りがあるので質問です。   あらすじを変えるべき?

  • 変えるべき
  • そのままで
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