戦場帰りサイボーグと受付嬢   作:けんけんぱん

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化物?

 

 

 

 

 冒険者になる事を決めてから、4日。

終戦を祝う仲間たちのバカ騒ぎも収まり、ぼちぼち故郷に帰る連中も出始めた。

 

 

 かくいう私も今は軍医と共に自分の出身地、王都に向かっているところだ。

俺一人ならちょっと強めに跳ねて帰ることも可能なのだが……軍医がどうせなら帰り道も楽しんでいこう、なんて言うので、しょぼい馬車に揺られて帰路についている。

 

 

 アダマンタイト製の腰に馬車の揺れによる痛みなんてものは無いが、だとしてもグラグラする視界は不快だ。軍医……いや、もう軍医ではないので本名のタナカと呼ぶか。

タナカは賢いだけのただの人間なもので、あからさまに顔を歪めてキツそうにしている

 

 

 重力魔法でも使って、浮かせてやろうか?と聞くと、これも旅の趣……なんて言うのだ。こいつの言ってることはよく分からん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暇だ。

 

 

 私達が居た最前線は国の南端、王都からは大体80里ほど。

牽引する馬は、兵団で育てた中でも特に頑強な子を選んできたものの、それでも三日ほどかかるだろう、

というのがタナカの言である。

 

 

 途中から村や街はあるそうなので、そこまでいけば退屈しないとは思うのだが。それにしても私は今暇なのだ。

 

 

 

「タナカぁ、暇だ。何か話してくれ。」

 

「……あいにく、話のタネは戦争中に使い果たしたさ。暇ならそこら辺で獣でも狩ってくればいいだろう」

「あと、ここら辺はばら撒かれた化物共がいるはずだよ。予行演習で戦ってきてもいいんじゃないか?」

 

 

 

ふむ。化物との交戦にも興味はあるし、そういえば今は昼時。なんだか肉も食いたくなってきた。

 

 

「御者さーん。ちょっと30分くらい止まれる?」

 

彼は国が迎えとして基地に何人か派遣されてきていた内の一人、少し太った中年男性だ。

 

正面の垂れ幕からちら、と顔を覗かせた御者は少し頷くと口を開く。

 

 

「いいですよ……あと私の好みは猪です」

 

了解、と返して外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外に出ると、当たり前だが馬車用の荒れた道が一本通っているだけの森。

 

軍人になり受けた教育の中には勿論野戦のやり方もある。が、ぶっちゃけ獣の足跡の見方や隠蔽工作くらいしか覚えていない。

 

まあ、猪や鹿なんてなんなら走り回るだけでも見つけられはする(やりはしないが)

 

 

気楽に行こう。

 

 

 

 

……

 なんて、考えながら歩いていると案外すぐに猪は見つかった。

 

 

水の音がする、と思って近づいたらビンゴだった。案の定川があり、川辺には多くの動物がたむろしている。

 

一番大きい奴を狩ってしまおう。足音をなるべく消して。後ろに茂みに潜んで一息に――

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬で距離を詰めて指をめり込ませて首を掴み、全力で捻る。

 

すると、数秒もすると驚きで暴れていた猪も動きを止めた。

 

頸椎と神経をねじ切る力技。

 

真っ当な()()に使うのは何年ぶりだろうか、案外まだ上手くやれるものだな。

 

 

にしても、本当に大きいなこの猪。辺境ならこんなモノなのか?

 

高さは私の胸辺りまで、縦も横も長さは間違いなく私よりも大きく、こんなのが人里に現れたら酷い事になるだろうな。

 

 

 

 急に現れた人間に他の動物たちは怯えたのだろう、気付けば見渡せる範囲内に人は居ない。

 

いやー、にしても良い景色だ。さらさらと流れる川と軽く影を作る木々、

二つが合わさり体の表面を丁度いい冷気が撫でる。

 

 

 

 とりあえず川の水をじゃぶじゃぶ使って血抜きを済ませて、来る途中に撒いておいた糸くずを辿って馬車に戻る。でけえ猪は無理に持って来ようとすると木を薙ぎ倒して来ることになりかねないので、

生物避けの魔法をかけておいて解体が出来る軍医が来るまで放置だ。

 

 

 

 

「タナカ!デカい猪を狩ったが大きすぎて持ってこれない!一緒に来てくれ。」

 

馬車の中でしばらくごそごそ、という音がした後に、タナカは顔を出す。

 

なんだか少し機嫌が悪そう。

 

「……寝てたんだよ。うるさい。さっさと案内してくれ。」

 

 

「よし、行くぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、化物だぞ。」

 

 

何でもないような顔で、タナカは言う。

 

案内した川辺には何も変わらない姿でデカ猪の綺麗な死骸が転がっており、その体をぺたぺたワサワサと彼は触っていた。

 

 

にしても、化物?私達がいつも戦っていた化物は黒いカタマリとか影を奪ってくるトカゲ、あと火を吐いてくる空飛ぶトカゲとか動くスクラップだったのに、こんなのが?

 

 

「お前がそういうならそうなんだろうが…俺が知ってる化物共と大分姿が違うな。」

 

 

「クソ神も、強い奴をこっちに回してたんだろうさ。まあ肉は食えるらしいから解体手伝ってくれ……

あと、角が生えてて目が紫色の猪はどっからどう見ても普通じゃねえからな。」

 

 

 

 

 

 

 

いやー、辺境なら環境の違いとかもあるのかなって。

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