仲間達が騒ぐ、酒場の端で。私は一人タバコを吸いながら先の事を考えていた。
戦争が終わり、もう私に仕事は無い。機械化兵としての特別手当と、軍人としての退役年金で十分に食っては行けるだろうが――
悲しいかな。私は仕事の後で飲むエールが大好物な物でとにかく何か仕事をしていたい。
仲間達に今後の予定を聞いてみても、大体が有り余る金で豪遊して暮らすか、故郷に帰って実家の手伝いをするか、というのが大半だった。一部子供の頃憧れていた仕事を目指すという者もいるにはいたものの、スラム街で育ち碌に夢も無かった私に憧れの職業、なんて無い。
どうしたものかなぁ。一応、色々とツテはあるから大体の職業には就けるだろうが……
役人や商人なんかの、頭を使う職業は無理だ。読み書きは軍医から習いはしたものの、性分に合っていない。
肉体労働者も、なぁ。改造のせいでほぼ無制限の体力と腕力を手に入れたせいで、中々疲れるところまではいかんのだ。
それじゃあ後の飯とエールが美味くはならないだろう。
軍人のまま、王都に戻り教官にでもなるというのも手だが、何か違うんだよなあ。
もっとこうハプニングというか、トラブルがある職業とかないかな。
……などと一人呻いていると、気付けば隣の席に白衣を着た黒い髪の男――『軍医』と呼ばれる青年が座っていた。
軍医は顰め面の私を見て、少し不思議そうに話しかけてくる。
「君がそんな顔をしているのは、中々に珍しいね。何かあったのかい?」
一人考え込んでいても、結論は恐らく出てこないままだろう。世界最高の頭脳を持つこの男に、
相談してみてもいいかもしれない。
「これから先の事を、ちょっとな。どんな職に就こうか迷ってんだ。」
「ふむふむ。どういう系統……体を使う仕事とか、頭を働かせる仕事どっちがいいとかは?」
「改造された体でも、精一杯疲れられる仕事、あとハプニングやらトラブルがあると満点だな。」
この難しい条件に彼は少しの間、目を瞑って首を傾げ頭を働かせていた様子だったが、何か思い付いたのかパッと目を開いた。
「ヴァグル、ヴァグル。君が言う条件に適うかもしれない職業があるよ。」
ほう、あるのか。
「どんなのだ?」
「冒険者、って知ってるか?」
知らん。なんだそれ。
「全然知らない、って顔だね。」
「ほら、五年くらい前からクソ神が異世界の化物共を呼び始めたじゃないか。アレ、実は私達の所だけに召喚された訳じゃなくてね。国の方にもちまちま、嫌がらせとしてばら撒かれてたらしいんだよ。
そいつらの対処が国の兵だけじゃ足りないから、民間のある程度戦える奴らを集めた組織を作ったんだとさ。」
「……つまるところ、そこならまだ戦えるって事か?」
ちょっと呆れたような顔をしながらも、彼は頷いた。
「まあ、そんな感じだよ。君にも金はあるだろう。とりあえず成ってみてもいいんじゃないかな?」
冒険者、冒険者か。なんだか名前もいい感じだ。
「ありがとうな軍医どの、ちょっくら目指してみるわ。どうやってなるんだ?」
「ギルド、って呼ばれてる所なら何処でも試験を受けれるよ。多分、あと数日もすれば酒盛りも終わるだろうから出発しな。」
そろそろ、私も酒を飲むか。タバコも気付けば残り三本。帰りの馬車をコレ無しで乗り切る自信が無いので、そろそろ我慢すべきだろう。
タバコを胸の拡張空間に放り込み、煩い空間に突き進んでいく。
うん。将来に希望が出てから飲む酒もまた美味し。