今日はオーディナル・スケールにSAOのボスが21時にどこかに現れるイベント当日、俺はバイクを止めてぼーっと待っていた。
シノンと俺はそのイベントに参加するためにとりあえずどこでイベントがあってもいいように東京で待ち合わせすることにして、俺は一応ちょくちょく乗ってはいたがそこまで長く乗ることがなかったバイクで東京まで走るという、ちょっとの遠出を新鮮に感じていた。
そこにシノンがやってくる。
「あら、エイト早いのね。待たせちゃった?」
「ん、ああ、そこまで待ってねえよ。道もあんま混んでなかったから早く着いただけだ」
俺がそう言うとシノンは驚いた顔をしてから、ちょっと訝しむような顔に変えて疑問を言う。
「アナタってそういうベタなこと言うのね、意外だわ。というか少し気持ち悪いくらい」
「小町にこの場面になったらこう言えってしっかり教育されてんだよ。これが俺に合わないのは承知してるが、さすがに妹にはかなわん」
「あー、そういうこと。分かってる妹さんね。会ってみたいわ」
「⋯⋯また機会があったらな」
シノンは小町に会ってみたいと言うが、会っても別に呆れるだけと思うがな、あいつって基本アホの子だから。
たぶん小町じゃシノンの知能にはついていけず、シノンが小町に合わせることになっちゃう未来がありありと見える。
「で、イベントのことなんだが、シノンを待ってる間に告知がされた。場所は『秋葉原 UDX』だってよ」
「そうなの?ということは告知は30分前ということね。⋯⋯どう、間に合いそう?」
「ああ、まあ大丈夫だろ。ほい、これヘルメット」
たまに小町が乗りたいとせがんでくるので買った水色を基調とした少しピンクのアクセントが入ったヘルメットをバイクに乗りながらシノンに渡す。
「随分とかわいいヘルメットね」
「そりゃ小町のために買ったからな。そういうかわいいデザインにもなる」
「そういうことなら私には少し似合わないと思うんだけど、まあ有難く使わせてもらわないとね」
そう言ってヘルメットを被って「よいしょ」と俺の後ろに跨ってくるシノン。
似合わないって言うけどそんなことないだろ、めっちゃ水色似合ってますよ?
「おっしゃ、じゃ出発するから。あー⋯⋯、し、しっかり捕まっとけよ」
「え、ええ。じゃ、じゃあ失礼⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
遠慮しながらもしっかり手をまわしてくるシノンに、俺は言い知れない感覚に陥る。
やべえ、俺しっかり目的地までつけるかな⋯⋯。カーブ曲がるとき意識しちゃって転けたりするんじゃねえの?
俺はそう運転手としては最悪の心配をしながらハンドルを握り、グリップを捻る。
するとバイクは俺の心配など知らないと言わんばかりに安定した挙動で「ウィィイイイィイィィ」と電動モーターが加速してタイヤを回らせる。
そして事前にオーグマーに設定しておいたナビを頼りに道を走る。
さて、到着まで持ってくれよ⋯⋯集中さんよ。じゃないと事故るから。「300メートル先、右です!」──おわ!!ビックリしたあ⋯⋯。音声デカすぎだろ。音量設定直さねえと⋯⋯。
いやちょ、オーグマーナビさん、音の次は文字がデカい。逆に見えねえから。いや死ぬ死ぬ。⋯⋯これも後で直さねえと。
こりゃダメかもわからんね。さすがツンデレ萌えアイテムオーグマー。最近OS以外の機能使ってなかったから拗ねてんだね。
ーーー
「よし、着いたぞシノン」
「エイト、すごく運転上手いじゃない。なによこの前の自信なさげの言葉は?」
「ああ、お前の感触の中、集中が続いてくれてよかったわ」
ほんとにヤバかった。てかなんで途中からどんどん掴む力どんどん強くなってくんですかね⋯⋯。おかげでカーブでツルッっていくところだった。
てかシノンさん、控えめですけどしっかりその、柔らかいんですね。
「か、感触⋯⋯?──あ、アンタまさか⋯⋯!」
「え、いやちょっ」
「この⋯⋯変態!!」
「───イッ!!」
鮮やかな平手打ちをお見舞いされました。
めっちゃ痛え⋯⋯。よくあるアニメみたいに頬にもみじ出来てんじゃねえの⋯⋯?
いや、あれは俺が悪いか。⋯⋯いや、俺悪いか⋯⋯?シノンがバイク乗るんなら覚悟しなきゃいけないことでは?
「絶対このことは後で清算してもらうからね!」
いやだから俺悪くな⋯⋯いや、言わぬが仏、か。
「はいはい、サイゼリヤクーポンで許してくれ」
「イヤよ、なんでサイゼリヤなのよ。どうせもっと良いクーポン持ってるでしょ、お高い喫茶店でも連れてって。幸い良い店知ってるのよね」
こ、こいつ⋯⋯!サイゼのどこが嫌なんだよ、いいだろサイゼ。あ、ちなみにサイゼリヤの最後は『ア』じゃなくて『ヤ』な。これ間違った奴サイゼでエスカルゴな。大丈夫マジ美味いから。
「⋯⋯検討に検討を重ねて、さらに検討を加速させた上で前向きに検討しとくわ」
「検討しかしてないじゃない⋯⋯」
ばっかお前こんだけ長い言葉で検討しかしてないとかあるわけ⋯⋯あ、ほんとだ検討しかしてねえ。
面白いこともあるもんだなあ。
「⋯⋯今日はいつも見る奴がいねえな」
「話を逸らすな⋯⋯。まあ、そりゃ告知があれだけ遅かったら参加できない人もいるわよ」
「そりゃそうか。⋯⋯今回は集団戦は無理かもな」
「そうかもしれないわね。⋯⋯でもアナタいつも集団に参加してないんだから関係ないでしょ」
「⋯⋯それを言うな」
ったくこいつは⋯⋯なんか俺の扱いうまくなってる気がする。
八幡検定あげようか?シノンは今は四級だよ!
「ほら、もうちょっとで始まるからスナイパーらしくちゃんとポジショニングしとけ」
「ハイハイ。エイトもしっかりね」
「おう、シノンも頑張れよ」
「ええ、任せなさい」
この、ある程度の信頼ってのが相性ってやつなんかね。⋯⋯そろそろ、お試しじゃなくて本当のコンビになるように頼んでみようか。
そんなことを考えながら互いにポジションを取っていく。
ーーー
俺は人が多いボスイベントの時はほぼほぼフィールド端っこを陣取る。
⋯⋯理由はほら、運動部みたいなノリの奴がいるから。それに巻き込まれたくないじゃん?
今回もいつもと同じようにそこに陣取ると、新しい奴が来る。
「なんとか間に合ったな」
「場所が告知されたのたったの30分前なのに、もう結構集まってるね」
二人組の男女で、ぱっと見カップル。てか美男美女だしきっとカップルなんだろう。⋯⋯チッ、リア充しやがって、⋯⋯あ、爆発系アイテムいる?
そのカップルは俺のアイテム譲渡しようというご厚意に気づかずに会話を続ける。
「それだけプレイヤーの数が増えてるって事だろうな。⋯⋯ん?」
「アレ?アスナも一緒なんか!」
そこに、おそろいの格好をした社会人集団が話しかける。
⋯⋯いや、まあギルドって事なんだろうけど、VRならともかくARゲームのオーディナル・スケールでそこまでする奴いないぞ。お揃いにするにしてもゲーム起動時の装備とかがせいぜいの中でリアルの服まで揃わせるのは正直浮くと思うんだが。
「キリト君があんまり乗る気じゃなかったので、引っ張ってきちゃいました。あと、じゃんけんで勝ったので」
話しかけられた二人の中でアスナと呼ばれた女の方が答えたところと、話の内容からして男の方がキリトというのだろう。
⋯⋯は?キリト?キリトってあの英雄キリトのこと?
てか、女のほうもアスナじゃん。閃光じゃん。⋯⋯まじかSAOトッププレイヤーがSAOのボス倒しに来たよ⋯⋯、絶対勝てるやつじゃん。
クラスの一人が攻略組で最後のフロアボスで死んだ、ということを聞いた俺はSAOの攻略組にどんな奴がいたのか興味を持ち、その時買ったSAO内部のことが書かれている書籍、『SAO事件記録全集』の記憶を引っ張り出して⋯⋯いやもはや引っ張り出してもないか、勝手に出てきた記憶を頼りに、カップルがSAO解放の英雄とその妻、という超有名な人物だということが分かった。
ほーん、妻、ね。やっぱり爆発系のアイテムいらない?頑張れば爆裂魔法ぐらいの爆発いけると思うけど?⋯⋯エクスプロージョンッ!
「うん?⋯⋯まあいいや。うーしっみんなアスナにいいとこ見せるぞ!!」
「じゃんけん」と言われて意味が分からず疑問に思ったが無視した社会人ギルドのリーダーだろう人は振り返ってギルドメンバーに向かって鼓舞する。
それにメンバーは「オッシャー!!」と士気を上げる。⋯⋯いや動機が彼氏持ちの女にいいとこ見せるって不純じゃね?大丈夫?
⋯⋯それに、鼓舞するために振り返ったときに見えたが、背中に『風林火山』の文字があった。
ということは、この人たちもSAOを引っ張ってきた、攻略組に入っていたギルド、『風林火山』の人たちなんだろう。
ほんとに今回はボスが可哀そうになるほどの一方的な戦いになるんじゃねえの?
もうこの前のガルルガみたいな心配はいらないな。だって絶対苦戦しないじゃんこんなん。
「キリト君、そろそろだよ」
「お、おお。⋯⋯ああ」
閃光さんが、英雄君にそろそろ21時になることを知らせる。
いや、ありがとね。俺も話聞いてたらOS起動すること忘れてたわ。あぶねえあぶねえ、OS起動しねえと。
「オーディナル・スケール、起動!」
こだわりのポイントである、カッコよくデバイスを取り出すのも忘れない。
あ、そういえば。英雄君の異名は『黒の剣士』。
つまり英雄君の装備は俺の装備よりも黒っぽい可能性があるんじゃね?
そう思って俺と同時にOSを起動させていたらしいSAO組を見てみる。
「おーい⋯⋯。黒の剣士じゃなかったんかーい」
なんだよ、『黒の剣士』らしく黒で身を包んどけよなあ⋯⋯。なんなら黒ってより白の方が多いじゃねえかよ。
裏切られたぜ。絶対許さねーからな。
しかも持ってる剣は一本だし、全部違うじゃねえかよ。『俺が2本目の剣を抜けば、立っていられる奴は居ない』じゃねえのかよ、なに、もしかして偽物ですか?
そんな感じに英雄君に疑いを強めていると、ついにLEDビジョンの時計の表示が21時になり、イベントが始まる時間になったことを知らせる。
それに合わせて景色もどんどん変わっていき、イベント用のフィールドが完成する。
そしてシステムの陣ができて、火柱が吹き上がりそこから今からSAO攻略組からボコされるであろうボスが現れる。
見た目はもろサムライ。こんなところにラストサムライがいたなんて⋯⋯!
「あれはっ⋯⋯?」
ボスの出現を受けて閃光さんが英雄君にボスの所在を問いかける。⋯⋯てかそろそろ閃光さん英雄君言うのめんどいな、普通に呼ぶか⋯⋯。
「アインクラッド第10層ボスモンスター、『カガチ・ザ・サムライロード』!」
⋯⋯なんて?カガ⋯⋯なんて?もう一回言ってくれない?ちょっと聞き取れなかったわ。
てか、よう10層なんてところのボスのカガナントカ・サムライロードの名前まで覚えてるね。記憶力ヤバすぎだろ。
「本当にSAOのボスそっくり」
「今の俺たちはソードスキルを使えない。だが、攻撃パターンが昔のままなら⋯⋯」
やだめっちゃ頼もしいんだけどキリトさん。さすが黒の剣士。よっ、SAO解放の英雄!
「あ?なんだあのドローン⋯⋯」
キリトを心の中で煽てているといると、通常ではありえない高度で飛んでいるドローンがあることに気づく。
と思ったら、ドローンから光とともに最近超有名なOSのイメージキャラクターであり、世界初のAIのARアイドルのユナが出現する。
「みんなー準備はいい?さあ、戦闘開始だよ!──ミュージックスタート!」
ユナはそういうと、歌を歌い始める。⋯⋯この曲は確か、『longing』だったか。
「よっしゃー!ユナが歌い始めたっ、ボーナス付きのスペシャルステージだぜ!!」
トラをアバターにしている奴がそう言うと同時に、フィールド内にいる全プレイヤーにバフがかかっていく。
これにはプレイヤーも大喜びで、士気も爆上がり。俺?俺ももちろん爆上がりだっての、だってユナの曲好きだから。オーグマーにも曲のデータ入ってる。⋯⋯つまり。
───やってやるぜ、オッシャー!!
気合入りまくりなわけだ。
「アイツ、なんかめっちゃやる気出してない⋯⋯?そんなにユナのこと好きだったの⋯⋯?」
ちなみに、シノンはそんなエイトの様子を銃を構えながらがっつり見て呆れていたりする。
作者はなんかあらすじ考えるの苦手で、この作品を書き始めた当初にテキトーに考えたあらすじを今も使ってるんですが、いかんせん雑すぎるというか、心残りがあるので質問です。 あらすじを変えるべき?
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変えるべき
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そのままで