やはり俺が現実でゲームするのはまちがっている。   作:嗚呼津

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8話 ランチ

「あちい⋯⋯」

「そう?私はバイクの風で涼しかったけど」

「いやお前のせい──⋯⋯いやなんでもない」

 

 バイク走らせても全然体冷えなかったわ。てか失念してたけどバイクで二人乗りしたら当たり前だけど体が密着するんだよな。⋯⋯そのせいで逆に体が熱くなってしまった。

 

「⋯⋯?まあいいわ。ねえ、ここまで来て今更言うのもなんだけど、本当にここで良かったの?ここは思い付きで言っただけで、やっぱり今からでも他のリーズナブルなところでも⋯⋯」

「本当に今更だな。まあ気にすんなよ、少し調べたが俺はここの半額特典持ってたし、払えないことはない」

「⋯⋯アナタがいいって言うんなら、甘えとくわ」

「おう、そうしとけ」

 

 そう、俺とシノンが昼食として選んだ店は、シノンが以前一度来たことがあるという銀座にあるいわゆる高級喫茶だった。

 もちろん、シノンがネタ気味にこの店を提案したことは分かったし、俺も少し店のことを調べた後そのネタに乗る形で提案を受け入れた。

 

 で、調べたときにだが、ここは東京の高級な店としてはまだ安い方なのでは?と俺が思ってしまったこともここに来ることになった原因だろう。

 

 もちろんI♡千葉である俺は東京のことなんてまったくと言っていいほど知らないし興味もないが、風のうわさで東京の高級店はメニューが軒並み四千や五千を平気で超えている、と聞いたことがある。もちろんそのうわさがあってるかどうかは知らない。

 その点なんだかんだで高いものでも三千円程度で収まっているこの店はその風のうわさの店と比べると俺でも十分了承できるお優しい店、と思ってしまったのだ。

 あと確かに高いとは思うが女子高生が何かと行ってるスタバを少しの期間行くのを我慢してお金を溜めたら一人分くらいなら払えるっていうことに気づいた瞬間なんか断るのが恥ずかしくなった。

 

 

 そんなことを考えながらエレベーターに乗り、件の店の階層で降りる。

 すると、白シャツに黒の蝶ネクタイを着けたこの高級な雰囲気に合ういかにもなウェイターが俺とシノンを見ると一歩前に出てお辞儀してきて、さすが高級店、と感心する。

 

 ちなみに、俺が今回ファッションに力を入れてきたのは最低限はこの高級な店に合う服を着ようと思ったからであって、当たり前だが俺がシノンに「カッコいい」と言われて体を熱くしたかったわけでも、小町にシノンのことを「もしかして本命!?」と間違えられたかったわけでもない。だから勘違いしないでよねっ!

 

「ねえエイト、あれ」

 

 さて、こーゆーところの勝手なんて分からないしとりあえずウェイターさんがお辞儀をやめるのを待って流れに任せようかしらん、と思っているとシノンが会計するところに置いてある卓上スタンドPOPを指さす。

 曰く、

 

 ───『当店はオーディナル・スケール協賛店  オーディナル・スケールプレイヤー所有の特典を使用できます。 そして、ランキング10位以内の方は初回代金不要です。  該当者は申し出をお願いします。』

 

 らしい。マジかよつまり俺無料で食べれるって事じゃん。⋯⋯最高かよ。

 

「マジか。⋯⋯太っ腹だな」

「良かったわね。これで少なくともアナタは何も気にせず気が済むまで食べれるじゃない」

「ああ、マジ良かったわ。俺の分が減るのはデカい」

 

 あの、とこの店の予想以上のサービスに気づいて思わずキャッキャと喜んでいる俺に、ウェイターが話しかけてくる。

 

「もしかして、10位以内のプレイヤーですか?」

 

 一瞬、なぜ分かった!?と戦慄したが、まあこんなに近くで話してるから聞こえるのは当たり前か、と納得しウェイターの言葉にうなずく。

 

「やはりそうでしたか。ではプレイヤーネームをお伺いしても?」

「エイトマンです」

 

 そう言うとオーグマーを操作するために虚空で手を動かすウェイター。

 

「はい、確認できました。では任意でよろしいのですが、サインをお願いしてよろしいでしょうか?」

「サイン、ですか?」

「はい。当店の壁に飾らせていただきます」

「いいじゃない、お店のためにもお願いされときなさいよ」

「え⋯⋯」

「うわ、すごくいやそうな顔⋯⋯サインって言っても多分プレイヤーネームでしょ、そのくらいを嫌がってちゃゲームなんてできないでしょ。恨むなら8位まで頑張ってきた自分を恨むことね」

 

 ぐぬぬ、確かにサインと言っても書くのはプレイヤーネーム。それに8位としてすでにそこそこ名が売れてしまっている現状。

 ⋯⋯正直今更一喫茶店のためにサインしても知名度なんて変わらない、か。

 

「⋯⋯分かりました」

「ありがとうございます。⋯⋯ではこちらの色紙にサインをお願いします」

 

 俺が了承するとウェイターは誠意を感じさせるカッコいいお辞儀をした後、レジの机から色紙とペンを渡してくる。ちなみにどっちも俺が触れるのなんてこれっきりになるんじゃないかと思うほど品質とデザインが秀逸。つまりクソ高そう。

 

 で、その色紙とペンを震えながら持ちふと気づく、

 

「当たり前だけど俺サインのデザインなんて決めてねーんだけど⋯⋯」

「確かに、私も自分のサインなんて持ってないわね⋯⋯。まあ、それっぽく書いとけばいいんじゃない?」

「そんなもんかね」

 

 そう言うシノンの言葉に納得して、震えた手を頑張って落ち着かせ勇気をもってサーラサララー、とよく見る繋げ字というか筆記体みたいな字で「エイトマン」と書く。

 

「ありがとうございます。私も休日に運動を兼ねてオーディナル・スケールをプレイをしているのでランキング8位のエイトマン様にサインが頂けて非常に感激です」

「こ、光栄です?」

 

 俺がこんな人にこんな謙った言葉をもらっていいんだろうかと思ってしまって返事も一瞬詰まってしまう。

 というか硬い口調に反して表情がなんかキラキラしてるのもめちゃくちゃ反応しにくい。やめろっ俺をそんな目で見るな!

 

「では、お席にご案内します」

 

 そしてやっと用件が終わって席まで案内されて椅子に座る。

 ではごゆっくり、と言ってウェイターが下がっていき、ここでやっと実際のメニューを拝見する。

 

「知ってたけど、やっぱ知ってるのと体感するのではちげーな」

「そうでしょ?私も最初はびっくりした。まああなたはどのみち無料だから好きなものを好きなだけ頼んどきなさい。私はちょっとだけ考えて頼んであげるから」

「ちょっとだけかよ⋯⋯」

「半額にできるんでしょ?」

「そうだけどな⋯⋯」

 

 そうなんだけど、そうなんだけどさ。さすがに5万円分とか頼まれたらキツイよ?そうなってしまったら恥も外聞もすてて土下座するしかない。見本になれるくらいには綺麗にできる自信がある。

 

「しっかしいきなり言われてもビジュアルが想像できないもんばっかだな」

「私も正直同感だけど、まあそこは⋯⋯適当?」

 

 適当なのかよ。てかなんですかね、普段からこういう高級店に行ってる人っつか行ける人はこんな意味不明な名前でも実態が把握できんのかね。なに?フランボワズのミルフィーユって?

 

 

 それから少し互いに黙ってメニューを見ながら悩み、やっとこさ二人とも決めたところにタイミングよくさっきのウェイターが現れる⋯⋯認識外の領域から。

 

「お決まりですか?」

「えっ?!あ⋯⋯は、はい」

「お伺いします」

 

 びっくりしたあ……。さっきの一瞬で心臓の活動が活発になってその活動に血管が耐え切れず死ぬかと思った。ちょっとやめてくれませんかね⋯⋯どっから来ました?いやガチで。

 

 とりあえずなんかこの意味の分からない謎の名詞群を意味の分からないまま声に出すのは恥ずかしいので高級喫茶での頼み方としては最低のメニューを指さして「これで」と言うだけで頼んでいく。ちなみの頼んでいるものは適当。

 それに対してはシノンはきちんと名前を口に出して頼んでいた。

 

 そしてそのシノンが頼んだものが来てから思わず俺は唖然としてしまう。

 ⋯⋯この何をどう調理したらこの大きさで2500円という価格になるか理解できないサンドウィッチと貧乏舌にはうまみを感じきれないちょっと美味い1100円のコーヒー。

 おそらく、この分だとシノンが食後のデザートにと二種類頼んで合わせて3000円のケーキもサイズがちっちゃいのだろう。

 

 この計4点だけで、半額を使わなかったら合計6600円となる。

 ⋯⋯馬鹿じゃねーの?周りの席に座ってらっしゃるマダム方はこれを定期的に食べてらっしゃったりするの?⋯⋯投資とかに当てたら?もしくは俺にください。

 

「ランチは初めてだけど、おいしいわね」

 

 そんな感じで東京の恐ろしさを身をもって味わうとともに心の中でマダムに媚びていたら、サンドウィッチを一口食べたシノンが話しかけてくる。

 

「さすが値段が高い喫茶店ってところだな、完成度が高い。てか本当にそんなもんの量で良かったのか?」

「大丈夫よ、いつもお昼はこのくらいだしね。ケーキがある分むしろいつもより多いくらい。⋯⋯それを言うならアナタこそその量は少なくないの?」

 

 そう言われて自分のところに置かれている品を見る。

 

 まず一つ目は、もっちもちのめっちゃお高い食パンの上に、トマトの上品な酸味の効いためっちゃお高いピザソースを塗りたくって、濃厚で芳醇な味のするめっちゃお高いチーズが乗ったピザトースト。正直こんなところまで来て頼むものではないが、名前が意味わからないのが悪い。

 そして二つ目はシノンと同じでさっき言ったとおりの貧乏舌では感じきれないうまみのあるちょっと美味いコーヒー。甘党だから普通にカフェラテにしとけば良かった。

 最後に三つ目は食後のデザートにサイズがちっちゃいケーキ一個。

 

 のみ。

 確かに客観的に見たら少ない⋯⋯のか?

 

「別に少なくねーな。なんてったっていつも昼は惣菜パンとマッカンだからな」

「マッカン⋯⋯?」

「MAXコーヒー、でマッカン。千葉県民が愛飲する千葉のソウルドリンクだ。俺はこれを一日一本は飲まないと生きていけないくらい愛飲してる」

「そ、そう。それだけで毎日足りてるの?もっと食べたほうがいいんじゃない?」

「いや、足りてるから大丈夫だ。マッカンはカロリーがあるからな」

「コーヒーのカロリーは頼りにしないわよ、普通。そんなに高カロリーなコーヒーなら飲まない方がいいんじゃないの?」

「俺はマッカンを飲むなと言われても強固たる意思で拒否するぞ」

 

練乳が発揮するあのあっまあまの味が普段の日常からなくなるなんて全く考えられない。もしそうなったら俺は世界を滅ぼしてやる。

 

「そ、そう。エイトにそこまで言わせる飲み物⋯⋯興味湧くわね」

「また今度買ってってやるよ。練乳はいける口か?」

「あら、ありがとう。──れ、練乳?」

 

 こっちとしてもマッカンが好きな人間が増えてくれるのはやぶさかではない。てか好ましい。

 だから布教のためなら何本でも買ってやろう、手始めに五本くらいどう?

 

「い、一旦練乳は置いてといて、お昼に飲んでるってことは学校にも売ってるって事?」

「そりゃな、自販機で売ってくれてるからこそストレスが溜まる今の社会の中で生きていけてると言ってもいい」

「働いてもないのによくでっかい口叩けるわね⋯⋯アナタ学校でどんな生活送ってんのよ」

「どんな学校生活つってもな⋯⋯、一緒の部活の奴らに毒舌吐かれたり、キモイって言われたり、後輩に無駄にいろんなこと押し付けられてるな」

「えっと⋯⋯、イジメ?」

「違う。なんつーか、俺たちの関係性がそういう関係ってだけだ」

「ふうん」

 

 改めて考えると奉仕部とか一色との関係ってこう簡単に言うとめっちゃ第一印象悪いな。

 俺があいつらと関わってて、人に簡単に伝えれることで印象が良い所なんかあるか?紅茶がもらえるところくらい?

 

 ⋯⋯あいつらとのことで良い所って簡単に言えるもんじゃねえんだよなあ。

 そんな安易な良い所があったらあいつらとの一年間であんなに拗れることがなかったわけだし。

 

「なんだかんだ言って俺が、俺たちが望んだ関係なわけだし」

「⋯⋯ふうん。──ねえ、聞かせてよ」

「ん?」

「アナタのその珍しい柔らかい表情からすると、いろいろあったんでしょ?」

「⋯⋯まあ、そうだな」

「嫌そうね。甘酸っぱい青春じゃないの?」

「⋯⋯俺の青春ラブコメはまちがってたっての。⋯⋯あー、聞くか?」

「うん。聞かせて」

作者はなんかあらすじ考えるの苦手で、この作品を書き始めた当初にテキトーに考えたあらすじを今も使ってるんですが、いかんせん雑すぎるというか、心残りがあるので質問です。   あらすじを変えるべき?

  • 変えるべき
  • そのままで
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