「……る。すーぐーる。傑」
呼ばれて、目を覚ます。
「ここは……」
廃墟? 補助監督に貰ったジュースを飲んでから記憶がない。
私にずっと呼びかけていたらしい悟は、ほっとした顔で私を抱き上げた。
後ろで乙骨も心配そうにしている。
「起きたか。変なとこはないか? すぐ診察してもらうぞ。乙骨。ごめん、あとは任せた」
「診察……?」
「そ。まだ安定期に入ってないし」
私は抱き上げられて、転移をして学校に移動。
硝子の診察を受けた。
「母子ともに異常なし。よかったな五条」
「うん、ありがとう硝子」
診察を受け終わった頃にようやく、私は補助監督に一服盛られたのだという事を理解する。
「なんで、私なんか狙ったんだろうね」
「腹の子と腹そのものだな。夏油お前、呪詛師サイトで懸賞金が掛けられてるよ。億単位。すご」
「はぁ!?」
そこには、生きたまま私を捕らえられたら懸賞金という文言が踊っていた。
「傑。大丈夫?」
喰空が心配して縋り付いてくるのを抱き上げる。
「大丈夫だよ、喰空。喰空も懸賞金掛けられてるね……」
「六眼は呪詛師に狙われるからな。しばらく警戒しててくれねーかな。うちにいるのが一番安心だけど」
「ええ……嫌だね。警戒はしておくよ」
「そうして」
前に、悟に懸賞金が掛けられている事は聞いたことがあった。
だが、それを自分のこととして捕らえた事はなかったのだと思い知る。
それから、私は必ず複数で、かつ格下のみの仕事にあたることになるのだった。
4級や3級が増えてもなあ……。
術式持ちが欲しい、術式持ちが。
一方、喰空は我が世の春を謳歌していた。
お父さんが、マンツーマンで訓練を見てくれているし、危ないからってずっと一緒にいてくれるのだ。学校に通えないのは寂しいけれど、無個性の子供達といたってどうせそんなに楽しくない。個性をぶつけ合う事はもうないのだから。
お父さんは凄い。とっても強い。
伝説のヒーロー、オールマイトの次に凄いかもしれない。
「あのね、お父さん! 俺、俺、お父さんみたいなヒーローになる!」
「呪術師はヒーローじゃないよ。そうだね。そろそろ、喰空にその話をしよっか」
そうして、お父さんは言った。
「呪術師は、綺麗な仕事じゃない。人助けができる事なんて、殆どないよ。呪霊を倒すって言うのは、とても大変なんだ」
「でも、傑は呪術師はヒーローみたいな物だよって」
「傑は一般出だから、わかってないところがあってもいいけど、喰空は御三家だから、ちゃんと現実を見てなくちゃだめだ」
「現実……」
「喰空は次期当主。その手を汚す事だってあるだろう。陰謀術数で他家と渡り合わないといけない事だってある。ヒーローなんて夢見たいなこと言ってたら、あっという間に足を掬われちゃうよ。……格好いいとは思うけどね。ヒーロー」
「俺は……ヒーローだって、夢ばっかりじゃないこと、知ってるよ……。ヒーローの殉職率だって、現実だって、知ってるつもりだよ」
「喰空はヒーローが実際にいる所から来てるからね。それは認めるよ。それでも断言する。呪術師の闇の方が深い。それに、呪術師は脚光を浴びる場面もないしね」
お父さんは、そう言って、いろいろな「厳しい現実」を教えてくれた。
俺はそれが嬉しかった。ちゃんと認めて、期待してくれているから教えてくれているんだってわかっていたから。
俺は、お父さんにくっついて、一生懸命いろいろ学んだ。
次回五条視点